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夢幻の旅路二
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あの人を超えるために我が拳を鍛え続ける。彼方にこそ勝利あり。全ては我が師を乗り越えるため。私は何でもやった。どんな惨めな事でも、どれだけ厳しい訓練でも…自分を目的の為に鍛えるのが鍛練だと言うのなら私は鍛練の化身だった。生まれて十六年、鍛練らしい鍛練をした事は無かったが…私は今鍛練に明け暮れている。
親の仇であり、私の拳の師匠でもあるあの男を殺すために…
修行を始めてから二年経った。今私達はサイラスの町にいる。師匠がポツリと溢した。
「マツリ。宿命の幕を閉じよ。俺を討つ時が来たのだ。遠慮は要らぬ。鍛えぬいた拳で俺を討て!お前の両親を殺した仇敵だ。今ここで!」
「師匠には恩義があります。その身を討つ事は出来ませぬ。御命一つ賜ります。私の師匠として生き続けて下さい。」
「ならぬ!ならぬのだ。お前の両親を奪った悪魔の意識が日に日に強くなる。これ以上は押さえきれぬ。お前が討たなければ誰が討つ?その為に様々な苦痛に耐えてきたのであろう?今こそお前の拳覇を示す時だ。」
「であれば私が討つのみ…ですがただでは死んでくれますまい。全力の拳覇で争いましょう。ここは往来ですが…衆生を巻き込まぬ事。それが約束です。良いですね。」
「確かに決闘を承った。マツリよ。そなたの全力の拳覇で私を倒すが良い。行くぞ。」
師匠は気を練り始めた。防御に全ての気を回す。マツリに初撃で殺されないために。
「ハァッ!ハァッ~!」
マツリは微動だにしなかった。手刀をゆっくりと掲げる。そして熱いオーラを放ち始めた。
周囲には人だかりが出来た。二人の異様な対決に野次馬が集まったのだった。
次の瞬間マツリが消えた。そして師匠の目の前に躍り出る。その掲げていた手刀は師匠の胸を穿ちまるでバターを溶かすようにドロリと心臓を抜き去っていた。作り物でも偽物でもない本物の心臓だ。
マツリはそれを握りつぶした。防御の上からの致命の一撃を受けて師匠は笑っていた。
「よもや…ここまでの手練れに育つとはな。我が心天理念流はマツリ…お前が引き継ぐのだ。これでお前を継承者として認める事にする。ゴハッさらばだ。」
師匠は力無く倒れた。
「さようなら。師匠。父母の仇…確かに取らせて貰いました。心天理念流を広めるつもりはありません。ごめんなさいね。私の代で打ち止めです。」
そしてその場を立ち去ろうとするマツリ。
そこに慎吾とレンコがやって来た。
「ちょっと待ちなさい。ここに倒れてる人は君がやったのかい?」
「そうですよ。仇討ちです。何か問題ありますか?」
「如何に仇討ちとは言え白昼堂々人を殺して良い道理は無い。お縄に着きなさい。」
「断ると言ったらどうなるんですかぁ?」
「力付くで俺達が止める。最悪殺す事になるかもしれないな。」
「クスクス。面白そうです。私、今とってもドロドロに滾っていてこの高ぶりをぶつける相手を探していたんです。お兄さん達が相手をしてくれるんですねぇ。ニタァ」
俺はゾクリと怖気を覚えた。何度も人間と闘った事はあったがここまで底知れぬ気味の悪さを抱えている奴は珍しい。
「慎吾!エクスリボルグで気絶させろ。それで捕縛する。」
「了解!行くぞ!」
俺は地面を蹴って縮地した。女の目の前に躍り出る。女は手刀を構えていてスッとまるで素振りするようにこちらの胸に手刀をねじ込んできた。そして心臓を抜き取られる。
「ガハッゴハッ…嘘だろ。心臓を抜き取るなんて…危うく死ぬ所だったぜ。残念現人神は心臓くらい簡単に蘇生出来るんだ。食らえ!」
俺は心臓を抜き取られたままエクスリボルグで女を滅多打ちにした。自分の技が通用せず呆気に取られていた女はエクスリボルグをまともに受けて気絶した。
女を縄で縛って抱えた。体重は軽かった。こんな細身の身体からあんな恐ろしい技を繰り出すのかと驚いている。
野次馬達は決着が着いたので散っていった。
「よし。慎吾。この女は衛兵に着き出すぞ。」
「了解。中々の手練れだったみたいだけど、どうして往来で殺し合いなんかしていたんだろうな。そこら辺は衛兵の聴取で分かるんだろうけどさ。あー勿体ない。犯罪者にしとくのは勿体無い。若くてムチムチでピチピチギャルなのに。」
「あたしだって若くてムチムチでピチピチだろう。はいはい。その女の事は諦める!」
「パーティに加えるって言うのはどうかな?」
「生きていく年月が違うって言ってエリーとリズを追い出したのは誰だったっけ?あたしじゃないよね。」
「ほら。数年位は良いじゃないか。そしたら別に不死身でも不老不死でも関係無いしさ。」
「駄目なもんは駄目だ。いくら女に餓えているからってもう少し相手を選びなよ。往来で人を殺す様な奴だよ。寝首かかれて殺されるかもしれないぞ。まあお前は寝首かかれても死なないけどね。じゃあ分かったあたしとその子どちらを取るか選びなさい。」
「え…えーとえーとえーと…れ…レンコ?」
「何でそんなに迷うんだよ。どう考えても三百年一緒に居てくれるレンコさんを選ぶべきだろう!別に闘わずに二人でのんびりしっぽり生きてても良いわけだから。はい。相談終了。その女は衛兵に突き出す!」
「だーっ!分かったよ。分かりましたよ。俺はムチムチ、ピチピチギャルを諦める事を誓います。彼女を衛兵に突き出します!」
「分かれば宜しい。じゃあ行くよ。」
背負っていた女が口を開いた。
「さっきから聞いていたら人をペットか何かと勘違いしているようですね。私から貴方達のパーティに加わるのを正式に却下します。何が悲しくて殺せない奴の怪しいパーティに参加しなくてはいけないんですか。私は師匠を殺した罪で裁かれます。例え極刑だろうと文句は言いません。貴方達に逃がして貰う筋合いもありません。衛兵に私を渡しなさい。」
「あたしから一つ質問。何をそんなに悲観しているの?本当は殺しもやりたく無かったんじゃないの?」
「私は人生で楽しい事なんて無かったと思うぐらい不幸なんです。二年前…私の拳法の師匠の中の悪魔が暴走して両親を殺して、私に殺される為だけに拳法を教えて…自分の中の悪魔を押さえきれないから殺してくれって頼まれました。それでまた大切な人を失ったんです。私には拳しか残っていません。大事な物を全て取りこぼした拳しか残っていないんです。私は無価値です。もう良いから誰か私を殺してくださいよ。」
「そう…。貴方は大事な物を全て失ったのね。みだりに殺人を犯したりはしないでしょう。慎吾。ここで彼女を解放して。衛兵には突き出さない。その代わりにその拳で語って貰う。安心してあたしは不死の化物。どんな拳でも殺せないわ。貴方の拳を見せて頂戴。」
俺は女の拘束を解いた。地面に立つ女。
「私に不死殺しの技はありませんが、死力を尽くしましょう。心天理念流…マツリ行きます!」
マツリとレンコの距離は五メートル。マツリは踏み込み一気に間合いを詰める。
「喝破!」
正中線を射抜く三段突きをマツリが放つ。身体に力を込め真正面からレンコは受ける。
「まるで鋼を突いているみたいですね…。打ち続ける此方が壊れてしまう。それでも…!乗り越える!」
「浄土!」
下腹部への蹴りの連打。レンコは避けずに受け止めた。鋼の腹筋に打ち込んだ事でマツリの足が砕けた。
「ハァハァ…これが不死者。鍛練の先の化物。それでも私は…奥義で行きます!」
「渇愛!」
レンコの胸に向かって右手で手刀を叩き込む。心臓を貫く前にレンコの胸筋の万力の様な引き締めに止められた。レンコはマツリの腕を掴み引きずり出した。指がぐちゃぐちゃにひしゃげていた。
「これで終わりだな。荒削りだが素晴らしい拳打だった。これではもう人を殺す事は出来ないだろう。どこへでも行くが良い。さすらいの拳士よ。」
「あ…ありがとうございました。貴女のような武神と立ち会う事が出来て光栄です。さようなら…二度と会うことは無いでしょう。」
彼女はヨタヨタと去っていった。片足を引きずる様にして…
「おいおい。あの傷で行かせるのか?流石に酷くないか?」
「むっ。そうだね。施しを与えると侮辱になってしまうと思って我慢していたんだけど手足が砕けてるからなあ。治癒に何ヵ月掛かる事やら…よし…オホン。マツリ…。」
振り向く彼女。疑問がある顔をしている。
「どうしたのでしょうか?まだ私に何か?」
「その傷を癒す霊薬をあげよう。ほらこれだ。これを患部に掛けて良く馴染ませてみろ。そうすればどんな傷でも癒える。」
「私は負けたのです。生きて帰して貰えるだけでもありがたいのに…これ以上施しを受ける訳にはいきません。」
「俺達は不死者だから薬なんていらないんだ。君の傷は放っておいたら悪化する事はあれ完治するのは難しいだろう。大人しくここは受け取って貰えないか。」
「慎吾の言う通り。拳を交わした仲だ。遠慮はしなくて良いよ。さあ霊薬を身体にかけるんだ。ほら受け取って!」
「そこまで仰られるなら好意に甘えましょう。この薬を振り掛けるのですね。………ああ。痛みが引いていきます。砕けた骨も治癒している様です。本当にありがとうございました。これで私の体も大丈夫です。それではさらばです。」
そう言うとマツリは去っていった。
「真っ直ぐな拳の良い子だったな。」
「ああ。師匠を殺めてしまったが、その咎を受け止めて前向きに生きていくだろう。良い拳法使いだった。あたしもあんな頃があったかな…。」
「三千年前の話か?」
「もうちょっと昔さ。あたしは三千年前には既に完成していたからね。修行の日々は懐かしい物だ。八雲に無理難題を押し付けられて右往左往しながらなんとかこなしていたなあ。あれを神様になる試練とか言っていたけど絶対嘘だね。もっと弱い…そう慎吾みたいな奴でも神になれるんだもの。」
「その言い方は心外だな。俺はエクスリボルグの使い手としては最強だと思うぞ。まあ木の棒で殴って気絶させるか不死殺しの特効奥義を使うかの二択何だけどな。」
「毎日大木打ちを欠かさない事だね。そうすればもっと精進出来るよ。それこそ木の棒の打ち込みで敵を殺してしまうくらいにね。」
「あんまり殺傷能力は求めていないんだけどな。気絶だけで充分だ。」
「そうだね。さあ宿屋に帰ろう。今日も闘って疲れた。胸に穴空けられたし。お風呂入って食事して寝る。」
「賛成。俺も心臓えぐり出されて疲れたよ。宿屋に帰って休もう。」
俺達は宿屋に帰ると休息を取って後日に備えた。
次の旅に続く
親の仇であり、私の拳の師匠でもあるあの男を殺すために…
修行を始めてから二年経った。今私達はサイラスの町にいる。師匠がポツリと溢した。
「マツリ。宿命の幕を閉じよ。俺を討つ時が来たのだ。遠慮は要らぬ。鍛えぬいた拳で俺を討て!お前の両親を殺した仇敵だ。今ここで!」
「師匠には恩義があります。その身を討つ事は出来ませぬ。御命一つ賜ります。私の師匠として生き続けて下さい。」
「ならぬ!ならぬのだ。お前の両親を奪った悪魔の意識が日に日に強くなる。これ以上は押さえきれぬ。お前が討たなければ誰が討つ?その為に様々な苦痛に耐えてきたのであろう?今こそお前の拳覇を示す時だ。」
「であれば私が討つのみ…ですがただでは死んでくれますまい。全力の拳覇で争いましょう。ここは往来ですが…衆生を巻き込まぬ事。それが約束です。良いですね。」
「確かに決闘を承った。マツリよ。そなたの全力の拳覇で私を倒すが良い。行くぞ。」
師匠は気を練り始めた。防御に全ての気を回す。マツリに初撃で殺されないために。
「ハァッ!ハァッ~!」
マツリは微動だにしなかった。手刀をゆっくりと掲げる。そして熱いオーラを放ち始めた。
周囲には人だかりが出来た。二人の異様な対決に野次馬が集まったのだった。
次の瞬間マツリが消えた。そして師匠の目の前に躍り出る。その掲げていた手刀は師匠の胸を穿ちまるでバターを溶かすようにドロリと心臓を抜き去っていた。作り物でも偽物でもない本物の心臓だ。
マツリはそれを握りつぶした。防御の上からの致命の一撃を受けて師匠は笑っていた。
「よもや…ここまでの手練れに育つとはな。我が心天理念流はマツリ…お前が引き継ぐのだ。これでお前を継承者として認める事にする。ゴハッさらばだ。」
師匠は力無く倒れた。
「さようなら。師匠。父母の仇…確かに取らせて貰いました。心天理念流を広めるつもりはありません。ごめんなさいね。私の代で打ち止めです。」
そしてその場を立ち去ろうとするマツリ。
そこに慎吾とレンコがやって来た。
「ちょっと待ちなさい。ここに倒れてる人は君がやったのかい?」
「そうですよ。仇討ちです。何か問題ありますか?」
「如何に仇討ちとは言え白昼堂々人を殺して良い道理は無い。お縄に着きなさい。」
「断ると言ったらどうなるんですかぁ?」
「力付くで俺達が止める。最悪殺す事になるかもしれないな。」
「クスクス。面白そうです。私、今とってもドロドロに滾っていてこの高ぶりをぶつける相手を探していたんです。お兄さん達が相手をしてくれるんですねぇ。ニタァ」
俺はゾクリと怖気を覚えた。何度も人間と闘った事はあったがここまで底知れぬ気味の悪さを抱えている奴は珍しい。
「慎吾!エクスリボルグで気絶させろ。それで捕縛する。」
「了解!行くぞ!」
俺は地面を蹴って縮地した。女の目の前に躍り出る。女は手刀を構えていてスッとまるで素振りするようにこちらの胸に手刀をねじ込んできた。そして心臓を抜き取られる。
「ガハッゴハッ…嘘だろ。心臓を抜き取るなんて…危うく死ぬ所だったぜ。残念現人神は心臓くらい簡単に蘇生出来るんだ。食らえ!」
俺は心臓を抜き取られたままエクスリボルグで女を滅多打ちにした。自分の技が通用せず呆気に取られていた女はエクスリボルグをまともに受けて気絶した。
女を縄で縛って抱えた。体重は軽かった。こんな細身の身体からあんな恐ろしい技を繰り出すのかと驚いている。
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「よし。慎吾。この女は衛兵に着き出すぞ。」
「了解。中々の手練れだったみたいだけど、どうして往来で殺し合いなんかしていたんだろうな。そこら辺は衛兵の聴取で分かるんだろうけどさ。あー勿体ない。犯罪者にしとくのは勿体無い。若くてムチムチでピチピチギャルなのに。」
「あたしだって若くてムチムチでピチピチだろう。はいはい。その女の事は諦める!」
「パーティに加えるって言うのはどうかな?」
「生きていく年月が違うって言ってエリーとリズを追い出したのは誰だったっけ?あたしじゃないよね。」
「ほら。数年位は良いじゃないか。そしたら別に不死身でも不老不死でも関係無いしさ。」
「駄目なもんは駄目だ。いくら女に餓えているからってもう少し相手を選びなよ。往来で人を殺す様な奴だよ。寝首かかれて殺されるかもしれないぞ。まあお前は寝首かかれても死なないけどね。じゃあ分かったあたしとその子どちらを取るか選びなさい。」
「え…えーとえーとえーと…れ…レンコ?」
「何でそんなに迷うんだよ。どう考えても三百年一緒に居てくれるレンコさんを選ぶべきだろう!別に闘わずに二人でのんびりしっぽり生きてても良いわけだから。はい。相談終了。その女は衛兵に突き出す!」
「だーっ!分かったよ。分かりましたよ。俺はムチムチ、ピチピチギャルを諦める事を誓います。彼女を衛兵に突き出します!」
「分かれば宜しい。じゃあ行くよ。」
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「さっきから聞いていたら人をペットか何かと勘違いしているようですね。私から貴方達のパーティに加わるのを正式に却下します。何が悲しくて殺せない奴の怪しいパーティに参加しなくてはいけないんですか。私は師匠を殺した罪で裁かれます。例え極刑だろうと文句は言いません。貴方達に逃がして貰う筋合いもありません。衛兵に私を渡しなさい。」
「あたしから一つ質問。何をそんなに悲観しているの?本当は殺しもやりたく無かったんじゃないの?」
「私は人生で楽しい事なんて無かったと思うぐらい不幸なんです。二年前…私の拳法の師匠の中の悪魔が暴走して両親を殺して、私に殺される為だけに拳法を教えて…自分の中の悪魔を押さえきれないから殺してくれって頼まれました。それでまた大切な人を失ったんです。私には拳しか残っていません。大事な物を全て取りこぼした拳しか残っていないんです。私は無価値です。もう良いから誰か私を殺してくださいよ。」
「そう…。貴方は大事な物を全て失ったのね。みだりに殺人を犯したりはしないでしょう。慎吾。ここで彼女を解放して。衛兵には突き出さない。その代わりにその拳で語って貰う。安心してあたしは不死の化物。どんな拳でも殺せないわ。貴方の拳を見せて頂戴。」
俺は女の拘束を解いた。地面に立つ女。
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「喝破!」
正中線を射抜く三段突きをマツリが放つ。身体に力を込め真正面からレンコは受ける。
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「浄土!」
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「ハァハァ…これが不死者。鍛練の先の化物。それでも私は…奥義で行きます!」
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「あ…ありがとうございました。貴女のような武神と立ち会う事が出来て光栄です。さようなら…二度と会うことは無いでしょう。」
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「その言い方は心外だな。俺はエクスリボルグの使い手としては最強だと思うぞ。まあ木の棒で殴って気絶させるか不死殺しの特効奥義を使うかの二択何だけどな。」
「毎日大木打ちを欠かさない事だね。そうすればもっと精進出来るよ。それこそ木の棒の打ち込みで敵を殺してしまうくらいにね。」
「あんまり殺傷能力は求めていないんだけどな。気絶だけで充分だ。」
「そうだね。さあ宿屋に帰ろう。今日も闘って疲れた。胸に穴空けられたし。お風呂入って食事して寝る。」
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