復讐のエリスルージュ~イスワルド冒険記~

八雲 全一

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私達はサンヘルムを後にし、イーストリア帝国軍がいるというニブルヘルムへ向かった。私が元々住んでいた街だ。数か月ぶりの帰還となる。
徒歩で二十日程掛かった。こちらにも検問などが敷かれており、突破に多少の苦労はしたものの問題なく旅の行程は進んでいった。
今はニブルヘルムの首都ニブルヘルムに到着した。ようやく帰って来たのだ。我が家がある街に。エリカの血魔法のサーチにもニブルヘルムにイーストリア帝国軍が居る事が分かっている。
ここにいる帝国軍を倒せば残りのイーストリア帝国軍は一万人にまで減少する。最早軍としての体裁すら維持できなくなるだろう。
ニブルヘルムに入り町を見渡したが辺りには瓦礫という瓦礫が散らばっているだけだった。私の知っている活気があって優しい人達が住んでいたニブルヘルムはもうない。
本当に国が滅んだんだという実感が重くのしかかってくる。もうニブルヘルムはお父様とお母様はいない。
せめてイーストリア帝国軍を葬る事で死んでいった人の手向けとなるならばそれが私の責務となるだろう。
憎い…イーストリア帝国軍が憎い。街を燃やし、人を殺し、全てを破壊し去った帝国軍を私は許さない。正直もうエリカが居なかったとしても私は一人で戦いを挑んでいたのだろう。
例え戦場の花として散るとしてもだ。そのくらい私の復讐心は煮えたぎっていた。まるで体を犯す熱病の様に燃え滾っている。
「大丈夫。エリス?顔色が凄く悪いよ。もうすぐニブルヘルムのイーストリア帝国軍と鉢合わせする事になる。大丈夫かい?そんな調子で。」
「大丈夫。少し感情が高まっていただけよ。そう。私は大丈夫。帝国軍を殺せる。いつもみたいに問題は無いわ。何にもね。」
「…そっか。まあ後闘いは二回を残しているだけだ。ギフテッドさえ捌いてしまえばボク達の勝利は揺ぎ無いだろう。まあそのギフテッドが問題なんだけれどね。さあニブルヘルムのイーストリア帝国軍が見えてきたぞ!」
そう告げるエリカ。瓦礫の町を進んでいくと広場だった場所にイーストリア帝国軍が駐屯していた。陣形は取っていない。時刻は昼の一時頃、昼食を取っていたのだろう。
…殺す
…殺してやる
…お父様とお母様の仇
…討ち滅ぼしてやる
…お前たちだけではない
…イーストリア帝国ごと滅ぼしてやる
私はエリカに確認を取らずにタケミカヅチを構えると連射し始めた。
イーストリア帝国軍との距離は一キロ程だ。裸眼では確認できないが次々と兵士は死んでいるのだろう。私はタケミカヅチの引き金を引き続けた。
「ああ…もう早漏だな。エリスは仕方ない。弾避けの加護に…奴らを殲滅する必殺技!」
エリカは弾避けの加護を張った。これでこちらに銃撃は利かない。そして敵を屠る必殺の一撃を彼女は穿ったのだった。
オーラバスターブラッドレイン!圧縮したマナが詰まった血の雨がイーストリア帝国軍に降り注ぐ。地面に落ちれば爆裂し、兵士に当たれば酸の雨の様にドロドロに体を溶かして絶命させた。それでも生き延びている兵士が居るので私はタケミカヅチを連射しまくった。数十分後立っている兵士は誰も居なくなった。
しかし銃声が聞こえてきた。エリカの頭を銃弾が射貫き即死させる。
「エリカ!しっかりしなさい!敵のギフテッドの攻撃よ。」
コードフェニックス!強制蘇生。
「あたた…分かっているよ。エリス。銃を使うギフテッドみたいだね。喧嘩を売られたのはボクだ。ボクが始末をつけてくる。」
そう言うと銃撃を浴びながらイーストリア帝国軍のキャンプがあった場所にエリカは駆けていく。ブラッドヒートを使っているのだろうか?とんでもないスピードだ。
それでも敵の銃弾はエリカを正確に射貫いていた。
敵の銃撃。エリカの左腕貫通…腹部貫通、内臓損傷…右足貫通…
血を吐きながらも走り続けるエリカ…ブラッドヒーリングで回復している。
生意気なんだよ。遠距離からボクを射抜くなんてさ。待ってろよ。クロスレンジになったらボクの拳法でボコボコにしてやるからな。
そう思いながらボクは駆けるスピードを増していった。足にブラッドヒートを使っているので限界を超えたスピードで走れる。敵を攪乱するために左右に走ったりしてみた。
それでも銃弾はボクを射抜いてくる。異常な正確さだ。流石ギフテッドと言った所か。
エリカの頭部を貫通。即死。コードフェニックス。強制蘇生開始。
「クソ…また死んでしまったのか。足止めになるから嫌なんだよね。」
撃たれながらボクは一キロ程進んできたと思う。イーストリア帝国軍のキャンプのど真ん中だ。血魔法によるサーチを行う。
ここから百メートル先に生命反応…恐らく敵のギフテッドだろう。
敵の銃撃も激しくなる。ボクは無銘神話楯を召喚し体に埋め込んだ。銃弾を弾くようになったがそれでも十発程で楯は壊れてしまった。
楯の神秘を上回る攻撃という事か。ボクは被弾を決心してキャンプの奥地に飛び込んだ。
そこには黒髪青目のローブを羽織った女が居た。両手には巨大な拳銃を持っている。
「ようやく捕まえたぞ。ギフテッド。随分好き放題撃ってくれていたじゃあないか。ここで止めをさしてやるよ。」
「まさか私の銃撃を抜けてくるとわね。降参と行きたい所だけどそうは問屋が卸さないって顔しているわね。」
「当たり前だ。何発銃弾を叩き込まれたと思っているんだ!何回も死にかけたんだぞ。というか実際に死んでいるし。」
「蘇生の魔法を使えるのね。羨ましい限りだわ。私のギフテッド能力はあくまで銃使いとして最強になる…それだけだもの。貴女みたいに応用が利く能力だったら良かったんだけれど。」
「殺す前に名を聞いてやる。教えるんだ。ボクの名前はエリカ。お前は?」
「フフ…変わった趣向ね。私の名前はレイア。さあパーティの準備は出来たかしら。行くわよ!」
そう言うとレイアの後ろに門が開き何丁、何十丁もの銃がこちらに顔を出した。恐らくそのまま発砲できるのだろう。レイアは両手に持っていた拳銃も構えるとこちらに一斉発射してきた。
全身をズタズタに撃ち抜かれるボク。バタリと倒れる。だが死ぬ事は許されない。ボクはこんな所で死ねないんだ。コードフェニックス。強制蘇生開始。
むくりと立ち上がるボク。謳う…神代の魔法を…
「アイギスの楯、アイアスの楯、無銘神話楯召喚。体内に埋め込み敵の銃撃に備える。」
「そんなもので私の銃撃が防げるかしら。さあ撃つわよ!」
また両手の拳銃と空間の隙間から顔を出している銃を一斉射撃してきた。ズタズタに裂かれるボク。しかし肉体には一発も弾丸はめり込んではいない。痛みはあるが…無傷だ。
ハッと驚いた表情をするレイア。今まで自分の銃撃を止められた覚え等無いのだろう。
「エリカ。大丈夫?大分苦戦しているみたいだけれど…ようやく追いつけたわ。」
エリスが駆け込んできた。馬鹿。こっちに来ちゃ危ないっていうのに!
「エリス!こっちに来るな。死にたいのか。もっと離れて見ていろ。」
「あらそちらのお嬢さんも敵かしら。それじゃあお見舞いしないとね。」
レイアの出している銃の銃口を全てエリスに向けて銃撃した。当然エリスに避ける事など出来る筈も無く…エリスはズタズタになって死んだ。何時もならブラッドヒーリングを使って立ち上がってくるのに今回は立ち上がらない。死んでしまったのだろう。
ボクはエリスに駆け寄った。そして強制蘇生の呪詛を使う。コードフェニックス。強制蘇生。エリスは血の塊を吐き出しながら蘇生した。
「来ちゃ駄目だったんだ。エリス。ブラッドシールドを張ってボクの後ろに隠れているんだ。良いね?」
「了解したわ。エリカ。面倒を掛けてごめんなさい。傍観者に徹します。ブラッドシールド。」
「おい。レイア。ボクは良い。敵だからな。エリスはただの傍観者だ。それに手出しする事は二度とするな。本当にボクは怒っているんだぞ。卑怯者め。」
「敵に当事者も傍観者も無いでしょう。私の前に立ったら殺される。それだけの話よ。まああの御嬢さんは後ろに下がってしまったようですけど。結果的に死ぬことは無いんじゃないかしら。さあ血沸き肉躍る魂の削り合いを再開しましょうか。」
「望むところだ。お前だけは許さない。殺してやるよ。レイア。行くぞ。」
ボクは三枚の神話の楯を身に纏った事で強気になりレイアの前に踊り出した。レイアは両手の銃と空間の隙間から顔を出している銃全てを発砲してきたが、全ての弾をボクはいなした。そして渾身の一撃を…そうたった一撃をレイアに叩き込んだ。
億劫蓬莱神獄掌!両手をマナが渦巻く。龍拳でマナを腹に叩き込んだ。肉体と魂の両方を焼くボクの必殺の拳だ。
「ぎやあああああああああああ。何なのよ。これ。あついあついからだが燃えるうううううううううううう。」
レイアの全身が青い炎に包まれた。
魂まで燃えてしまいな…そうボソッと口にするとボクはレイアの前を立ち去った。もう勝負はついているだろう。
レイア・スレイニル…スイス人。卓越した銃の才能を持っており、軍隊に所属していた。末期ガンが判明し治療したものの死亡。二十七歳だった。シャウヤーン連合地帯に転生。銃の腕を生かして生活していたところ、イーストリア帝国領でイーストリア帝国軍にスカウトされ今に至る。

エリスが口を開く。
「あれで終わったのかしら?たったの一撃だったようだけれど。」
「大丈夫さ。魂までマナで焼き付ける一撃だ。再起不能。二度と立ち上がってこないよ。」
「そう…貴女の切り札という事ね。これでニブルヘルムを支配下に置くイーストリア帝国軍も居なくなったわけね。」
「そうとも。残るはイーストリア帝国本土への侵攻だ。最後の闘いになるだろう。」
「その前にちょっと寄りたい所があるの。いいかしら?」
「良いよ。最後になる。その前にやりたい事をやっておくんだね。」
私はバッカニアの屋敷の跡地まで歩いて行った。イーストリア帝国軍のキャンプから歩いて三十分程だった。
屋敷は黒焦げになってしまい倒壊している。お父様やお母様の遺体も回収できないだろう。
私は近くの空き地に簡単な墓を立てた。エリカの血魔法で墓石を用意してもらった。
これで良いでしょう。お父様、お母様簡単だけれど貴方達を弔う事が出来て私嬉しいです。
………でも行きますね。最後の仕上げが待っているんです。イーストリア帝国に攻め入り、皇帝の首を取る。最後の闘いが待っています。行ってきますね。お父様、お母様。

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