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第1章:広がりの章 〜運命の出会い〜
6 突拍子な提案、え。本当に良いの
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扉の向こうから、優しくも控えめなノックが響く。
嘉位はその音に応じ、部屋の中を一瞥してから、香織がこちらにも気付いたことを確認するように、ゆっくりと指先を扉に添えた。
「香織、入るよ?」
声は穏やかだが、その裏には何かを伝えるような温かみが含まれていた。
部屋の向こうでは、香織の足音が近づいてくる。
「どうぞー」
返事は笑顔のような響きを持ち、香織自身がその言葉の不自然さに気付いてしまう。
自分の部屋ではなく、嘉位の部屋で「どうぞ」などという言葉を使うのは、おかしな気分だった。
こんなに楽しい朝は、何年ぶりだろうか。
扉がゆっくりと開き、嘉位が中に入ってくる。
左手には大きな紙袋が握られ、重みが感じられるほどにぎっしりと詰まっていた。
「香織。これが着替えだって、千佳さんから渡されたよ。中身はサイズが合うものだけ伝えてくれれば良いと、千佳さんが伝えてほしいと」
左手から紙袋を受け取ると、その重みに驚いた。
中を覗いてみると、部屋着が何種類も入っており、さらに驚いたことに、下着も山のように詰まっていた。
「嘉位。中身みたの?」
笑いながら、「いや、見てないよ。千佳さんは『一つか、沢山か』の二択だから、いつもと変わらないよ」と返す。
香織は、嘉位がいつもそんな風に洋服を選ぶのだろうかと、自分のような無頓着さを思い出してしまう。
中身を確認すると、軽い部屋着が二種類だけ。スエットと、ジャージのようなものだった。
しかし、下着の量に驚いた。
それも、なに!この大胆な下着。見えちゃうじゃない。
これを着けるの?、着ける意味があるのかしら、顔が赤くなっていく――。
「ここで着替えるのでしょうか?」
「外に出ているよ。脱衣所までいっても長いから、外に出ているね。着替えたら呼んでね」
自分が着替えているところを見られてしまうのではないかと、恥ずかしさに頬が熱くなる。
我慢できずに、頭の中だけでわけのわからない妄想を膨らませてしまった。嘉維の朝の着替えを・・・。
「バカ!」
自分で妄想しておきながら、声に出してしまった。
嘉位は戸惑い、扉の外へと出て行った。
◇
下着をじっくりと見比べる。
これらは、一体誰が選んだのだろう。
大人っぽいものばかりで、一体これを着るのだろうか。
控えめに言って、エッチな下着。
無難なものを選び、スエットに着替えると、残りを袋に戻した。
「嘉位、着替えたよ。どうぞ」
「どうぞ」という言葉が、ここが嘉位の部屋であることに対して、何となく不自然に感じられる。
部屋に入ってくると、「いらっしゃいませ」と、わけのわからない言葉で応えてしまった。
頭の中もはてなマークが並んでいたが、ふと思い出したことがあった。
「八重さんとのお話、楽しそうだったね。声が弾んでいたもの」
「今までの事、八重に伝えたの。八重も喜んでくれたの、嬉しくなっちゃった」
「八重さんにそうか、伝えたのだね。思うことがあって提案なのだけどね。八重さんと会話できたなら」
「八重さんに明日、空いているか聞いてもらえる?明日は正月三日、最後の日。最後の日というのは、4日から部活が始まるはず。だから空いているとしたら明日だから」
「明日の昼前に、家から車出すから、明日うちで、お昼食べて、遊ばないか聞いてみて。僕のほうは由良を誘ってみるから、由良も来るはずだから、4日から部活だしね」
「八重さんに明日お昼前に、迎えに行くけど大丈夫か、由良も来るからと聞いてもらえる」
香織は、「良いの、八重を呼んで、ありがとう。今もう一回電話してみる」
嘉位も、「僕も、由良に電話するね」
お互い、電話で要件を伝え、明日は空いていることを確認し、迎えに行くことになった。
「では、朝食にしよう」
◇
時計が、11時を過ぎていることに気が付いた。いつまで寝ていたのだろう。
久しぶりにゆっくり寝たからだ。
――香織は察して、軽くすっと笑った。「そうですよ、もうすぐお昼ですよ」
嘉位は香織の手をとり、広間のほうへ案内した。
途中でメイドさんとすれ違い、お掃除に入るような様子だった。
メイドさん達はお休みがないのだろうかと考え、今度聞いてみようと決めた。
広間に着くと、千佳さんから「今日はこちらではなく、あちらの奥へ」と案内された。
嘉位がふと思い、「父さんと、母さんのいる気配が無いのだけど?」
「奥様達は、それぞれ朝の便で、海外の会社に行かれました。いつお戻りになるのかは、存じておりません」
「いつものことだろうけど、1年、2年帰ってこないのでは?昨年が今までにない程日本に居たからね」
香織(ご両親は普段日本にいらっしゃらないのだ。)
「うちの両親は忙しいから、めったなことが無いとここには来ないのだけど、昨年はめずらしく海外行ったり、日本に居たりと目まぐるしかったな。」
「千佳さん、楓は何しているの?」
「楓様は、朝、つい先ほどまで、オンラインゲームをしていて、今は完全に寝ています。おそらく日付が変わるころには目を覚ますかと」
香織はおかしくてにやけてしまった。
楓ちゃんがゲームをやるんだ、それも時間を忘れて徹夜して没頭するほどに。
二人の前に、朝食というより、2、3時間はかからないと食べきれない量の料理が並んでいた。
「おなかすいた、香織たべよう」
「食べたら、千佳さんと一緒に、屋敷を案内してもらってね。僕は、ストレッチ等しているから。」
「では、いただきます」
お屋敷の案内。
案内が必要なお屋敷。
この案内は後に重要な意味を持つことになる。
嘉位はその音に応じ、部屋の中を一瞥してから、香織がこちらにも気付いたことを確認するように、ゆっくりと指先を扉に添えた。
「香織、入るよ?」
声は穏やかだが、その裏には何かを伝えるような温かみが含まれていた。
部屋の向こうでは、香織の足音が近づいてくる。
「どうぞー」
返事は笑顔のような響きを持ち、香織自身がその言葉の不自然さに気付いてしまう。
自分の部屋ではなく、嘉位の部屋で「どうぞ」などという言葉を使うのは、おかしな気分だった。
こんなに楽しい朝は、何年ぶりだろうか。
扉がゆっくりと開き、嘉位が中に入ってくる。
左手には大きな紙袋が握られ、重みが感じられるほどにぎっしりと詰まっていた。
「香織。これが着替えだって、千佳さんから渡されたよ。中身はサイズが合うものだけ伝えてくれれば良いと、千佳さんが伝えてほしいと」
左手から紙袋を受け取ると、その重みに驚いた。
中を覗いてみると、部屋着が何種類も入っており、さらに驚いたことに、下着も山のように詰まっていた。
「嘉位。中身みたの?」
笑いながら、「いや、見てないよ。千佳さんは『一つか、沢山か』の二択だから、いつもと変わらないよ」と返す。
香織は、嘉位がいつもそんな風に洋服を選ぶのだろうかと、自分のような無頓着さを思い出してしまう。
中身を確認すると、軽い部屋着が二種類だけ。スエットと、ジャージのようなものだった。
しかし、下着の量に驚いた。
それも、なに!この大胆な下着。見えちゃうじゃない。
これを着けるの?、着ける意味があるのかしら、顔が赤くなっていく――。
「ここで着替えるのでしょうか?」
「外に出ているよ。脱衣所までいっても長いから、外に出ているね。着替えたら呼んでね」
自分が着替えているところを見られてしまうのではないかと、恥ずかしさに頬が熱くなる。
我慢できずに、頭の中だけでわけのわからない妄想を膨らませてしまった。嘉維の朝の着替えを・・・。
「バカ!」
自分で妄想しておきながら、声に出してしまった。
嘉位は戸惑い、扉の外へと出て行った。
◇
下着をじっくりと見比べる。
これらは、一体誰が選んだのだろう。
大人っぽいものばかりで、一体これを着るのだろうか。
控えめに言って、エッチな下着。
無難なものを選び、スエットに着替えると、残りを袋に戻した。
「嘉位、着替えたよ。どうぞ」
「どうぞ」という言葉が、ここが嘉位の部屋であることに対して、何となく不自然に感じられる。
部屋に入ってくると、「いらっしゃいませ」と、わけのわからない言葉で応えてしまった。
頭の中もはてなマークが並んでいたが、ふと思い出したことがあった。
「八重さんとのお話、楽しそうだったね。声が弾んでいたもの」
「今までの事、八重に伝えたの。八重も喜んでくれたの、嬉しくなっちゃった」
「八重さんにそうか、伝えたのだね。思うことがあって提案なのだけどね。八重さんと会話できたなら」
「八重さんに明日、空いているか聞いてもらえる?明日は正月三日、最後の日。最後の日というのは、4日から部活が始まるはず。だから空いているとしたら明日だから」
「明日の昼前に、家から車出すから、明日うちで、お昼食べて、遊ばないか聞いてみて。僕のほうは由良を誘ってみるから、由良も来るはずだから、4日から部活だしね」
「八重さんに明日お昼前に、迎えに行くけど大丈夫か、由良も来るからと聞いてもらえる」
香織は、「良いの、八重を呼んで、ありがとう。今もう一回電話してみる」
嘉位も、「僕も、由良に電話するね」
お互い、電話で要件を伝え、明日は空いていることを確認し、迎えに行くことになった。
「では、朝食にしよう」
◇
時計が、11時を過ぎていることに気が付いた。いつまで寝ていたのだろう。
久しぶりにゆっくり寝たからだ。
――香織は察して、軽くすっと笑った。「そうですよ、もうすぐお昼ですよ」
嘉位は香織の手をとり、広間のほうへ案内した。
途中でメイドさんとすれ違い、お掃除に入るような様子だった。
メイドさん達はお休みがないのだろうかと考え、今度聞いてみようと決めた。
広間に着くと、千佳さんから「今日はこちらではなく、あちらの奥へ」と案内された。
嘉位がふと思い、「父さんと、母さんのいる気配が無いのだけど?」
「奥様達は、それぞれ朝の便で、海外の会社に行かれました。いつお戻りになるのかは、存じておりません」
「いつものことだろうけど、1年、2年帰ってこないのでは?昨年が今までにない程日本に居たからね」
香織(ご両親は普段日本にいらっしゃらないのだ。)
「うちの両親は忙しいから、めったなことが無いとここには来ないのだけど、昨年はめずらしく海外行ったり、日本に居たりと目まぐるしかったな。」
「千佳さん、楓は何しているの?」
「楓様は、朝、つい先ほどまで、オンラインゲームをしていて、今は完全に寝ています。おそらく日付が変わるころには目を覚ますかと」
香織はおかしくてにやけてしまった。
楓ちゃんがゲームをやるんだ、それも時間を忘れて徹夜して没頭するほどに。
二人の前に、朝食というより、2、3時間はかからないと食べきれない量の料理が並んでいた。
「おなかすいた、香織たべよう」
「食べたら、千佳さんと一緒に、屋敷を案内してもらってね。僕は、ストレッチ等しているから。」
「では、いただきます」
お屋敷の案内。
案内が必要なお屋敷。
この案内は後に重要な意味を持つことになる。
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