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第二章:別れの章 〜迷走するルート〜

第二十九話 温泉旅館

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 静かな高級感あふれるフロントに、私はどうしてよいのかわからず、未来の腕を引っ張っていた。

 高級バッグに、高級時計をつけているおじさん、おばさんが席に座っていた。
 キャリーバッグを進めて、受付を済ませてくれている。何か言いたいのであろうか、振り向いて私を見ているのだが、そんなに見つめなくても。照れちゃうじゃない。
 美人は罪よね。ムフフ。

   ***

 案内され部屋に入ると、あたり一面海だった。

 三日月のときは、台風だったこともあり、思い出して笑いだしてしまった。髪の毛がライオンさんみたいな、鬼さんみたいになったことは
 今は違う。
 このきれいな夜の海に、いくつかの明かりが見え、そしてお月様が海を照らしている。
「きれい」と声に出してしまった。

 ここの旅館に決めたのは、露天風呂付だからである。
 金額は見ていない。偶然にも空いていたのですぐに、予約した。

 大正解! 未来と肩を並べて。
「まさか、スイートルームを予約だとは思っていなかったよ」なぜか未来は怒ったりしないのだ。
 正直金額から目を背けて、予約したのだから。

「風邪は完全回復したね。もう大丈夫。今日の食べっぷりを見れば、良くわかるよ」そういうことなのね。
 私のことをずっと心配していてくれたから、何も言わずに、一人で長距離を運転し、
 起こすこともせずに、寝かせてくれて。未来大好き、夜の海を見ながら、唇を重ねた。

 食事を済ませたら、一回外に行こう。海のほうに歩いていけるからと……。なんのことだろう、私はわからなかったが、未来が言うのであれば、もちろん一緒に行く。
 一人置いて行ったときには、どうなるのかわかっているのかしら。美少女美野里ちゃんよ。

   ***

 お食事の席につくと、お泊りに来ているお客さんだろうか、皆浴衣だった。
 私たちはまだ到着して間もないことなので、そのまま席に着いた。

「あ! 鬼がいる」と声を出すと、食事をしているおじいさんから、あれは「ねぶた」というのだと。青森県のお祭り。知らなかった。

 ねぶた祭。おじさんとおばさんに色々教えてもらった。

 写真を次々と撮りながら、食事を終えた。未来がフロントに行きたいといい、手を繋いでついていく。私はお風呂に入りたいと思っていたけれど。

 ――未来の手には、なんとバケツ。何に使うのであろう。
 お風呂でバケツを使うの? 不思議そうな目で未来を見るが、何も答えてくれない。
 部屋で、ビニール袋を取り出し、外に出るというのだ。バケツを持って。

   ***

 大きな道を手をあげて、わたりきると、そこは海辺だった。
 振り返ると、遠くに見える旅館。バサァーと広げて、首をかしげた。
 暗くて見えない。音だけがバサァーとしたのは、わかった。

 バチバチバチ
 シュー

 明るくなり、花火だ! 
 手持ち花火、未来に火をつけてもらい、楽しくて、楽しくて走り回りながら、ぐるぐると花火を回した。
「危ないよー」何か言っているが、おかまいなし。

 写真を撮ってくれた。

「すごい! 未来、いつ花火買ったの」途中でよったコンビニエンスストアで買い込んだらしい。
 気が付かなかった。子供のように遊んでいる私を、微笑みながら写真をとってくれている。

「ねーわたし、きれい?」と大きな声で言うと、動画を撮影されていた。
 消して、消してとお願いするが、消してくれなかった。

 ……もう、未来の意地悪。うれしい。私生きている。
 風邪だって治る。
 感謝と感激したのだが、花火が消えてしまうと、真っ暗に……。
 これどうするのだろう。

「あーバケツ」未来は水の入ったバケツを差し出して、花火に火をつける。たのしい。たのしい。いつぶりに花火、そうだ、幼稚園の時だ。それ以来。
 手で持つ花火。

 たくさんの花火のごみをバケツに入れて、旅館に戻った。フロントでバケツを渡した。

   ***

 お部屋に戻る。
 今気が付いたことがある、二人ともお酒を飲んでいないのだ。
 冷蔵庫にはビールが入っている。先にお風呂が良いと私はその場で、全部脱いで、未来おいでーと呼びかける。

 三日月でも一緒に入ったのだから気にしないのと、未来を諭す。お酒を飲んでいない未来の頬は真っ赤だ。

 かわいい。未来。

 夜の海を見ながら、温泉を堪能し、乾杯。「くうーうまい!」と私がビールをもちあげると、未来は呆れかえっていた。

「だって三百六十五日ぶりくらい、お酒飲んでなかったのよ、いいじゃない」

 その日は、ぐっすりと眠ってしまった。未来の胸に抱き着きながら。

「ありがとう、未来」
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