中二病の俺が異世界転生したら魔法詠唱能力がチートクラスだった

八雲 全一

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二十一節 ブラックドール

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俺が目覚めると既に昼だった。宿屋にはアイリス以外誰もいなかった。アイリスに話しかけてみる。
「皆は何処に行ったんだい?アイリス。」
「二人とも街の散策に出かけたわ。依頼はもう受け取っているみたい。☆8のブラックドールですって。」
「そうなのか。また聞いたことも無いようなモンスター名だけれどアイリスは何か知っている?」
「いいえ。恐らく黒魔術関連のモンスターなんでしょうけれどね?詳しくは私も分からないわ。」
「そうか。いつもぶっつけ本番で闘わされるなあ…」俺はしみじみという。
「今の所、一度も同じ依頼が出ていないんですもの。仕様が無いわよ。」
「そうだね。マスホルークに来れば依頼が増えるって最初は思っていたんだけど案外依頼自体も無いしな。」
「依頼自体の数は確かにマイルティ王国の方が多かったわね。その代わり難易度の高い依頼はこちらの方が多いと思いますわ。」
「まあ…それもそうか。アイリスは宿屋で何をしていたんだ?」
疑問に思い尋ねてみる。そうするとアイリスは読み古しているであろう薬草学の本を取り出した。
「この本を読んで魔法の精度を上げていたのよ。貴方みたいに完璧な行使がいつもできるとは限りませんからね。」
「えらいな。俺なんか何も魔法の勉強をしていないよ。少し恥ずかしくなるね。」
「ギフテッドだから凄いのは当然よ。恥じる事では無いわ。私も貴方みたいなギフテッドだったらきっと勉強なんかしないで遊び歩いているわ。」
「うーん。仮に俺と同じ能力を持っていても勉強している姿しかアイリスからは思い浮かばないけれどね。」
「私の事を買いかぶり過ぎよ。私だって遊んだり、貴方と外に行ってみたりしたいもの。」
「じゃあこれから外に行ってみる?」
「リュミエールが居なければ一緒に行っても良いんですけれどね。あの子はやきもち焼きだから見つかったらただでは済まないわ。それでもいいなら行きましょうか?」
ブルブルと悪寒が体を駆け巡った。それは不味い。絶対に避けたい。俺はアイリスとこの部屋で語り合い続ける事に決めた。
「やめようか。アイリス。俺と部屋の中で話をしていようぜ。それなら誰にも何とも言われないさ。」
「それもそうですわね。タッツン。本当は私も貴方の事を悪しからず思っている事を忘れないでくださいね。何時でも貴方の味方でいたいわ。」
「…そうか。ありがとう。俺もアイリスの事は一人の女の子としてきちんと扱うようにするよ。」
「貴方はリュミエールが好きでは無いの?」
「こりゃまた難しい質問だな。君達の中では一番興味を持っているかもしれないけれど、君達の仲間の輪を破壊したくはないから好きにはなれないよ。」
「じゃあ私の事も好きにはなれないのかしら?」
「ゴメン。難しいと伝えておこう。君達の気持ちは汲んであげられるけれど…やっぱり仲間の輪を崩したくはないんだ。」
「そう。残念ですわね。」とアイリスは悲しそうな顔になった。
「さあ…そういう湿っぽい話題はやめようか。何も解決しないしね。アイリスの行きつけの飲食店を教えてくれよ。今色んな場所をソシエと探して回っているんだ。」
「狼と小鹿亭が私の行きつけですわ。魚と野菜の料理がメインの所だからタッツンが大丈夫でもソシエは駄目かもしれませんわね。」
「へえー美味しそうな料理が出てきそうだな。これからリュミエールの目を盗んで出かけるのはどう?」
「その作戦乗りましたわ。さあ早く準備を済ませましょう。」
そう言うとアイリスは外に行く恰好…ローブに着替えた。俺も作業着に着替え外に出る。
狼と小鹿亭は広場から少し離れた場所にある飲食店だった。店に入ると店主がいる。
「お客さんだね!いらっしゃい。今日は何にします?」
アイリスが答える。
「お任せ定食二つでお願いしますわ。」
「了解。少し待っててくださいねー。」と店主。
俺達が席に着いてから十分ほどするとお任せ定食が運ばれてきた。見たことも無い焼かれた魚とサラダとパンの定食だ。
「頂きます!」とアイリス。
「頂きます!」と俺も言う。
フムフム…中々美味いな。いつも山盛屋で限界を極める食事をしている俺としては斬新な気持ちになった。そうだお腹が破れるほど食う必要はないんだ。としみじみ実感する。
だが、ソシエと付き合う限りは山盛屋の並盛りの破壊力からは逃れられないだろう。哀れ。無念です…
二人とも食事を食べ終えたので狼と小鹿亭を出る。アイリスが話しかけてくる。
「どうでしたか?食事はお口にあいましたか?」
「勿論だ。久々に食事らしい食事を取った気分だよ。ありがとうなアイリス。」
「いいえどういたしまして。リュミエールに見つかる前に宿屋に戻りましょう。」
「そうしようか。さあ食後の運動だ。」
そう言うと俺達は宿屋まで帰っていった。途中リュミエールに見つかることも無かったのだが、宿屋には先にリュミエールが待ち構えていた。事情を説明しなくてはならないだろう。
リュミエールが口を開く。うっすらと怒りを感じる。
「二人で何処に行ってたんだい?」
俺が口を開く。
「腹が減ったから食事に行ってたんだよ。リュミエールも行きたかったか?」
アイリスだ。
「決して貴女に対してやましい事はしていませんわ。誓いましょう」
リュミエールだ。
「まあ二人で行動するなとは言わないけれどボクが置いてけぼりなのが少し気に入らなかったね。まあ良いだろう。ソシエが戻って来たら依頼に出かけるよ。」
ふう…何事も無く収まって良かった。ソシエが帰ってくるのを全員で待つ。結構気まずい雰囲気が流れている。早くしてくれ!ソシエ!
それから三十分程経つとソシエが帰って来た。依頼の事をリュミエールが伝えると全員が宿屋の外に出てマスホルーク北の街道に出るというブラックドールの討伐に向かった。
三時間ほど歩くとリュミエールのサーチダウジングにブラックドールが引っかかった。
…どう見ても往来の真ん中に黒い人形が座っているだけなのだが…☆8の依頼だ。そう簡単には行かない可能性が高い。
俺はソシエなどが不意打ちされる恐れがあったので先手必勝で呪文を唱えた。
「ヘブンズレイスラッシュ!」
天界から光の刃が降臨しブラックドールを切り刻む。ブラックドールは跳ね上がり戦闘態勢に入ったようだ。脚や腕がひしゃげている。中破と言った所だろう。
ソシエが突っ込んでいく!イフリートの手足と暗示サラマンダーの息吹だ。近づくと両腕を上げたブラックドールが回転攻撃を加えてきた。全て拳打で上手くいなすと何度もソシエは虎乱をねじ込んだ。そして最終攻撃にフェニックスダイブを叩き込む!ブラックドールは大破。ほとんど原形を保っていない。今回はスムーズに撃破できそうなのだが…ブラックドールは変形し棘だらけの球体の様な物質になり、転がりながらこちらに攻めてきた。いなす間もなく高速で突っ込んで来てアイリスが突撃を受ける。全身を棘が貫通し即死した。
リュミエールの魔法詠唱
「フアイアブレイク連携ギガブレイクサンダー!」
ブラックドールを火の槍と雷の槌が打ち砕く!ブラックドールは破砕し動きを止めた。
アイリスを蘇生しなくては…俺は回復魔法を唱える。
「リザレクション!アイリス。」
彼女は全身の傷を癒しながら蘇生していった。ふうこれでひとまずは安心だ。
アイリスが口を開く。
「私また死んでしまったのね。タッツン。蘇生ありがとう。」
「いや当然のことをしたまでだよ。アイリス。俺が死んだときは必ず蘇生してくれよな。」
「勿論よ。約束しましょう。ブラックドールは倒せたの?」
リュミエールだ。
「遅くなってしまって申し訳ないけれど、ボクの魔法詠唱で奴は粉々に砕け散ったよ。安心してくれ。アイリス。」
そう言いながらリュミエールは念写を取っている。今回も戦いは終わりだ。マスホルークへ帰ろう…
俺達はマスホルークへの帰路へ着いた。途中ではちょっとしたモンスターの邪魔が入ったが俺の詠唱で全て片付けた。素材を剥ぎ取る事を忘れない。マスホルークで売ればこれも金になるのだ。
ソシエが口を開く。
「雑魚モンスターも簡単に倒しちまうからビックリするな!タッツン。」
「俺のフリースタイルリリックに敵なしさ。安心しな。ソシエ!」
リュミエールだ。
「そろそろ町に入る。雑魚モンスターの妨害も無くなるだろう。行くぞ。タッツン。ソシエ。最後まで気を引き締めろ。」
そう告げるとリュミエールは足を速めていった…今は酒場まで戻ってきている。
リュミエールが親父に話しかける。
「親父!確かにブラックドールを撃破したぞ!これが証拠の念写だ。」
と言って砕けたブラックドールが写っている念写をリュミエールは親父に見せた。
「あいよ!確かに見せてもらったぜ!これが報酬の15000Gだ。受け取ってくれ。」
と親父。
「確かに受け取らせてもらった。またの依頼を待っているぞ!さらばだ親父。」
そうリュミエールが告げると俺達は二階の宿屋に上がって行き眠りに着いた。

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