異世界転生録~アヴェンジャー~

八雲 全一

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ラドラテックス近郊の街道までやって来た。目的地は後少しで到着する。
しかしアンジェリカもエクスさえも疲労の色が見えていた。一ヶ月も歩き通したのだから仕方がないと思う。
当然俺も疲れている。足は痛いし、普通に歩いているだけなのに息が上がってくる事もある。
だがそれでも後もう少しの辛抱だと俺は思っていた。
皆口をつぐんで歩いている。
街道は整備された道だ。結界が張られているので危険な魔獣や妖怪は出現しない。
それでも脅威に出会う事はある。俺達にも脅威が差し迫っていた。
そう…前方に何かが見えていた。…?人の集団か?
「紫音…あれ敵だと思うよ。ボクの勘によるとあれは盗賊の集団だね。戦闘準備に入ろうか…向こうに蜂の巣にされる前にね。」
「何だって…冒険者や商人の集団じゃないのか?…まあアンジェリカの言うことだ。信憑性は間違いないだろう…。エクス!聞いてるか?戦闘準備だ。エクスカリバーに憑依してくれ。」
「了解したわ。紫音。盗賊なら遠慮なく闘えるわね。貴方の技の冴えで全員蹴散らしてしまいなさい。さあ憑依するわよ。」
そう言うとエクスはエクスカリバーに憑依した。
これで技を繰り出すのに念じるだけで済むのだ。
盗賊?の集団は前方三百メートル程先に居る。全員で二十人程だろうか…?考えていても仕方がない。
俺とアンジェリカは盗賊に向かって駆け出した。
盗賊の方からは発砲する音が断続的に聞こえてきた。やはり敵対してきたか…
俺とアンジェリカはジグザグに走り敵の狙いを反らした。銃撃はこれで何とか無効化出来たようだ。
走る…エクスカリバーを振りかざしながら切り込みに行く。アンジェリカと俺はほぼ同タイミングで盗賊の眼前に縮地で躍り出た。
盗賊達はこちらに銃を向けて乱射してくる。エクスカリバーで剣舞を行い無効化する。といっても何発かは被弾してしまった。血が腹から吹き出したが…お構い無しで攻撃に移る。
目の前に盗賊は五人いた。正面で正対している。無双三連を使う。頭の中で無双三連を思い描く。それをエクスが処理し技が実行される。
盗賊その一を袈裟斬りで切り殺した。返す刀で盗賊その二を切り上げで心臓を穿った。そのままの勢いを利用し盗賊その三を直突で首を弾き飛ばした。
あまりの展開に残りの盗賊は腰を抜かしてしまっている。
俺は残りの二人の盗賊に近寄ると袈裟斬りで斬殺した。
いくら銃で武装していると言っても自分の弱い心は覆い隠す事は出来ないのだ。
アンジェリカの方をチラリと見た。
彼女も五人程相手取っているようだ。
朧村正を構え、三連続の直突を盗賊に放った。全ての攻撃が心臓をえぐり、盗賊は卒倒した。
次のターゲットにゆっくりと迫るアンジェリカ。何て恐ろしい光景なのだろうか?盗賊その二の目の前に立つと居合い抜きで首を撥ね飛ばした。
他の盗賊は戦意を完全に喪失しているようだ。
例え戦意を喪失したと言えどまだ十人程やる気がある奴らが残っているのだ。気は抜けない。
俺は自分の戦場に戻った。死体の海に匍匐しながらターゲットを探す。
ああ。五十メートル程先にこちらを探している一団…十人程が居る。
先程殺した連中が先見部隊だったのだろう。俺は屈んだままエクスカリバーを強く握り、残りの十人にすり寄っていった。
三十メートル…まだ気付かれない。…十メートル…ここまで近寄ってもまだ気付かれない。奴らの視線は上過ぎる。街道はまったく遮蔽物が無いが身を屈めていればここまで容易に接近できるとは思っていなかった。
先程撃たれた傷が治癒。傷口から銃弾がポロポロとこぼれ出た。
よし!一気に決めるぞ。俺は奴らの裏手に周り、僅か一メートルの距離まで詰めた。
エクスカリバー及び霊刃伸長展開!
回転閃刃!エクスカリバーと霊刃を使った回転切りが纏まっていた敵を切り刻んだ。
これで全員死んだか…いや…まだ生き残りが居る!
目の前の死体の山の中からのそりと立ち上がる男が居た。顔に大きく三と書かれた刺青を彫っていたが…その刺青はジワジワと二という数字に変わっていた。
エクスがエクスカリバーから語りかけてくる。
「紫音!気を付けなさい。彼は不死の呪いを受けているわ。少なくとも後一回は殺しても死なないはずよ。一気に攻撃を叩き込んで勝負を決めなさい。分かった?」
了解と言いかけたその瞬間…刺青の男は二丁拳銃を連射してきた。とっさにエクスカリバーで顔を庇ったが…奴の狙いは違った。腹に弾丸をしこたま喰らってしまった。
「グハァハァ…やるじゃあないか。アンタ強いな。」
刺青の男も口を開く。
「アンタもな。仲間が一気にやられちまった。これでも名の知れた盗賊団だったんだがな。イリスの盗賊団って言ってな。まあそんなことは良い。次でお仕舞いだ。地獄に落ちな。」
そう言うとイリスは拳銃に弾を装填し始めた。
今がチャンスだ…動け俺の体…弾丸をはじくにはあれしかない。
「エクスカリバー!究極霊閃モード突入!オーバーロード!」
俺の体が一人でに動き出す目の前のイリス相手に上段に構えを取り、霊気のチャージを始めた。
「なんだそれは?そんなもので俺が殺せると思うのか?また弾丸を今度は頭にぶちこんでやるぜ。死にな!」
イリスはそう言うとまた拳銃を連射し始めた…が、全ての弾丸が俺の体から溢れでる虹色のオーラの前に弾かれた。
「畜生!何なんだよ。何で俺の銃が効かねえんだ。こんな化物が居たなんてな。冗談じゃない。俺は逃げる…ガバァ!」
縮地してやって来たアンジェリカがイリスを後ろから貫いた。三連続の直突だ。全ての攻撃が心臓を貫いている。イリスの顔の刺青が残り一になった。次の攻撃で殺せる。
「紫音!中々ピンチ見たいじゃないか。良いよ。ボクごとこの男をアルティメットスパークで撃ち抜くんだ。分かったね。遠慮は要らないさ。ボクなら大丈夫。」
「糞…ガハッガハッ!離せこのアマ!一緒に死にてえのか!俺はこんなところで終わらねえぞ!畜生!」
「恩に着るぜ。アンジェリカ!これで決めさせてもらう!行っけぇ!アルティメットスパーク!」
俺は霊気を極限までチャージしたエクスカリバーを上段から真下に振り下ろした。虹色の閃光がイリスとアンジェリカを包み滅ぼした。
イリスの顔の刺青は消え、体は爆散して死亡した。不死殺しを達成したのだ。
その先にいるアンジェリカはイリスの体でガードした事とアルティメットスパークの出力を途中から落としたために大事には至らなかったはずだが、彼女は地面に突っ伏して動かなかった。
アンジェリカに声を掛ける。
「おい!しっかりしろ。アンジェリカ。何処か痛いのか?起きてくれ。おーい!」
アンジェリカは意識を取り戻した。
「いててて…アルティメットスパークを喰らうなんて無茶やるんじゃなかったな。さっきのアイツ…何なのさ?心臓を三回貫いてもまだ生きていたみたいだけど?フェニックス?」
「それはエクスから解説してもらおう。エクス…戦闘は終わったぞ。エクスカリバーの中から出てくれ。」
そう声を掛けるとエクスはエクスカリバーの中から出てきた。
「任せなさい。さっきの男…イリスと言ったかしら彼には悪魔との取引で与えられるというか呪われるというべき…不死の刻印がなされていたわ。このノースメリカン大陸の何処かに悪魔が存在しているのでしょう。そして死後の魂と引き換えにこんな能力を与えているのよ。天性の才覚でも何でもないから不死には回数制限が着いていたみたいね。それでも強力な能力だから盗賊団のボスが勤まっていたようね。」
「なるほどねー。聖剣の鞘みたいな後天的なギフトとは違った呪いだったんだね。他の盗賊団はただの人間だったみたいだけど。ところで紫音…腹から大量に血が出ていたけどもう大丈夫なの?」
「ああ…心配かけたな。鞘の効能で傷は塞がった。弾も全部出てきたよ。本当にエクスカリバーの鞘は便利だ。即死しない限りは不死と何も変わらない。」
「私も心配していたわ。傷が塞がって良かったわ。痛みを消せないのは難点だけれど、痛みを感じずひたすら傷が蘇生する戦士なんてゾンビと変わらないものね。」
「そうだな。痛いのは生きている証拠だ。正直一定のレベルを越えてくると痛いというより熱いとか寒いに変わってくるのが怖い所だ。」
俺達は倒した盗賊団からめぼしい物を奪う事にした。あまり死者を辱しめたくは無いものだが旅には金が必要だ。
まずは盗賊達の持っている銃を回収する。量産品のアサルトライフルだがこれだけでも結構良い金になるのだ。
さらに探っていく…死体の中に大きいずだ袋を持っている者がいた。その中を漁ってみる。…当たりだ!
中には金貨や宝石が入っていた。盗賊団の貴重品を管理していたのだろう。これも頂いていく。
…よし…こんな所だろう。結構な収穫だった。漁った死体は全員目を閉じさせてやった。せめてもの手向けだ。葬る事は出来ないがこの位はしてやりたい。
「よし。この位にしようか。中々金になるぞ。」
「ボク達お金持ちに一歩近づいたね。やったぁ。」
「といってもお金の使い道は宿屋と食料位じゃない。あまりお金を持っていても使い道に困るわ。それにそれで変な奴等に狙われても困るしね。」
「エクス…大丈夫さ。ボクら位の小金持ちを一々狙ったりはしないと思うよ。それよりももし朧村正以上の掘り出し物があったら是非購入しないといけないからね。うんうん。その時に大変な出費になるだろう。」
「朧村正が喋れたら泣いてると思うわよ。貴女の愛刀なんだから…簡単に手放すとは言わないで頂戴。武器にも魂が宿っているのよ。私みたいに喋れる武器以外にもね。そんな雑な扱いだと何時か朧村正に噛みつかれるわよ。」
「エクス…冗談だよ。冗談。ボクが朧村正を手離す訳無いじゃないか。武器に魂があったらボクに使ってもらって本当にありがとうございます…とか言いそうじゃないかな。まあこれからも大事に使っていくよ。お金の話に戻るけど多分美味しい食べ物を食べるようにするとかが当面のお金の使い道じゃない?」
「それは良いわね。良い加減サヴァ缶詰も飽きてきた所だわ。もっと他の良い保存食に切り替えたいわね。」
「えー。サヴァ缶詰はあんなに美味しいのにそれでもダメなのかい?ボクは一生サヴァ缶詰でも良いんだけどな。」
俺は黙って聞いていたが会話に加わる。
「俺もしばらくサヴァ缶詰は勘弁だな。ラドラテックスに着いたら別の保存食に買い換えよう。よし…そろそろ行くか。ラドラテックスの町ももう近い。」
俺達は残り少ないラドラテックスの町への街道を歩いていった。
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