元伯爵令嬢の結婚生活~幸せな繋がり~

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婚約期

婚約者

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「お父様、今なんとおっしゃいましたの?」
「…マリィアンナ、婚約者を用意できた」
「…こんやく…?」

夜会から数日たったある日、父の書斎にマリィアンナは呼ばれた。
予想外の父の言葉にマリィアンナは目を丸くして口をひくひくと痙攣けいれんさせた。

「ドランジェ伯爵の嫡男と婚約だ」
「ドランジェ…」
「面識はあるか?夜会にはあまり参加しないらしいが」
「…ない…と思いますが…」

婿をとる予定だったマリィアンナは嫡男は想定してなかった為、どんなに思い出そうとしても顔も名前もよくわからなかった。

「3日後に、邸宅に招く予定だ。準備をしておきなさい」
「3日…ですか?そんな早く…」
「早く婚約しておかねば…相手の気が変わってしまっては困るだろう」
「…そう…ですね…」

マリィアンナは複雑な顔で書斎を出た。
「結婚は…できる…のね。喜ばしい事…よね」

領地を継ぐ目標を無くしたマリィアンナは全力では喜べなかったものの
自身の身の振り方が決まりホッとした。
そして、婚約者がどんな人か思いをはせた。
「政略結婚とはいえ人生を共にする人だもの。いい人だといいわね…」

マリィアンナは紅茶の茶葉は何にしようか、お茶菓子は何がいいかしらと婚約者との初めての対面の準備を思案しながら自室へ向かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
マリィアンナは婚約者のドランジェ伯爵の嫡男の情報を少しでも知ろうとしたが…あまり成果がなかった。
一番の有用な情報は嘘もまじっているが令嬢同士のお茶会である。
しかし、運悪くマリィアンナが懇意にしている令嬢達は王家が主催した夜会に参加した後、すでに領地へ出発していたり体調を崩していた為、3日という短い時間では会うことができなかった。
唯一わかったことは、メイドが人づてに聞いたクリーム色に近い金髪に青い目であるという見た目だけであった。


結局どんなお方であろうと、わたくしには拒否するという選択肢はないものね…。


マリィアンナはすでにあきらめの境地に達していた。
先頭に父が立ち、その少し後ろにマリィアンナが控えてうしろにズラリと使用人が並んで万全を期して迎える。

馬車から年配の男性と若い男性が降り立つ。
「クステルタ伯爵、この間はどうも」
「こちらこそ、有意義な時間でしたな。お待ちしてました。さぁ、中へどうぞ」
父と年配の男性・ドランジェ伯爵が会話をしながら談話室へ向かう。その後を若い男性が続きマリィアンナが付いていく。
談話室に入り、ソファーへ座り世間話もそこそこに契約書類が用意された。
父と私の署名はすでに書き込み済みであった。
「ではこちらに署名を」
「ああ」
サラサラと流れるようにドランジェ伯爵がサインをし、嫡男もよどみなくペンを走らせる。

そして、あっという間に婚約が成立した。
マリィアンナは名前もまだ知らない男性の婚約者になった。
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