ユニークアイテムな女子(絶対的替えの効かない、唯一無二の彼女)「ゆにかの」

masuta

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第1章:広がりの章 〜運命の出会い〜

2 初詣の誓いと、新たな誓い

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 新元号の幕開けを祝うかのような、抜けるような晴天だった。 

 明治神宮の参道は、清冽な早朝の空気に満ちている。

 その神域を歩む二人の姿は、行き交う参拝客が思わず足を止めるほどに、浮世離れした美しさを放っていた。


 白地に淡い桜模様の着物を纏い、薄紅の羽織を重ねた香織は、時折、帯の感触を確かめるように背筋を伸ばす。

 寒さに赤らんだ頬と、冷気に白く滲む吐息。

 手を合わせるその横顔は、まるで古い絵巻物から抜け出した乙女のような艶やかさを湛えていた。


 ―― 一方、その隣を歩く嘉位は、紋付き袴を完璧に着こなしていた。 

 慣れない装いのはずだが、裾を捌く所作一つひとつに、代々続く山本家の血筋を感じさせる貴族的な風格が宿っている。



「香織……」 嘉位が低く名を呼ぶと、香織は弾かれたように視線を泳がせた。

 触れそうな距離にある彼の指先、そして「凛々しい」と告げようとして震える自分の声。 

 砂利を踏みしめる二人の足音は、神々の祝福を奏でるように軽やかだった。



「香織、寒くないか?」 嘉位がそっと手を重ねる。その手のひらの熱に、香織は思わずくすりと笑みをこぼした。 

「大丈夫。嘉位さんが、こうしててくれるから」 子供じみたやり取り。

 けれど、その一瞬が永遠に続く奇跡のように、香織には思えてならなかった。





 山本邸に戻ると、邸内は新年を祝う喧騒に包まれていた。 

 酒の香りに上気した両親たち、控えめに控える妹の楓。

 その宴の席で、一心不乱に料理を頬張る一人の少年が、勢いよく手を挙げた。




「お兄ちゃん! 嘉位兄ちゃん!」



 香織が慌てて、嘉位の耳元で囁く。 

「ごめんなさい、紹介が遅れて。私の弟の球道(きゅうどう)です。

 ……どうやら、嘉位さんの正体に気づいてしまったみたいで」



「気づくも何も、U-15の山本さんだろう! 日本一の投手が家に来てるなんて、どうして教えてくれなかったんだよ!」 鼻息を荒くする球道の瞳は、純粋な憧憬で燃えていた。 


「僕も野球をやってるんだ。代表のこと、技術のこと、聞きたいことが山ほどあるんだ! 」



 嘉位は、その真っ直ぐな視線に静かに微笑んだ。 

「球道君、少しやってみるか?」 「えっ、でも僕、道具も何も……」 
「大丈夫。ここには、君が必要なものはすべて揃っているから」




 両家の父親たちが本格的な酒宴の二次会へと突入するのを横目に、嘉位は「一回、退席してもいいかな」と母親に断りを入れた。 


 広大な廊下を渡り、各々が着替えを済ませる。 

 球道が千佳から手渡されたのは、嘉位がかつて袖を通していた小学校時代の練習着だった。



「これ、全部アンダーアーマーなんだ。すごい、嘉位兄ちゃんの名前が入ってる! 」 

 鏡の前で照れくさそうにする球道を見て、香織は胸の奥が熱くなるのを感じた。

 愛する人の幼少期に、弟が触れている。その光景が、家族という絆をより深く意識させた。


 案内された先は、邸宅の一部とは思えぬほど広大な、私設の全天候型屋内練習場だった。 扉を開けた瞬間、球道の口が塞がらなくなった。 


「すっげえ……バッティングマシンに、マウンドが二つ。百メートルも投げられるのか、ここ」

「僕が帰国してから、ずっとここで練習していたんだ」 嘉位は慣れ親しんだ軟式のグローブをはめ、球道にボールを投じた。 


「軽く、キャッチボールから始めよう……」

 パシッ、と乾いた音が体育館のような空間に反響する。 球道の球筋は悪くない。

 だが、嘉位の眼は瞬時にその「狂い」を見抜いていた。 

 三十球ほどが過ぎ、肩が温まってきた頃、球道が挑むような目を向けた。



「……嘉位兄ちゃん、本気で投げていい?」 「ああ、こい」



 ドッ、という重低音。 (……速いな) 嘉位はミットを叩く衝撃に眉を動かした。

 小学六年生の軟式で百二十キロに迫る速度。

 だが、制球は見るに堪えない。

 真っ直ぐ投げたつもりのボールが、指にかかったり抜けたりと、軌道がバラバラだった。





「球道君、ちょっといいかな」 嘉位は手招きして、少年の側に寄った。 

 香織は、その様子を祈るような心地で見守っていた。あの「怪物」と称された山本嘉位が、自分の弟のために時間を割き、野球を教えてくれている。その奇跡に、涙がこぼれそうだった。



「球、すごく速いね。でも、コントロールに悩んでいるだろう?」 「……どうしてわかるの? そうなんだ。

 球速は出てるはずなのに、ボールが言うことを聞いてくれないんだ」




「原因は、リリースの直前。トップの位置だ。ちょっとそこで体を止めてみて」 嘉位が少年の腕を優しく、だが的確な位置へと誘導する。 


「腕と肩の位置を、もっと頭側に寄せる。そう、手を限界まで伸ばすイメージだ。そこから振り下ろしてみなさい」




 球道は言われた通り、全身のバネを意識しながら腕を振り抜いた。 

 空気を切り裂く、これまでとは明らかに違う鋭い風切り音。 ビュンッ! ど真ん中、捕球した嘉位のミットが悲鳴を上げた。


 回転数は跳ね上がり、ボールは重力を無視して伸びるような軌道を描いた。




「すげぇ……! 一回言われただけで、真っ直ぐに……! 」 「良かったわね、球道」 香織の声が弾んだ。


 嘉位は少年の肩を叩き、自分の少年時代を振り返るように目を細めた。 


「球道君、君はすごいよ。同じ頃の僕より、いい筋をしているかもしれない」

「そろそろ、ご帰宅の時間です――」 執事の千佳が告げると、球道は「えーっ」と子供らしく駄々をこねた。 



「いつでもおいで。ここにある道具も、そのバットも君にあげるよ。初めて僕がスタンドに放り込んだ、記念のバットだ。大事にしてくれ」


 少年の興奮は、極限まで高まっていた。 

 憧れの英雄からの助言、そして「宝物」の継承。球道にとって、この初詣の日は人生を変える転換点となったに違いない。



 玄関先には、送迎の車が待機していた。 

 両家の挨拶が終わり、香織が家族と共に乗り込もうとしたその時、千佳が静かにその歩みを止めた。

「香織様。貴女は新学期が始まるまで、こちらでお過ごしいただきます」 「えっ……? でも、着替えも何も持っていませんし……」 



「香織様。何一つ、必要ありません。すべてはこちらでご用意しております。ご安心を」


 驚きに目を見開く香織を、嘉位が優しく見つめ返した。 球道たちの乗った車が、夕闇に染まるお屋敷を後にする。




 冷たい風が、肌を刺す。

 手を握りその暖かさを感じならが、「もう少しだけ、良いかな」と歩き出した。

 大きなお屋敷は多々建物があり、キョロキョロと周りを見ていた。「遅くなりました、今準備します。


 もう少しお待ちください」そこは、道場である。
 隅にある椅子に案内され、一人でちょこんと座りこんでいた。

 体格の良い叔父様達が、正座をして、今か今かと、待っている様子であった。



 ――しばらくすると、道着をまとった嘉位が一礼をして入って来た。



 野球と違う嘉位の姿に、目を奪われていた。


 中央に進むと、では、俺からとがっしりとした男性が、嘉位と対峙していた。



 お互いに礼。


 嘉位の袖に手を回そうとした際に、素早くかがむ状態から手を伸ばし、投げ飛ばされる男性
「次!」、間合いを詰めて、瞬きをしていた間に、男は宙を舞い、畳に叩きつけられていた。

 ドォン!!

「次!」激しい音とが、体の大きな男性が、倒れこんでいた「次!」バタン「次!」バン!!!「次!」……。



 呼吸をする事を忘れているのではと、何が起きているのか、圧倒的な嘉位の強さに、次々と投げ飛ばされる大人。



「次!」ドサっ。「次!」うりゃー、「ふぅー、礼」


 投げ飛ばされた男たちが、痛みを堪えながら清々しい顔で一礼する。

 彼らは知っているのだ。この少年が背負うものの重さと、その器の大きさを……。




 流石ですな、お坊ちゃま、いや、嘉位様。10人組手あっという間でした。

 今年も手が出なかったか。これでも、五輪出てるのだけどな。

 俺なんか警察の指導者だったんだぞ。

 嘉位様は、異常。強すぎる。




 ――これはこれは、奥方になられる方でございますね。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。

 ご年配の方が近づいてきて、その後男性陣が一緒に。

 ゴクリと、何かを飲み込んだ感じがあり、どう答えれば良いのかわからなかった。

「改めて、こちらが、蓬田 香織さん、僕のお嫁さんになります。以後お見知りおきを」


 清楚でお美しい、流石は、ぼちゃま、失礼。嘉位様。

 立ち上がり「あの、突然で申し訳ありません、本日からお世話になります。宜しくお願いいします。あ!明けましておめでとうございます」慌てて新年の挨拶を付け加えた



 叔父さんは笑いながら、「明けましておめでとうございます。

 ビックリなされたことでしょう、毎年恒例なのです。元日の手合わせ、わしらこれをやらんと、酒が飲めんですわ、しかし、嘉位様は強すぎる」



「お屋敷でお困りの事がありましたら、お気軽にお声をかけてください」



 一同は着替えを済ませ、「さて、これからが正月、酒だ、酒!別館いくぞー」と盛り上がっていた



 着替えを済ませ、手を取る、嘉位「驚かせちゃったかな、屋敷に戻って、温まろう。」嘉位の体から湯気がたっていた。



 手を握り、屋敷に向かう。

 その間言葉が出ない。

 圧倒されていたのである。

 何事も無かったように歩き続けている。

 普段の学校生活では見たこともない彼の姿に。



 外は日は沈み、静寂が山本邸を包む。 





 二人の、そして世界を動かすことになる運命の「共同生活」が、今、静かに幕を開けた――。
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