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現在俺達は黒仮面の男の住み家と思われる地球の東京…赤坂のマンションの一室で息を潜めて待っている。
奴は只今外出中らしい。新たな地球産の贄を探しているのだろうか?といっても暗黒教団は実質解体されたような物だ。
俺達の旅で全てのノースメリカンの暗黒教団の拠点は潰したのだ。後にはペンペン草も生えていない。
エクスはエクスカリバーに憑依したままだが話し掛けてきた。
「念願の黒仮面の男との闘いね。気が逸っているんじゃないかしら?紫音。最後の闘いよ。悔いの無いように備えなさい。恐らく一筋縄では行かない相手よ。」
「ありがとう。エクス。分かっているさ。しかしこの部屋で待っているだけっていうのもな。あいつが何処に行ったか痕跡でも探してみるか。」
「それもそうね。今は居間にいるでしょう?この先にある寝室から強力な魔力反応が出ているわ。そこを調べてみましょう。」
「そこを調べれば黒仮面の男?が何処に居るのか分かるのかなあ。ボクには魔術絡みの事はからっきしだから分からないな。まあ後ろで見守らせてもらうよ。行こう。紫音、エクス。」
アンジェリカも一緒になって寝室に踏み込んだ。
そこにはベッドと机があるだけの殺風景な部屋だった。
!…エクスは何かに気がついたようだ。
「この部屋でゼオン連結システムを用いた転移が行われた事は間違いないわね。魔力の残り香が私達の使ったゼオン連結システムと一緒だもの。待って頂戴。転移したのは三時間程前ね。そろそろ戻ってきてもおかしくないわ…紫音、アンジェリカ…警戒しなさい。」
「フフン…ボクの朧村正を叩き込んでやる。一撃で粉砕して見せるとも!」
「良い心意気だ。アンジェリカ。俺もエクスカリバーの一閃で滅ぼしてやる。茜の敵だ。容赦はしない。」
俺達は寝室の角に散って黒仮面の男が帰ってくるのをじいっと待っていた。
ドクンドクンと嫌な脈が体を巡る。緊張で胃が痛くなる。会ってもいない黒仮面の男のプレッシャーに当てられているのだ。アンジェリカの方を見る。
フゥーと浅い呼吸をするアンジェリカ。闘う前から意識が高揚しているのだろう。ここまで思い詰めたアンジェリカは初めて見るかもしれない。
と…考えを巡らせていたが目の前の空間がグニャリと歪んだ。…奴が来る。茜を殺した黒仮面の男が!俺はエクスカリバーを固く握りしめた。ここまで良くこれたと自分でも思う。だが闘いに勝たなければならない。
茜の仇を討つ為にも、そして俺が俺であり続けるためにも!
私はエクスカリバーの中で彼を見守っていた。こうして紫音を見ていると最初に出会った頃の事を思い出す。お互いが信頼に欠けていたけれど、何とか前に進む事が出来たあの時。懐かしい…遠い記憶。それからはお互いに信頼し、幾多の敵を討ち滅ぼしてきた。それでも最初に交わした誓いは変わらない。紫音の妹…茜を殺した黒仮面の男に鉄槌を…煮えたぎる様な報復を浴びせかけるのだ。その為に紫音は今日まで歯を食い縛って闘ってきたのだ。…今日全てが終わる。紫音が敗れても黒仮面の男を討ったとしても…ようやく彼は宿業から解放されるのだ。私はエクスカリバーから力を貸すことしか出来ないけれど、最後まで紫音の剣として自分を張り通す事にする。どうかこの闘いに悔いが残りませんように。
ボクは思えば逃げているばかりだった。父と母を捨てゲーニアから逃げ出し放浪の剣士としてその場その場を生きることしか考えていなかった。だけど紫音とエクスに出会って変わったんだ。初めて目標を持った旅になった。邪悪な暗黒教団を狩る旅…そして黒仮面の男への報復。ボクは目的がしっかりありどんな状況でも足掻く紫音が輝いて見えた。彼の旅路が終わってもボクの旅はまだまだ続く。けれど彼にとって最後の闘いでは剣として彼の側に居るとしよう。朧村正抜刀!
空間の歪みから男が姿を表した。黒いマントに黒仮面の男。紫音達が探していた茜の仇の男だ。その傍らには新しい犠牲者と思われる血塗れの女が居た。
紫音達は立ち上がると剣を黒仮面の男に向けた。
男はゆっくりと口を開いた。
「おやおや…君達が我々暗黒教団を滅ぼしたという噂の剣聖かな?物騒じゃないか。私も殺すつもりか?もう暗黒教団は滅びた。私はその絞りカスに過ぎないぞ。まあ殺ると言うなら相手にならんでもないが。」
「黙れ。俺はお前に妹を殺された。その報復だけは暗黒教団だろうがなんだろうが関係ない。お前を必ず殺す!黒仮面の男!」
「ボクも直接恨みがある訳じゃないけど…人をゴミみたいに扱うお前らには怒り心頭なんだ。地球とイスワルドの為にここで死んでくれ!」
エクスカリバーの中でエクスが吼える。
「黒仮面の男!貴方を探すまで長かったわ。まるで永劫の時の回廊をさ迷った気分よ。アイリス様に誓って貴方はここで終わりよ。死んで詫び続けなさい!貴方の殺した全ての贄にね!」
黒仮面の男は静かに首を傾げて答えた。
「フム…君達にはまるで見覚えがない。妹を殺した?そんなことはとっくに忘れてしまっていたよ。まあ逆恨みでも何でも良い。ここが終点だ。行くぞ。私の名前だけ覚えて逝くと良い。我が名はザイラス。暗黒教団を統べる者だ。」
そう言うとザイラスは懐から瞬きする間に二挺のリボルバーを取り出した。それは人間が扱うには余りに大きすぎる得物だった。
そして寝室の空間がグニャリと歪んだ。勝手にゼオン連結システムが稼働したようだ。
次元の狭間と言える異空間にザイラスと紫音達は転移していた。
紫音とアンジェリカはほぼ同じ場所にワープアウトした。そこから五十メートルは離れた所にザイラスは居る。
「アンジェリカ…落ち着け。縮地を使って距離を詰めて一気に必殺技で片付けるぞ。」
「オーケー。紫音。吼えよ!朧村正!」
高音の咆哮が朧村正から上がる。これで戦闘態勢に入った。そして縮地する瞬間。
ザイラスは二挺のリボルバーを連射してきた。二人ともまともに喰らってしまう。
「ガハァガハッガハッ畜生。右腕と腹と左足をやられた。しばらく動けないぞ。」
アンジェリカは卒倒していた。かろうじて口が聞けるようだ。
「オェッガブァ…ハァハァ。ゴメン。紫音。胸と腹にしこたま喰らっちゃったよ。もう立ち上がる余力は無い。すまない。ガハッハァハァ。」
鞘をアンジェリカに渡すと俺は無理矢理剣舞の姿勢に入った。全身を激痛が走る…が気にしている場合じゃない。このままじゃ全滅だ。
ザイラスはニコリと笑みを浮かべて話し掛けてきた。
「フフ…暗黒教団潰しと言えど所詮この程度か。他愛も無いな。さて幕を閉じるとしよう。ケルベロス…蹂躙しろ!」
そうザイラスが唱えるとリボルバーから強烈な魔力放出が行われた。大技を使う気だ。
二挺のリボルバーを正面に構え、技を解放する。
「エクセキューションシュート!フルドライブ!」
ゴアッと言う音を轟かせて赤い光の束が此方に向かってくる。
対抗策を撃たなくては…俺は動かぬ体に鞭を打ち、必殺奥義の準備に入った。
「エクスハァハァカリバー!究極霊閃モード…ゲバァ…グフッ突入!オーバーロード!ゲフゲフッ!アルティメットスパーク!」
虹色の極光がザイラスに向かって放たれた。ケルベロスのエクセキューションシュートと真っ向からぶつかる。鬩ぎ合いながら光は増していく。そしてかききえた。アルティメットスパークとエクセキューションシュートは全くの互角であった。
ザイラスは信じられないと言う様子だ。
「まさか私のケルベロスと互角に闘える武器があるなんてね。驚きだ。だが其方は死に体の様だ。通常の射撃で事足りる。死んでもらおうか。」
チャキッとケルベロスを構えるザイラス。
彼はあることに気付いた。紫音の横で這いつくばっていた。アンジェリカの姿が無い事を…
アンジェリカは高速で縮地を繰り返しザイラスの後ろに跳んだ。そのままザイラスの首を横一文字に切り裂きはねた。
「ヘヘン。油断しすぎだ。ザイラスさんよ。片付いたよ。紫音!見てた見てた?ボクが仕留めたんだ!ねえ…」
ガガンという発射音。ザイラスの体がくるりと振り返りアンジェリカにケルベロスの弾を叩き込んでいた。腹部に命中。着弾の衝撃で後ろに吹っ飛ばされるアンジェリカ。
「嘘でしょ?首を落としたのに動いているなんて。グハァハァハァ。」
ザイラスはゆっくりと落ちていた首を拾うと切断部に乗せた。周辺の肉がゾワリと震え上がり首は癒着した。
「私はこの身に無銘の暗黒神の加護を何重にも得ていてな。ちょっとやそっとの事じゃ死なんのだ。残念だったな。お嬢さん。」
「紫音…聞こえている?ザイラスの奴は今神に等しい存在に成っているわ。奴を倒すには神核…コアを撃ち抜く必要があるわ。体の中の何処かを正確に射抜くか…飽和攻撃で倒しきる他無いわね。一度…たった一度のチャンスよ。今あいつの意識は後ろに居るアンジェリカに向かっている。その間にあいつに接近して片付けなさい。これが恐らく最後の勝機」
「分かった。鞘による回復をしている暇は無いな。ゲバァ…ハァハァ。縮地!」
俺は縮地でザイラスの目の前に飛び込んだ。奴は後ろから正面に振り返る所だった。たった一つのチャンスだ。生かし躍り狂う。
ザイラスに夢幻の連撃を叩き込む。
袈裟斬り、直突、雷閃、無双三連、無双一閃、神武一閃…今まで習得した技をひたすらに叩き込みまくる。ザイラスはあまりの早い連撃にガードをする事すら出来なかった。
これぞエクスカリバー流剣術奥義!夢幻泡影!
技を叩き込み続けるとザイラスの体は破裂し中から核が露出した。その核を霊力を込めた太刀で一閃する。
そしてザイラスの体は一欠片の肉片も残さず霧散した。
終わったのだ。長かった復讐の旅は今ここに完結した。
ザイラスの後ろで倒れているアンジェリカに鞘を手渡す。数分程して彼女は全快したようだった。
「終わったよ。茜の仇は討った。これで全て終わりだ。俺の旅路はここまでかもしれないな。」
「紫音。しっかりしなよ。惚けるのは良いけど、旅はまだ終わりじゃないだろ。ボクの両親をゲーニアから助けてくれるんじゃなかったのかい?」
「そうだったな。アンジェリカ。ついつい忘れてたよ。ただ少しやすませてくれ。俺は疲れてしまったんだ。」
エクスカリバーをエクスが出てきた。
「終ったのね。永かったわね。紫音。感傷に浸りたいのは山々だけど、この空間はザイラスのゼオン連結システムで産み出されたもの。主が死んだ今何処かに射出されるわ。身構えて!」
緑色のゲートが広がると俺達は時空の狭間から吐き出された。しかしかろうじて自分達のゼオン連結システムにより行き先が選択出来た。
地球の行き先は選択できない。暗黒教団の首魁ザイラスが死んだからだろうか?
仕方無いのでノースメリカン大陸を移転場所に設定した。
…ゲートが解放され移転が始まる。暫くすると目の前には見知らぬ森が広がっていた。
ノースメリカン大陸に戻ってきたのだ。と言っても大陸の何処かは分からないのだが。
「また戻ってきちまったな。ノースメリカン大陸に。地球で死んでも刺し違えると誓ったってのに。生き延びちまった。茜…お兄ちゃんやったよ。お前の仇を討ったよ。」
森の奥から懐かしい顔が姿を表した。いつか精神生命体になったという茜だった。
「うワッちょっとこれお化けかな。透けてて足がないよ。ボク初めて見たよ。」
「紫音の妹。茜さんの霊体ね。ザイラスを倒したことによって束縛から解放されたんでしょう。二人にしてあげましょう?アンジェリカ。」
「了解。了解。」
二人は俺達から離れていった。ここには茜と俺しか居ない。
「あの時出会った茜なのか?」
「そうね。久しぶりね。兄さん。ついに暗黒教団の首魁を討ったのね。驚いたわ。本当にそこまで出来るなんてね。なんというか…ありがとう。肉の器からは解放されていたけど、暗黒教団があることによって霊体も影響を受けていたのよ。だから一回しか姿を現せなかったってわけ。」
「そうだったのか。今は天国に居るのか?」
「そうね。天界にいるわ。お陰様で毎日ノンビリ暮らしてるの。兄さんがいつか上がってくるまでずっと見守っているわ。でももう現世にいるのは限界ね。さようなら兄さん。少しだけだけど喋れて良かったわ。」
「ああ…逝かないでくれ茜。もっとお前と話して居たかった。もっとずっと一緒に生きていたかったよ。…ううっ…でももう痛くも苦しくも無いんだよな。それなら良いんだ。さようなら。茜。またいつか会おう。それまでの間はお別れだ。」
茜は昇天して行った。その様子を見守っていたエクスとアンジェリカだったが…完全に昇天してから十分程経って紫音に話し掛けた。
「妹さん…逝ってしまったわね。紫音。仕方がないのよ。所詮生ある人間と霊体では住む世界が違うのよ。今は天界で安らかに暮らせる事を祈りましょう。」
「そうだな。きっとあいつはずっと幸せに天界で過ごすだろう。それが分かれば良いさ。」
「あれが妹さんだったんだね。ボク初めは驚いちゃったけど…何か優しそうな女の子だったね。天界でゆっくりしてくれると良いんだけどね。まあボク達が天界に着いた時には幾らでも話せるようになるさ。」
「ああ…その時までは精一杯生きるよ。誓おう。」
エクスとアンジェリカを見た。口を開く。
「二人とも本当にここまで良く着いてきてくれたな。ありがとう。新しい冒険の前にほんの少しだけ休ませてくれ。疲れてしまったんだ。そうしたらまた立ち上がって歩けるから。」
「紫音…本当にお疲れ様。良いわ。好きなだけ休みなさい。そしてまたいつの日にか立ち上がって旅立ちましょう。もう貴方を縛る暗黒教団は居ないわ。」
「ボクも少し休みたかったところさ。まあ次の旅の目標は決まっているけど、暫くのんびりしよう。今になって焦ってもどうにも成らない内容だからね。紫音…本当に君は良く頑張ったよ。このイスワルドに巣食う悪の暗黒教団を完全に滅ぼしたんだ。これ以上の事は無いよ。」
二人の言葉を聞くと俺は森の中で寝転んだ。
「ここで休ませてくれ。…お休み。またな。皆。」
「もうこんな所で寝ちゃうなんてね。よっぽど疲れていたのね。まあ良いわ。私も隣で寝ましょう。アンジェリカはどうするの?」
「魔物の気配はまるで感じないし、流石に襲撃を受ければ気付くからね。ボクは半分眠って半分起きておくよ。ゆっくりお休み。エクス、紫音。」
「そう…それじゃあお休みなさい。アンジェリカ。」
これにてノースメリカンを駆けた一人の復讐者とその仲間の話は終わる。だが彼らの冒険はまだまだ続いていく。どうか貴方にも彼らの行く末を見守って頂きたい。それでは次の冒険までさようなら。
see you next adventure!
奴は只今外出中らしい。新たな地球産の贄を探しているのだろうか?といっても暗黒教団は実質解体されたような物だ。
俺達の旅で全てのノースメリカンの暗黒教団の拠点は潰したのだ。後にはペンペン草も生えていない。
エクスはエクスカリバーに憑依したままだが話し掛けてきた。
「念願の黒仮面の男との闘いね。気が逸っているんじゃないかしら?紫音。最後の闘いよ。悔いの無いように備えなさい。恐らく一筋縄では行かない相手よ。」
「ありがとう。エクス。分かっているさ。しかしこの部屋で待っているだけっていうのもな。あいつが何処に行ったか痕跡でも探してみるか。」
「それもそうね。今は居間にいるでしょう?この先にある寝室から強力な魔力反応が出ているわ。そこを調べてみましょう。」
「そこを調べれば黒仮面の男?が何処に居るのか分かるのかなあ。ボクには魔術絡みの事はからっきしだから分からないな。まあ後ろで見守らせてもらうよ。行こう。紫音、エクス。」
アンジェリカも一緒になって寝室に踏み込んだ。
そこにはベッドと机があるだけの殺風景な部屋だった。
!…エクスは何かに気がついたようだ。
「この部屋でゼオン連結システムを用いた転移が行われた事は間違いないわね。魔力の残り香が私達の使ったゼオン連結システムと一緒だもの。待って頂戴。転移したのは三時間程前ね。そろそろ戻ってきてもおかしくないわ…紫音、アンジェリカ…警戒しなさい。」
「フフン…ボクの朧村正を叩き込んでやる。一撃で粉砕して見せるとも!」
「良い心意気だ。アンジェリカ。俺もエクスカリバーの一閃で滅ぼしてやる。茜の敵だ。容赦はしない。」
俺達は寝室の角に散って黒仮面の男が帰ってくるのをじいっと待っていた。
ドクンドクンと嫌な脈が体を巡る。緊張で胃が痛くなる。会ってもいない黒仮面の男のプレッシャーに当てられているのだ。アンジェリカの方を見る。
フゥーと浅い呼吸をするアンジェリカ。闘う前から意識が高揚しているのだろう。ここまで思い詰めたアンジェリカは初めて見るかもしれない。
と…考えを巡らせていたが目の前の空間がグニャリと歪んだ。…奴が来る。茜を殺した黒仮面の男が!俺はエクスカリバーを固く握りしめた。ここまで良くこれたと自分でも思う。だが闘いに勝たなければならない。
茜の仇を討つ為にも、そして俺が俺であり続けるためにも!
私はエクスカリバーの中で彼を見守っていた。こうして紫音を見ていると最初に出会った頃の事を思い出す。お互いが信頼に欠けていたけれど、何とか前に進む事が出来たあの時。懐かしい…遠い記憶。それからはお互いに信頼し、幾多の敵を討ち滅ぼしてきた。それでも最初に交わした誓いは変わらない。紫音の妹…茜を殺した黒仮面の男に鉄槌を…煮えたぎる様な報復を浴びせかけるのだ。その為に紫音は今日まで歯を食い縛って闘ってきたのだ。…今日全てが終わる。紫音が敗れても黒仮面の男を討ったとしても…ようやく彼は宿業から解放されるのだ。私はエクスカリバーから力を貸すことしか出来ないけれど、最後まで紫音の剣として自分を張り通す事にする。どうかこの闘いに悔いが残りませんように。
ボクは思えば逃げているばかりだった。父と母を捨てゲーニアから逃げ出し放浪の剣士としてその場その場を生きることしか考えていなかった。だけど紫音とエクスに出会って変わったんだ。初めて目標を持った旅になった。邪悪な暗黒教団を狩る旅…そして黒仮面の男への報復。ボクは目的がしっかりありどんな状況でも足掻く紫音が輝いて見えた。彼の旅路が終わってもボクの旅はまだまだ続く。けれど彼にとって最後の闘いでは剣として彼の側に居るとしよう。朧村正抜刀!
空間の歪みから男が姿を表した。黒いマントに黒仮面の男。紫音達が探していた茜の仇の男だ。その傍らには新しい犠牲者と思われる血塗れの女が居た。
紫音達は立ち上がると剣を黒仮面の男に向けた。
男はゆっくりと口を開いた。
「おやおや…君達が我々暗黒教団を滅ぼしたという噂の剣聖かな?物騒じゃないか。私も殺すつもりか?もう暗黒教団は滅びた。私はその絞りカスに過ぎないぞ。まあ殺ると言うなら相手にならんでもないが。」
「黙れ。俺はお前に妹を殺された。その報復だけは暗黒教団だろうがなんだろうが関係ない。お前を必ず殺す!黒仮面の男!」
「ボクも直接恨みがある訳じゃないけど…人をゴミみたいに扱うお前らには怒り心頭なんだ。地球とイスワルドの為にここで死んでくれ!」
エクスカリバーの中でエクスが吼える。
「黒仮面の男!貴方を探すまで長かったわ。まるで永劫の時の回廊をさ迷った気分よ。アイリス様に誓って貴方はここで終わりよ。死んで詫び続けなさい!貴方の殺した全ての贄にね!」
黒仮面の男は静かに首を傾げて答えた。
「フム…君達にはまるで見覚えがない。妹を殺した?そんなことはとっくに忘れてしまっていたよ。まあ逆恨みでも何でも良い。ここが終点だ。行くぞ。私の名前だけ覚えて逝くと良い。我が名はザイラス。暗黒教団を統べる者だ。」
そう言うとザイラスは懐から瞬きする間に二挺のリボルバーを取り出した。それは人間が扱うには余りに大きすぎる得物だった。
そして寝室の空間がグニャリと歪んだ。勝手にゼオン連結システムが稼働したようだ。
次元の狭間と言える異空間にザイラスと紫音達は転移していた。
紫音とアンジェリカはほぼ同じ場所にワープアウトした。そこから五十メートルは離れた所にザイラスは居る。
「アンジェリカ…落ち着け。縮地を使って距離を詰めて一気に必殺技で片付けるぞ。」
「オーケー。紫音。吼えよ!朧村正!」
高音の咆哮が朧村正から上がる。これで戦闘態勢に入った。そして縮地する瞬間。
ザイラスは二挺のリボルバーを連射してきた。二人ともまともに喰らってしまう。
「ガハァガハッガハッ畜生。右腕と腹と左足をやられた。しばらく動けないぞ。」
アンジェリカは卒倒していた。かろうじて口が聞けるようだ。
「オェッガブァ…ハァハァ。ゴメン。紫音。胸と腹にしこたま喰らっちゃったよ。もう立ち上がる余力は無い。すまない。ガハッハァハァ。」
鞘をアンジェリカに渡すと俺は無理矢理剣舞の姿勢に入った。全身を激痛が走る…が気にしている場合じゃない。このままじゃ全滅だ。
ザイラスはニコリと笑みを浮かべて話し掛けてきた。
「フフ…暗黒教団潰しと言えど所詮この程度か。他愛も無いな。さて幕を閉じるとしよう。ケルベロス…蹂躙しろ!」
そうザイラスが唱えるとリボルバーから強烈な魔力放出が行われた。大技を使う気だ。
二挺のリボルバーを正面に構え、技を解放する。
「エクセキューションシュート!フルドライブ!」
ゴアッと言う音を轟かせて赤い光の束が此方に向かってくる。
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「エクスハァハァカリバー!究極霊閃モード…ゲバァ…グフッ突入!オーバーロード!ゲフゲフッ!アルティメットスパーク!」
虹色の極光がザイラスに向かって放たれた。ケルベロスのエクセキューションシュートと真っ向からぶつかる。鬩ぎ合いながら光は増していく。そしてかききえた。アルティメットスパークとエクセキューションシュートは全くの互角であった。
ザイラスは信じられないと言う様子だ。
「まさか私のケルベロスと互角に闘える武器があるなんてね。驚きだ。だが其方は死に体の様だ。通常の射撃で事足りる。死んでもらおうか。」
チャキッとケルベロスを構えるザイラス。
彼はあることに気付いた。紫音の横で這いつくばっていた。アンジェリカの姿が無い事を…
アンジェリカは高速で縮地を繰り返しザイラスの後ろに跳んだ。そのままザイラスの首を横一文字に切り裂きはねた。
「ヘヘン。油断しすぎだ。ザイラスさんよ。片付いたよ。紫音!見てた見てた?ボクが仕留めたんだ!ねえ…」
ガガンという発射音。ザイラスの体がくるりと振り返りアンジェリカにケルベロスの弾を叩き込んでいた。腹部に命中。着弾の衝撃で後ろに吹っ飛ばされるアンジェリカ。
「嘘でしょ?首を落としたのに動いているなんて。グハァハァハァ。」
ザイラスはゆっくりと落ちていた首を拾うと切断部に乗せた。周辺の肉がゾワリと震え上がり首は癒着した。
「私はこの身に無銘の暗黒神の加護を何重にも得ていてな。ちょっとやそっとの事じゃ死なんのだ。残念だったな。お嬢さん。」
「紫音…聞こえている?ザイラスの奴は今神に等しい存在に成っているわ。奴を倒すには神核…コアを撃ち抜く必要があるわ。体の中の何処かを正確に射抜くか…飽和攻撃で倒しきる他無いわね。一度…たった一度のチャンスよ。今あいつの意識は後ろに居るアンジェリカに向かっている。その間にあいつに接近して片付けなさい。これが恐らく最後の勝機」
「分かった。鞘による回復をしている暇は無いな。ゲバァ…ハァハァ。縮地!」
俺は縮地でザイラスの目の前に飛び込んだ。奴は後ろから正面に振り返る所だった。たった一つのチャンスだ。生かし躍り狂う。
ザイラスに夢幻の連撃を叩き込む。
袈裟斬り、直突、雷閃、無双三連、無双一閃、神武一閃…今まで習得した技をひたすらに叩き込みまくる。ザイラスはあまりの早い連撃にガードをする事すら出来なかった。
これぞエクスカリバー流剣術奥義!夢幻泡影!
技を叩き込み続けるとザイラスの体は破裂し中から核が露出した。その核を霊力を込めた太刀で一閃する。
そしてザイラスの体は一欠片の肉片も残さず霧散した。
終わったのだ。長かった復讐の旅は今ここに完結した。
ザイラスの後ろで倒れているアンジェリカに鞘を手渡す。数分程して彼女は全快したようだった。
「終わったよ。茜の仇は討った。これで全て終わりだ。俺の旅路はここまでかもしれないな。」
「紫音。しっかりしなよ。惚けるのは良いけど、旅はまだ終わりじゃないだろ。ボクの両親をゲーニアから助けてくれるんじゃなかったのかい?」
「そうだったな。アンジェリカ。ついつい忘れてたよ。ただ少しやすませてくれ。俺は疲れてしまったんだ。」
エクスカリバーをエクスが出てきた。
「終ったのね。永かったわね。紫音。感傷に浸りたいのは山々だけど、この空間はザイラスのゼオン連結システムで産み出されたもの。主が死んだ今何処かに射出されるわ。身構えて!」
緑色のゲートが広がると俺達は時空の狭間から吐き出された。しかしかろうじて自分達のゼオン連結システムにより行き先が選択出来た。
地球の行き先は選択できない。暗黒教団の首魁ザイラスが死んだからだろうか?
仕方無いのでノースメリカン大陸を移転場所に設定した。
…ゲートが解放され移転が始まる。暫くすると目の前には見知らぬ森が広がっていた。
ノースメリカン大陸に戻ってきたのだ。と言っても大陸の何処かは分からないのだが。
「また戻ってきちまったな。ノースメリカン大陸に。地球で死んでも刺し違えると誓ったってのに。生き延びちまった。茜…お兄ちゃんやったよ。お前の仇を討ったよ。」
森の奥から懐かしい顔が姿を表した。いつか精神生命体になったという茜だった。
「うワッちょっとこれお化けかな。透けてて足がないよ。ボク初めて見たよ。」
「紫音の妹。茜さんの霊体ね。ザイラスを倒したことによって束縛から解放されたんでしょう。二人にしてあげましょう?アンジェリカ。」
「了解。了解。」
二人は俺達から離れていった。ここには茜と俺しか居ない。
「あの時出会った茜なのか?」
「そうね。久しぶりね。兄さん。ついに暗黒教団の首魁を討ったのね。驚いたわ。本当にそこまで出来るなんてね。なんというか…ありがとう。肉の器からは解放されていたけど、暗黒教団があることによって霊体も影響を受けていたのよ。だから一回しか姿を現せなかったってわけ。」
「そうだったのか。今は天国に居るのか?」
「そうね。天界にいるわ。お陰様で毎日ノンビリ暮らしてるの。兄さんがいつか上がってくるまでずっと見守っているわ。でももう現世にいるのは限界ね。さようなら兄さん。少しだけだけど喋れて良かったわ。」
「ああ…逝かないでくれ茜。もっとお前と話して居たかった。もっとずっと一緒に生きていたかったよ。…ううっ…でももう痛くも苦しくも無いんだよな。それなら良いんだ。さようなら。茜。またいつか会おう。それまでの間はお別れだ。」
茜は昇天して行った。その様子を見守っていたエクスとアンジェリカだったが…完全に昇天してから十分程経って紫音に話し掛けた。
「妹さん…逝ってしまったわね。紫音。仕方がないのよ。所詮生ある人間と霊体では住む世界が違うのよ。今は天界で安らかに暮らせる事を祈りましょう。」
「そうだな。きっとあいつはずっと幸せに天界で過ごすだろう。それが分かれば良いさ。」
「あれが妹さんだったんだね。ボク初めは驚いちゃったけど…何か優しそうな女の子だったね。天界でゆっくりしてくれると良いんだけどね。まあボク達が天界に着いた時には幾らでも話せるようになるさ。」
「ああ…その時までは精一杯生きるよ。誓おう。」
エクスとアンジェリカを見た。口を開く。
「二人とも本当にここまで良く着いてきてくれたな。ありがとう。新しい冒険の前にほんの少しだけ休ませてくれ。疲れてしまったんだ。そうしたらまた立ち上がって歩けるから。」
「紫音…本当にお疲れ様。良いわ。好きなだけ休みなさい。そしてまたいつの日にか立ち上がって旅立ちましょう。もう貴方を縛る暗黒教団は居ないわ。」
「ボクも少し休みたかったところさ。まあ次の旅の目標は決まっているけど、暫くのんびりしよう。今になって焦ってもどうにも成らない内容だからね。紫音…本当に君は良く頑張ったよ。このイスワルドに巣食う悪の暗黒教団を完全に滅ぼしたんだ。これ以上の事は無いよ。」
二人の言葉を聞くと俺は森の中で寝転んだ。
「ここで休ませてくれ。…お休み。またな。皆。」
「もうこんな所で寝ちゃうなんてね。よっぽど疲れていたのね。まあ良いわ。私も隣で寝ましょう。アンジェリカはどうするの?」
「魔物の気配はまるで感じないし、流石に襲撃を受ければ気付くからね。ボクは半分眠って半分起きておくよ。ゆっくりお休み。エクス、紫音。」
「そう…それじゃあお休みなさい。アンジェリカ。」
これにてノースメリカンを駆けた一人の復讐者とその仲間の話は終わる。だが彼らの冒険はまだまだ続いていく。どうか貴方にも彼らの行く末を見守って頂きたい。それでは次の冒険までさようなら。
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武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
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ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
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地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
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3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
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レベル1の地図士は、世界の裏側を知ってしまった
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異世界に転移した主人公が得たスキルは【地図作成】。
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これは、
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同作品を「小説家になろう」で先行配信してます。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
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実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
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