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第1章:広がりの章 〜運命の出会い〜
21 新学期のリモート
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冬の澄んだ空気の中、スマートフォンのアラームが鳴り響いた。
香織が寝ぼけ眼で体を起こすと、隣ではすでに着替えを終えようとしている嘉位の姿があった。
「おはよう、香織。よく眠れたかい?」
「おはよう、嘉位……。ちょうど六時ね。ふふ、規則正しいわ」
朝の挨拶を交わす二人の間には、昨日までとは違う、確かな親密さが流れている。
嘉位は鏡の前でネクタイを整えながら、内心で『我慢だ、おさまれ、おさまれ……』と自分に言い聞かせていた。
愛おしい彼女を前に、副社長としての理性と、一人の男としての本能が激しく火花を散らしている。
朝食を済ませて部屋に戻ると、時計は七時半を回っていた。
「あ、そうだ。リモートのホームルーム、同じ部屋だとお互いのマイクが声を拾ってしまうかもしれないな」
嘉位がふと気づいて顔を上げると、香織も困ったように眉を下げた。
「そうね……どうしましょう。嘉位、別の部屋に行く?」
「ああ。僕が移動するよ」
「嫌よ! せっかく一緒にいられるのに、そんなの必要ないわ」
香織の即座の拒絶に、嘉位は頬を緩める。
「じゃあ、発言する時だけマイクをオンにしよう。入れっぱなしは厳禁だぞ。
……僕らのプライベートがクラス中に放送されたら大変だからな」
「もう、変なこと言わないで!」
始まったオンライン授業は、新学期の事務連絡が主で、十時前にはあっけなく終了した。
「明日も同じようなスケジュールね。……ねえ、嘉位。少し時間があるから、八重に連絡してもいい?」
「ああ、もちろん。僕も由良と話そうかな。……香織、今日の買い物は車にするか? それとも電車か?」
「電車で行きましょう。その方がデートっぽいでしょ?」 「了解。じゃあ、準備をしながら連絡を済ませよう」
***
二人は冷蔵庫から飲み物を取り出し、それぞれのスマートフォンを手に取った。
香織は八重とのビデオ通話が繋がるなり、この数日間の出来事を一気にぶちまけた。
「まじで!? 羨ましすぎるんだけど……! で、実際どうだったのよ!?」
画面越しの八重が身を乗り出す。
「……すごかった」 「語彙力! それじゃ分かんないって! もっと詳しく、一から十まで話しなさいよ!」
一方、嘉位は由良と野球談義に花を咲かせていた。
「例の件、うまくまとめたみたいだな。お前の『同調(シンクロ)』の使い方は相変わらず見事だよ」
「いや、まだまださ。……それより由良、月曜に登校したら、まず監督に挨拶に行きたいんだ
「は? 三月の入部説明会で中曽根さんや香織と一緒に行くんじゃないのか?」
「ああ。でも、けじめとして先に自分の口から説明しておきたいんだよ」
「相変わらず律儀だねぇ。分かったよ、じゃあ月曜にな!」
通話を終えた嘉位は、手際よく千佳へメッセージを送った。
『今日は電車で買い物へ行きます。香織の外出着を用意してもらえますか。昼は外で済ませて、夕食には戻ります』
ほどなくして、千佳が完璧にコーディネートされた服を抱えて現れた。
「準備は整っております、嘉位様」 「さすがだね。僕の着替えも選んでもらえるかな?」
「こちらなど、いかがでしょうか。香織様のお召し物とも色調を合わせてございます」 「ナイス、千佳さん。完璧だ」
さて、出かけようと嘉位が香織を振り返ると、彼女はまだスマートフォンを握りしめていた。
「……あ! 私、お洋服どうしよう! 八重との話に夢中になっちゃってて……」 「時計を見てごらん。二時間も話し込んでいたんだぞ」
嘉位の苦笑いに、香織は顔を赤くして「ごめんなさい!」と平謝りだ。
「大丈夫だよ。千佳さんがすでに最高の服を用意してくれているから。すぐに着替えて、街へ繰り出そう」
香織は安堵の溜息をつき、千佳が用意してくれた清楚ながらも華やかな服を手に取った。
冬の陽光が降り注ぐ中、二人は期待に胸を膨らませ、賑わう街へと歩みを進めていった。
香織が寝ぼけ眼で体を起こすと、隣ではすでに着替えを終えようとしている嘉位の姿があった。
「おはよう、香織。よく眠れたかい?」
「おはよう、嘉位……。ちょうど六時ね。ふふ、規則正しいわ」
朝の挨拶を交わす二人の間には、昨日までとは違う、確かな親密さが流れている。
嘉位は鏡の前でネクタイを整えながら、内心で『我慢だ、おさまれ、おさまれ……』と自分に言い聞かせていた。
愛おしい彼女を前に、副社長としての理性と、一人の男としての本能が激しく火花を散らしている。
朝食を済ませて部屋に戻ると、時計は七時半を回っていた。
「あ、そうだ。リモートのホームルーム、同じ部屋だとお互いのマイクが声を拾ってしまうかもしれないな」
嘉位がふと気づいて顔を上げると、香織も困ったように眉を下げた。
「そうね……どうしましょう。嘉位、別の部屋に行く?」
「ああ。僕が移動するよ」
「嫌よ! せっかく一緒にいられるのに、そんなの必要ないわ」
香織の即座の拒絶に、嘉位は頬を緩める。
「じゃあ、発言する時だけマイクをオンにしよう。入れっぱなしは厳禁だぞ。
……僕らのプライベートがクラス中に放送されたら大変だからな」
「もう、変なこと言わないで!」
始まったオンライン授業は、新学期の事務連絡が主で、十時前にはあっけなく終了した。
「明日も同じようなスケジュールね。……ねえ、嘉位。少し時間があるから、八重に連絡してもいい?」
「ああ、もちろん。僕も由良と話そうかな。……香織、今日の買い物は車にするか? それとも電車か?」
「電車で行きましょう。その方がデートっぽいでしょ?」 「了解。じゃあ、準備をしながら連絡を済ませよう」
***
二人は冷蔵庫から飲み物を取り出し、それぞれのスマートフォンを手に取った。
香織は八重とのビデオ通話が繋がるなり、この数日間の出来事を一気にぶちまけた。
「まじで!? 羨ましすぎるんだけど……! で、実際どうだったのよ!?」
画面越しの八重が身を乗り出す。
「……すごかった」 「語彙力! それじゃ分かんないって! もっと詳しく、一から十まで話しなさいよ!」
一方、嘉位は由良と野球談義に花を咲かせていた。
「例の件、うまくまとめたみたいだな。お前の『同調(シンクロ)』の使い方は相変わらず見事だよ」
「いや、まだまださ。……それより由良、月曜に登校したら、まず監督に挨拶に行きたいんだ
「は? 三月の入部説明会で中曽根さんや香織と一緒に行くんじゃないのか?」
「ああ。でも、けじめとして先に自分の口から説明しておきたいんだよ」
「相変わらず律儀だねぇ。分かったよ、じゃあ月曜にな!」
通話を終えた嘉位は、手際よく千佳へメッセージを送った。
『今日は電車で買い物へ行きます。香織の外出着を用意してもらえますか。昼は外で済ませて、夕食には戻ります』
ほどなくして、千佳が完璧にコーディネートされた服を抱えて現れた。
「準備は整っております、嘉位様」 「さすがだね。僕の着替えも選んでもらえるかな?」
「こちらなど、いかがでしょうか。香織様のお召し物とも色調を合わせてございます」 「ナイス、千佳さん。完璧だ」
さて、出かけようと嘉位が香織を振り返ると、彼女はまだスマートフォンを握りしめていた。
「……あ! 私、お洋服どうしよう! 八重との話に夢中になっちゃってて……」 「時計を見てごらん。二時間も話し込んでいたんだぞ」
嘉位の苦笑いに、香織は顔を赤くして「ごめんなさい!」と平謝りだ。
「大丈夫だよ。千佳さんがすでに最高の服を用意してくれているから。すぐに着替えて、街へ繰り出そう」
香織は安堵の溜息をつき、千佳が用意してくれた清楚ながらも華やかな服を手に取った。
冬の陽光が降り注ぐ中、二人は期待に胸を膨らませ、賑わう街へと歩みを進めていった。
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