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第二章
第三十八話 風使いの訪問者は真実を語る
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「あなた方はトワイスへ向かうのでしょう、それならば私も同行させてください、きっとお役に立ちます、トワイスとは和平を結ぶため、姉を嫁がせてあるのは申し上げましたよね、国王とは相変わらずうまくいっている様で仲睦まじい様子を手紙にしてたびたび届けてくれます。姉上が嫁いでいるくになら私の顔も少々効きますし道中何かとお役に立てるとと思うのです、どうです、同行の許可をいただけないでしょうか」
なぜ、これほど行きたがる理由がアシュベルにも分からないが、カミュ殿下はいたってまじめに言っているようだ。エレナが目的なのか、彼女に惹かれているのは分かっている、だが第一王子という立場で国を出るとなるとそんな理由では納得がいかない、やはり大事になり得る。
「アルガノットの国王は反対されているのではないですか」
「いえ、見分を広めるためよいことだと背中をおしていただきました」
不毛。
普通ならそこは止めるべきだろう、親子そろって聡明なくせにおかしなところで大胆な行動に出る。
「エレナ、時間通りに出発するから荷造り終わってないようなら、戻っていいよ」
アシュベルはいつもの笑顔でエレナを見送る、というのは建前でこの世間知らずの王子様に真意を確かめるべく二人きりになったのだ。
「それで、本当の狙いはなんですか」
単刀直入にアシュベルが問い詰める。
「そうですね、アシュベル殿にはどうせ見破られるだろうからわたしの真意を離しておきます」
カミュの言葉に緊張が走る。
「先日トワイスの言い伝えをはなしたところ、三千年前の国のこと、狂王の存在、それらにエレナ様が過剰に反応されたことが気になっています、あのあと彼女は平然と振る舞っていらっしゃいましが、無理をしているのはわたしでも分かりました。もしかして、」
もしかして、その後の言葉が気になる、エレナが光のマナの持ち主だということすら極秘事項だというのに、これ以上他の者にエレナの秘密がもれてしまうのは都合が悪い。
カミュ殿下には悪いが、この事態にこれ以上踏み込んでほしくはない、アシュベルは次の言葉を待つ。
「彼女は三千年前の事を知っていた、僕が思うにその頃の記憶が彼女にはあるんじゃないですか」
ああ、なぜ、こうも鋭く見抜くことができるんだ、アシュベルは呆れると同時に尊敬すら覚える。
通常そんな考えに辿り着くことなどありえないではないか、たとえそう想像したとしても、それを本当に肯定してしまうのは他人から異端の目で見られる可能性だってある。
あまりにも普通ではないことを口にすれば、そう、異常者扱いだ。一国の第一王子ともなれば、それは家臣から疎まれ彼の立場はあやういものとなるだろう、そしてそれが発展すれば国の危機にも及ぶことになる。
なのにカミュ殿下はエレナの居るグラディイス国まできて、その真相を確かめようと、いや、もはや踏み込もうとしている。
ここは肯定すべきなのか否定すべきなのか。
「カミュ殿下、それは妄想が過ぎるというものではなりませんか」
「そうだね、わたしもその考えに辿り着いた時には、君の様に思ったよ。でも考えれば考える程それは確かなものになっていくんだ、エレナ様は三千年前に光の使者が初めてこの世に現れたことを知らなかった、そして狂王のことも。それなのに、あの動揺ぶりは不可解すぎる、過呼吸までおこして・・・、でも確信したのは君のエレナ様のに対する対応だ、何故彼女がそこまで動揺したのかを知っているように見えたからね、君は意外にも冷静だった、まぁ、これらのことをぐるぐる考えていたら、突拍子もないことが私の頭を支配し始めたのさ、」
それだけで?それがアシュベルの感想だった、自分なら思いついても否定しにかかるだろう。
「エレナ様の光の能力をこの目で見てしまった・・・それが全ての始まりだったのかもしれないね、あの光景は忘れられないよ、伝説上で語られる光の使者が目の前でその御力をお使いになった、わたしにとっては神が降臨されたといっても過言ではない心境だったんだ、だから、今わたしが異常とも思える考えを捨てる事ができない状況に陥っている・・・アシュベル殿、わたしは決して生半可な気持ちで此処に赴いたわけではない、どうか、真実を話してはくれないか」
「――――知って、どうなさるおつもりなのですか」
「決まっている、世界を背負うあのかたの命をお護りする、それが使命だとわたしは思っている」
やはりこの方は真っすぐに物事を捉え目をそらさない。
人を視る目はある、アシュベルはカミュ殿下の人柄を見抜いていた自分を少し誇りに思う、そしてこの方と出会えた偶然にも感謝する、いや、これは必然なのかもしれない。
「第一王子ともあろう方が、そのような言葉を口になさるのは軽率ではありませんか、あなたの方にもアルガノット国の未来が託されているのですよ」
アシュベルは正論を言いながら、それが不誠実だと何処かで思う。
「そうは思わない、この世界を救わなければ我がアルガノット国の未来もない、すなわちエレナ様には必ず生きてその宿命を全うしていただかなければならない。そのエレナ様をお護りする人間は多ければ多い程いいのでは?」
なるほど、そういう言い方をしてきては断りづらくなる、アシュベルはこの攻防を放棄することが賢明だと思えてきた、確かに彼女の秘密を知りそのうえで味方となってくれるならば、本来もろ手をあげて歓迎するところだ、王子という身分さえなければ。
だが、彼は風使い、かなりの戦力になり得るだろう、ここは有難くカミュ殿下の言葉に甘えることにするか。
「では、殿下にはお覚悟があるとお見受けしました、どうかわたしからもお願いします、エレナを守るためトワイスへ同行していただきたい。」
「ありがとう、アシュベル殿、恩に着る」
アシュベルはカミュから差し出された手を取り、二人は固く握手を交わす。
なぜ、これほど行きたがる理由がアシュベルにも分からないが、カミュ殿下はいたってまじめに言っているようだ。エレナが目的なのか、彼女に惹かれているのは分かっている、だが第一王子という立場で国を出るとなるとそんな理由では納得がいかない、やはり大事になり得る。
「アルガノットの国王は反対されているのではないですか」
「いえ、見分を広めるためよいことだと背中をおしていただきました」
不毛。
普通ならそこは止めるべきだろう、親子そろって聡明なくせにおかしなところで大胆な行動に出る。
「エレナ、時間通りに出発するから荷造り終わってないようなら、戻っていいよ」
アシュベルはいつもの笑顔でエレナを見送る、というのは建前でこの世間知らずの王子様に真意を確かめるべく二人きりになったのだ。
「それで、本当の狙いはなんですか」
単刀直入にアシュベルが問い詰める。
「そうですね、アシュベル殿にはどうせ見破られるだろうからわたしの真意を離しておきます」
カミュの言葉に緊張が走る。
「先日トワイスの言い伝えをはなしたところ、三千年前の国のこと、狂王の存在、それらにエレナ様が過剰に反応されたことが気になっています、あのあと彼女は平然と振る舞っていらっしゃいましが、無理をしているのはわたしでも分かりました。もしかして、」
もしかして、その後の言葉が気になる、エレナが光のマナの持ち主だということすら極秘事項だというのに、これ以上他の者にエレナの秘密がもれてしまうのは都合が悪い。
カミュ殿下には悪いが、この事態にこれ以上踏み込んでほしくはない、アシュベルは次の言葉を待つ。
「彼女は三千年前の事を知っていた、僕が思うにその頃の記憶が彼女にはあるんじゃないですか」
ああ、なぜ、こうも鋭く見抜くことができるんだ、アシュベルは呆れると同時に尊敬すら覚える。
通常そんな考えに辿り着くことなどありえないではないか、たとえそう想像したとしても、それを本当に肯定してしまうのは他人から異端の目で見られる可能性だってある。
あまりにも普通ではないことを口にすれば、そう、異常者扱いだ。一国の第一王子ともなれば、それは家臣から疎まれ彼の立場はあやういものとなるだろう、そしてそれが発展すれば国の危機にも及ぶことになる。
なのにカミュ殿下はエレナの居るグラディイス国まできて、その真相を確かめようと、いや、もはや踏み込もうとしている。
ここは肯定すべきなのか否定すべきなのか。
「カミュ殿下、それは妄想が過ぎるというものではなりませんか」
「そうだね、わたしもその考えに辿り着いた時には、君の様に思ったよ。でも考えれば考える程それは確かなものになっていくんだ、エレナ様は三千年前に光の使者が初めてこの世に現れたことを知らなかった、そして狂王のことも。それなのに、あの動揺ぶりは不可解すぎる、過呼吸までおこして・・・、でも確信したのは君のエレナ様のに対する対応だ、何故彼女がそこまで動揺したのかを知っているように見えたからね、君は意外にも冷静だった、まぁ、これらのことをぐるぐる考えていたら、突拍子もないことが私の頭を支配し始めたのさ、」
それだけで?それがアシュベルの感想だった、自分なら思いついても否定しにかかるだろう。
「エレナ様の光の能力をこの目で見てしまった・・・それが全ての始まりだったのかもしれないね、あの光景は忘れられないよ、伝説上で語られる光の使者が目の前でその御力をお使いになった、わたしにとっては神が降臨されたといっても過言ではない心境だったんだ、だから、今わたしが異常とも思える考えを捨てる事ができない状況に陥っている・・・アシュベル殿、わたしは決して生半可な気持ちで此処に赴いたわけではない、どうか、真実を話してはくれないか」
「――――知って、どうなさるおつもりなのですか」
「決まっている、世界を背負うあのかたの命をお護りする、それが使命だとわたしは思っている」
やはりこの方は真っすぐに物事を捉え目をそらさない。
人を視る目はある、アシュベルはカミュ殿下の人柄を見抜いていた自分を少し誇りに思う、そしてこの方と出会えた偶然にも感謝する、いや、これは必然なのかもしれない。
「第一王子ともあろう方が、そのような言葉を口になさるのは軽率ではありませんか、あなたの方にもアルガノット国の未来が託されているのですよ」
アシュベルは正論を言いながら、それが不誠実だと何処かで思う。
「そうは思わない、この世界を救わなければ我がアルガノット国の未来もない、すなわちエレナ様には必ず生きてその宿命を全うしていただかなければならない。そのエレナ様をお護りする人間は多ければ多い程いいのでは?」
なるほど、そういう言い方をしてきては断りづらくなる、アシュベルはこの攻防を放棄することが賢明だと思えてきた、確かに彼女の秘密を知りそのうえで味方となってくれるならば、本来もろ手をあげて歓迎するところだ、王子という身分さえなければ。
だが、彼は風使い、かなりの戦力になり得るだろう、ここは有難くカミュ殿下の言葉に甘えることにするか。
「では、殿下にはお覚悟があるとお見受けしました、どうかわたしからもお願いします、エレナを守るためトワイスへ同行していただきたい。」
「ありがとう、アシュベル殿、恩に着る」
アシュベルはカミュから差し出された手を取り、二人は固く握手を交わす。
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