ものひろいの能力もらったけど魔法と恋愛に夢中です。

紫雲くろの

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中等部編

第41話 お風呂と湯気と

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長い悪夢から目が覚めた俺はあたりを見渡す。おそらく屋敷の寝室だろう。

「暗いな」

あれからどのぐらい寝ていたのか分からないぐらいに、外は暗くなっていた。
再度周りを見渡すがリンやロモの姿がない、自分の部屋に戻ったのだろう。

着ている服が汗で濡れており不快感を覚えた。
「風呂入ってスッキリすべきだな。」

寝ぼけつつもベッドから起き上がり風呂場を目指す。
あれからどうなったのかは分からないが、今はこの不快感を取り除くことを優先する。

屋敷のホテルのような大浴場に期待しつつ、俺は腰にタオルを巻いて風呂場に入る。
和風の雰囲気を醸し出す重厚な石畳のような床に、ヒノキのような木を用いた浴槽が視界に広がる。
しかしその大きさからか白く濃い湯気が大量に発生して奥までは見渡せないようだ。

とりあえず体を洗ってから露天風呂を堪能することにする。

壁際に備え付けられたシャワーの元へ行くと、漂う湯気の中からタオルを巻いて椅子に座る死んだ姉が現れた。

「姉ちゃん?」

「えっ!?」

悪夢の件もあり、俺は急いでその人に近づき抱きしめた。

「きゃっ!」

その衝撃で二人とも床に倒れ込んだ。

「ご、ごめん俺・・・守れなかった・・・。」

「こ、コウさんちょっと・・」

俺は抱きしめた人物の声に聞き覚えがあり、顔を見返す。

「え・・・リンか!」

「はい・・・目覚めたんですね。その・・・」

「あぁ、ごめん・・・・今離れ・・・・!?」

リンから急いで離れようとすると逆に抱きしめられた。

「私・・・心配したんですからね・・・。」

「お、おい。」

涙目の俺を見て何か察したのか、リンは優しく話しかけてくる。
「泣きたかったらこのままでいいですよ。今・・・私たちだけなので。」

「ありがとう・・・」

そのまま少し泣いた後、外の露天風呂で事情を説明する。
満月が優しく露天風呂を照らしていた。

「そうですか、お姉さんがいたんですね。」

「あぁ」

「救えなかったから・・・他の人のために、努力したのは凄いですよ・・・」

「ありがとう。」

そしてリンは悲しい顔をして呟く。
「私も・・・弟がいたんです。」

「まさか・・・」

「はい、コウさんに似てまして・・・」

「そうなのか・・・」

「なので・・・私も・・お願いしてもいいですか・・。」

「あぁ。」

リンが泣きながら抱きしめてくる。

「わ、私もあなたを守れませんでした・・・ごめんなさい・・・。」

リンの頭を撫でる。
「ありがとう・・・姉ちゃん・・・・」

「うん・・・私も頑張らなきゃね・・・」

しばらくしてリンが顔を上げて俺の方を見てくる。

「やっぱり私・・・コウさんが好きです。」

「俺もだ・・・・」





「随分と仲が良いようね・・・・」


後ろから声がして振り向く。

そこにはタオルを巻き、腕を組んで怒り顔の人物がいた。
まさに浮気現場を嫁に見られたかのように戸惑った。

「アカネ!?これは不可抗力ってやつでだな・・・」

「か、会長!?どうして・・・」

「防犯カメラにバッチリ映ってるわ。」

「マジか・・・」

「それにね・・・あそこ」

アカネは近くにあった木を指差す。
すると木が揺れて隠れていた人物が姿を表す。

「覗きか・・・そしてお前もタオル・・・」

ロモは照れながら呟く。

「違うにゃ・・・」

アカネとロモは湯船につかる。

「いい湯にゃ~」

「えぇ。」

正直、男一人でこの場の空気は気まずかった。

「そろそろ上がるか。」

「そうですね。」

するとロモに腕を掴まれる。

「だめにゃ。」

「逆上せてきたんだが・・・・」

「なら・・・体を洗って欲しいにゃ・・・」

「は?アカネかリンでいいだろ・・・。」

「えっ、私ですか?」

ジト目のロモが呟く。

「あれだけイチャイチャしといてそれはないにゃ。」

「そうね。」

「はぁ・・・」

ロモの背中をタオルで洗う。

「にゃん・・・」

「変な声出すよ・・・なんか飼ってた猫洗ってるみたいで楽しいな。」

その長い毛並みのせいか、少し擦るだけでかなりの泡が発生する。結構楽しい。
俺は楽しくなってきたのでさらに擦る。

ロモが息を切らしながらうっとりとした表情でこちらを見つめる。

「こ、コウ激しいにゃ・・・もっと優しくにゃ・・・」

「お前、ここで変な言葉使うんじゃねーよ!」

「にゃぁ・・・前もお願いにゃ」

「前は自分で洗ってくれ・・・・」

ロモはそれを見透かしたかのように得意げな顔でつぶやく。

「照れなくても、正直になってくれてもいいにゃ。」

「なら風呂から上がるぞ。」

ロモは不満そうに呟く。
「にゃ・・・」

風呂から上がり寝室で集まる。

「モニカが居ないようだが・・・」

「あそこにゃ・・・。」
ロモが気まずようにベッドの方を指差す。

ベッドを見ると掛け布団が何やらモゾモゾと蠢いている。
すでに嫌な予感しかしなかったが、俺は恐る恐る掛け布団を退ける。

そこには俺の使っていた枕を抱えながら匂いを嗅ぎ、嬉しそうなモニカが居た。

「コウさんの匂いが・・・はぁ、はぁ・・・」

よくアニメで残念なヒロインが出てくるが、こういった子なのだろう。

「うわぁ・・・。別居な。」

その言葉を聞いたモニカが必死に懇願してくる。

「そ、そんな!捨てないで・・・」

「そんなこと言われてもなぁ・・正直キモい・・・」

前世でのチエミもこうだったのかも知れないと考えると鳥肌が止まらなかった。
デスマーチが終わると意識が無くなるように寝てしまうので、何をされても気が付かないからだ。

あとでアカネに防犯カメラの増設とその他セキュリティーを強化して貰おう。


モニカは泣き出す。
「キモいって・・・うぅ・・・」

「コウ言い過ぎにゃ・・・」

「でもお前も嫌だろ、俺があんな事してたら・・・」

ロモは想像したのか赤くなりながら否定する。

「コウならいいにゃ・・・なんなら私自身を直接嗅いでくれても・・・」

何かを待っているかのように両手を広げている。

「お前はまともだと思っていたんだが・・・やはりエロ猫だったか・・・」

「にゃー!エロ猫じゃないにゃ!」

地味にモニカがこちらへと近づいてきていた。

「とりあえずモニカはじっとしてろ・・・」

「はい!」

「そろそろいいかしら?」
アカネが話しかけてくる。

「あぁ」

「全員集まったようね、ナシェの件だけど。」

「場所がわかったのか!?」

「えぇ。ここよ。」
アカネはタブレット端末に表示された場所を指差す。
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