14 / 33
三
三④
しおりを挟む
そもそも里帆の部屋はマンションの三階だ。そんな高い場所から部屋の中までを容易に出入りできるわけがないのだ。加えて狭い室内である。隠れるような場所がないことは五年間住んできた里帆がいちばん知っていることだ。
「よしっ!」
そんなことをつらつらと考えていると、ラファエルが使っていたドライヤーの轟音が収まった。洗面台の鏡越しに見えるラファエルの表情は相変わらず上機嫌のようだ。
里帆は振り返ると、そんなラファエルの顔を見上げる形でその両頬を両手で包み込んだ。突然の里帆の行動にラファエルが驚いて目を丸くしているのが分かる。里帆はラファエルの瞳の中に自分が映っているのを確認しながら、
「どこで、何をしていたの? ラファエル」
「それは、その……」
「言いにくいこと?」
「違うよ。ただ……」
ゴニョゴニョと言うラファエルはその顔を里帆に固定されてしまっているため、目を泳がせることしか出来ない。里帆はそんなラファエルの瞳の中に自分を映し込み、その視線を自分から逃がさない。そしてはっきりとした口調で里帆はラファエルへ問いかけた。
「説明、してくれるよね?」
里帆の言葉にラファエルは曖昧に頷くことしか出来なかった。それを見た里帆は満足そうに頷くと、
「髪、ありがとう、ラファエル。寒いから向こうの部屋で話しましょう」
そう言って温めている部屋の中へと入っていく。ラファエルもその背を追う。
部屋の中のローテーブルを挟んで座った二人は、温かな飲み物で一息つく。そうして少し場が緩んだところで、里帆が口を開いた。
「さぁ、説明して、ラファエル」
「あのね……」
ラファエルは観念して怖ず怖ずと口を開いた。その内容に里帆が今度は目を丸くしていく。全てを聞き終えた里帆は呆気にとられていた。
「そんな理由で?」
「うん」
バツが悪そうなラファエルに、里帆は微笑んだ。
ラファエルが姿を消した理由、それは里帆のことを思ってのことだった。ご飯時、里帆は毎回食べないラファエルを気遣い、ご飯の時間をなるべく短くしようとさっさと食べていた。それがラファエルには気がかりだったのだ。
「だって、人間は時間をかけて食べないと、身体に悪いんでしょう?」
「馬鹿ね、ラファエル」
里帆は微笑むと、ローテーブルの向かい側に座っているラファエルの元まで這い寄った。そしてラファエルの身体を思わず抱きしめる。
「り、里帆……?」
「ほんと、馬鹿」
里帆はラファエルのその存在を確かめるようにぎゅっとその身体を抱きしめると、
「もう、勝手にいなくなったりしないで」
そう言って、脱力したようにラファエルの肩に自分の顔を埋めた。ラファエルはそんな里帆の頭を優しく撫でながら、
「ごめんね」
そう言うラファエルの声音が嬉しそうだったので、里帆は横目でじとりとラファエルを盗み見る。その顔は笑顔だ。里帆はそんなラファエルから視線を外して、
「なんだか、楽しそうね」
「楽しいんじゃないよ、嬉しいんだよ」
里帆の言葉にラファエルは笑顔を向ける。そして里帆の背中へと自らの腕を回すと、
「もう、離さない!」
「ちょっ、ラファエルっ? 何を言っているのっ?」
「里帆が好きって言っているのー!」
「好きって、ちょっと! 離しなさい!」
「やだよー!」
今度はラファエルが里帆の存在をかみしめるように、その大きく長い腕で里帆の身体を包み込んでしまうのだった。
「よしっ!」
そんなことをつらつらと考えていると、ラファエルが使っていたドライヤーの轟音が収まった。洗面台の鏡越しに見えるラファエルの表情は相変わらず上機嫌のようだ。
里帆は振り返ると、そんなラファエルの顔を見上げる形でその両頬を両手で包み込んだ。突然の里帆の行動にラファエルが驚いて目を丸くしているのが分かる。里帆はラファエルの瞳の中に自分が映っているのを確認しながら、
「どこで、何をしていたの? ラファエル」
「それは、その……」
「言いにくいこと?」
「違うよ。ただ……」
ゴニョゴニョと言うラファエルはその顔を里帆に固定されてしまっているため、目を泳がせることしか出来ない。里帆はそんなラファエルの瞳の中に自分を映し込み、その視線を自分から逃がさない。そしてはっきりとした口調で里帆はラファエルへ問いかけた。
「説明、してくれるよね?」
里帆の言葉にラファエルは曖昧に頷くことしか出来なかった。それを見た里帆は満足そうに頷くと、
「髪、ありがとう、ラファエル。寒いから向こうの部屋で話しましょう」
そう言って温めている部屋の中へと入っていく。ラファエルもその背を追う。
部屋の中のローテーブルを挟んで座った二人は、温かな飲み物で一息つく。そうして少し場が緩んだところで、里帆が口を開いた。
「さぁ、説明して、ラファエル」
「あのね……」
ラファエルは観念して怖ず怖ずと口を開いた。その内容に里帆が今度は目を丸くしていく。全てを聞き終えた里帆は呆気にとられていた。
「そんな理由で?」
「うん」
バツが悪そうなラファエルに、里帆は微笑んだ。
ラファエルが姿を消した理由、それは里帆のことを思ってのことだった。ご飯時、里帆は毎回食べないラファエルを気遣い、ご飯の時間をなるべく短くしようとさっさと食べていた。それがラファエルには気がかりだったのだ。
「だって、人間は時間をかけて食べないと、身体に悪いんでしょう?」
「馬鹿ね、ラファエル」
里帆は微笑むと、ローテーブルの向かい側に座っているラファエルの元まで這い寄った。そしてラファエルの身体を思わず抱きしめる。
「り、里帆……?」
「ほんと、馬鹿」
里帆はラファエルのその存在を確かめるようにぎゅっとその身体を抱きしめると、
「もう、勝手にいなくなったりしないで」
そう言って、脱力したようにラファエルの肩に自分の顔を埋めた。ラファエルはそんな里帆の頭を優しく撫でながら、
「ごめんね」
そう言うラファエルの声音が嬉しそうだったので、里帆は横目でじとりとラファエルを盗み見る。その顔は笑顔だ。里帆はそんなラファエルから視線を外して、
「なんだか、楽しそうね」
「楽しいんじゃないよ、嬉しいんだよ」
里帆の言葉にラファエルは笑顔を向ける。そして里帆の背中へと自らの腕を回すと、
「もう、離さない!」
「ちょっ、ラファエルっ? 何を言っているのっ?」
「里帆が好きって言っているのー!」
「好きって、ちょっと! 離しなさい!」
「やだよー!」
今度はラファエルが里帆の存在をかみしめるように、その大きく長い腕で里帆の身体を包み込んでしまうのだった。
0
あなたにおすすめの小説
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
【完結】竜王の息子のお世話係なのですが、気付いたら正妻候補になっていました
七鳳
恋愛
竜王が治める王国で、落ちこぼれのエルフである主人公は、次代の竜王となる王子の乳母として仕えることになる。わがままで甘えん坊な彼に振り回されながらも、成長を見守る日々。しかし、王族の結婚制度が明かされるにつれ、彼女の立場は次第に変化していく。
「お前は俺のものだろ?」
次第に強まる独占欲、そして彼の真意に気づいたとき、主人公の運命は大きく動き出す。異種族の壁を超えたロマンスが紡ぐ、ほのぼのファンタジー!
※恋愛系、女主人公で書くのが初めてです。変な表現などがあったらコメント、感想で教えてください。
※全60話程度で完結の予定です。
※いいね&お気に入り登録励みになります!
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
俺様御曹司は十二歳年上妻に生涯の愛を誓う
ラヴ KAZU
恋愛
藤城美希 三十八歳独身
大学卒業後入社した鏑木建設会社で16年間経理部にて勤めている。
会社では若い女性社員に囲まれて、お局様状態。
彼氏も、結婚を予定している相手もいない。
そんな美希の前に現れたのが、俺様御曹司鏑木蓮
「明日から俺の秘書な、よろしく」
経理部の美希は蓮の秘書を命じられた。
鏑木 蓮 二十六歳独身
鏑木建設会社社長 バイク事故を起こし美希に命を救われる。
親の脛をかじって生きてきた蓮はこの出来事で人生が大きく動き出す。
社長と秘書の関係のはずが、蓮は事あるごとに愛を囁き溺愛が始まる。
蓮の言うことが信じられなかった美希の気持ちに変化が......
望月 楓 二十六歳独身
蓮とは大学の時からの付き合いで、かれこれ八年になる。
密かに美希に惚れていた。
蓮と違い、奨学金で大学へ行き、実家は農家をしており苦労して育った。
蓮を忘れさせる為に麗子に近づいた。
「麗子、俺を好きになれ」
美希への気持ちが冷めぬまま麗子と結婚したが、徐々に麗子への気持ちに変化が現れる。
面倒見の良い頼れる存在である。
藤城美希は三十八歳独身。大学卒業後、入社した会社で十六年間経理部で働いている。
彼氏も、結婚を予定している相手もいない。
そんな時、俺様御曹司鏑木蓮二十六歳が現れた。
社長就任挨拶の日、美希に「明日から俺の秘書なよろしく」と告げた。
社長と秘書の関係のはずが、蓮は美希に愛を囁く
実は蓮と美希は初対面ではない、その事実に美希は気づかなかった。
そして蓮は美希に驚きの事を言う、それは......
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる