最後の魔法使いはただ幸せになりたい

Hkei

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第1章 幼少期

1

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 国境近く長閑なコンス村。

両親からの愛情を受けリンはすくすくと育っていた。黒髪に黒目・・・・・のもうじき5歳になる男の子・・・だ。

「リルー!ちょっと手伝って」

「なにーお母さん。今僕忙しいの」

忙しいと言いながら土を掘り、丸めてだんごを作っている。

「あらあら。顔真っ黒じゃない」

母親は息子の顔を持っていた手ぬぐいでふく。
ありがとうと顔をあげ満面の笑みで

「ルークにあげるんだ!街まで遊びに行ってもいい?」

「お父さんが一緒ならいいけど1人で行っちゃダメよ」

「分かってる!あっお父さんー!!」

畑で作業をしている父親を見つけ、手をブンブンと振り父親のところまで走り出し後少しのところでジャンプして飛びつく。

「こらリル!いきなり飛びつくな」

父親は息子を抱えあげ右肩に乗せる。へへっとお笑いながら上半身を曲げ父親の顔を覗き込む。

「ルークと遊びたいから街まで連れてって」

「今日は野菜納品もう終わったぞ。明日朝から行くのについてくるか?」

「うん!!」



◇◆◇


次の日朝から野菜を収穫して父親と一緒に街まで荷車を押して行く。

「お父さんこれ外してもいい?前が見えない」

大人用のフード付き上着を着てるため、帽子部分が被さって顔はほとんど見えない。

「ダメだ。絶対にとるなよ」

もう!!と怒りながら口を尖らせふーと息をはくとフード部分が少し動く。

小さな教会の裏にある孤児院の前で野菜の入った箱を持つのを手伝い、中に入るため扉を開ける。

「ルーク!!」

「今日は朝早いね。起きれたの?リル」

野菜を受け取りながらリルに笑いかけるルーク。青い髪に青い瞳の男の子でリルより少し歳上だった。

「リル。父さん野菜持って行ってくるからここにいるよな?裏庭には出てもいいけど表は危ないから出るなよ」

「うん。待ってる」





孤児院の裏庭は全て建物に囲まれているため、外からの干渉がない。ここならフードをとっていいと言われているので上着は脱いで置いてある。

「じゃーん!!ほらだいぶピカピカになってきたでしょ」

自慢げに手に乗せて見せているのは、昨日から作っていた泥だんごだ。水を含ませ固め細かい砂をかけ研磨して…を繰り返す。

「まだまだダメー。これを見ろ!!」

「すっごーい!!ピカピカで綺麗な丸だー!!さすがルーク」

キラキラと目を輝かせて泥だんごとルークを見る。どうやったらこんなのできるかなと、自分の作っただんごと見比べて考え込む。
ルークは笑いながらリルを見て頭にポンと手を置く。

「他みんなも呼んでボールで遊ぼう!」

「うん!」

孤児院にいる他の子を呼びに2人は走り出す。



◇◆◇


「王都の騎士団?」

「らしいよ。国境付近で隣国と交渉するとかで、お偉いさんの護衛で来るらしい。で、よく分からないけど交代要員の騎士団がこの村外れに野営地作るらしいってよ」

「へー珍しいな…」

野菜の箱を手渡ししながら、何気ない世間話をしてまた明日とその場から離れる。

──何故この村なんだ?宿もある隣村の方が何かと便利なはずなのに…

荷車を押してる手に自然と力が入る。




「リル!!帰るぞ!!」

「お父さんもう?早いよー」

「また…次があるから今日は帰るぞ」

「はーい。じゃあみんなまたね」

一緒に遊んでたみんなに手を振って父親の元に走る。リルーまたねーと後ろから声がしてさらに両手で手を振る。



◇◆◇

帰り道父親がいつもと違う様子だった。家に着いてもリルは奥の部屋にと押し込まれる。なんで?とは聞ける雰囲気でないのでしばらくじっと待っていた。

ガシャン!何か割れる音と母親の声を聞いてリルは部屋を飛び出す。

「お母さんケガしたの?」

その瞬間リルが金色に光る。

「リル!ダメ!!」

あっと気がついた時には光は消えていた。母親であるハンナが切った傷も…




「リル。絶対にその力は使うな。どんなに辛い状況がきても…絶対に使わないでくれ…」

泣いて我が子を抱きしめるハンナ。その2人を包み込むようにジャンが抱きしめる。
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