魔王の花嫁 ~夫な魔王が魔界に帰りたいそうなので助力します~

月親

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夫婦以上、恋人未満(2)

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 等間隔に並んだランプを五個程過ぎたところで、ギルは「到着」と立ち止まった。
 そのまま彼が扉を開けてくれる。と、その扉がぶつからないギリギリの位置にリリがいた。

「サラ様、お風呂の準備ができてます!」

 元気に挙手する彼女。
 どうやら一仕事終えた後、ここで成果を報告するため待機していた模様。
 リリがニコニコしながら、部屋の入口から廊下にいる私を見つめてくる。
 そう、私(一応部屋の主)はまだ廊下にいる。
 私は元々お世話をされるような身分ではないから、気にしない。けど、彼女に私以外を持て成す機会が来たとき、この対応では不味いのでは。
 例えばほら、高飛車でボンキュボンな女悪魔とか。はたまた、何でも食べてしまう悪食を極めた巨漢とか。
 リリがお咎めを食らったり、物理的に食らわれたりするのは忍びない。

「リリ。そういった報告は、私が部屋に入った後で教えてくれる?」
「! そうですね。サラ様は、まだ魔王様と一緒には入らないんでした。お一人になってからお伝えした方が良かったですね」
「えっと……」

 その「まだ」というのは、やっぱりシナレフィーさんが基準なのよね?
 いや、そうじゃなくて。そこじゃなくて。

「魔王様のお風呂も準備万端ですよ!」

 あれ、ギルにそんなついでにって感じで言っちゃう?

「おう、じゃあ俺も部屋に戻って入るか」

 んで、ギルもそんな感じで返しちゃう?
 うーん。これは私の要らない心配なんだろうか。でも単にギルが気安いだけな気もする。
 うん、これからも気付いた範囲で彼女に指摘して行こう。
 ぽむ
 不意にギルの手が私の頭に載せられ、私は反射的に彼を見上げた。

「わっ」

 目が合ったギルが、流れるような自然な動作で私の頬にキスをしてくる。
 去り際に彼が言った「まだ、時間は早いけど」という台詞からいって、三回目の『キスの時間』だったようだ。

「サラ、また明日な」
「ま、またっ」

 いけない、うっとりしていた。隣の部屋に入る一歩手前だったギルに、私は慌てて挨拶を返した。
 ギルが片手を上げてみせて、それから部屋に入る。
 そしてリリに目を戻した私は、「サラ様を磨くのもお任せ下さい!」と鼻息を荒くした彼女の腕に、ガッシリと捕まった。
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