最後の魔法使いはただ幸せになりたい

Hkei

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第1章 幼少期

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はっと目を覚ます

「気づくのが遅くなった。大丈夫かい」
 
「師匠…」

「もう少し上手く避けれただろう?」

「暗くて見えなかった」

失敗した…次はもう少し…上手くやらないと。まだ少し痛む腹を押さえて思う。



それからもイーリアは隠れて虫退治にやってくるが、毎回同じパターンなのでやられたフリで自分で飛んだ。




◇◆◇


この屋敷に連れて来られて5年ほどたっていた。10歳になったリリーナはエヴァから学ぶことはもうないほど魔法の全てを自分のものにしていた。

「師匠寝てて」

この1年ほどエヴァは体調を崩し寝込むことが多くなった。少し調子がいいと無理して起きようとするのでリリーナが止める。

「今日は本当に調子がいいんだよ」

そうは言うが見るからに力が弱くなってきてるのが分かる。リリーナはそれを見ないふりをする。

トントンとノックのあとジェイドが入ってきた。

「エヴァ今日は起きれるのか」

「やれやれ王子にまで心配されるとは」

「師匠!!」

エヴァの前に薬用のスープを入れて置く。これ嫌い…と押し返すがリリーナが押し返す。
ここ数年感情を押し殺してきたリリーナだったが、エヴァの体調不良が続くとぐらぐらとその蓋が動き始める。

「リリ怖いぞ!エヴァは大丈夫だと言ってる。何年生きてると思ってるんだ。あとまだ何十年生きるだろ?」

エヴァは目を閉じ苦手なスープを飲むがむせて咳き込む。リリーナが背中を軽く叩いてさする。

「師匠お願いだから寝て…」





エヴァは眠りにつく。

「エヴァは本当に調子がわるいのか?」

「見れば分かると思いますが…」
 


「リリ、君は大丈夫?」




大丈夫?大丈夫に決まってる。そう言いたかったがいつものように黙る。



月明かりがまぶしい夜、寝れずに起きてたリリーナ。

「リリーナ」

びくっと振り返るとエヴァがいた。

「師匠なんで起きて…」

「最後に教えておくことがあってな」

「最後って!!」

リリーナがゆずらなかった為ベッドに入ってエヴァは静かに話をはじめる。

「昔、魔法使いは古の誓約に縛られてるって言ったの覚えてるかい?」

「はい」

「あれ、だいぶ弱ってる」

「え?」

「城から出ようとしても前みたいに即死に近くなることはなかったしね」

「まさか…1年前いきなり体調崩したのは…」

「魔法使いがなかなか産まれてこないのもそれがあるんじゃないかと…誓約付きの人生なんて誰も望まんし、そもそも魔法なんて必要ないのかもしれん」

くくくっと笑う。

「ジェイドが国王になればさらに弱まるはずじゃ。そうなればお前さんはどこにでも行けるさ」


「本当に後ちょっとさ」



「ただその時まで私が側にいてやることが出来ん」




「本当にお前さんを最後の1人にしてしまうのが…心残りじゃな」





「ここ数年私も楽しかったよ」















「リリ…」


「…」


また…1人だ…

大丈夫…その時がくるまで、心に蓋を…

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