ユニークアイテムな女子(絶対的替えの効かない、唯一無二の彼女)「ゆにかの」

masuta

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第1章:広がりの章 〜運命の出会い〜

9 トランプ

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  由良の手元に置かれたコーヒーカップが、ゆっくりと蒸気を立てながら冷めていく。
 窓から差し込む夕焼けがテーブルを赤く染め、校舎の影が長く伸びていた。

 彼が口を開く前に、香織の指先が自然と唇をかむ。

「なんにせよ、おめでとう。嘉位はいままでまともに女性とお付き合いしたことがなかったからね、モテルのだけど、面倒くさそうにしていたから、まさか婚約というのはびっくりしたよ」

 由良の声は、どこか皮肉を混ぜたような軽さで響いた。

 香織の胸の中では、複雑な感情が渦巻いていた。
 嘉位はいままでそれほど女子に興味がなかったのか、そこに、私?
 深く考えるのはやめよう。
 香織の手が、無意識にスカートの裾を絞りしめた……。



   ◇



 由良の口調が一変し、前に出て
「今の流れで思い出した、嘉位、聞いてくれ、野球部廃部かもしれない」

 八重と香織の目が一斉に由良に向けられた。「えー!!なんで!」二人の声が重なり合い、部屋に響き渡った。

 由良は深呼吸をし、ゆっくりと説明を始めた。
「夏の大会はすぐに負けて、3年生は卒部、そのまま和井田の大学へ進むのだけど、20名。2年生が1名記録員、1年生が俺と、記録員合わせて2名、合計3名しか残っていない。しかも硬式野球経験は俺だけなのだぞ」

 香織の手が、テーブルの角に食い込むほど強く握られた。

「2年くらい前かなにか、問題があったらしく、先輩達が入部してこなかった。そして1年も。秋季大会も欠場、春も欠場だろうな。このままだと休部から廃部になる」

「和井田の野球部は、歴史が長いよね。人もたくさんいたイメージがあるのだけど、なんで・・・」疑問を抱き、言葉が出てしまった八重。

 香織はがっかりしたように、下を向いていた。
 せっかく嘉位が野球に復帰すると言っているのに、どうして、このような事に?


「由良、それなら大丈夫、確かに秋季には出場できず、今の3名、主力が由良だけでは、野球は無理だ。春も辞退だろう、大丈夫」

「嘉位なぐさめてくれるのはわかるが、仮に嘉位が入ったとしても、俺と嘉位だけでは野球は出来ない」

「心配はない、既にカリキュラムは出来ている」嘉位は、何かを取り出そうとしている


 一同は、困惑から、注目に変わって

「実はだね、来年のいわゆる新入生、なんと15名以上入部してくる。それも硬式野球経験者で、それぞれトップクラスがね」

「本当かよ、少し、泣きそうになるじゃないか」

「母さんから昨年末に話されて、野球を続けなさいと、そして目ぼしいところを、和井田に入れたからと言っていた」
 泣きそうになっていた香織であったが、流石お母さまと呟く。

「良かった、これなら春の大会も出る事が、出来るのですね」香織は、喜びを抑えきれずに素直に声に出して

「香織、出来ないのだ」ゆっくりと首を横に振った。

「人数が揃えば、それも経験者なのでしょう?」
 理解に追いつかない香織と、八重。視線は自然に嘉位に向いている。

「つまり、中学3年生は3月末まで中学生扱いで、4月1日からは高校生扱いであるが、正しくは入学式、学生証、わかりやすくいうと正式に和井田の高校に入学が在籍にかわらないと、出場が出来ないのだ」

「確かに、女バスも春の支部から出た子は誰も居なかったけど、都大会からは出ていた子も居たいね、そういうからくりがあるのだね」

 嘉位は、タブレットを取り出して、由良に渡しじっくりとタブレットを見つめ、八重も香織も、タブレットをのぞき込んだ。
 びっしりとした文字と、的確な図形とスケジュールがきめ細かに纏められており、驚きを隠せない。流石嘉位。
 高校野球を知らない二人にも、わかりやすい内容であり、笑みが。

「やったー!」「夏の大会には出られるのね!」八重、香織は野球部マネージャーになることを決意した。



   ◇



 俺たちのすごさを自慢してやろうではないか。
 胸を張り、立ち上がる由良。

「だれかトランプとかもっている?嘉位、部屋にある?」

「私持ってきているよ」手を勢いよく上げたのは、包帯の手「手品とかですか?」香織は興味津々であった。

 トランプの手品の説明を始めた。
 手品ではないが、そう思えるように、驚かせようと

「中曽根さんでも、香織さんでもどちらでもよいから、一人がオーナーとなって、そうですねせっかくだからハート
 のエースを出して、その他4枚と合わせて5枚、ハートのエースだけを表にして横に5枚ならべてみて」

「わかった、やってみるね、これがハートのエース、他は4枚適当でいいのかな、並べてと」

「今ハートのエースが真ん中にあり、左右に2枚ずつあるよね、中曽根さんそれを上下左右いろいろな動かし方でシャッフルして、シャッフルはこちらに見えるように、香織さんもこっちにきて、シャッフルをみていてね」

 呼吸をしていないのかと思わせる位、集中している。

「これでハートのエースがどこにあるか、当てるの!5分の1だから運もあるけどね、それでは中曽根さん自身もわからないみたいだから、せーので、ハートのエースの場所を指おいてね」


「せーの」
 嘉位と由良は、一番左、香織は真ん中、八重は一番右であった。

「誰も指をおかなかった、右から2番目から開くよ。違うね。左から2番目、次は中曽根さんのカードを表ね、違うね」
「最後に、嘉位・由良と、香織さんのカードを同時にあけよう」


「せーの」
 一番左にハートのエースがあった。嘉位と由良が指したやつだった。

「すごーい、どうしてわかったの?」

「由良も、僕もただ指先とカードの方向性を暗記していただけだよ」

「もう1度やってみる?今度は香織と、八重さんがトランプ全部使ってシャッフルしてみていいよ、ただし、シャッフルは僕と由良に見えるように、はじめにハートのエースだけ見せてからね」


 さすがにこれは無理だろうと思っていた。
 しかし、嘉位と由良はあっさりと、ハートのエースを引き当てた。

「すごい、なんでわかるの?」香織の目は真ん丸としていた。

「嘉位もだけどわかるわけではなくて、動きを暗記しているだけだよ」

 由良は、自慢げに腕を組み、嘉位は、由良に視線を送り、では僕からと。

「俺と由良が良くやる野球のトレーニング。球筋であったり、人の動きであったり、風とかも、いろいろな要素を肌で感じて、暗記する、打つ方も同じ、くせとかね」

 その後も、数回にわたり、トランプをシャッフルしたが、1度も間違う事は無かった。嘉位と由良は完璧であった。
 同じことを繰り返しても、飽きてしまうので趣向を変えてみよう

「そのお菓子の箱があるから、香織、立ててみてね」テーブルの上にスマートフォンと同じくらいの箱を立てる。

「いい、見ててね」「これ、100回勝負しても、まだ白黒つかないんだよな、今日こそ嘉位に勝つ」八重は口をぽかーんと開けていて、何をするのだろかと……

 部屋の入口までさがり、片手に1枚のトランプを持ち、シュッ。
 スナップが効いて、箱がパタンと倒れたのである。

「えー!」八重と香織は「嘘でしょ、あの距離よ」では、と嘉位も入口までさがり、シュッと。箱は倒れた。

「えー!野球ってマジシャンなの?違うのか、手品が出来ると野球ができるの?!」それは、香織も同じ考えであったが、一歩遅かった。

「香織さん、もう1度箱を立ててもらえませんか」香織は言われるがままに、箱を元の位置に。入口まで下がった二人が投じたトランプは、見事に箱の上に乗ったのである。

「信じられない!!ありえないでしょう、手品師なの?それとも、日本代表は手品を習うの?」だって、ほら!これ、写真撮る。


 これもトレーニングなのだけどな。僕と由良だけの


 呆れかえった、香織と八重に、話題を変え、野球の話や、U-15の話等で盛り上がり、気がつけば既に、外は暗くなっており、月明りが部屋に差し込んでいた。


 お腹もすいてきたこともあり、夜飯も嘉位と香織の家で済ませることに出来ないかと、八重。

 香織は、「けっして、わたしの家ではありません」

「ご謙遜を、わか、奥様」

 一同は、照れながら、さらにトランプの話、U-15の話をしながら、夕食を頂き、由良の話が面白く、笑いが絶えない夕食となった。

 ごちそうさまでした。



   ***




 車を出してもらい、二人は山本家を後にした。
 先に中曽根家につき、由良がドアを開けて、八重をエスコート
 その時、八重はバランスを崩して、倒れそうになったのである、すかさず、由良が八重を抱きかかえて、危ないところだった。

「あは、ははは、ころんじゃった、由良すごいね。わたしみたいな大きな体を支えられるなんて、由良くらいだよ」どしてだろう、ドキドキする。由良の顔が見れない。

「怪我しなくてよかった。大丈夫だよね?」

 由良も車に乗り、自宅へ向かった。ドキドキが止まらないどうして、「ただいまー」心臓の音がドクン、ドクンと、八重は急いで部屋に向かった。

 ドキドキしていたのは、八重だけでは無かった……。


 この4人が、やがて、日本の危機を救い、頂点に登り、
 世界の危機を救うのであるとは、誰もが、知る由もない。
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