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閑話休題002 そうだ!パソコンを作ろう
その二
しおりを挟むそれから次の日曜日。
私と都ちゃん、そして最初は嫌々だったのを説得して同行してもらったさもなと三人でいざ趣味の都・秋葉原へ。
「あ~あ、同じ行くなら新宿とか池袋が良かったな。確かそこにもパソコン売ってる筈だよ」
「まぁまぁ、ぼやかないでさもなちゃん。パソコンパーツの品揃えなら日本で秋葉原に勝る場所なんてないんだから」
「それにしても前にも来たけど、ここって相変わらずね」
実の処、私は何度か秋葉原に来た事がある。
主に限定フィギュアとか特典付き映像ディスクボックスの入手が主だったが毎度ながら外人とかオタク、それに歩道者天国でコスプレしてるのが多い。
しかし今回のようにパソコン目的でここに来るのは初めてだ。
「とりあえず、あそこのパソコンショップに行きましょう」
「都ちゃん、そのパソコンについてなんだけど」
「何?」
「実は今回の買い物で私の他に……宗吾の為にもう一台パソコンを用意したいのよ」
「えっ?光善寺主任の分もですか」
実は先日の仕事での臨時報酬として高性能ゲーミングパソコンを支給する約束をしているのだ。
しかも私同様SP5エミュレーターが快適に動作するパソコンを支給したいのだ。
「なら……いっそインテル+GeForceとAMDでそれぞれ作っちゃいましょう!」
「えっ?私は同じのを二つ用意すればいいと思ってるのに」
「二台作るなら、それぞれ別メーカーで組みましょうよ司ちゃん!」
はは、都ちゃん完全に目が血走ってるわ。
本当に筋金入りのゲーマーね。
ゲームとかゲーミングパソコン絡みになると迫力が違うわね、この娘。
「それで司ちゃん、パソコンの予算がどのぐらい?」
「まぁ……今回は一台辺りの予算は三十万ぐらいかしら。あっ、あまり高額だと宗吾も受け取り辛くなるし」
「ほほう」
「それとモニターとかは会社でストックしてるの支給するから除外ね」
「三十万か……残念だけど最上級のGeForceは除外ね。あれってグラボだけで三十万吹っ飛ぶし」
えっ?
近頃のパソコンパーツってそんなに高いの?
これじゃ高性能ゲーミングパソコン一台組むのにいくら必要なの?
「確か、あのエミュレーターを快適に動かすのに必要なグラボはRTX4070かRX7800XTだから……予算内に収まると思うわよ」
「ちなみにそのグラボはどのぐらい?」
「確かRX7800XTは災厄で八万円、RTX4070が十万ぐらいかしら」
「よかった、それなら他のパーツを考慮すると現実的ね」
「どこが現実的だよ!」
なんとか予算内で収まるからって思った時、大激怒のさもなが怒鳴ってきた。
「何がパーツ一つで十万だって?第一三十万円あれば切り詰めたら二か月生活できる金だよ!」
「「は、はぁ」」
「それをすんなり使うなんて信じられない!いくら司ちゃん金持ちだからって金銭感覚おかしすぎだよ」
三十万円で二か月生活可能。
てっきり庶民ってもっと給料もらってると思ってた。
「三十万円って庶民が地獄のような残業を多くやってようやく貰える金額なんだよ」
「さもなちゃん、落ち着いて」
「司ちゃん……一度身分隠してブラック企業へバイトしたら?少しは労働の大変さがわかる筈だよ」
そういえば……さもなはリトルメイジ資格を得た直後にブラック企業へバイトに行ってた事あったっけ?
あの時のさもな……鬼気迫るような形相してたのを覚えている。
「とにかく!正直金持ちの道楽には付き合ってられないよ。一応予算十万円持ってきたけど私にはパソコン無理だよ」
「さもなちゃん、今のご時世なら十万円で十分な性能のゲーミングパソコン組めるわよ」
「えっ?」
「流石にSP5エミュレーター動かすのは無理だけどフルHDなら十分遊べるパソコン作れるわよ」
「マジ?」
やれやれ、近頃は十万円でもそれなりのパソコンが作れるのね。
さもなを無理やり連れていく時に用意できる予算持ってきなさいとは言ったけど近頃のパソコンの進化は凄いわね。
「では、司ちゃんと光善寺主任にはそれぞれ予算三十万円の高性能のを!さもなちゃんには予算十万円のお手軽パソコンを作ろうと思いま~す」
「では都ちゃん宜しくお願いね」
「私、気に入らなかったら十万円は生活費に回すからね」
まぁ、今回は都ちゃんに仕切ってもらおうかしら。
この中では一番パソコンの知識があるしね。
では早速最初のお店へ行きましょう。
「いらっしゃいませー!」
入店すると気前のいい店員が訪ねてきた。
「すみません、実はパソコンを三台見積して欲しいのですが」
「で、どのようなパソコンをご所望で」
とりあえず都ちゃんが店員と何やら話をしている。
具体的にどんなパソコンが欲しいのか交渉しているみたいだ。
「とりあえず店の中を見てみましょう」
「うん」
私とさもなはとりあえず店の中を歩く事に。
店には完成しているパソコンの展示やCPUやメモリーの価格表、更に私が気になったのはパソコンの外観といえるケースの展示スペース。
「ふ~ん、これに中身入れてパソコン作るんだ」
「そうみたいね。値段もピンキリみたいだし……デザインも色々と?」
「どうしたの?司ちゃん」
私は展示されているひとつのPCケースが目に入った。
適度に自分好みの小さいサイズ。
自分の部屋にピッタリの光沢の入った黒。
しかも電源スイッチやUSB端子の場所も自分好み。
「値段は……二万円か。結構高級そうなケースね」
「司ちゃん、まさか」
「えぇ!これよこれ」
私はすぐにそのケースの注文カードを一枚抜き取り店員と交渉中の都ちゃんの元へ。
「都ちゃん」
「あら司ちゃん。どうやらパソコンの仕様が……」
「すまないけどケースはこれにするわ」
「えっ?」
都ちゃんと店員は私が出した注文カードを見て驚いた。
「司ちゃん!これってミニATXケースよ。前にも言ったけどあまり小さいケースだと発熱が……」
「これにして!」
「あのね……ミニATXは組むのもメンテナンスも大変だから上級者向けよ。司ちゃんパソコン作るの初めてでしょう!」
「こ・れ・に・し・て!」
おや?
私の願いに都ちゃん頭を抱えてるわ。
そんなに私無茶なお願いしてるのかしら?
すると店員がこんな提案をしてきた。
「あの~っ、その商品を使いたいのでしたら私から提案がありますが」
「何?」
「何でしたら、そのケースに収まるパーツプランをした上で組み立て代行をしてあげますよ」
「えっ、本当ですか」
「はい、手数料一万円頂きますが」
えっ、組み立て代行サービス?
こうゆうサービスもあるの?
その話を聞いた都ちゃんは店員にこう告げた。
「では、司ちゃんのパソコンに関しては組み立て代行をお願いします」
「はい!ありがとうございます」
「正直ミニATXを組むのは司ちゃんには荷が重すぎるわ。では改めて見積りお願いしようかしら」
「はい、ではミニATXに収まる光栄を……」
さて、ここからは私もパーツ選定に加わり具体的な構成を選ぶ事に。
ただ選定の基準はSP5エミュレーターを快適に動作できるスペックだ。
ただ予算だけでなく私がミニATXケースを選んだので高発熱とかの最上位パーツは選べない足枷がある。
それから三十分ぐらい店内を歩き回りパーツを選定した。
「こんなものかしらね」
「結構探せばあるものね、条件の合うパーツって」
結局CPUとグラボは比較的発熱の低いAMDのものを選ぶ事に。
予算と発熱を考慮してエミュレーターを快適に動かせるのがギリギリ保証できるスペックになった。
それでも都ちゃん曰くこれでエミュレーター動作は問題ないと言ってくれた。
「では、まずは一台目ですね」
「ありがとうございます!では代金は残り二台の見積りが終わり次第で」
それから店員の話では私のパソコンは約一週間で送ってくれるそうだ。
しかも完成している状態なので接続して初期設定すればすぐに使えるのが有難い。
「では次のパソコンも組み立て代行……」
「いえ!二台目は自分で組み立てますのでパーツの選定だけお願いします」
「み、都ちゃん」
「司ちゃん!パソコンは自分で組むのが一番楽しいの」
「だけど組み立て代行あるならそれ使ったほうが」
「先程は司ちゃんにとってハードルが高すぎるから容認したのです!せめて光善寺主任の分ぐらいは自分で作りなさい」
「ひえぇぇぇっ」
「それに……好きなんでしょう主任の事が?好きな人の為にパソコンを作る!これってロマンがあるじゃないの」
「ぐぬぬ……」
ば、バレてる。
都ちゃん……かなり鋭い!
流石は恋多き女子高生か。
「と、とにかく宗吾の事はあまり周囲に言いふらさないでよ」
「はいはい!では愛する宗吾様の為にパソコンを作りましょ~っ」
「は、はぁ~っ」
私は都ちゃんに連れられてパーツの選別へ。
そして結局宗吾の分は都が予算に合わせてのパーツ構成に。
「ん~と、CPUはインテルのハイクラスで行くとして……水冷クーラーも必要ね。そうそうやっぱりグラボはREX40700で行こうかしら」
「都ちゃん、貴方が使うんじゃないんだからね」
「はいはい💛だけどそれでもパーツ選びはいつやっても楽しいわね」
「駄目だこりゃ」
こうして宗吾の為に用意したパソコンパーツの選定は終わり、結局都ちゃん好みのスペックになってしまった。
流石にこれだけのパーツを女の子だけで持ち帰るのは難しいので私の家まで郵送してもらう事に。
「さてと……そういえばさもなは何処に?」
「あっ、もう一人のお嬢様は別の店員と一緒に買い物中ですよ」
そうか。
なら、とりあえず都ちゃんと一緒にさもなの様子を見に行くか。
そして……さもなを発見すると意外な行動をしているのを見た。
「あっ、さもなちゃん……って此処は中古・ジャンクコーナーじゃないの」
「中古?ジャンク?」
なんと、さもながいたのは明らかに上級者向けといえる中古・ジャンクコーナー。
どうしてパソコン作るのは初心者であるさもながここにいるの。
「店員さん、ここにあるの安いね」
「ここは中古品のコーナーですから。ですが正直初めての方はお勧めしません」
これは店員さんも困惑してるみたいね。
さもな、そうゆうのは知識がないと返って損をするわよ。
「さもなちゃんストッ~プ!」
流石に都ちゃんも止めに入ったか。
それから都ちゃんはさもなを必死に説得して中古パーツには手を出すなと警告。
都ちゃんは傍にいた店員にさもなが用意している予算十万円で作成可能なパソコンの見積りを依頼。
全くや吸い物に目がないさもなには困ったものね。
それから私達が中古・ジャンクコーナーを後にしようとした時であった。
「!?」
「どうしたの?さもな」
さもなはジャンクコーナーにあった一台のパソコンケースを見つけた。
なんと、そのケースの正面には可愛いペンギンの造形が。
しかも色彩もカラフルだ。
「これ可愛い!私、ケースはこれにする」
「うわぁ」
店員の話によると、さもなが選んだジャンクケースは今から十年以上も前に発売されていたものらしく当時は結構話題になっていたとか。
また規格はATXなので今のパーツを組み込むのは問題ないそうだ。
ただ……いかんせん昔のケースなのであまり大きなファンが付けられない上に今流行りの光るファンも付けられないそうだ。
「えっと……価格は五百円だって!私これにする。絶対にこれにする」
「可愛さ重視のさもなにはピッタリの代物ね。という訳で店員さん」
「わかりました!ではケースはこれという事で見積りいたします」
それからはさもな用パソコンのパーツ選定。
CPUはコスト重視で一世代前のRYZENにメモリーとSSDは安いから可能な限り大容量で。
また、さもなの希望でブルーレイドライブを搭載する事に。
丁度あの可愛いケースは五インチのドライブが収まる箇所があったのでそれは問題無しだった。
それとあのケースは古いのでUSB3.0に対応してないのでカードリーダー付きの端子アダプターも付ける事に。
またグラボはコストパフォーマンス重視の為に新品で三万ぐらいのRX6600を選択。
するとOS代含めて九万円を切る結果に。
「じゃあ、さもなちゃん一緒に組み立て楽しみましょうね……」
「組み立て代行お願いしま~す!」
「えっ?さもなちゃん」
「一万円予算残ってるなら作ってもらった方がいいよ。組むなんて面倒な事したくないし」
「さ、さもなちゃんもロマンがないなぁ」
そりゃ都ちゃんが濃い趣味してるだけでしょ。
さて、これで買い物は全て完了だ。
「毎度ありがとうございます!またのお越しをお待ちしております」
それから私達は代金を支払って店を後にする。
後は一週間待つだけだ。
徳に私とさもなのパソコンは完成済みで届くので実に楽しみだ。
気が付けばもう夕方だ。
「どう?私が奢るから夕食食べに行きましょう」
「「賛成~っ」」
「なら牛丼にする?それともラーメン?」
「「ラーメン!」」
それから私達はラーメン屋でラーメンを食べた。
私はこってりとした豚骨ラーメンが好みだがさもなはさっぱり味、都ちゃんは辛口が好みみたいだった。
三人そろって満足した私達はそのまま魔法陣ゲートのあるステーションへ。
昔は電車が日本中を走っていたそうだが今はパスポートを持てば海外旅行も容易なご時世だ。
今、私達はその魔法陣ステーションで料金を支払い本社ビルのある町へ行ける魔法陣の中央へ。
「では港区行きの魔法陣転送を行います。くれぐれも乗り遅れのないようお願いします」
そして私達の足元にある魔法陣が淡い光を出し始める。
転送が始まった。
次にこの光が消える頃には私達は本社ビルのある港区に転送される。
今日は来週到着する新しい相棒の到着を楽しみにしてぐっすり寝よう。
そして、それから一週間が経過した。
応援ありがとうございます!
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