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第二章:別れの章 〜迷走するルート〜

第三十話 海と花火

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 私は目が覚めてしまった。それもそうだ、ずっと寝ていた。風邪を引いてから、青森県に来る間、ずっと眠っていたのだ。疲れているのかな。寝顔がかわいい。

 そうだ、朝温泉に入れるのかな、大丈夫。ベッドの上でジャンプを繰り返して「みらい、みらい、朝だぞ、起きろ」とジャンプを繰り返していると、

 ドタン

「痛い」、大丈夫。「おはよう」倒れこんでいる未来の腕を引っ張って、そのまま海の見えるお風呂に。

 普段はなかなか脱がない未来だが、寝ぼけているのか、バサッと。私はじっくりと見てしまった。三日月で気が付いた、三本目の足。

 凄い……顔が赤くなると同時に、未来の体が引き締まっていることに気が付いた。腕や太ももは凄いなとは思っていたのだが、お腹まわりもすごい。

「ねー未来、何かスポーツとかしていたの? すごい体しているよね」触ってみる? と言われて、触れると物凄く硬かった。研究室で体がなまるから、常に筋力トレーニング、そして自分をデータとして使っていたという。

 ……わけがわからない。
 三本目の足にも興味があったが、意識してしまうと、三日月のぱくりを思い出してしまい、顔が真っ赤になってしまった。

   ***

 朝食を済ませると、海に行くから、水着を中に来て外は羽織る程度にと。
 お昼を過ぎていた。昨夜渡った大通りを抜けると、海である。

 今まで人が居なかったはずの青森県。ここは所せましと車がとまり、たくさんの人であふれかえっていた。

「十勝目ー。今年も、勝てる人はいないのか、海の男はやはりこの方なのか」となりやからスピーカーが聞こえてくる。「十三人抜き」「二十人抜き」「三十五人抜き」「誰か挑戦者は……」

「五十人抜き」
 出店回りのど真ん中で、腕相撲大会である。ガタイの良いおじさんであろうか、次々と挑戦するが、びくともせずに、「五十五人抜き、ほかに挑戦者はいませんかー?」アナウンスが流れる。

「これ持っていてもらえる?」未来は薄手の上着を脱いで、大きなガタイの良いおじさんの前に立つ。
「……えー、未来、無理だよ、良いって、十分かっこいいから」未来は振り返り、片目をつぶる。

 レディーファイト! 

 ううーーぐうう
 ぐううううー

 まったくもって五十五勝しているおじさまは動かすことができない。次第におじさんが汗をかいている。
「おー、どうしたことだ、疲れが出たのかー? 両者微動たりせず」

 違う。明らかに、未来は何もしていない。そう見えるのである。

 うをーーーおー
 うりゃーあー

 重低音の声が聞こえるが、まったくもって変わらない。

 未来は、片手をあげて、指を五本に、四、三、二、一と指をおろしていった。

 先程までザワザワしていた焼きそば店やかき氷店も静まり返っていた。

 指がグーに変わったとたん、

 ドッサ! 

「勝負あり!!! ――長年の王者がここで陥落した」とアナウンス。同時にオオー!!! と拍手が巻き起こる。

「大丈夫ですか?」と未来が言うと「あんちゃん、めちゃくちゃ強いな、手を握った瞬間に負けたと思ったが、ここまで歯が立たないとは、プロボクサーとかなのかい?」
「いえ、研究者です」とほほ笑むと、美野里が飛び込んで抱き着いてきて、すごーい、いきなりキス! 

「おーと、彼女さんなのか奥さんなのか、勝利のキスー!」

「未来、かっこいい、すごい、すごい、すごすぎる」未来は、自慢するような素振りをみせず、その場を去っていく。

 さて、海に入ろうか。私ははしゃいでしまい、海に足を入れるが……痛い、なんなのこれ? 塩辛いし、そうだ子供のころ三日月で海に入ったときと同じだ。

 未来はお腹を抱えて笑っている。「ひどい、ひ、ど、い」そこまで笑わなくてもよいじゃないの。ごめんごめんと、ビールを買ってくれるから待っていてね。
 未来は行ってしまった。

   ***

 一人ぽつりと、未来を待っていると、数名の若い人たちに声を掛けられ、ナンパだ。明らかにナンパである。
 三人に囲まれて、逃げたくなる。怖い。未来、未来早く来てーと心の中で叫ぶ。

 否定する言葉を出したつもりが、声になっていない。怖い。嫌。

 腕をつかまれそうになった時……。

「おい、やめておけ若造、殺されるぞ」と先ほどの腕相撲チャンピオンがナンパしている男の腕を握りつぶして、男たちは走って逃げて行った。その時に未来が戻ってきて。

「あんちゃん、こんな美人な奥さん一人にしたらダメだろう、しかし俺が出る幕でもなかったな、遠目で確認していていただろう、俺の出方でも観察しおって、気に食わん」
「海の男は、正義なんだぞ、海は命を懸けて、家族を守るために、そのための精進だ」

 未来は笑いながら、すべてを見透かしたように。私は、未来の腕にしがみつく。
 手を振りながら、旅館に戻ってきた。

   ***

 部屋に戻り、「未来助けに来てくれなかったの」あのおじさんが走ってきているのが見えてね、手で俺にまかせろと。海の男は凄いよね。と訳の分からない事を言うが、そういう事なのか。わかった。あのおじちゃん弱いわけでもないし、悪い人でもない。私にわかって欲しかったのね。その上で自分のほうがと……。

 海水を落として、夕食に向かう。
 お寿司だ! 前菜が色とりどりで。写真に収める。食べながら、そうだ、確かにビアガーデンの時も未来は大きな人たちを一瞬で倒した。未来は頭が良いだけじゃないのだ。
「未来、大好き」唐突に出た言葉を不思議そうに、お酒をお替りすると「食後に海に行くよ」

   ***

 部屋に戻り、私服に着替えて、外に出た。何がしたかったのかは、聞くまでもない。
 海辺に広がる大きな花火。手を握り、人がまったくいないと感じていた青森県。

 そのような事はなかった、この花火大会に大勢の人が集まり、一同が顔をあげ夜空を見つめ、新しい何かを見つけている様子に見えていた。

 花火大会が終わり、帰り道に
「どうして花火大会が開催される事を知っていたの?」バケツを借りたときにね、明日花火大会がありますから、色々話を受けたと「はじめから教えてくれれば良いのに、まったく」
 大通りを渡りきったところで、私の王子様と小声で、唇を重ねた。子供たちがお姉ちゃん、チューしている。やめなさい、指さすの聞こえたが、お構いなしであった。ありがとう未来、胸の奥で呟いた。

   ***

 部屋に戻ると、大きな温泉があるよと、案内を見せてくれたが、別々に入るのは嫌なので、海でのナンパの件もあり、部屋の露天風呂に入り、ビールで乾杯! まだ二十一時前である。売店のお土産品でお酒はたくさん買ったので、飲み明かすことに。今日の出来事を振り返りながら、写真を見て、次のお酒をあけ、浴衣で写真を撮り、さらにお酒を開け、いつのまにか、未来の腕の中で私は眠ってしまった。

 気が付くと、ベッドに一人。「え? 未来、居ない」片づけてある。きれいな部屋になっている。キャリーバッグにすべて整理されている。トイレの流す音が聞こえて
「もう、未来、起こしてよね」とまくしたてると、何度も声をかけてくれたとのこと。時間も時間なので、着替えて、青森県を後にした。

   ***

 未来! またこようね、楽しかったね。と言ったところまでは覚えていたが、次に目をあけると、群馬県であった。「ごめん。わたし寝ちゃった」気にしないでいいよ。
「ここ温泉が多いの、伊香保温泉とか」なんだろう、ナビをいじくりまわすと温泉がたくさんでてくる。おもしろい。また、瞼が閉じてしまった。

 ――この道、覚えがある。ハンドルに力が入る。スピード緩めていた。未来の顔が青ざめていたことを、美野里はしらず、夢の中であった。

   ***

 ただいまー。

 アルファード、お疲れ様、良くやったな、男の株があがったぞ、そう言っているように思えて自宅に入る。
 美野里はいきなり、パソコンを触りだし、「できた、予約!」と大声。

 いまから、世界一天才美少女美野里ちゃんと、寝て、それから出発よ。洗濯完了。

「はあ?」……未来、帰宅しないで、途中で寄れば良かったのではと、喉元まで出ていたが、疲れている事もあり、寝てしまった。
 未来の髪をなでながら、私も眠るのであった。お疲れ様。大好き。
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