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4.1 太極
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曰く太極。人類と神々の神秘が秘匿されているという情報塊。それを知れば凡そ魔術と呼ばれる領域で全てを従える事が出来る。究極の魔法。世界を滅ぼしまた生まれ変わらせる秘宝すら内包する魔術の極地。それを求める事を止めなかった女がいた。
ひとつ女の話をしよう。その女は孤児院を経営していた。その孤児院では園児達は十五を過ぎると何処かへと卒業していった。たった一つの例外もないはずだった。
その卒業生は皆英雄召喚の生き餌となっていた。
たった一人だけ空っぽな生徒が居た。居るのか居ないのかも分からない生徒。その名を×××という。何処にでもいそうな生徒だった。彼だけは彼女の英雄の生き餌になる前に孤児院を飛び出した。まだたったの十歳と言う若さで。
これが十年前の話だ。孤児院は今でも経営されている。そしてその地下では英雄の召喚を維持するために死骸まで貪り食われている子供達がいる。今でも惨劇は続いている。
女は今でも子供達に慈愛の眼差しを向けながら餌さとして冷静に算定している。次の英雄を召喚する餌はどれ程必要だろうかと。女は英雄を呼んで戦わせた。人間か魔物か神様かを問わず。手元にある魔法のデバイス…英雄召喚装置を用いて様々な英雄を呼んだのだ。これは人類史崩壊の引き金になった禁忌の道具である。
黒歴史では大量の英雄をエネルギー源とした魔術的な破壊兵器が世界中に伝播した。その兵器が強力だったのは大量の英雄をエネルギー源とすることで太極に接続していたからである。英雄の手足を切り取り、首と胴体だけにした状態で大量に動力炉に接続。そうすると動力炉は擬似的な太極炉と言っても良い代物へと変貌する。
そして物理法則を無視したエネルギーを射出する兵器として機能するのだ。世界中に広まった太極兵器は一瞬で人間の文明を塵と変えてしまった。人間自体は辛うじて生き延びたが、神を冒涜する所業や英雄の究極の侮辱が問題視され、人類の知性を退化させる戦艦の主砲が月の神々の坐から発射された。
こうして人類は滅亡したに等しい状態になった。それから一万年経った。
この女は何も知らずにただの女の直感で太極に至る方法を確立させようとしている。それは英雄をエネルギーとしてぶつけ合わせる事。即ち英雄同士で衝突を引き起こす事に他ならなかった。
女は英雄を殺し合わせる事で性行を越える快楽を得ていた。本物の快楽殺人者だったって訳だ。
その悪夢の様な目論みは卒業を早めにした俺へと伸びていった。
カインポリスでは伝説が生まれた。究極黄金巫女という伝説の英雄がいる。それがラースフィールドを一網打尽にして解散させたらしい。その噂は女のもとに届いていた。噂好きな死霊魔術師の友人からだった。黒歴史の残り香の電話で会話する。
「そう言うわけで明らかに英雄を使役している奴が居たのさ。秘匿も何にもしないで野ざらしにしているんだ。信じられないだろう?」
「ええ…とても美味しそうな英雄ですね。是非こちらに来てほしいものね。」
「あいつらはそうだね。アヴァロンを探していたよ。釣りたいならそれで釣れば良いんじゃないかな。私の方から声を掛けておこうか?いつも素材を提供して貰っているよしみもあるしね。」
「それは良いわね。アヴァロンを探す夢見る勇者。きっと貶めたら最高の味がするわ。最後の最後にね。」
女はニタリと笑う。自分の運命の幕が閉じるかもしれないというのに。太極に至る確信を得たからだろうか?
きっとそれは違うだろう。ただ選りすぐった自分の英雄をぶつけるサンドバッグを見つけて燃えたぎっているのだ。ドス黒い快楽にまみれた欲望が。そしてその行為は太極への扉に遂に至ろうとしていた。
俺達は五日間の退屈な旅を終えカインポリスの町へと戻っていた。町では既にラースフィールドが壊滅した事が話題になっており俺とミユキはまるで神様のように持て囃されていた。
「貴方達こそ真の勇者だ。いつまでもカインポリスに居てください!」
「究極黄金巫女様!万歳!カインポリスは貴女達の第二の故郷になるくらい、貴女達を受け入れています。」
「究極黄金巫女様!万歳…」
民衆の喝采はいつまでも続いていた。
最初は嬉しそうにしていたミユキだが、途中から飽き飽きしてしまったようだ。
「ケイジ。ボクは良くこういう喝采を浴びることには慣れていたがここまですごいと困ってしまうな。流石に喜びすぎだろう。」
「町を救った英雄なんだ。仕方ないんじゃないか?それにしてもラースフィールド壊滅の情報なんて何処から聞いたんだかな。」
「噂好きがいれば広まるなんてあっという間さ。何せ生きたまま逃げた兵士が二千人もいるんだしな。その内の何人かはカインポリスにも来ているんだろう。」
町はまだ日が上っており明るい。町をプラプラ歩いてみる。目抜通りにも活気が戻ってきた。あの死霊魔術師の店もあるが俺達は無視して通りすぎようとした。
のだが、声を掛けられる。
「旦那達!大層な噂になっているじゃないか!ラースフィールドを壊滅させたらしいな。やるじゃあないか!」
ミユキが口を開く。
「ようやくボクの力が分かったようだね。死霊魔術師よ。お前には用はない。さらばだ。」
「ちょっとまった。ちょっとまった。そこまで露骨に避けないでくれよ。良い情報が入ったんだ。聞きたくないのかい?」
「情報の種類によるね。アヴァロンへの到達方法なら金を払ってでも聞こう。」
「そうさ!そのアヴァロンに関する手がかりさ。私の知り合いの魔術師に太極を目指している奴が居てね。そいつならアヴァロンに到達する方法を知っているらしいんだ。是非一度会ってみないか?」
「太極…?胡散臭い奴だな。まあ良い。ケイジ。金を払え。金貨十枚で良い。」
俺はミユキに促されて死霊魔術師に金を払った。
「結構な金を簡単に渡してくれるね。一ヶ月分の生活費は下らないよ。」
「フン。価値のある情報には金を払う。それだけだ。それでその魔術師はどこの町にいるんだ?そして名前は?」
「フォールブリーズの町さ。ここから東へ二十日歩くとたどり着けるよ。その魔術師はメルセデスと名乗っていたね。私の旧友だ。」
「よしこんなもので良いだろう。ケイジ。フォールブリーズの町に向かうぞ。良いな。」
「ああ…大丈夫だ。ここを離れよう。」
「それではな。死霊魔術師。ゆめ人を殺そうと思うなよ。」
「はいはい。ギアスで縛られているから大丈夫よ。心配御無用。」
そう言葉を交わすと俺達は死霊魔術師の店を離れていった。
正直言って大部胡散臭い。フォールブリーズは元々俺が暮らしていた町だった。その町の孤児院で十歳まで暮らしていた。が、しかし急に放浪したい欲求に駆られて俺は孤児院を飛び出した。それからの十年間は様々な町を放浪する生活だった。
俺は空っぽでずっと自分を満たしてくれるものを探していたのかも知れなかった。
今は物欲に殺害衝動、それにミユキへの愛情で俺は満たされている。ようやく普通のフリができるようになったと言うことだ。
またあの町に戻る事になるとは…先生は元気だろうか。
先生は若い女性一人で孤児院を経営していた。何処か乾いた印象のある人だったが、孤児達に分け隔てない愛情を与えていた。孤児院の卒業は十五歳で皆羽ばたいていった。しかし何処にも卒業生の姿を見たことはない。
町に飛び出してからも何処にも見当たらないのでそれだけが不思議だった。
まあ気にしても仕方がない事だ。皆元気にしていると信じたい。
俺のように世捨て人のような生活を送っているのかもしれないな。
俺にはミユキがいるがいない人生…一人十五歳で世間に放り出されることは残酷極まりないと思う。
町を歩きながら考える。カインポリスの宿に戻ってきていた。宿には荷物を残したままにしていた。残っている荷物を片さなければな。俺は夢想から覚めた。
俺とミユキは自分達の荷物を片し始めた。洋服や日用品だ。言葉もなく片し終えると俺達は宿を出ようとした。宿屋の親父が感極まった表情をしている。
「旦那達!また泊まりに来てくれよな!カインポリスの住人としてあんたらをもてなせたことが最高に嬉しいぜ。」
「ああ…またの機会があれば頼むぜ。親父。」
そう言うと俺達は宿屋を出た。そのまま目抜通りを歩き正門に向かって行く。正門でも俺達は歓迎を受けた。番兵が話し掛けてくる。
「あんた達はカインポリスの誇りだ。いつでもこの町に戻ってきておくれよ。いつまでも待っているからな。究極黄金巫女様!万歳!」
「ありがとう。またな…いつかまた戻ってくるよ。」
「ボクの事を毎日褒め称えると良い。いつの日か天界から加護をやろう。」
番兵とも別れを告げると町の外に出た。荒涼とした荒れ地が広がっている。街道だけが残っている。どこの町も似たような光景だ。町の外はひたすら荒れ放題だが、街道だけはきちんと整備されているのだ。
誰がやったのかは分からない。それこそ神様が力を貸して整備したとしか思えないな。
後は田畑がポツポツとある以外はたまに古代遺跡が残っているのだ。ミユキとの出会いも古代遺跡からだったな。あの吹雪の日に彼女と出会わなければ今の俺は無いだろう。
俺達はひたすら歩いた。景色は似たような光景が続いていて飽きてくる。
ミユキが不機嫌そうに話し掛けてくる。
「ケイジ。次の町では英雄同士の闘いに巻き込まれるかもしれないぞ。」
「は?何だって。なんでそんなことがわかるんだ?」
「以前に会った夢見の大魔術師の予言でな。いつか英雄同士の闘いに巻き込まれるかもしれないと言われているんだ。それにボクの千里眼が疼くんだ。英雄同士の闘いが近いのだろう。」
「俺はどうしたら良い?君達の闘いに参加しても良いのか?」
「死んでも良いならそうしろ。皮肉な事にアヴァロンは肉体を持ったままアクセスする事は不可能だ。死んでしまった方が早い。今すぐに死ぬか、アヴァロンで死ぬかの違いだ。」
「できればアヴァロンで穏やかに逝きたいな。それに俺はアヴァロンに行かずにまた放浪の旅に出るかもしれない。それでもミユキを放っておく事は出来ないよ。俺も闘おう。」
「ケイジは本当にお人好しだな。まあ良いだろう。この先の闘いではお前も全力で闘うんだ。良いね?」
「分かったさ。俺も全力を出すとしよう。」
ハァ。ケイジはアホだ。英雄同士の闘いに巻き込まれると警告しても平然としている。かといっても命を捨てる覚悟が有るわけでも無いと来ている。
どれだけボクの事が好きなのかは知れないが、また空っぽの状態に変わりなくなりつつある。
ボクに対して盲目的過ぎるのだ。もっと死にたくないとか逃げ出したいとか弱音を吐いても可笑しくはないのに。
もしかして英雄同士の闘いでボクが絶対に死なないと思っているのだろうか?
それは大きな誤算である。確かにボクは最強のカードだが撃ち合いや切り合いで遅れを取ることは普通にある。
もしかしたら死ぬかもしれないのだ。ボクはまるで慢心は戦闘においてはしていないがそれでも死ぬかもしれない。
だから未来が見えなくて千里眼が疼くのだ。
フォールブリーズの町にどれ程の英雄が待ち構えているかは知らないがただ者じゃないだろう。
英雄…とはその時代その時代で偉業をなした歴戦の強者である。宝貝を必ず持っているわけではないが、それに匹敵する技術であったり資質を持っていたりするのだ。
それが何人も待ち構えてボクと殺し合いをした場合、ボクの勝筋はまるで分からなくなる。
ゆめ油断をしないことだ。油断は今回死に直結するだろう。
そもそも英雄を用意して襲い掛かってくる召喚者とは誰なのか?太極を目指すと言うメルセデスという魔術師が一番怪しい。
太極を目指すためには英雄の様な高マナ生命体…精神生命体に近いものを大量に集めて対消滅させるのが手っ取り早いのだ。人間の身でこの英知に到達しているとすれば、英雄を何らかの方法で大量に召喚して手駒に置いておくだろう。
後はぶつけ合わせるだけで勝手にエネルギーを引きずり出す事が出来る。ボクは太極に至る為のエサにされる可能性が高いのだ…
暗澹とした気持ちでボクはフォールブリーズの町への旅路を歩いて行った。空は快晴だがボクには暗雲が立ち込めているように見える。
アヴァロンへの道筋を失ってもいいならフォールブリーズを目指す必要も無いのだが、ボクはどうしても今の天界に行ってみたかったし、この荒れている現世にこれ以上興味も無かった。死ねば魂はアヴァロンに帰り、究極黄金巫女の本霊に統一されるだろうという事は分かっている。そうすれば本来の記憶や経験に合一する形でボクの意識が溶けてゆくだろう。
もしケイジが死んでしまってもボクなら見捨てずにアヴァロンに導く。それは確かな事だった。ボクといっても本霊になるだろうが、ボクの為にここまで身を捧げ危険を共にした勇者を見捨てることは無いだろう。そう願いたいものだ。
ケイジに話しかける。
「ケイジ。君は死ぬのが怖くないのかい。次の闘いでは本当に死ぬかもしれないんだぞ。」
「ラースフィールドとの闘いで既に死への恐怖心は麻痺してしまったよ。あれが俺の人生最大の危機だったね。それ以上は無いと思う。英雄と闘って死ぬとは思えないな。なんせ君が負けるビジョンが思い浮かばないもの。」
「お前は愚かだな。ケイジ。上には上が居るものだよ。この先どんな英雄が待っているかも分からない。それは死に等しい危険なんだ。引き返すなら今だぞ。どうする?アヴァロンは他の方法で探してもいいじゃないか。」
「君がここまで弱気になるなんて珍しいじゃないかミユキ。…俺は引き返さない。フォールブリーズは自分の育った町だ。そんなに危険な英雄が闊歩しているなら猶更放っておけないよ。」
「そうか。そう言う所があったな。ケイジ。お前は優しすぎるよ。ボクの我儘に振り回されて、今度は死ぬかもしれない闘いにも挑もうとしているのにどうしてそんなに穏やかに笑っていられるんだ?」
笑顔を浮かべているケイジ。
「君に出会っていなかったら俺の人生死んだも同然だったからな。それがドラゴンを倒して魔王を倒して…ラースフィールドを壊滅させて…十分に修羅場は潜り抜けたさ。だからもう大丈夫だ。俺は恐れないよ。もし君が死んでも最後まで闘い抜こう。約束だ。ミユキ。そして絶対に君を死なせない。君が死ぬときは俺が死ぬ時だよ。」
ボクはそこまでの覚悟をしていたケイジに愕然とした。もう掛ける言葉は無い。ボクはケイジの腕をギュッと抱きしめると押し黙った。ケイジは驚いたようだが嬉しそうに歩いている。
それから何日か過ぎた。ボク達の旅路を邪魔するものは何も無かった。目標地点のフォールブリーズは目前だった。
フォールブリーズに辿り着いたが…まるで戦場になる為の町のように辺りは神殿が形成されていた。町の人間全体を魔術のエサとしているのだろう。人っ子一人いない。
とんでもない街に辿り着いたものだ。どれだけ不味い状況かケイジは気づいていない。
この町はボク達が来るのが分かっていてそれを待ち伏せするためだけに整えられたかのような不自然さが漂っていた。
いつどこから英雄が襲ってきてもおかしくは無い。
「ケイジ。気を付けろ。英雄がどこから襲ってきても不思議ではないぞ。」
「ああ…分かっている。町に一人も人間が出歩いていない時点で俺の知っているフォールブリーズではないな。この町も孤児院も犠牲になってしまったか。」
そう言葉を交わしている所に敵が現れた。空中を飛びこちらに駆け抜けてくる竜騎兵だ。おそらくどこぞの神話の英雄だろう。
ドラゴンに乗って急接近してくる!
「ケイジ!お前の対竜狙撃銃で叩き落せ!」
「動きが速すぎて狙いがつけられないかもしれないがやって見る。」
ガコンと重い発射音が木霊する。竜騎兵の胴体に弾が着弾した。腹に穴が開き落下する竜騎兵。地面に叩きつけられ血を吐くがまだ死んではいない。むくりと立ち上がると槍を構えた。
ケイジは継続して対竜狙撃銃を速射するが竜騎兵は槍を振り回して全て無効化してしまった。
ボクがやるしかないわけだ。ゲートオブアヴァロンを開帳して宝貝を射出する。竜騎兵は捌き切れずに胴体と足に宝貝が刺さった。即座にファンタズムボムで起爆する。
上半身だけが残った竜騎兵…口惜しそうな表情を見せながら無へと帰っていった。
町の上空には今気が付いたが黒い渦があった。そこに英雄の魂は吸収されていった。恐らくあれが太極に至る為の門だ。恐らく敵の魔術師は独力で太極に至れるだけの英雄を揃えているに違いなかった。だが、英雄も人間だ。いきなり自害しろと言っても言う事を聞かないだろう。そこでボク達に間引かせるというわけか。
余りにも自分勝手で独善的な妄想にボクは慄いた。こんな無茶苦茶をやるから人間は勝手に滅びるのだ。人類史崩壊の引き金もこの一件を裏で操っている魔術師のような奴が主導していたに違いない。
一体何人の英雄を呼び殺し合わせたというのだろうか?そして今何人残っているのだろうか。
俺達はこの町について最初の英雄を倒した。目的はメルセデスという魔術師に出会う事だ。恐らく今回の英雄騒動の黒幕が奴なのだろう。町全体の人間を燃料に英雄を呼べるだけ呼んで闘い合わせるとは正気の沙汰ではない。
奴からアヴァロンの情報を引き出さなくてはならない。殺す前に聞きたださねば。
俺の殺害衝動は窮極に高まっていた。今ならどんな英雄でも屠れる。その位の強いどす黒い意志が俺の中を渦巻いている。
「ミユキ。待機場所を決めよう。安全な場所が好ましいが…。」
「そうだな。これからも英雄は襲ってくるだろう。宿屋で良いんじゃないか。最悪その中で闘う事になりそうだけれどね。」
「分かった。まず宿屋に向かおう。」
俺達は…ミユキ曰く神殿が形成されている中避難場所を求めて宿屋に向かっていた。
宿屋までの間に敵の気配は無かった。宿屋に上がる。宿屋の主人の姿は見当たらない。
旅の荷物を置くと俺達は一時間程休憩した。
英雄は宿屋の中には入ってこないようだ。
俺達は後ろ髪を引かれながらも短い休憩を終えると探索の為に外に出た。
宿屋の外には出てくるのをまるで待っていたかのように赤い肌に黒い髪の大男が居た。
男が口を開く。
「俺の名前は関羽。貴君の名前は究極黄金巫女だな。さあ屠り合おう。我が主君もそれを望んでいる。」
「ボク達は話を聞きに来ただけだ。君の主君の所まで勝ったら案内してくれないかな?」
「それは出来ないな。ここで貴君らは死ぬのだから。覇!」
そう掛け声を掛けると男は青龍偃月刀を取り出した。関羽は美しい槍舞を舞った。ミユキをその槍捌きが襲う。
直突、払い、切り込み、切り上げ、二連突、払い、直突、払い、連続三段突。
ミユキは寸での所で身を躱していく。槍舞が終わると関羽に隙が出来た。
俺は関羽の頭を目掛けてオートショットガンを乱射した。
ブシャグチャヌチャバキャグチュバシャ…生々しい肉を砕く音が関羽から聞こえた。もだえる関羽…ポロポロと散弾の弾が頭から出てきて傷が塞がった。
「珍妙な技を使うな。戦士よ。男ならその刀で闘って見せよ。」
そういうと関羽は俺の方を向くと突進してきた。急ぎ対竜狙撃銃を構えなおす。
胴体でもどこでもいい!当たれ。そう祈ると俺は対竜狙撃銃を発射した。ガコンという鈍い発射音。バグチャという肉の弾ける音。関羽の額を撃ち抜いた。脳漿が弾け飛び、関羽の体はブルブルと震えてその内動かなくなってしまった。魂が舞い上がり頭上の黒い渦に吸い込まれていく。
ミユキは心底驚いているようだった。
「まさか人間の武器で英雄を撃ち殺せるとはね。一時的に英雄の行動を阻害できるくらいだと思っていたよ。やるじゃないか。ケイジ。」
「ありがとう。ミユキ。俺も突然の事だから咄嗟に攻撃しただけだった。まったくの偶然だよ。」
「偶然は必然を産む。頭を狙撃された英雄は死ぬという必然が生まれた。ケイジ。それでも攻撃の対象にお前が選ばれると不味い。気を付けて闘うんだぞ。」
「分かったよ。ミユキ。気を付けて慎重に行動するとしよう。」
俺達は町の探索を続けたが、相変わらずフォールブリーズの町は人っ子一人も居なかった。
現在は目抜き通りを抜けて路地裏に居る。ここにも何もいないかと思い出ようとしたその瞬間。俺は何かに羽交い絞めにされた。暗殺者の英雄?
俺は叫んだ。
「クソ!放せ。この野郎。」
ミユキが気付き攻撃態勢に入る。
「クク…究極黄金巫女よ。お前のマスターは捕らえさせてもらったどうする?さあ考えろ。あがけあがいて死ぬが良い。我が主も喜ぶ。苦悶の表情に塗れながら死ぬと良い。」
ボクとした事が迂闊だった。ケイジを捕らえられた…相手は人型…不定形でない限りはこれで死ぬはずだ。
ボクはケイジの後ろの足元にゲートオブアヴァロンを開くと宝貝を射出し謎の英雄を串刺しにした。
苦しみもがく英雄。と手が緩みケイジを離してしまう。あっけない終わりだ。連続でゲートオブアヴァロンの宝貝を射出した。英雄は針だるまの様になり絶命した。
「ありがとう。ミユキ。死ぬかと思ったよ。」
「気を付けろよ。ケイジ。英雄は暗殺者めいた奴も混じっているんだ。さっきの奴みたいにな。」
「それにしても本当に英雄の数が多いな。どうなってるんだこの町は?今までには一、二体しか見たことが無かったっていうのに。」
「頭上の黒い渦を見ろ。あれが太極に繋がる門だ。あそこに大量の英雄の魂を捧げて、メルセデスっていう魔術師は太極に至ろうとしているんだ。だから大量の英雄がいる。闘わせて殺させるためにね。アヴァロンの情報が手に入るとかそんなものを超越している。太極を乗っ取れば凡そこのイスワルド上で不可能な事は無いだろう。究極の魔力資源だ。ボク達は戦いに勝ち抜いて太極を手に入れるのが目標だ。」
「俺は魔術の素養が無いからさっぱりだが、敵が出てこなくなるまで倒し続けろって言うんだろ。分かったよ。いつも通りの仕事だ。」
「そんな簡単な事じゃないけれどそれでいいよ。難しい事はボクが請け負うとしよう。今日の所は一旦宿屋に戻ろう。日も暮れてきた。また明日に備えるぞ。」
「宿屋が襲撃される恐れは無いのか?」
「ボクが簡単な結界を張っておくよ。それがあれば敵は侵入してこれないね。後何人英雄が居るんだが分かったもんじゃないけど。こっちはこっちのペースで闘わせてもらおう。」
そう言葉を交わすとボクらは路地裏から出て宿屋までの道を戻っていった。
…宿屋の前に魔術師の女が居る。英雄だ。
「貴方達が主様の探していた英雄とそのマスターね。ここで消えなさい。我が名はレオーネ。ミケーネ一の魔法使いよ!」
女の周りに魔法陣が何重にも展開される。魔法レーザー一斉発射!
まずいこの位置だとケイジに当たる!ボクは咄嗟に飛び出てケイジを庇った。魔力のレーザーが体を何度も貫く。
神話詠唱の魔法か…痛いなあ…ボクはゲートオブアヴァロンから極大零呪を取り出して体に振りかけた。焼かれた傷が完治していく。ケイジを庇ったままだったな。身をはがす。
「おい!ミユキ。大丈夫だったのか?」
「とりあえずはね。こいつは難敵だ。ボクの後ろに下がっていろ。ケイジ。」
また魔法陣にエネルギーが充填されていく。
「四重連奏魔力砲発射!」
魔力の奔流がボクを襲う。ゲートオブアヴァロン…無銘神話楯。無銘の神話上の楯で魔力攻撃を防ぐ。
「ゲートオブアヴァロン!ゲイボルグ!射出。」
ボクは魔法の槍をレオーネに向かって放った。防御呪術で防ごうとするが何十にも分かれた槍の穂先を防ぎきる事は出来なかったようだ。
「ゲハぁ…ハァハァ…ヒーリング!まだ終わってないわ!これからよ。」
レオーネはヒーリングで態勢を立て直した。
中々しぶとい奴だ。ボクは神雷刀に手を掛けた。亜空跳躍!レオーネの目の前にワープし、即座に切りつける。反応出来ないレオーネは心臓を穿たれていた。
「ゲハ…ゴハッまだ主様にお返しが出来ていないのに…ここで終わるなんてね。フフフ…貴女も道連れですわ。」
そう言うとレオーネが抱き着いてきた。彼女のオドは暴走を始めた。ク…距離を開こうにも亜空跳躍が封じられてしまっている。レオーネは魔力を暴走させ自爆した。ボクに抱き着いたまま。ボクは全身の骨を骨折した。
「ハァハァ…ようやく死んだか。魔術師風情がやるじゃないか。」
「大丈夫か?おい…死ぬなよ。ミユキ。」
倒れているボクにケイジが飛びついて来る。ボクはどんな致命傷でも回復する手段を持っているっていうのにまったくこいつは心配性だな。
「大丈夫だ。ケイジ。離れていろ。ゲートオブアヴァロン…エクスカリバーの鞘。」
持ち主が傷を受けないという魔法の鞘を召喚した。これで致命傷でも治癒していくだろう。
それにしても恐ろしい攻勢だ。後何人の英雄が居るか知らないが命が何個あっても足りない気がする。
傷の治療は三十分程で終わった。ボク達は結界で護られた宿屋に戻るとその日は休みについてしまった。
ひとつ女の話をしよう。その女は孤児院を経営していた。その孤児院では園児達は十五を過ぎると何処かへと卒業していった。たった一つの例外もないはずだった。
その卒業生は皆英雄召喚の生き餌となっていた。
たった一人だけ空っぽな生徒が居た。居るのか居ないのかも分からない生徒。その名を×××という。何処にでもいそうな生徒だった。彼だけは彼女の英雄の生き餌になる前に孤児院を飛び出した。まだたったの十歳と言う若さで。
これが十年前の話だ。孤児院は今でも経営されている。そしてその地下では英雄の召喚を維持するために死骸まで貪り食われている子供達がいる。今でも惨劇は続いている。
女は今でも子供達に慈愛の眼差しを向けながら餌さとして冷静に算定している。次の英雄を召喚する餌はどれ程必要だろうかと。女は英雄を呼んで戦わせた。人間か魔物か神様かを問わず。手元にある魔法のデバイス…英雄召喚装置を用いて様々な英雄を呼んだのだ。これは人類史崩壊の引き金になった禁忌の道具である。
黒歴史では大量の英雄をエネルギー源とした魔術的な破壊兵器が世界中に伝播した。その兵器が強力だったのは大量の英雄をエネルギー源とすることで太極に接続していたからである。英雄の手足を切り取り、首と胴体だけにした状態で大量に動力炉に接続。そうすると動力炉は擬似的な太極炉と言っても良い代物へと変貌する。
そして物理法則を無視したエネルギーを射出する兵器として機能するのだ。世界中に広まった太極兵器は一瞬で人間の文明を塵と変えてしまった。人間自体は辛うじて生き延びたが、神を冒涜する所業や英雄の究極の侮辱が問題視され、人類の知性を退化させる戦艦の主砲が月の神々の坐から発射された。
こうして人類は滅亡したに等しい状態になった。それから一万年経った。
この女は何も知らずにただの女の直感で太極に至る方法を確立させようとしている。それは英雄をエネルギーとしてぶつけ合わせる事。即ち英雄同士で衝突を引き起こす事に他ならなかった。
女は英雄を殺し合わせる事で性行を越える快楽を得ていた。本物の快楽殺人者だったって訳だ。
その悪夢の様な目論みは卒業を早めにした俺へと伸びていった。
カインポリスでは伝説が生まれた。究極黄金巫女という伝説の英雄がいる。それがラースフィールドを一網打尽にして解散させたらしい。その噂は女のもとに届いていた。噂好きな死霊魔術師の友人からだった。黒歴史の残り香の電話で会話する。
「そう言うわけで明らかに英雄を使役している奴が居たのさ。秘匿も何にもしないで野ざらしにしているんだ。信じられないだろう?」
「ええ…とても美味しそうな英雄ですね。是非こちらに来てほしいものね。」
「あいつらはそうだね。アヴァロンを探していたよ。釣りたいならそれで釣れば良いんじゃないかな。私の方から声を掛けておこうか?いつも素材を提供して貰っているよしみもあるしね。」
「それは良いわね。アヴァロンを探す夢見る勇者。きっと貶めたら最高の味がするわ。最後の最後にね。」
女はニタリと笑う。自分の運命の幕が閉じるかもしれないというのに。太極に至る確信を得たからだろうか?
きっとそれは違うだろう。ただ選りすぐった自分の英雄をぶつけるサンドバッグを見つけて燃えたぎっているのだ。ドス黒い快楽にまみれた欲望が。そしてその行為は太極への扉に遂に至ろうとしていた。
俺達は五日間の退屈な旅を終えカインポリスの町へと戻っていた。町では既にラースフィールドが壊滅した事が話題になっており俺とミユキはまるで神様のように持て囃されていた。
「貴方達こそ真の勇者だ。いつまでもカインポリスに居てください!」
「究極黄金巫女様!万歳!カインポリスは貴女達の第二の故郷になるくらい、貴女達を受け入れています。」
「究極黄金巫女様!万歳…」
民衆の喝采はいつまでも続いていた。
最初は嬉しそうにしていたミユキだが、途中から飽き飽きしてしまったようだ。
「ケイジ。ボクは良くこういう喝采を浴びることには慣れていたがここまですごいと困ってしまうな。流石に喜びすぎだろう。」
「町を救った英雄なんだ。仕方ないんじゃないか?それにしてもラースフィールド壊滅の情報なんて何処から聞いたんだかな。」
「噂好きがいれば広まるなんてあっという間さ。何せ生きたまま逃げた兵士が二千人もいるんだしな。その内の何人かはカインポリスにも来ているんだろう。」
町はまだ日が上っており明るい。町をプラプラ歩いてみる。目抜通りにも活気が戻ってきた。あの死霊魔術師の店もあるが俺達は無視して通りすぎようとした。
のだが、声を掛けられる。
「旦那達!大層な噂になっているじゃないか!ラースフィールドを壊滅させたらしいな。やるじゃあないか!」
ミユキが口を開く。
「ようやくボクの力が分かったようだね。死霊魔術師よ。お前には用はない。さらばだ。」
「ちょっとまった。ちょっとまった。そこまで露骨に避けないでくれよ。良い情報が入ったんだ。聞きたくないのかい?」
「情報の種類によるね。アヴァロンへの到達方法なら金を払ってでも聞こう。」
「そうさ!そのアヴァロンに関する手がかりさ。私の知り合いの魔術師に太極を目指している奴が居てね。そいつならアヴァロンに到達する方法を知っているらしいんだ。是非一度会ってみないか?」
「太極…?胡散臭い奴だな。まあ良い。ケイジ。金を払え。金貨十枚で良い。」
俺はミユキに促されて死霊魔術師に金を払った。
「結構な金を簡単に渡してくれるね。一ヶ月分の生活費は下らないよ。」
「フン。価値のある情報には金を払う。それだけだ。それでその魔術師はどこの町にいるんだ?そして名前は?」
「フォールブリーズの町さ。ここから東へ二十日歩くとたどり着けるよ。その魔術師はメルセデスと名乗っていたね。私の旧友だ。」
「よしこんなもので良いだろう。ケイジ。フォールブリーズの町に向かうぞ。良いな。」
「ああ…大丈夫だ。ここを離れよう。」
「それではな。死霊魔術師。ゆめ人を殺そうと思うなよ。」
「はいはい。ギアスで縛られているから大丈夫よ。心配御無用。」
そう言葉を交わすと俺達は死霊魔術師の店を離れていった。
正直言って大部胡散臭い。フォールブリーズは元々俺が暮らしていた町だった。その町の孤児院で十歳まで暮らしていた。が、しかし急に放浪したい欲求に駆られて俺は孤児院を飛び出した。それからの十年間は様々な町を放浪する生活だった。
俺は空っぽでずっと自分を満たしてくれるものを探していたのかも知れなかった。
今は物欲に殺害衝動、それにミユキへの愛情で俺は満たされている。ようやく普通のフリができるようになったと言うことだ。
またあの町に戻る事になるとは…先生は元気だろうか。
先生は若い女性一人で孤児院を経営していた。何処か乾いた印象のある人だったが、孤児達に分け隔てない愛情を与えていた。孤児院の卒業は十五歳で皆羽ばたいていった。しかし何処にも卒業生の姿を見たことはない。
町に飛び出してからも何処にも見当たらないのでそれだけが不思議だった。
まあ気にしても仕方がない事だ。皆元気にしていると信じたい。
俺のように世捨て人のような生活を送っているのかもしれないな。
俺にはミユキがいるがいない人生…一人十五歳で世間に放り出されることは残酷極まりないと思う。
町を歩きながら考える。カインポリスの宿に戻ってきていた。宿には荷物を残したままにしていた。残っている荷物を片さなければな。俺は夢想から覚めた。
俺とミユキは自分達の荷物を片し始めた。洋服や日用品だ。言葉もなく片し終えると俺達は宿を出ようとした。宿屋の親父が感極まった表情をしている。
「旦那達!また泊まりに来てくれよな!カインポリスの住人としてあんたらをもてなせたことが最高に嬉しいぜ。」
「ああ…またの機会があれば頼むぜ。親父。」
そう言うと俺達は宿屋を出た。そのまま目抜通りを歩き正門に向かって行く。正門でも俺達は歓迎を受けた。番兵が話し掛けてくる。
「あんた達はカインポリスの誇りだ。いつでもこの町に戻ってきておくれよ。いつまでも待っているからな。究極黄金巫女様!万歳!」
「ありがとう。またな…いつかまた戻ってくるよ。」
「ボクの事を毎日褒め称えると良い。いつの日か天界から加護をやろう。」
番兵とも別れを告げると町の外に出た。荒涼とした荒れ地が広がっている。街道だけが残っている。どこの町も似たような光景だ。町の外はひたすら荒れ放題だが、街道だけはきちんと整備されているのだ。
誰がやったのかは分からない。それこそ神様が力を貸して整備したとしか思えないな。
後は田畑がポツポツとある以外はたまに古代遺跡が残っているのだ。ミユキとの出会いも古代遺跡からだったな。あの吹雪の日に彼女と出会わなければ今の俺は無いだろう。
俺達はひたすら歩いた。景色は似たような光景が続いていて飽きてくる。
ミユキが不機嫌そうに話し掛けてくる。
「ケイジ。次の町では英雄同士の闘いに巻き込まれるかもしれないぞ。」
「は?何だって。なんでそんなことがわかるんだ?」
「以前に会った夢見の大魔術師の予言でな。いつか英雄同士の闘いに巻き込まれるかもしれないと言われているんだ。それにボクの千里眼が疼くんだ。英雄同士の闘いが近いのだろう。」
「俺はどうしたら良い?君達の闘いに参加しても良いのか?」
「死んでも良いならそうしろ。皮肉な事にアヴァロンは肉体を持ったままアクセスする事は不可能だ。死んでしまった方が早い。今すぐに死ぬか、アヴァロンで死ぬかの違いだ。」
「できればアヴァロンで穏やかに逝きたいな。それに俺はアヴァロンに行かずにまた放浪の旅に出るかもしれない。それでもミユキを放っておく事は出来ないよ。俺も闘おう。」
「ケイジは本当にお人好しだな。まあ良いだろう。この先の闘いではお前も全力で闘うんだ。良いね?」
「分かったさ。俺も全力を出すとしよう。」
ハァ。ケイジはアホだ。英雄同士の闘いに巻き込まれると警告しても平然としている。かといっても命を捨てる覚悟が有るわけでも無いと来ている。
どれだけボクの事が好きなのかは知れないが、また空っぽの状態に変わりなくなりつつある。
ボクに対して盲目的過ぎるのだ。もっと死にたくないとか逃げ出したいとか弱音を吐いても可笑しくはないのに。
もしかして英雄同士の闘いでボクが絶対に死なないと思っているのだろうか?
それは大きな誤算である。確かにボクは最強のカードだが撃ち合いや切り合いで遅れを取ることは普通にある。
もしかしたら死ぬかもしれないのだ。ボクはまるで慢心は戦闘においてはしていないがそれでも死ぬかもしれない。
だから未来が見えなくて千里眼が疼くのだ。
フォールブリーズの町にどれ程の英雄が待ち構えているかは知らないがただ者じゃないだろう。
英雄…とはその時代その時代で偉業をなした歴戦の強者である。宝貝を必ず持っているわけではないが、それに匹敵する技術であったり資質を持っていたりするのだ。
それが何人も待ち構えてボクと殺し合いをした場合、ボクの勝筋はまるで分からなくなる。
ゆめ油断をしないことだ。油断は今回死に直結するだろう。
そもそも英雄を用意して襲い掛かってくる召喚者とは誰なのか?太極を目指すと言うメルセデスという魔術師が一番怪しい。
太極を目指すためには英雄の様な高マナ生命体…精神生命体に近いものを大量に集めて対消滅させるのが手っ取り早いのだ。人間の身でこの英知に到達しているとすれば、英雄を何らかの方法で大量に召喚して手駒に置いておくだろう。
後はぶつけ合わせるだけで勝手にエネルギーを引きずり出す事が出来る。ボクは太極に至る為のエサにされる可能性が高いのだ…
暗澹とした気持ちでボクはフォールブリーズの町への旅路を歩いて行った。空は快晴だがボクには暗雲が立ち込めているように見える。
アヴァロンへの道筋を失ってもいいならフォールブリーズを目指す必要も無いのだが、ボクはどうしても今の天界に行ってみたかったし、この荒れている現世にこれ以上興味も無かった。死ねば魂はアヴァロンに帰り、究極黄金巫女の本霊に統一されるだろうという事は分かっている。そうすれば本来の記憶や経験に合一する形でボクの意識が溶けてゆくだろう。
もしケイジが死んでしまってもボクなら見捨てずにアヴァロンに導く。それは確かな事だった。ボクといっても本霊になるだろうが、ボクの為にここまで身を捧げ危険を共にした勇者を見捨てることは無いだろう。そう願いたいものだ。
ケイジに話しかける。
「ケイジ。君は死ぬのが怖くないのかい。次の闘いでは本当に死ぬかもしれないんだぞ。」
「ラースフィールドとの闘いで既に死への恐怖心は麻痺してしまったよ。あれが俺の人生最大の危機だったね。それ以上は無いと思う。英雄と闘って死ぬとは思えないな。なんせ君が負けるビジョンが思い浮かばないもの。」
「お前は愚かだな。ケイジ。上には上が居るものだよ。この先どんな英雄が待っているかも分からない。それは死に等しい危険なんだ。引き返すなら今だぞ。どうする?アヴァロンは他の方法で探してもいいじゃないか。」
「君がここまで弱気になるなんて珍しいじゃないかミユキ。…俺は引き返さない。フォールブリーズは自分の育った町だ。そんなに危険な英雄が闊歩しているなら猶更放っておけないよ。」
「そうか。そう言う所があったな。ケイジ。お前は優しすぎるよ。ボクの我儘に振り回されて、今度は死ぬかもしれない闘いにも挑もうとしているのにどうしてそんなに穏やかに笑っていられるんだ?」
笑顔を浮かべているケイジ。
「君に出会っていなかったら俺の人生死んだも同然だったからな。それがドラゴンを倒して魔王を倒して…ラースフィールドを壊滅させて…十分に修羅場は潜り抜けたさ。だからもう大丈夫だ。俺は恐れないよ。もし君が死んでも最後まで闘い抜こう。約束だ。ミユキ。そして絶対に君を死なせない。君が死ぬときは俺が死ぬ時だよ。」
ボクはそこまでの覚悟をしていたケイジに愕然とした。もう掛ける言葉は無い。ボクはケイジの腕をギュッと抱きしめると押し黙った。ケイジは驚いたようだが嬉しそうに歩いている。
それから何日か過ぎた。ボク達の旅路を邪魔するものは何も無かった。目標地点のフォールブリーズは目前だった。
フォールブリーズに辿り着いたが…まるで戦場になる為の町のように辺りは神殿が形成されていた。町の人間全体を魔術のエサとしているのだろう。人っ子一人いない。
とんでもない街に辿り着いたものだ。どれだけ不味い状況かケイジは気づいていない。
この町はボク達が来るのが分かっていてそれを待ち伏せするためだけに整えられたかのような不自然さが漂っていた。
いつどこから英雄が襲ってきてもおかしくは無い。
「ケイジ。気を付けろ。英雄がどこから襲ってきても不思議ではないぞ。」
「ああ…分かっている。町に一人も人間が出歩いていない時点で俺の知っているフォールブリーズではないな。この町も孤児院も犠牲になってしまったか。」
そう言葉を交わしている所に敵が現れた。空中を飛びこちらに駆け抜けてくる竜騎兵だ。おそらくどこぞの神話の英雄だろう。
ドラゴンに乗って急接近してくる!
「ケイジ!お前の対竜狙撃銃で叩き落せ!」
「動きが速すぎて狙いがつけられないかもしれないがやって見る。」
ガコンと重い発射音が木霊する。竜騎兵の胴体に弾が着弾した。腹に穴が開き落下する竜騎兵。地面に叩きつけられ血を吐くがまだ死んではいない。むくりと立ち上がると槍を構えた。
ケイジは継続して対竜狙撃銃を速射するが竜騎兵は槍を振り回して全て無効化してしまった。
ボクがやるしかないわけだ。ゲートオブアヴァロンを開帳して宝貝を射出する。竜騎兵は捌き切れずに胴体と足に宝貝が刺さった。即座にファンタズムボムで起爆する。
上半身だけが残った竜騎兵…口惜しそうな表情を見せながら無へと帰っていった。
町の上空には今気が付いたが黒い渦があった。そこに英雄の魂は吸収されていった。恐らくあれが太極に至る為の門だ。恐らく敵の魔術師は独力で太極に至れるだけの英雄を揃えているに違いなかった。だが、英雄も人間だ。いきなり自害しろと言っても言う事を聞かないだろう。そこでボク達に間引かせるというわけか。
余りにも自分勝手で独善的な妄想にボクは慄いた。こんな無茶苦茶をやるから人間は勝手に滅びるのだ。人類史崩壊の引き金もこの一件を裏で操っている魔術師のような奴が主導していたに違いない。
一体何人の英雄を呼び殺し合わせたというのだろうか?そして今何人残っているのだろうか。
俺達はこの町について最初の英雄を倒した。目的はメルセデスという魔術師に出会う事だ。恐らく今回の英雄騒動の黒幕が奴なのだろう。町全体の人間を燃料に英雄を呼べるだけ呼んで闘い合わせるとは正気の沙汰ではない。
奴からアヴァロンの情報を引き出さなくてはならない。殺す前に聞きたださねば。
俺の殺害衝動は窮極に高まっていた。今ならどんな英雄でも屠れる。その位の強いどす黒い意志が俺の中を渦巻いている。
「ミユキ。待機場所を決めよう。安全な場所が好ましいが…。」
「そうだな。これからも英雄は襲ってくるだろう。宿屋で良いんじゃないか。最悪その中で闘う事になりそうだけれどね。」
「分かった。まず宿屋に向かおう。」
俺達は…ミユキ曰く神殿が形成されている中避難場所を求めて宿屋に向かっていた。
宿屋までの間に敵の気配は無かった。宿屋に上がる。宿屋の主人の姿は見当たらない。
旅の荷物を置くと俺達は一時間程休憩した。
英雄は宿屋の中には入ってこないようだ。
俺達は後ろ髪を引かれながらも短い休憩を終えると探索の為に外に出た。
宿屋の外には出てくるのをまるで待っていたかのように赤い肌に黒い髪の大男が居た。
男が口を開く。
「俺の名前は関羽。貴君の名前は究極黄金巫女だな。さあ屠り合おう。我が主君もそれを望んでいる。」
「ボク達は話を聞きに来ただけだ。君の主君の所まで勝ったら案内してくれないかな?」
「それは出来ないな。ここで貴君らは死ぬのだから。覇!」
そう掛け声を掛けると男は青龍偃月刀を取り出した。関羽は美しい槍舞を舞った。ミユキをその槍捌きが襲う。
直突、払い、切り込み、切り上げ、二連突、払い、直突、払い、連続三段突。
ミユキは寸での所で身を躱していく。槍舞が終わると関羽に隙が出来た。
俺は関羽の頭を目掛けてオートショットガンを乱射した。
ブシャグチャヌチャバキャグチュバシャ…生々しい肉を砕く音が関羽から聞こえた。もだえる関羽…ポロポロと散弾の弾が頭から出てきて傷が塞がった。
「珍妙な技を使うな。戦士よ。男ならその刀で闘って見せよ。」
そういうと関羽は俺の方を向くと突進してきた。急ぎ対竜狙撃銃を構えなおす。
胴体でもどこでもいい!当たれ。そう祈ると俺は対竜狙撃銃を発射した。ガコンという鈍い発射音。バグチャという肉の弾ける音。関羽の額を撃ち抜いた。脳漿が弾け飛び、関羽の体はブルブルと震えてその内動かなくなってしまった。魂が舞い上がり頭上の黒い渦に吸い込まれていく。
ミユキは心底驚いているようだった。
「まさか人間の武器で英雄を撃ち殺せるとはね。一時的に英雄の行動を阻害できるくらいだと思っていたよ。やるじゃないか。ケイジ。」
「ありがとう。ミユキ。俺も突然の事だから咄嗟に攻撃しただけだった。まったくの偶然だよ。」
「偶然は必然を産む。頭を狙撃された英雄は死ぬという必然が生まれた。ケイジ。それでも攻撃の対象にお前が選ばれると不味い。気を付けて闘うんだぞ。」
「分かったよ。ミユキ。気を付けて慎重に行動するとしよう。」
俺達は町の探索を続けたが、相変わらずフォールブリーズの町は人っ子一人も居なかった。
現在は目抜き通りを抜けて路地裏に居る。ここにも何もいないかと思い出ようとしたその瞬間。俺は何かに羽交い絞めにされた。暗殺者の英雄?
俺は叫んだ。
「クソ!放せ。この野郎。」
ミユキが気付き攻撃態勢に入る。
「クク…究極黄金巫女よ。お前のマスターは捕らえさせてもらったどうする?さあ考えろ。あがけあがいて死ぬが良い。我が主も喜ぶ。苦悶の表情に塗れながら死ぬと良い。」
ボクとした事が迂闊だった。ケイジを捕らえられた…相手は人型…不定形でない限りはこれで死ぬはずだ。
ボクはケイジの後ろの足元にゲートオブアヴァロンを開くと宝貝を射出し謎の英雄を串刺しにした。
苦しみもがく英雄。と手が緩みケイジを離してしまう。あっけない終わりだ。連続でゲートオブアヴァロンの宝貝を射出した。英雄は針だるまの様になり絶命した。
「ありがとう。ミユキ。死ぬかと思ったよ。」
「気を付けろよ。ケイジ。英雄は暗殺者めいた奴も混じっているんだ。さっきの奴みたいにな。」
「それにしても本当に英雄の数が多いな。どうなってるんだこの町は?今までには一、二体しか見たことが無かったっていうのに。」
「頭上の黒い渦を見ろ。あれが太極に繋がる門だ。あそこに大量の英雄の魂を捧げて、メルセデスっていう魔術師は太極に至ろうとしているんだ。だから大量の英雄がいる。闘わせて殺させるためにね。アヴァロンの情報が手に入るとかそんなものを超越している。太極を乗っ取れば凡そこのイスワルド上で不可能な事は無いだろう。究極の魔力資源だ。ボク達は戦いに勝ち抜いて太極を手に入れるのが目標だ。」
「俺は魔術の素養が無いからさっぱりだが、敵が出てこなくなるまで倒し続けろって言うんだろ。分かったよ。いつも通りの仕事だ。」
「そんな簡単な事じゃないけれどそれでいいよ。難しい事はボクが請け負うとしよう。今日の所は一旦宿屋に戻ろう。日も暮れてきた。また明日に備えるぞ。」
「宿屋が襲撃される恐れは無いのか?」
「ボクが簡単な結界を張っておくよ。それがあれば敵は侵入してこれないね。後何人英雄が居るんだが分かったもんじゃないけど。こっちはこっちのペースで闘わせてもらおう。」
そう言葉を交わすとボクらは路地裏から出て宿屋までの道を戻っていった。
…宿屋の前に魔術師の女が居る。英雄だ。
「貴方達が主様の探していた英雄とそのマスターね。ここで消えなさい。我が名はレオーネ。ミケーネ一の魔法使いよ!」
女の周りに魔法陣が何重にも展開される。魔法レーザー一斉発射!
まずいこの位置だとケイジに当たる!ボクは咄嗟に飛び出てケイジを庇った。魔力のレーザーが体を何度も貫く。
神話詠唱の魔法か…痛いなあ…ボクはゲートオブアヴァロンから極大零呪を取り出して体に振りかけた。焼かれた傷が完治していく。ケイジを庇ったままだったな。身をはがす。
「おい!ミユキ。大丈夫だったのか?」
「とりあえずはね。こいつは難敵だ。ボクの後ろに下がっていろ。ケイジ。」
また魔法陣にエネルギーが充填されていく。
「四重連奏魔力砲発射!」
魔力の奔流がボクを襲う。ゲートオブアヴァロン…無銘神話楯。無銘の神話上の楯で魔力攻撃を防ぐ。
「ゲートオブアヴァロン!ゲイボルグ!射出。」
ボクは魔法の槍をレオーネに向かって放った。防御呪術で防ごうとするが何十にも分かれた槍の穂先を防ぎきる事は出来なかったようだ。
「ゲハぁ…ハァハァ…ヒーリング!まだ終わってないわ!これからよ。」
レオーネはヒーリングで態勢を立て直した。
中々しぶとい奴だ。ボクは神雷刀に手を掛けた。亜空跳躍!レオーネの目の前にワープし、即座に切りつける。反応出来ないレオーネは心臓を穿たれていた。
「ゲハ…ゴハッまだ主様にお返しが出来ていないのに…ここで終わるなんてね。フフフ…貴女も道連れですわ。」
そう言うとレオーネが抱き着いてきた。彼女のオドは暴走を始めた。ク…距離を開こうにも亜空跳躍が封じられてしまっている。レオーネは魔力を暴走させ自爆した。ボクに抱き着いたまま。ボクは全身の骨を骨折した。
「ハァハァ…ようやく死んだか。魔術師風情がやるじゃないか。」
「大丈夫か?おい…死ぬなよ。ミユキ。」
倒れているボクにケイジが飛びついて来る。ボクはどんな致命傷でも回復する手段を持っているっていうのにまったくこいつは心配性だな。
「大丈夫だ。ケイジ。離れていろ。ゲートオブアヴァロン…エクスカリバーの鞘。」
持ち主が傷を受けないという魔法の鞘を召喚した。これで致命傷でも治癒していくだろう。
それにしても恐ろしい攻勢だ。後何人の英雄が居るか知らないが命が何個あっても足りない気がする。
傷の治療は三十分程で終わった。ボク達は結界で護られた宿屋に戻るとその日は休みについてしまった。
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