時司るリトルメイジ

温水やすくみ

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エピソード001 相続問題は時間を巻き戻して

第二章 中津家の人々

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「結構大きい家だな」

 俺は東京某所にある中津家の邸宅に来ていた。
 家の値段が著しく高い東京都心でよくもまぁこんな豪華な邸宅が建てられたものだとただ関心するよ。
 流石は天下の三条財閥の重鎮を務めた中津勇の邸宅といえるな。

「あっ、光前寺さん」
「翔太君か」

 玄関前で唖然としていた俺に今回の依頼人である翔太君が迎えに来てくれた。
 俺は翔太君の案内でこの邸宅の中へ案内される。
 それから翔太君から色々と詳しい事を聞いていたのだがどうも先日に勇さんの本葬が行われたあしく既に勇さんの遺体は火葬されて違背になっている。
 そして本日は遺族が集まって勇さんが残した遺言状を公開するとの事。
 俺は今回剛三会長の代理としてその遺言状公開に立ち会う事になった訳だ。
 それから俺が翔太君の案内で邸宅の大広間に到着。
 そこには三人の遺族が集まっていた。

「父さん、剛三さんの代理の方がお越しになられました」
「ご苦労だったな。それとアンタが会長の代理か」
「光前寺といいます。以後お見知りおきを」

 今、俺に話しかけてきたいかにも威厳のありそうなおっさんは中津健一。
 三条財閥の系列会社である三条流通の部長職。
 個人的な第一印象は偉そうにしている感じの悪いオッサン。
 そして俺は自分の名刺を手渡そうとした時。

「そんな名刺など渡す必要などない。正直お前のような奴の名前など覚える必要はない」

 そう言った後に健一は俺の元から去っていく。
 やはり第一印象通り最悪な奴だ。
 仕方なく俺はもう一人の遺族の女性に挨拶する事に。

「すみませんマダム」
「……あら何方でしょうか」
「私は三条剛三会長の代理として今回の立会人をする事になった光前寺といいます」
「失礼しました。私は天王寺三重といいます」

 この女性は天王寺三重。
 亡くなった勇さんの末娘で既婚者。
 どうも先程の健一の奴とは違って第一印象はいい感じだ。
 ただなんだか父親が亡くなったせいか何処か暗い印象だ。

「父親を亡くしました件については心中お察しいたします」
「お優しいお方なのですね」
「私は全世界の女性の味方でございます。もし何か相談したい事があるのなら是非」
「うふふ、主人がいなかったら是非一緒に飲み明かしたい方ですこと」

 本当に既婚者でなかったら俺もこのマダムを口説き落としたいものだがな。
 そこへそんな三重さんの元に一人の凛々しそうな男が。
 
「三重、あまり暗い顔をするな」
「庵さん」

 どうやらご主人のご登場みたいだな。
 天王寺庵……三重さんの亭主で職業は弁護士。
 そして勇さんの遺言状を預かっている人物でもある。
 遺言状を預かっている辺り生前の勇さんの信用も厚かったようだ。
 俺はその庵さんから色々と聞いてみる事に。

「初めまして……私は光前寺……」
「光前寺宗吾さんですね。話は会長から直接伺っております」
「あ、そうですか」
「私は勇さんの専属弁護士でありました天王寺庵といいます。以後宜しくお願いします光前寺さん」
「こちらこそ宜しくお願いします」

 いやぁ清々しいぐらいに爽やかな印象だな。
 流石は麗しい三重さんのご主人だけの事はあるな。

「では、この後正午ぐらいに私が預かっている遺言状を公開しますのでそれまでゆっくりしてください」

 庵さんはそのまま三重さんを宥めている。
 見るからにいい夫婦だと感じるなぁ。
 さて、とりあえず遺族は一応出揃っているみたいだから俺は頭の中で状況を整理しよう。

 勇さんには二人の子供がいて一人は感じの悪い健一とその息子にして今回の依頼人である翔太君。
 そして下の娘で既婚者の三重さんにそのご主人にして問題の遺言状を預かっている庵さん。
 予め調さんからの身辺調査で知っている事だが他にも現在病気で静養中である翔太君の母親と数年前に勘当された次男。
 特に次男に関しては現在音信不通で正直生きているかも調さん曰く怪しいとか。

 そこへ俺のスマホに着信音が鳴り響く。
 俺がその着信に応答すると……なんと出てきたのはウチの社長。

(どう?そっちは上手くいってるのかしら)
「この後正午から問題の遺言状が公開されるそうです。俺も会長代理として立ち会います」
(そう、じゃあその遺言の内容が分かり次第報告お願いね)
「わかりました」

 それから俺は時間まで邸宅内を色々と回る事にした。
  しっかし流石はかつては三条財閥の重鎮の家らしくとても都心にあるとは思えない豪華ぶり。
 庭は大きいし和室にある掛け軸とかいかにも高価そうなものがあるようで。
 極めつけは仏壇のある部屋は……本当に凄いという言葉しか出てこない。
 本当に金ってあるところにはあるもんだな。
 そんな中で俺はこの邸宅にいる使用人に色々と聞いてみた。
 話によれば亡くなった勇さんは生前かなりの冒険趣味があったらしく暇があれば世界中の秘境とかへ行っていたそうだ。
 十年程前にはなんとマッターホルンまで行ったとか。
 だから使用人達も揃って「あんなに元気だったのにどうして」と勇さんの死には疑問を隠せない様子であった。
 俺も今度の勇さんの死には何処か不信感を抱かずにはいられない。

 そうこうしているうちに時刻はもう午前十一時五十五分。
 遺言状が開示される時間だ。
 俺は急いで二階の和室へ。
 和室に到着すると既に遺族の健一と三重さん。
 それに少し離れて翔太君がいた。
 更に庵さんが遺言状の入った封筒を手にしている。
 俺はこの遺言状開示の立会人として翔太君の傍に正座して座る。
 それから少しの間、和室の空気がまるで張り詰めたように静かである。


 そして、時刻は正午。


「それではお時間になりましたのでこれより先日お亡くなりになりました中津勇が残された遺言状を私、天王寺庵が開示させて頂きます」

 この場にいる皆が見守る中で庵さんは手にした遺言状入りの封筒の封をハサミでゆっくりと開いていく。
 そしてその開いた封筒の中から庵さんは一枚の遺言状を取り出した。

「では……読みます」

 遂に公表される中津勇の遺言。
 果たしてその内容はどうゆうものであろうか。
 この場にいる皆がその内容を聞こうとただ沈黙を保っている。
 そして……遂に遺言の内容が開示された。



「私の全ての財産は全て慈善団体の難波事業団へ寄付するものとする。よって私は遺族には一切遺産を残さないものとする」



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