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裏側
しおりを挟む世界の裏側を切り貼りする
透明なはさみ 巨きな水槽
失われたものたちも
こころの奥で求めるものも
同じ水のなかで
映写される
いまが 宇宙の理から解放された
本当の姿を現す
恐怖でも 悲しみでも
焦りや 苦しみ
突き動かされるようなときめきなら
なおさら
夢が覚えさせる体験は
どれも愛おしい
誰が切り貼りするのだろう
僕ではない
『僕』と呼ぶ意識表層には
あのエリアの創作は任されていない
『僕』には『僕の裏側』がいる
それは夢の使者であり管理者で
僕の知らない僕は彼であり
僕のことさえすべて知っているのだ
僕は彼が好きだ
夢は彼からのメッセージだ
だから夢も好きだ
きっと彼は人の形を持たず
細胞のひとつずつがもつ夢であり
その夢が合わさった途方もない宇宙だ
人の細胞は星の数より多いのだから
僕の裏側に彼がいる
四十兆もの夢が
僕でありながら僕の知らないすべての僕が
湛えられている宇宙がある
そんな彼からメッセージがあるとしたら
夢とは
宇宙たる彼からの神託に他ならない
ああ きっと
すべて一緒だ
熱い夏 海面に浮かんで目を瞑るとき
身体で感じる色や形も
凍る冬 夜の底で星空から受ける
感動も
花 鳥 虫 風 樹 雲
それらが見るだけで
僕の身体に入って 過ぎていくのも
僕の知らない僕からの
神託であり 夢なのだ
この宇宙のどこにも
僕が知らないだけで
僕でないものはないのかもしれない
すべては僕の裏側が現れているだけ
透明なはさみ 巨きな水槽
どこを見たって失われたものはそこにあり
こころの奥で求めるものが歩く
夢など存在しない
夢などというものがこの世にあるならば
それは僕が受け取るすべての感触にそう名をつけるべきだ
そして 本当に夢ではないものは
夢から覚えるこの情動だけだ
これのみ これだけが『僕』のものだ
僕が尊び 管理できるたったひとつのものなのだ
宇宙の裏側
神なるものにも動かし得ぬもの
もし 宇宙が『僕』と名乗るなら
僕らはみな『僕の裏側』だ
大きいようでどちらも一緒
僕らが『僕』であろうと
『僕の裏側』であろうとも
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