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夫婦以上、恋人未満(3)
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数刻の後、私はリリの言葉通りピカピカに磨き上げられた。
さらには、用意されたネグリジェも、彼女の手で着させられてしまった。「サラ様、万歳して下さい」とお手本万歳をしたリリに、つい絆されてしまったといいますか……。
(あ、これも見覚えのある服)
そのリリも退室し、私は一人、クローゼットの中身を検めていた。
ここまで着てきた花嫁衣装は、私がお風呂に入っている間にギルが灰にしたらしい。代わりに魔王城が幾つか着替えを用意したということだった。
で、だ。あるわあるわ、元の世界とそっくりの服やら靴やらが。炬燵が出て来るくらいだ、元の世界の服だって出せちゃうわけだね。
(しかも、よく着てた服だけピンポイントであるような。さすがは魔王城)
明日はひとまず、生成り色のシンプルなワンピースにでもしようか。
私はそう決めて、クローゼットを閉めた。
(さて……)
この後は、もう寝るだけという状況になったわけで。
私はベッドの側まで歩いて行った。
そしてベッドの前に立ち、
「とぅっ」
敷かれた真新しいシーツに、思いっきりダイブ。天蓋付きの広々としたそれは、予想を裏切らない柔らかさで私を受け止めてくれた。
もうね、目に入った瞬間からやりたかった。やるしかないでしょ、こんなのがあれば。
ごろんごろん
二回転しても余裕なのをいいことに、私はベッドの上でじたばたした。例のギルとの出会いシーンで出来なかった分、今したくなった。
「ギルってば、格好いい……!」
部屋の広さからいって隣や廊下にも聞こえなさそうなので、もう声に出して言っちゃう。
颯爽と現れ、一撃で悪者をノックアウト。
そして囚われの私を抱きかかえて、華麗に脱出。
そんな彼の容姿は、美形。おまけに優しさも持ち合わせている。
満点だ。ときめかないわけがない。
ぼすんっ
大の字になって、裏地に刺繍が施された天蓋を見上げる。
(ギルに出会えて良かった)
助けてもらえて、というのは勿論ある。けれど、それ以上に彼と出会えたこと自体に感謝したい気持ちでいっぱいだ。
まるであの時、最初から私を迎えに来てくれたかのような錯覚さえしてくる。彼の『俺の嫁』発言に対しても、最初から嫌だと思ったことは一度もない。
私に向けられるギルの優しさは、『ゲスト』ではなく『身内』に対するそれで、そして私はそのことが嬉しいと感じている。
(好き……なんだろうな)
我ながら、チョロいと思う。速攻過ぎると思う。
でも、そうだから仕方がない。ギルの傍が心地よいから。初めて来た場所で、こんなにも寛いでしまっているほどに。
(自分の家より、ほっとしてるかも)
目を閉じて、日本の狭いアパートの一室を思い浮かべる。
備え付けの家電以外はあまり物が無い、小さな自分の城。
バイトに明け暮れ、大学は奨学金で通っていたから成績も落とすわけにいかず。毎日、何かに追い立てられるかのように過ごしていた。あんなに好きだったゲームも、高校二年生の時にプレイしたのが最後だ。
(今、プレイしたら魔王側の肩を持ちそう。ああ、中にはそんなゲームもあったっけ)
くすりと笑った自分が可笑しくて、また笑う。
こんなふうに思わず笑ったというのも、随分久しぶりだ。そんなことを考えながら、私はやって来た穏やかな眠気にそのまま身を委ねた。
さらには、用意されたネグリジェも、彼女の手で着させられてしまった。「サラ様、万歳して下さい」とお手本万歳をしたリリに、つい絆されてしまったといいますか……。
(あ、これも見覚えのある服)
そのリリも退室し、私は一人、クローゼットの中身を検めていた。
ここまで着てきた花嫁衣装は、私がお風呂に入っている間にギルが灰にしたらしい。代わりに魔王城が幾つか着替えを用意したということだった。
で、だ。あるわあるわ、元の世界とそっくりの服やら靴やらが。炬燵が出て来るくらいだ、元の世界の服だって出せちゃうわけだね。
(しかも、よく着てた服だけピンポイントであるような。さすがは魔王城)
明日はひとまず、生成り色のシンプルなワンピースにでもしようか。
私はそう決めて、クローゼットを閉めた。
(さて……)
この後は、もう寝るだけという状況になったわけで。
私はベッドの側まで歩いて行った。
そしてベッドの前に立ち、
「とぅっ」
敷かれた真新しいシーツに、思いっきりダイブ。天蓋付きの広々としたそれは、予想を裏切らない柔らかさで私を受け止めてくれた。
もうね、目に入った瞬間からやりたかった。やるしかないでしょ、こんなのがあれば。
ごろんごろん
二回転しても余裕なのをいいことに、私はベッドの上でじたばたした。例のギルとの出会いシーンで出来なかった分、今したくなった。
「ギルってば、格好いい……!」
部屋の広さからいって隣や廊下にも聞こえなさそうなので、もう声に出して言っちゃう。
颯爽と現れ、一撃で悪者をノックアウト。
そして囚われの私を抱きかかえて、華麗に脱出。
そんな彼の容姿は、美形。おまけに優しさも持ち合わせている。
満点だ。ときめかないわけがない。
ぼすんっ
大の字になって、裏地に刺繍が施された天蓋を見上げる。
(ギルに出会えて良かった)
助けてもらえて、というのは勿論ある。けれど、それ以上に彼と出会えたこと自体に感謝したい気持ちでいっぱいだ。
まるであの時、最初から私を迎えに来てくれたかのような錯覚さえしてくる。彼の『俺の嫁』発言に対しても、最初から嫌だと思ったことは一度もない。
私に向けられるギルの優しさは、『ゲスト』ではなく『身内』に対するそれで、そして私はそのことが嬉しいと感じている。
(好き……なんだろうな)
我ながら、チョロいと思う。速攻過ぎると思う。
でも、そうだから仕方がない。ギルの傍が心地よいから。初めて来た場所で、こんなにも寛いでしまっているほどに。
(自分の家より、ほっとしてるかも)
目を閉じて、日本の狭いアパートの一室を思い浮かべる。
備え付けの家電以外はあまり物が無い、小さな自分の城。
バイトに明け暮れ、大学は奨学金で通っていたから成績も落とすわけにいかず。毎日、何かに追い立てられるかのように過ごしていた。あんなに好きだったゲームも、高校二年生の時にプレイしたのが最後だ。
(今、プレイしたら魔王側の肩を持ちそう。ああ、中にはそんなゲームもあったっけ)
くすりと笑った自分が可笑しくて、また笑う。
こんなふうに思わず笑ったというのも、随分久しぶりだ。そんなことを考えながら、私はやって来た穏やかな眠気にそのまま身を委ねた。
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