深淵のエレナ

水澄りりか

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第三章

第十七話 戴冠式にのぞむ二人の王女

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一月後。
戴冠式の日がやってきた。
謁見の間、そこでは名のある貴族や領主らがその時代が到来することをその目で見ようと、各地から見に来ていた。

すでにエレナはエル王女だという事が公表されていた。
だが、彼女が本当にその立場になるのは、今日この時この場所だ。

「わたくしはエル・ローサ、ララの姉として戴冠の任を引き受けました」

その姿に貴族や領主らが息を飲む。
エレナは王族らしい白のドレスを着、煌びやかな宝飾がより彼女の白い肌と白銀色の髪を引き立てており、眩しいほどに輝き皆の視線を集める。

ララは深紅のドレスを纏い、エレナと並ぶとその二人の美しさは何倍にも膨らみ、目を離せなくなる。

「では、ララ王女、」

エレナがララに語り掛ける。
それに応じ、ララはそっと彼女に向かって頭を下げる。
エレナの両手には父上も受けたであろう王冠がそこにあった。

「これより、ララ王女をこの国グラディス国の女王として、この王冠を授与します」

エレナはララにその煌びやかな王冠を頭上にのせる、ララはその重みにじっと目を閉じそれを感じる。

「これで、戴冠式を終えます、ここにグラディス国の女王が誕生しました」

ララはその王冠を頭上にのせたまま、背筋を伸ばし、その女王としての威厳をそこで見ている者に知らしめる。長らく不在だった女王の座に、若き聡明なララ女王が君臨したことは、思っていたよりもずっと民衆の、そして貴族や領主たちの待ち望んでいた存在だった。

歓声とともに涙ぐむものや大声を上げ、女王誕生の喜びにそれぞれが浸る、それほどこの国は疲弊したいたのかもしれない、セーデルが幅を利かせていた頃より、女王が誕生したこの時、皆のこころのおりが亡くなっていくのを感じる。

「これよりララ・ローサであるわたくしがこのグラディス国の女王となり、戦乱を生き延びた、いえ生き延びその生を重んじる事の出来るあなた方と共に、わたくし自身役割を果たしていきたいと思っておます、そしてわたくしはこの女王という座に忠誠を誓います、この国を、民衆を護る抜くことを、皆の喜びを生み出さんことを・・・!」

ララ女王は高らかに宣言する。
まるでとうの昔に女王についていたかのような威厳と気高さを持って群衆の前でその特別ともいえる存在感を放つ、これは誰もが思っていたよりも予想以上のものだった、ララ女王がこの国の最高位にたち、憶することもなくその高みへと昇ってゆく、それに必要な素養を身につけながら。それは一秒ごとに起こっていく、素早く群衆が何を望んでいるのかすでに分かっていた、彼女は女王となったのだ。
見た目も中身も、そしてその精神も。

「戴冠式は以上です、この後大広間にて祝いの儀式と、外に集まった民衆にご挨拶をするというスケジュールがございます、貴族来賓の皆さまは広間に移動なさってください」

この日は貴族や領主以外にも民衆に城を解放してある、そのためアシュベルら近衛隊はその全ての隊員を各箇所に配置し、警戒モードにはいりかなりピリピリしていた。

この国に居る者は双子の美しき王族をみようとこぞって足を運んでいる。

お祭りムードになっている民衆を警戒し続ける、それが近衛隊であり、衛兵たちの仕事ではあるが、その労力は大変な者だった。しかも第一近衛隊隊長であるアシュベルにとってはその忙しさは目の回るような、と言っても過言でない程のもので、張り詰めた糸が切れんばかりだった。

「アシュベル様、これをお預かりしてまいりました」

そんな折、女王側近の近衛隊の者が女王の紋章が入った手紙を持ってきた。
こんな忙しい折に何事だろう、そう思い、その場でその内容を見てみる。

「戴冠式が終わった夕刻、謁見の間に来るように」

内容は短くとにかくこの祭りのような騒ぎが収まった後謁見の間へ来なさいと言う新女王からの言葉があった、呼ばれる理由は特に思い当たらなかったが、その場にエレナも来るのだろうか、と一瞬王族となってしまった自分とは身分の違う彼女の姿が目に浮かぶ。だがそれは部下からの呼び声で消されてしまう、今はこの混乱状態である城を、そして王族を守るのが自分の役割だと思い出し、アシュベルはそのことに専念することにする。そう、今は自分の想いに浸っている場合ではないのだ。

その混乱とも呼べる女王戴冠式は民衆を城からだし、ひとときの静けさを取り戻す。

アシュベルは後のことをアロに頼み、謁見の間に一人向かった。
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