えっ?木の棒で異世界を冒険するんですか?

八雲 全一

文字の大きさ
1 / 34

一話 異世界転生

しおりを挟む
俺の名前は常磐慎吾。何処にでも居る普通の高校生だ。
ピピピピピピ…目覚まし時計の音か…煩いな。俺は目覚まし時計を握ると壁に投げつけた。
ガシャーンと音が響く。これでもう煩く無くなった。
………zzzzzz
おき…ろ!お…きて!バギャッ!起きろ!

「はうあ!いてえ!超いてぇよ!」

俺は何かで殴られたようだ。咄嗟に目を覚ます。
ベッドの側では幼なじみの須藤愛理がフライパンを持って立っていた。あのフライパンで殴り付けてきたのか。
頭の中がグワグワと歪んだり捻れたりしているように感じる。

「愛理!何すんだよ!もっと起こし方が他にもあるだろ。俺を殺す気かよ。」
「だって慎吾全然起きないんだもん。仕方ないじゃん。このままだと私だって遅刻しちゃうし、外国に居るおじ様とおば様に慎吾の事頼まれちゃってるしね。さあご飯を食べて!学校行くよ。」
「はいはい。後ろから抱き付いて匂いかぎかぎー!」
「キャア!何やってんのよ!殺すわよ!変態!」

二発目のフライパンアタックが俺を襲った。クソ!セクハラしただけなのにいてえじゃないか!
俺はセクハラを終えると二階から一階に降りて行った。リビングには既に食事が用意されている。ニュースをテレビでみながらそれを掻きこむ。
何時も通りの味だ。旨い。一応愛理に伝えてやろう。幼なじみのメンタルケアも出来る男子の仕事だ。

「今日も旨いぞ。愛理。また頼むよ。」
「へへへ…そうでしょ。お世辞は良いから早く食べちゃって頂戴。学校遅刻するよ!」
「了解。」

俺は食事を食べ終わると制服に着替えた。そして出かける準備は終わった。愛理に声を掛ける。

「俺は準備オッケーだ。家を出ようぜ。愛理。」
「分かったわ。もう出ちゃいましょうか。遅刻。遅刻!」

俺達は家を出て通学路を歩いていた。住宅街を抜けると大きな十字路がある。信号が青なので渡っているといきなり凄いスピードでトラックが突っ込んできた。ブレーキも掛けていない。このままだと引かれる!
俺は次の瞬間愛理を突き飛ばしていた。しかし俺の居る場所にトラックは突っ込んでくる。あ…あ…
ドグッチャアバキャバキャガッシャーン!
大きな音を立てて俺は引かれた。トラックの暴走は止まらずその後も走って去っていってしまった。

今俺は体の外からグチャグチャに潰れてしまった俺の体を見ている。愛理は無事な様だ。俺の死体に駆け寄り絶叫して号泣している。
泣いてくれる人が居るっていうのは良いことだなぁと他人行儀に感じていた。
この後葬式とかもずっと眺めているのかな。でも結構時間掛かるしそれまで暇だな。
外国から家の両親は帰って来るのだろうか?とか色んな疑問が俺の頭を渦巻いた。いや、頭はグチャグチャに潰れてしまったんだけどな。
とその時目の前の風景が十字路から綺麗な草原に変わった。
そこには金髪緑眼の綺麗なローブを来た女性が立っていた。長い木の棒を持っている。何故木の棒?

「常磐慎吾ですね。待っていました。」
「はい。そうです。貴女は誰ですか?」
「私の名前は女神アイリス。異世界イスワルドの神です。貴方を迎えに来ました。」
「えっ。俺が死ぬのを分かっていたんですか?」
「そう取って貰っても結構です。本来は地獄か天国に案内すべきなのですが、両方とも現在死人が多くなってきてパンパンなのです。」
「へーそうなんですか。知らなかった。ところで俺はどうなるんですか。出来れば天国に行きたいです。」
「それは出来ない相談ですね。貴方は地球と異なる異世界…イスワルドに転生します。言語や文字は心配しなくて良いです。何か仕事をやりながら生きていきなさい。」
「そんな無茶な。死んだと思ったら全然知らない世界で生活を送れなんて…あっこれライトノベルで見たことがあります。異世界転生って奴ですよね。強力な能力とか武器とかを与えて貰えるんですよね。俺は何が貰えるんですか?」
「貴方にはこれを授けましょう。この木の棒がありますね。これが聖剣エクスリボルグです。使い方は敵をひっぱたいて追い払う事ですね。これがあれば大抵の荒事は乗り越えられる筈です。」
「えっただの一メートル位の木の棒ですよね。こんなんじゃモンスターとか冒険者と闘えませんよ!何かもっと別な物を下さいよ!」
「残念ながらそろそろお別れの時間です。エクスリボルグは使い込めば必ず貴方に答えてくれるでしょう。イスワルドでも穏やかに満ち足りた生活を送ってください。それではさらばです。」

目の前の景色が暗転する。俺はエクスリボルグを握りしめた。いきなり戦闘になるかもしれない。
景色が晴れてくるとそこは中世の町中だった。往来の真ん中に転生したようだ。客観的に言っておれは木の棒を持っておかしな格好をしている男だ。
回りから冷たい目線で見られている。

「…畜生。俺を見るなよ。まるで変質者みたいじゃないか。先にこの木の棒を捨てるか」

と、エクスリボルグを捨てようとしたところ…頭に音声が響き渡った。

「エクスリボルグは祝福されたアーティファクトです。それを捨てるなんてとんでもない。装備は絶命するまで解除されません。」
「おいおいおいおい。嘘だろ。鉄の剣も装備できないって事かよ。この先どうしろっていうんだ。お先真っ暗超えてるぞ!」

俺の異世界生活は始まったばかりだが前途多難だ。まずこの木の棒を手放す事が出来ない。背中に差して剣の様に扱う事は出来る様だが…
俺はこの先どうして良いか分からず途方にくれていた。

次の旅に続く

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

パワハラで会社を辞めた俺、スキル【万能造船】で自由な船旅に出る~現代知識とチート船で水上交易してたら、いつの間にか国家予算レベルの大金を稼い

☆ほしい
ファンタジー
過労とパワハラで心身ともに限界だった俺、佐伯湊(さえきみなと)は、ある日異世界に転移してしまった。神様から与えられたのは【万能造船】というユニークスキル。それは、設計図さえあれば、どんな船でも素材を消費して作り出せるという能力だった。 「もう誰にも縛られない、自由な生活を送るんだ」 そう決意した俺は、手始めに小さな川舟を作り、水上での生活をスタートさせる。前世の知識を活かして、この世界にはない調味料や保存食、便利な日用品を自作して港町で売ってみると、これがまさかの大当たり。 スキルで船をどんどん豪華客船並みに拡張し、快適な船上生活を送りながら、行く先々の港町で特産品を仕入れては別の町で売る。そんな気ままな水上交易を続けているうちに、俺の資産はいつの間にか小国の国家予算を軽く超えていた。 これは、社畜だった俺が、チートな船でのんびりスローライフを送りながら、世界一の商人になるまでの物語。

処理中です...