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3.ショタはおショタ様であられるそうです
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「しゅくふくのみこ……?」
ショタの口から飛び出した耳慣れない単語に、俺はおうむ返して首を捻る。いかん漢字変換が追い付かない。
「むかし、王に祝福を、国に繁栄をもたらした神子は、黒い目をしていたのだと本でよんだことがある」
「しゅくふく……祝福?」
えっ待て待て。祝福をもたらす? 何のこっちゃ。
困惑しきりの俺を置いてけぼりにして、ショタは零れ落ちそうな碧眼をキラキラ輝かせた。やめて眼前でそのキラキラ笑顔は眩しすぎる! 目がつぶれる!
「本にはこうも書いてあった。神子はちがう世界からきた客人だった、と。ヒナギもちがう世界からきたのか?」
「えっ……ええと、そういうことになる……の、かな?」
現実世界から夢の世界にダイブしているという意味では。この世界観、絶対日本じゃないし。
「やっぱりそうか! わたしの庭にとつぜんあらわれたから、おかしいと思ったのだ」
得心がいった様子のショタは晴れやかな笑顔でうんうんと頷いているが、反対に俺の顔には暗雲がたれ込めてサーッと血の気が引いた。
……わたしの庭?
「……す、すみません、一つ確認してもよろしいでしょうか……?」
「なんだ?」
「こ、こここはどこなんでしょう? あああなたは一体誰……?」
「しつもんが二つになってるぞ、ヒナギ」
動揺して噛みまくりの私に鋭く突っ込みを入れつつも、彼は答えてくれた。
「わたしはシュレスティンガー王が第五子、ファーヴァルト。ここはわたしの宮の庭園だ」
王。私の宮。私の庭。
いやいやいや待って待って待ってくれ。それってつまり、
「お、王子様……?」
「……そうよばれると、すこしこまる。ファーヴァルトとよんでくれないか?」
「いやいやいや」
まさか、まさかだけど、俺やらかしてしまったパターンだろうか。突撃☆王子のお庭訪問? そうなのか? やばくないか? どう見ても不審者では? いくら夢でも捕まるんじゃないか?
「あんしんしてくれ。ここはごく私的な庭だ。ほかのものは寄りつかないし、そもそもしっている人間はわずかだ」
へぇそりゃ安心、ってそんなわけあるかいっ。
冷や汗をだらだら流しながら、俺はどうにか弁明を試みるべく口の中で言葉をこねくりまわす。違うんです、俺はただの社畜なだけで怪しい者ではないんです。あぁどうしよう、どうしたら身分証明できるんだ? 夢の世界でも運転免許証って有効? あ、そもそも普段チャリ通勤だから自宅に置きっぱなしだった。詰んだ……。
「あ、あのっ、王子様っ! 俺……っ!」
とにかく何か言おうと口を開いて、また閉じる。
その瞬間の彼の表情があまりに脆くて。
キラキラ輝いていたはずの碧眼がふっと翳る。子どもらしい無邪気さの失せたその表情は年齢にそぐわず儚げで、思わず息を呑んだが、実際に俺の言葉を止めたのは、響き渡るほど豪快な腹の虫の鳴き声だった。
ぐぎゅるるるぅぅ。
…………あぁ、もう、ちょっとは空気読め俺の腹!
ショタの口から飛び出した耳慣れない単語に、俺はおうむ返して首を捻る。いかん漢字変換が追い付かない。
「むかし、王に祝福を、国に繁栄をもたらした神子は、黒い目をしていたのだと本でよんだことがある」
「しゅくふく……祝福?」
えっ待て待て。祝福をもたらす? 何のこっちゃ。
困惑しきりの俺を置いてけぼりにして、ショタは零れ落ちそうな碧眼をキラキラ輝かせた。やめて眼前でそのキラキラ笑顔は眩しすぎる! 目がつぶれる!
「本にはこうも書いてあった。神子はちがう世界からきた客人だった、と。ヒナギもちがう世界からきたのか?」
「えっ……ええと、そういうことになる……の、かな?」
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「やっぱりそうか! わたしの庭にとつぜんあらわれたから、おかしいと思ったのだ」
得心がいった様子のショタは晴れやかな笑顔でうんうんと頷いているが、反対に俺の顔には暗雲がたれ込めてサーッと血の気が引いた。
……わたしの庭?
「……す、すみません、一つ確認してもよろしいでしょうか……?」
「なんだ?」
「こ、こここはどこなんでしょう? あああなたは一体誰……?」
「しつもんが二つになってるぞ、ヒナギ」
動揺して噛みまくりの私に鋭く突っ込みを入れつつも、彼は答えてくれた。
「わたしはシュレスティンガー王が第五子、ファーヴァルト。ここはわたしの宮の庭園だ」
王。私の宮。私の庭。
いやいやいや待って待って待ってくれ。それってつまり、
「お、王子様……?」
「……そうよばれると、すこしこまる。ファーヴァルトとよんでくれないか?」
「いやいやいや」
まさか、まさかだけど、俺やらかしてしまったパターンだろうか。突撃☆王子のお庭訪問? そうなのか? やばくないか? どう見ても不審者では? いくら夢でも捕まるんじゃないか?
「あんしんしてくれ。ここはごく私的な庭だ。ほかのものは寄りつかないし、そもそもしっている人間はわずかだ」
へぇそりゃ安心、ってそんなわけあるかいっ。
冷や汗をだらだら流しながら、俺はどうにか弁明を試みるべく口の中で言葉をこねくりまわす。違うんです、俺はただの社畜なだけで怪しい者ではないんです。あぁどうしよう、どうしたら身分証明できるんだ? 夢の世界でも運転免許証って有効? あ、そもそも普段チャリ通勤だから自宅に置きっぱなしだった。詰んだ……。
「あ、あのっ、王子様っ! 俺……っ!」
とにかく何か言おうと口を開いて、また閉じる。
その瞬間の彼の表情があまりに脆くて。
キラキラ輝いていたはずの碧眼がふっと翳る。子どもらしい無邪気さの失せたその表情は年齢にそぐわず儚げで、思わず息を呑んだが、実際に俺の言葉を止めたのは、響き渡るほど豪快な腹の虫の鳴き声だった。
ぐぎゅるるるぅぅ。
…………あぁ、もう、ちょっとは空気読め俺の腹!
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