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プロローグ 転生したら悪役令嬢未満でした。(1)
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ある日、見慣れぬ部屋で目覚めたら、「ここは一体……私、死んだはずじゃ……?」となり。
そして、起き上がり鏡を見たら、「えっ、まさかこの美少女が私……?」となり。
でもって、「待って、この顔は乙女ゲームの悪役令嬢!?」となり。
――――今、ここ。
「何、このテンプレ展開」
「お嬢様、お目覚めになられたのですね!」
年嵩のメイドっぽい人が、部屋に入ってきた。←New
鏡台の椅子に座ったまま、彼女を見つめる。混乱する頭を出来るだけ整理し、私は現在の自分の意識にフォーカスしてみた。
「ミーナ。私はどうしたのかしら?」
赤茶色の髪は白いものが多く交じっているが、榛色の眼光は年を重ねた今も鋭い。メイド長と認識した彼女の名前を、私は『今の私』の口調で尋ねた。
今の私――――ヴィオレッタ・テウトリカは十五歳の侯爵令嬢。ここアイオライト王国の宰相を父に持つ。彼女が口にした通り、「お嬢様」だ。
ヴィオレッタは名前を体現するように、菫色の瞳と腰まである髪を持つ。名前から安直に配色決めなかったかキャラデザの人、と一言物申したい。さすがに私の前世の名前が菫だったことまでは、彼もしくは彼女の与り知らぬところだろうが。
トントントン
指先で額を軽く叩く。これまでの記憶と混ざると、さらなるテンプレに気付いてしまった。
中世ヨーロッパ風の世界観でありながら、電気に変わるエネルギーがある。で、それを利用した便利な生活道具が普及している。統計を取ったら間違いなく上位にランクインしそうな、そんなありがちファンタジー。それが私が転生した世界のようだ。
「お嬢様は、入学式の帰りにお倒れになったのです。そこから二時間ほど意識がお戻りにならず……お目覚めになられて本当にようございました」
はい。どこまでもテンプレ。
そうだった。王立アイオライト学園の入学式の帰りに、乙女ゲームのヒロイン――モニカと鉢合わせたのをきっかけに前世を思い出したのだった。で、その衝撃で私は倒れた。(絵に描いたような定番展開)
私は、第二王子リヒトの筆頭婚約者候補。件の入学式の帰り道は、リヒト王子といた。そこへ私と張るレベルのテンプレ展開で、モニカがリヒト王子にぶつかってきたのだ。
不敬罪で連行されそうな状況だが、モニカにお咎めは一切なかった。まだ門を出ていなかったから自分は単なる一学生だと、リヒト王子がその場を収めたのだ。これはモニカがヒロインだからというわけではなく、元々彼が穏やかな人だったからだと思う。門を出ていたら出ていたで、また別の理由を持ち出して彼は彼女を不問にしていただろう。
リヒト王子は無茶苦茶良い人なのだ。これは決して推しに対する欲目ではない。
(……そう、推しなのよ。リヒト王子は……!)
そして、起き上がり鏡を見たら、「えっ、まさかこの美少女が私……?」となり。
でもって、「待って、この顔は乙女ゲームの悪役令嬢!?」となり。
――――今、ここ。
「何、このテンプレ展開」
「お嬢様、お目覚めになられたのですね!」
年嵩のメイドっぽい人が、部屋に入ってきた。←New
鏡台の椅子に座ったまま、彼女を見つめる。混乱する頭を出来るだけ整理し、私は現在の自分の意識にフォーカスしてみた。
「ミーナ。私はどうしたのかしら?」
赤茶色の髪は白いものが多く交じっているが、榛色の眼光は年を重ねた今も鋭い。メイド長と認識した彼女の名前を、私は『今の私』の口調で尋ねた。
今の私――――ヴィオレッタ・テウトリカは十五歳の侯爵令嬢。ここアイオライト王国の宰相を父に持つ。彼女が口にした通り、「お嬢様」だ。
ヴィオレッタは名前を体現するように、菫色の瞳と腰まである髪を持つ。名前から安直に配色決めなかったかキャラデザの人、と一言物申したい。さすがに私の前世の名前が菫だったことまでは、彼もしくは彼女の与り知らぬところだろうが。
トントントン
指先で額を軽く叩く。これまでの記憶と混ざると、さらなるテンプレに気付いてしまった。
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「お嬢様は、入学式の帰りにお倒れになったのです。そこから二時間ほど意識がお戻りにならず……お目覚めになられて本当にようございました」
はい。どこまでもテンプレ。
そうだった。王立アイオライト学園の入学式の帰りに、乙女ゲームのヒロイン――モニカと鉢合わせたのをきっかけに前世を思い出したのだった。で、その衝撃で私は倒れた。(絵に描いたような定番展開)
私は、第二王子リヒトの筆頭婚約者候補。件の入学式の帰り道は、リヒト王子といた。そこへ私と張るレベルのテンプレ展開で、モニカがリヒト王子にぶつかってきたのだ。
不敬罪で連行されそうな状況だが、モニカにお咎めは一切なかった。まだ門を出ていなかったから自分は単なる一学生だと、リヒト王子がその場を収めたのだ。これはモニカがヒロインだからというわけではなく、元々彼が穏やかな人だったからだと思う。門を出ていたら出ていたで、また別の理由を持ち出して彼は彼女を不問にしていただろう。
リヒト王子は無茶苦茶良い人なのだ。これは決して推しに対する欲目ではない。
(……そう、推しなのよ。リヒト王子は……!)
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