えっ?木の棒で異世界を冒険するんですか?

八雲 全一

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夢幻の旅路四

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サイラスの町は火に包まれた。爆音と物が砕け散る音。宿屋で寝ていた俺達は音で深夜三時に叩き起こされた。

「何だ何だ!戦争でも始まったのかよ!」
「魔力が大気に充溢している。魔界の関係者と見て間違いないね。窓の外を見てごらん。慎吾。」

促された通り俺は窓の外を覗いて見た。そこには瓦礫と化した町と大砲を発射している列車?の様な物が写っていた。列車は魔法でレールを用意して町を縦横無尽に駆け回り全ての建物に砲撃を加えている。何なんだよ。畜生。何でサイラスの町にあんなのが居るんだ?

「状況は把握できたかな。あれは魔界列車デーモンライナー。ゲートの外側。魔界を走る戦争車両だよ。魔界での部族間の争いで利用されている物だ。何らかの理由で現世に召喚されて暴れまわっているんだろう。あれを止められるのはあたし達しかいない。行くよ。あたしが外側から攻撃を加える。その隙に慎吾は中に入って乗組員を制圧しろ。」
「わ…分かった。取り敢えずレンコ任せになるな。頼むぞ!」
「ああ…外に出よう。この宿屋もいつまで持つか分からないよ。」
「了解。」

俺達は宿屋の外に出た。木霊する絶叫。プンプン香る火薬の匂い。砲撃を受けて倒壊する家屋。そこはまさに戦場だった。

「行くぞ…無銘弓、錬成。オモイカネデバイス対象をサーチ。前方五百メートルを暴走中。進行方向はこちら。了承。矢に魔力を限界までチャージ。無銘神射用意。」

そして崩れる町を縫ってデーモンライナーが現れた。こちらの魔力の高ぶりを認識し危険だと判断すると全砲門をこちらに向けてきた。ぞっとする。列車にはこれでもかというぐらい魔力で強化された大砲が積まれていた。それが全て此方に向いている。

「怯えるな。慎吾。策はある。天理!五重結界!デーモンライナーの先頭車両に対して無銘神射!」

次の瞬間!大砲の砲弾と無銘神射が交錯した。
五重結界の前に大量の砲弾は無効化された。しかし結界は消え去った。次は無いだろう。
無銘神射は先頭車両に突き刺さり究極の霊爆を引き起こした。
先頭車両からは煙が上がり列車の動きは完全に停止した。今の内に乗り込まなくては。
俺はエクスリボルグを硬く握り締め扉が開いていたデーモンライナーの三号車に乗り込んだ。
中には下級悪魔が大勢座っていた。一瞬肝が冷えたがやるしかあるまい。俺はエクスリボルグを構えると下級悪魔の群れに突っ込んでいった。下級悪魔も跳ねながらこっちに突っ込んでくる。それを袈裟斬りで叩き潰す!袈裟斬り!袈裟斬り!袈裟斬り!直突き!切り上げ!袈裟斬り!袈裟斬り!袈裟斬り…
気付くと動く物は何も居なくなっていた。気絶半分死亡半分と言った所だろうか。
俺は二号車に進む。扉を開けるとその中には再び下級悪魔がぎっしり詰まっていた。糞!こんな奴らに構っている場合じゃないのに!早くしないとデーモンライナーがまた走り出してしまう!
俺は二号車の中を突っ切りながらエクスリボルグで下級悪魔の頭を叩いて行った。十匹は気絶させたと思う。二号車を渡りきった。
先頭車両まで後少しだ。一号車に入る。後ろの扉を落ちていた棒でロックした。これで二号車から一号車に入れまい。しかしそれは自分の逃げ道を潰したのと一緒だった。
一号車には一体だけ悪魔が居た。しかしどうも様子がおかしい。魔力が部屋に澄み渡っていた。こいつは並大抵の悪魔ではあるまい。エクスリボルグを構えてじわり近寄る。距離は五メートル。縮地で詰められるが…何か嫌な予感がする。こいつには近寄ってはいけない。致命的な何かを食らう気がする。不死なので死ぬわけでは無いが、死亡してから十分程再生に掛かる場合がある。それだけの時間があればどんなことでも出来てしまうだろう。だから死ぬことは許されない。
悪魔は小声で魔法を高速詠唱した。
「舌禍の海!原初の母!悪魔の菩提樹!青天の霹靂!夢幻の刃!狂乱の使徒!ヘルブレイザー!」
暗黒の刃が悪魔の前に浮かび上がり素早く此方に放たれた。エクスリボルグを構えて受け流す。
が…エクスリボルグを貫通し暗黒の刃は俺の両腕を穿った。切断される両腕。しまった!レンコと離れてしまった今即座に蘇生する方法が無い!そして悪魔の姿がふと消えた。痛いけどあれで殺るしかないな。秘奥義って奴だ。
悪魔は俺の目の前に現れると俺の心臓を穿った。

「待ってたぜ!目の前に現れるその時をよ!反射霊爆連携不死鳥蘇生!」

俺の身体は魔力を暴走させ爆発した。究極霊爆!しかしその場で身体が蘇生する。身体に刻み込んでいた魔法刻印…即時蘇生の不死鳥蘇生を発動させたのだ。最近レンコが用意したばかりの新しい武器だったのだが…非常用と言うこともあり使う機会は無いと思っていた。うん…転ばぬ先の杖と言う奴だな。
悪魔は反射霊爆を受けて即死した。これで一号車の敵も片付いた。
いよいよ先頭車両に向かう。…よし!意を決して先頭車両の扉を開けた。空間の置換魔法検出…。先頭車両の中は巨大な広間になっていた。そしてそこには一際大きい悪魔が居た。全長十メートル程。レンコによると悪魔はそれほど大きい個体が居ない種族と聞いていたが小さい巨人族クラスの大きさだ。だがエクスリボルグから逃げる事は出来ない。

「おい!デカブツ!好き勝手に暴れまわるのはここまでだ。良くも俺達の逗留している町を壊しやがったな。成敗してくれる!俺のエクスリボルグでな!」
「ブハハハハ!笑わせてくれるな!人間。その木の棒で何が出来ると言うのだ。ここで死に果てるが良い!輪廻の狭間で永久に後悔し続けろ!この魔界貴族ボスフォーラス様に歯向かった事をな。」
「お前みたいな子供の思考回路の貴族が居るもんかよ。魔界ではそのおつむで足りるかもしれないが…人間界ではもっと理性と言うものが必要なんだぜ。地獄でこの言葉を思い返すんだな!最初からフルスロットルで行くぞ!対星必殺奥義!億劫蓬莱神獄剣!」

どす黒い魔力がエクスリボルグを包み込む。俺は必殺の一撃を何度もボスフォーラスの足元に叩き込んだ。

「馬鹿め!そんなものきかにゃい…あふう…だめぇ!きちゃう!きがとおくなりゅう!」

ボスフォーラスは気持ち悪い幼児が喋るような言葉使いで自身の置かれた状況を語り始めた。そして十メートルの巨体が横たわる。地響きで転びそうになった。
俺はボスフォーラスの頭の前に行くと億劫蓬莱神獄剣をひたすら叩き込んだ。何度もビクビクと痙攣するボスフォーラス。これでしばらくは満足に身動き取れまい。命までは取らないでやる。いやもしかしたら打ち所が悪くて死んでるかもしれないが。とにかくこれでデーモンライナーは制圧完了。外に出よう。俺は魔法で拡張された先頭車両から出ると一号車の扉を内側から開け外に出た。手を振ってレンコに知らせる。

「おおーい。レンコ!中に居る奴は倒したぞ。これでもう操縦は出来ない筈だ。デーモンライナーを破壊しても良いぞ!」
「了解!動いていると狙いを外すかもしれないから助かったよ。ありがとう!慎吾!そこどいてて巻き込まれるよ!…全力で行く!よくもよくもサイラスの町を…あたしの居場所を奪ったな!」

双竜覇閃撃!梵天覇閃光!ブラフマーストラ!
二重の極大レーザー光線、梵天の加護を受けた究極の閃光、雷を帯びた必殺の光球…
デーモンライナーにレンコの技が叩き込まれる。が、流石に頑丈な様で大破に止まっている。

「これでもまだ食い足りないか…良いだろう
。ニタリ…嫦娥様!創世級のアーティファクト!本霊でお願いします。」
「バカモン!寝てるところ叩き起こしといてそれかい!今度信仰の証として宝石山ほど貰おうかいの?まあ平然と本物の宝石を錬成しそうだから止めとくかい。レンコがワシを頼むとは珍しいしアーティファクト位なら貸してやるかのう。どうせ人世の危機なんやろ!ほら創世級アーティファクト…ストームブリンガーの本霊や!この星の開闢から剣として存在していたまじもんのアーティファクトや。受け取れ!壊すんや無いぞ!使い終わったら自動で消滅するからの。」
「ありがとう!嫦娥様!流石です。」

目の前に漆黒の剣が天から振ってきた。刀身を透明な雷光が常時包み込んでいる。剣とは何か…その答えがこの剣なのだろう。
それをレンコが握る。
魔力をストームブリンガーに流し込み魔力砲として指向性を持たせて利用する。

「真名解放!ストームブリンガー!真理!極光漆黒破神砲!発射!」

ストームブリンガーから輻射されたレンコの魔力が黒い極光として発射される。その威力は神さえ打ち破る。世界の根源の理の一撃だ。
極光漆黒破神砲を受けてデーモンライナーは塵まで分解された。もうその砲門が人々を貫く事は無い。
ストームブリンガーは役目を終え…虹色の淡い光を放ち消えていった。

俺はレンコに近寄る。

「これでサイラスの町を脅かした魔界列車デーモンライナーは消滅したのか?」
「ああ。これでお仕舞いだ。だけどサイラスの町も灰塵に帰してしまった。何人死んだかも分からない。これが神の罰としての魔界の侵攻だとしてもあたしは認める事は出来ない。何度でも抗ってやる。」
「まだこの町に残るのか?」
「あたしは町の復興にはなんの役にも立たないさ。慎吾も同じだろう。サイラスの町みたいな事にならないように他の町を見守ろう。この町がまた立ち上がるのかこのまま滅び去るのかはあたし達の決める事じゃない。あたし達は火の粉を払う事しか出来ないんだ。燃えてしまった家を元に戻す事は出来ない。」
「そうだな。俺達は目の前の敵を払う事しか出来ない。後は残った人々に掛けるしか無いな。またいつかサイラスの町に戻ってこよう。…夜明けだ。このまま町を発つか。」
「ああ。そうしよう。あたしは無力だ。この朝焼けに燃えるサイラスの町を忘れない。忘れるものか。さらばだ。我が無力の証サイラスの町よ。あたしの心の中で燃え続けよ。護れなかった悔いの証として。」
「俺は信じたい。サイラスの町が復興する事を…立ち上がる人々の強さを!このイスワルドの希望として信じ続けよう。さらばだ。我等が希望の証サイラスの町よ。再び起こり育み慈しみ人々の寄る辺となるが良い。」
俺達はまた宛の無い旅に出た。ただ人の世を護る為に…護れなかった事に苦しみながら…再び芽が出る事を祈りながら。

次の旅に続く
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