のろし

けろけろ

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天秤

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いのちがすべて平等だというのなら
死に瀕した人のなかから助けるのは誰だっていいはずだ

しかし 僕らは助ける人を選ぶだろう
        いのちを天秤にかけるだろう



いのちはすべて平等だ
だけれど 僕らはいのちの何が平等か知らない

知らぬ人より 愛する者を
老いた者より 幼き者を
他種族より ヒトを
小さいより 大きいを
そんなふうに 僕らは天秤で重さを計る

いのちの価値を 計っている
本当は釣り合うはずなのに
傾く天秤は
僕らが人間故

ヒトの器に入っている限り
いのちの秤は釣り合わない

いのちの平等などというものは
仏や神の秤だけで見えること

結構なことではないか
僕らは人間だ
愛する人が大切なのに
その人だけを大切にすることに
躊躇い 葛藤する



そうして繋いだ血ではないか
結構だ
そう分かってしまえば 神の秤も少しは見える

ヒトの秤をしっかり見れば
人間の秤も見えるだろう
いろんな秤の静かな観察の眼差しは
神の秤に見えるだろう

寒いくらいに静けきこと
しかして 底知れぬ温かさ
情のない愛の縁で
無差別に釣り合う天秤を見る
すべてが愛しく すべてがかなしい
人の身には巨きな
仏の右足に踏まれるが如き
慈愛の海
そらの大きさ 永遠までの距離



まるで様にならない
ヒトの器のなかから
愛を説くこと

それでも
愛が
愛から
僕に
呼び掛けがあるのだ
無に近くも
こんなに確かに
愛から
すべてのいのちから
大地呑む洪水のように
張り詰めて
それに愉快な言葉で 文字で
ここに
震えがあるのだ
愛から
すべてのいのちから



いのちに重さはない
故に秤は釣り合う
透き通ったたましいに重さなどない
ただ 生まれ出でて 苦しみ 歓ぶものたちは
みなただ 純粋に
苦しみと 歓びを知っているのだ
透明に 苦しみと歓びという光
瞬く星の光のようなもの
ただ 苦しみと歓びといった重さの尊さ
名など持たず
目に映る形を崩して
幾つも 宇宙に犇めく苦しみと歓び
透明な宇宙は尊く
目に見えるものはここに無い
愛という海の清らかな粒子

せめて いまだけでも
僕はこの釣り合った天秤を感じながら
こころに映る宇宙を
見ていたい
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