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第一章:出会いの章 〜導きのルート設定〜
第十話 Going my way
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三日月ってなんだ? 満月、新月、半月、三日月……それなのか、お月さま? 夜、お月さまを散歩するということなのだろうか?
***
「テレワーク、私も会議に出て良い?」 飲んでいた麦茶を吹き出した。おとなしくしていてください。
テレワークが始まり、進捗を確認する。背景は映らないように設定し、画面には僕だけが映った。 仮想シミュレーターは順調に稼働しており、企業と大学の研究チームが軽量素材の試行錯誤を続けている。
「それについては、医療で使われている人工骨、人工関節、人工軟骨、および人工筋肉に置き換えれば大幅な軽量化が可能です」
(ん? なんだ……? 背中に何か、柔らかいものが……) 振り返って、彼女と目が合う。 (な、何をしているんだ、この子は――)
「だって、つまんないんだもの」 美野里が僕の背中に、後ろから胸を押し付けていた。感触でわかる。この柔らかい膨らみが、ダイレクトに背中に伝わってくる。
WEB会議中に、変な声が漏れてしまった。 「すみません、いや、少し体調を崩してしまいまして。風邪ですかね」 「熱を測って、早めに休んでください。今日はこれで終わりにしましょう」
会議が終了した。
◇
(ふう、と息をついて後ろを見ると……) 彼女は白衣の下に、何も着けていなかった。 「羞恥心ってものがないのか?」 「……だって、つまんない、つまんない、つまんないの。未来、風邪ひいちゃったの?」 首を傾げて聞いてくる。
「引いてない! とにかく、下着をつけなさい……」 パソコンに視線を戻すと、「つけたよ」という声。 「もう、ほら、こっちを見て確認してよ」 背中を指で摘ままれた。
パソコンを閉じ、振り返る。 「着けたなら良いが……って、付けてないじゃないか!」 白衣の合わせ目から覗く谷間に、どうしても視線が吸い寄せられる。
「未来のエッチ!」(ムフフ、大勝利!) 「ねー、ねー、エッチなことをしようか?」 目を細くして、クスクスと笑っている。
「しません!!!」 (なんでそうなるんだ。そもそも、これを聞いても良いよな) 「お家、どこなの?」 元気な笑顔で「内緒」。 「秘密、だよね。……って、そんなことあるかーい!」
すると、一枚のカードを見せられた。 【二宮美野里】
(……やっぱり、どこかで聞いたことがあるような)
「これを見て、私が誰だかわからないの?」 美野里がダン! と机を叩いて立ち上がった。なんだか腹が立ってきたようだ。 「シャワー浴びてくる!」 嵐のように去っていった。……早い。すぐに出てきた。また白衣一枚だ。
「ねえ、聞いてる? プレゼントは『私』なのよ。なんで私に触れたりしないの?」 「……はあ?」 「いくじなし!」
(よし、はっきり言ってしまおう!) 「恥ずかしいけど、僕は童貞なんです! やり方もわからないし、ずっと勉強と研究一筋だったんだ。……そういえば、女性と仕事以外で話すのも、君が初めてかもしれない」
「初めてじゃありませーーーーん!」 意味がわからない。「私も処女よ」 (本当だろうか、こんな美人が……)
「信じてないでしょう? 見てみる? 処女かどうか」 「……見てわかるものなの?」 「知らない……」 美野里は首を横に振った。そりゃそうだ。
(落ち着け。話題を変えないと、昼間から考えてはいけないことを考えてしまう) 「お昼はどうする? 服を着なさい。コンビニでいいかい?」
◇
「そうだ、美野里さん。銀行口座を作りに行きましょう」 「口座? 未来のがあるじゃない」 彼女が視線を逸らした。
「そうじゃなくて、美野里ちゃんの口座です」 「これ、スマートフォンでできるよ。ほら、さっきのマイナカードで。完了!」 腰に手を当て、ご満悦の様子だ。
「未来、お金ちょーーだーい」 手を差し出してきた。 「使えるかどうか、わからないでしょう?」
威圧感に押され、スマートフォンとパソコンを渡す。彼女は手際よく操作を始めた。 「ほら、見てみて未来。入金されているよ。わーい、ありがとう!」 パチパチと一人で拍手をしている。 (……送金、百万円もしたの? いや、なぜ百万円も……)
***
お昼はららぽーとへ。 アルファードを走らせ、三十分並んで「松戸富田製麺」のつけ麺大を堪能した。 「旨い!」 「未来はラーメン食べないの?」 「学生の時は食べたよ。今は久しぶりだ。旨いね」
次は、お買い物。 にっこりと微笑みながら、美野里が近づいてくる。 「未来、指輪買って! 指輪!」 「指輪って、あれだよね? 装備すると炎がバーッと出るやつ?」 「そう、それ!……って、ちがーう! パワーアップアイテムじゃないわよ!」
強引に腕を引っ張られ、宝石店へ。 「これが良い。きれい、すてき……」 (覚えておこう……。いや、なんで覚える必要があるんだ)
「おーい、未来! どこに行ったのよ。もう、ぷんぷん!」 「買ってくれば? さっき入金しただろう」 「ばっかじゃないの! 私を誰だと思っているのよ!」
(この天然、鈍感、国宝級のバカ……!)
「これが良い。この使えなさそうなバッグと、少しだけ使えそうなバッグ。あと、お財布。はい、この三点お願い!」 「え、僕が払うの?」 「おねがーーーーい、ね?」 腕に胸を押し当てられ、僕は抗えなかった。
「わーい、ありがとう! 初めてのプレゼント!」
◇
帰宅し、夕食へ。今日は早めの時間なので空いていた。 夜、彼女は大切そうにバッグを眺めていた。
「美野里、お風呂沸いたよ」 その場でバサッと服を脱ぐ彼女に「脱衣所で脱いで」と突っ込むのも、もう慣れてきた。
風呂上がり。缶ビールを開けながら、美野里がリモコンの操作を覚える。 僕のパソコンを後ろから覗き込んできた。 検索履歴には、いつの間にか『プライムビデオで見られるエッチなアニメランキング』の文字が。 「なんだこれ!」 「いいじゃない、一緒に見ようね」
しばらくして、彼女が真剣な顔で聞いた。 「明日は、会社なの?」 「会社は自由出勤なんだ。三年間はリフレッシュ休暇中だけど、週に一、二回は顔を出したいな」 「……ばっかじゃないの。休んでいいって言われてるのに。私がカリキュラムを組みまーす!」
「金曜日は歓迎会があるんだ。二十時には終わるから、二十二時には帰るよ」 「了解。二十時〇〇分に終わって、二十時〇一分には家に着くのね。わかったわ」
突然、彼女が立ち上がった。 「明日、木曜日はアンデルセン公園に行きます!」 「金曜日は、一秒だけ歓迎会に行って、即、帰宅!」 「土曜日から火曜日まで、三泊四日の旅行! 場所は、ホテル三日月!」
(さらっと言ったけど、三泊四日? 同じ部屋だよな?)
「完璧でしょ?」 「……完璧以外の何物でもありません」 「じゃあ、おやすみなさい!」
美野里はベッドに飛び込んだ。 (おじいちゃん、おばあちゃんに初めて連れて行ってもらった『三日月』。私の最初で最後の旅行……)
彼女はそのまま、スースーと寝息を立て始めた。
***
(アンデルセン公園って、子供が遊ぶ場所じゃ……) (旅行、同じ部屋。眠れるのかな、僕……) (二宮美野里。どこかで聞いたことがある。今度ネットで調べてみよう)
***
(未来、早く気づいて……。私の想い、全部知ってほしいのに) (でも、今はまだ……この時間が、ずっと続けばいいのに)
未来に本名が明らかになった、美野里。 しかし、彼女の秘めた想いに、未来が気づくのはまだ先のことである――。
***
「テレワーク、私も会議に出て良い?」 飲んでいた麦茶を吹き出した。おとなしくしていてください。
テレワークが始まり、進捗を確認する。背景は映らないように設定し、画面には僕だけが映った。 仮想シミュレーターは順調に稼働しており、企業と大学の研究チームが軽量素材の試行錯誤を続けている。
「それについては、医療で使われている人工骨、人工関節、人工軟骨、および人工筋肉に置き換えれば大幅な軽量化が可能です」
(ん? なんだ……? 背中に何か、柔らかいものが……) 振り返って、彼女と目が合う。 (な、何をしているんだ、この子は――)
「だって、つまんないんだもの」 美野里が僕の背中に、後ろから胸を押し付けていた。感触でわかる。この柔らかい膨らみが、ダイレクトに背中に伝わってくる。
WEB会議中に、変な声が漏れてしまった。 「すみません、いや、少し体調を崩してしまいまして。風邪ですかね」 「熱を測って、早めに休んでください。今日はこれで終わりにしましょう」
会議が終了した。
◇
(ふう、と息をついて後ろを見ると……) 彼女は白衣の下に、何も着けていなかった。 「羞恥心ってものがないのか?」 「……だって、つまんない、つまんない、つまんないの。未来、風邪ひいちゃったの?」 首を傾げて聞いてくる。
「引いてない! とにかく、下着をつけなさい……」 パソコンに視線を戻すと、「つけたよ」という声。 「もう、ほら、こっちを見て確認してよ」 背中を指で摘ままれた。
パソコンを閉じ、振り返る。 「着けたなら良いが……って、付けてないじゃないか!」 白衣の合わせ目から覗く谷間に、どうしても視線が吸い寄せられる。
「未来のエッチ!」(ムフフ、大勝利!) 「ねー、ねー、エッチなことをしようか?」 目を細くして、クスクスと笑っている。
「しません!!!」 (なんでそうなるんだ。そもそも、これを聞いても良いよな) 「お家、どこなの?」 元気な笑顔で「内緒」。 「秘密、だよね。……って、そんなことあるかーい!」
すると、一枚のカードを見せられた。 【二宮美野里】
(……やっぱり、どこかで聞いたことがあるような)
「これを見て、私が誰だかわからないの?」 美野里がダン! と机を叩いて立ち上がった。なんだか腹が立ってきたようだ。 「シャワー浴びてくる!」 嵐のように去っていった。……早い。すぐに出てきた。また白衣一枚だ。
「ねえ、聞いてる? プレゼントは『私』なのよ。なんで私に触れたりしないの?」 「……はあ?」 「いくじなし!」
(よし、はっきり言ってしまおう!) 「恥ずかしいけど、僕は童貞なんです! やり方もわからないし、ずっと勉強と研究一筋だったんだ。……そういえば、女性と仕事以外で話すのも、君が初めてかもしれない」
「初めてじゃありませーーーーん!」 意味がわからない。「私も処女よ」 (本当だろうか、こんな美人が……)
「信じてないでしょう? 見てみる? 処女かどうか」 「……見てわかるものなの?」 「知らない……」 美野里は首を横に振った。そりゃそうだ。
(落ち着け。話題を変えないと、昼間から考えてはいけないことを考えてしまう) 「お昼はどうする? 服を着なさい。コンビニでいいかい?」
◇
「そうだ、美野里さん。銀行口座を作りに行きましょう」 「口座? 未来のがあるじゃない」 彼女が視線を逸らした。
「そうじゃなくて、美野里ちゃんの口座です」 「これ、スマートフォンでできるよ。ほら、さっきのマイナカードで。完了!」 腰に手を当て、ご満悦の様子だ。
「未来、お金ちょーーだーい」 手を差し出してきた。 「使えるかどうか、わからないでしょう?」
威圧感に押され、スマートフォンとパソコンを渡す。彼女は手際よく操作を始めた。 「ほら、見てみて未来。入金されているよ。わーい、ありがとう!」 パチパチと一人で拍手をしている。 (……送金、百万円もしたの? いや、なぜ百万円も……)
***
お昼はららぽーとへ。 アルファードを走らせ、三十分並んで「松戸富田製麺」のつけ麺大を堪能した。 「旨い!」 「未来はラーメン食べないの?」 「学生の時は食べたよ。今は久しぶりだ。旨いね」
次は、お買い物。 にっこりと微笑みながら、美野里が近づいてくる。 「未来、指輪買って! 指輪!」 「指輪って、あれだよね? 装備すると炎がバーッと出るやつ?」 「そう、それ!……って、ちがーう! パワーアップアイテムじゃないわよ!」
強引に腕を引っ張られ、宝石店へ。 「これが良い。きれい、すてき……」 (覚えておこう……。いや、なんで覚える必要があるんだ)
「おーい、未来! どこに行ったのよ。もう、ぷんぷん!」 「買ってくれば? さっき入金しただろう」 「ばっかじゃないの! 私を誰だと思っているのよ!」
(この天然、鈍感、国宝級のバカ……!)
「これが良い。この使えなさそうなバッグと、少しだけ使えそうなバッグ。あと、お財布。はい、この三点お願い!」 「え、僕が払うの?」 「おねがーーーーい、ね?」 腕に胸を押し当てられ、僕は抗えなかった。
「わーい、ありがとう! 初めてのプレゼント!」
◇
帰宅し、夕食へ。今日は早めの時間なので空いていた。 夜、彼女は大切そうにバッグを眺めていた。
「美野里、お風呂沸いたよ」 その場でバサッと服を脱ぐ彼女に「脱衣所で脱いで」と突っ込むのも、もう慣れてきた。
風呂上がり。缶ビールを開けながら、美野里がリモコンの操作を覚える。 僕のパソコンを後ろから覗き込んできた。 検索履歴には、いつの間にか『プライムビデオで見られるエッチなアニメランキング』の文字が。 「なんだこれ!」 「いいじゃない、一緒に見ようね」
しばらくして、彼女が真剣な顔で聞いた。 「明日は、会社なの?」 「会社は自由出勤なんだ。三年間はリフレッシュ休暇中だけど、週に一、二回は顔を出したいな」 「……ばっかじゃないの。休んでいいって言われてるのに。私がカリキュラムを組みまーす!」
「金曜日は歓迎会があるんだ。二十時には終わるから、二十二時には帰るよ」 「了解。二十時〇〇分に終わって、二十時〇一分には家に着くのね。わかったわ」
突然、彼女が立ち上がった。 「明日、木曜日はアンデルセン公園に行きます!」 「金曜日は、一秒だけ歓迎会に行って、即、帰宅!」 「土曜日から火曜日まで、三泊四日の旅行! 場所は、ホテル三日月!」
(さらっと言ったけど、三泊四日? 同じ部屋だよな?)
「完璧でしょ?」 「……完璧以外の何物でもありません」 「じゃあ、おやすみなさい!」
美野里はベッドに飛び込んだ。 (おじいちゃん、おばあちゃんに初めて連れて行ってもらった『三日月』。私の最初で最後の旅行……)
彼女はそのまま、スースーと寝息を立て始めた。
***
(アンデルセン公園って、子供が遊ぶ場所じゃ……) (旅行、同じ部屋。眠れるのかな、僕……) (二宮美野里。どこかで聞いたことがある。今度ネットで調べてみよう)
***
(未来、早く気づいて……。私の想い、全部知ってほしいのに) (でも、今はまだ……この時間が、ずっと続けばいいのに)
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