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『ハナキ』(2)
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「ギルは眠気はどうですか?」
「竜生でも稀な冴え渡り具合だ」
「昼寝はできそうにないですね。――ギル、顔を見て話しませんか?」
ギルが眠らないのなら、話をしていたい。ここのところ、そういった時間を取れていなかったし。
いつもの感じですぐに了承が来るものと思い、私は身じろぎした。が、予想に反してギルが放してくれない。
「あ……その、諸事情により少し待って欲しいというか――そうだ、例の魔法」
「例の魔法?」
突然の話題転換に、首を傾げる。
ギルが絡めていた足を解き、次に私を抱き込んだ腕を少し緩める。そうしてから彼は、神妙な声色で「いいか、サラ」と言った。
「俺が腕を離したと同時に、『ハナキ』と言ってくれ。で、その後、急いでベッドから出てくれ」
「?」
何故、いきなりそこで私の名字が。
「――『ハナキ』」
大量の疑問符を頭上に浮かべながらも、ギルに指示されたタイミングで口にする。
すると、
「! う、お……本気で、動け、ない……っ」
ピシッとでも聞こえてきそうなほど、ギルの身体が不自然に固まった。
「ええ?」
さらに疑問符を増やしながら、ベッドから降りる。
見下ろす形になったギルは、まだ固まっていた。中途半端に片腕を宙に浮かせた、妙な格好で。
「これ、は……十秒間、俺を、静止させる、魔法……だ」
「えええ?」
冗談みたいな台詞を、とても冗談に見えない息を荒くしたギルに言われる。『静止』には話すことも含まれているのか、無理に話しているように見える。
ギルが口を閉ざすと、すぐに彼の呼吸は整った。推測通り『静止』の範囲は、行動に限らず言動にまで及ぶようだ。
「うおっ」
宙に浮いていたギルの腕が、ボトッとシーツの上に落ちる。十秒経ったので魔法が解けたらしい。
ギルが「よし、発動の確認が取れた」と言って、一息つく。何とも身体を張った確認方法だ。まあ効果を考えると、それしか確かめる術は無いわけだけれども。
「悪用されたらどうするんですか?」
主にシナレフィーさん辺りに。と思ったのが表情に出たのか、ギルはプッと吹き出した。それから身を起こした彼が、ベッドの端に腰掛ける。ギルに手招きされ、私はその隣へ座った。
「大丈夫だ。サラの声で言われない限り効力は現れない」
「それなら少しは安心しました。ギルの創作魔法のはずが、使いこなしていたシナレフィーさんを見た直後だったので」
「本当、それな……」
ギルが遠い目をする。言い方からして、やっぱりあの『私』が現れた魔法は教えたわけではなかったようで。
「竜生でも稀な冴え渡り具合だ」
「昼寝はできそうにないですね。――ギル、顔を見て話しませんか?」
ギルが眠らないのなら、話をしていたい。ここのところ、そういった時間を取れていなかったし。
いつもの感じですぐに了承が来るものと思い、私は身じろぎした。が、予想に反してギルが放してくれない。
「あ……その、諸事情により少し待って欲しいというか――そうだ、例の魔法」
「例の魔法?」
突然の話題転換に、首を傾げる。
ギルが絡めていた足を解き、次に私を抱き込んだ腕を少し緩める。そうしてから彼は、神妙な声色で「いいか、サラ」と言った。
「俺が腕を離したと同時に、『ハナキ』と言ってくれ。で、その後、急いでベッドから出てくれ」
「?」
何故、いきなりそこで私の名字が。
「――『ハナキ』」
大量の疑問符を頭上に浮かべながらも、ギルに指示されたタイミングで口にする。
すると、
「! う、お……本気で、動け、ない……っ」
ピシッとでも聞こえてきそうなほど、ギルの身体が不自然に固まった。
「ええ?」
さらに疑問符を増やしながら、ベッドから降りる。
見下ろす形になったギルは、まだ固まっていた。中途半端に片腕を宙に浮かせた、妙な格好で。
「これ、は……十秒間、俺を、静止させる、魔法……だ」
「えええ?」
冗談みたいな台詞を、とても冗談に見えない息を荒くしたギルに言われる。『静止』には話すことも含まれているのか、無理に話しているように見える。
ギルが口を閉ざすと、すぐに彼の呼吸は整った。推測通り『静止』の範囲は、行動に限らず言動にまで及ぶようだ。
「うおっ」
宙に浮いていたギルの腕が、ボトッとシーツの上に落ちる。十秒経ったので魔法が解けたらしい。
ギルが「よし、発動の確認が取れた」と言って、一息つく。何とも身体を張った確認方法だ。まあ効果を考えると、それしか確かめる術は無いわけだけれども。
「悪用されたらどうするんですか?」
主にシナレフィーさん辺りに。と思ったのが表情に出たのか、ギルはプッと吹き出した。それから身を起こした彼が、ベッドの端に腰掛ける。ギルに手招きされ、私はその隣へ座った。
「大丈夫だ。サラの声で言われない限り効力は現れない」
「それなら少しは安心しました。ギルの創作魔法のはずが、使いこなしていたシナレフィーさんを見た直後だったので」
「本当、それな……」
ギルが遠い目をする。言い方からして、やっぱりあの『私』が現れた魔法は教えたわけではなかったようで。
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