アダムズコード

青山惟月

文字の大きさ
9 / 15
第二章 吸血鬼と少年

2、ガト・グリス製薬社

しおりを挟む

 ガト・グリス・ジャパン株式会社。本社は東京の渋谷区。ガト・グリス製薬社の日本国内での販売開発を担う法人である。
 先月、経済界にも影響が出る、衝撃的な発表がなされた。
 本社社長、リノが日本法人の社長も兼任するというものだった。
 創業者一族の出身である彼はこれまでメディアに姿を現すこともなかったが、齢二十七という若さにして昨年本社社長に就任した。
 研究職からの就任だったがその経営手腕は高く評価され、わずかな期間でも無駄を省き、着実に利益を上げた。社内外問わず人望も厚い。
 そんな彼が日本法人の経営にメスを入れるとなれば株価の上昇も起こり得る話である。投資家による株の買い注文が止まらず株価は連日ストップ高を更新した。
 そして当月からリノは日本に滞在し、本格的に日本法人の改革が行われていた。

 ガト・グリス・ジャパン社、社長室ー

 「社長、どうやら例のものの場所が特定できたようです」
 「それはよかったです。わざわざ日本に来た甲斐がありました」
  グレーのスーツを着て、夜景が見える窓辺に立つ男。リノだった。秘書のような女性が少し近づく。
 「三百年も探しましたからね」
 「わたしと社長もかれこれ三百年近い付き合いですか……」
 「僕と一緒にいるのは嫌ですか?」

 「リリトさん」

 リリトと呼ばれた女性は、腰まで伸びる長い黒髪。内側には赤毛が混じっている。見た目は20歳程で両目は赤い。
 彼女は首を横に振った。
 「いいえ。そんなことはないですよ。それにノエ様のお陰で私はに会えるかもしれないのですから……」 
 「今はノエではなくリノです」
 「そうですね。リノ社長」
 「リリトさんは血の契約をさせた僕を恨みますか?」
 「いえ、そんなことはありませんよ。ふふ、今日の社長は珍しく弱気ですね」
 笑いながらリリトは持ってきた資料を手渡す。
 「なるほど。上手く三百年も隠してくれたものです……あの方も本当に意地が悪い。あの日僕より先に二人を隠すなんて」
 資料には雪斗と、イヴが眠っていた黒い柩の写真が添えられていた。
 「イヴさんが目覚めたらその時に……」
 「承知しました」 
 「あ、リリトさんは食事ですよね」
 「はい、お願いします」
 「僕はアダムズコードではないからいつも空腹にさせてしまって申し訳ない……」
 「いえ、大丈夫ですよ
 そのまま抱き合う二人。小さな牙が彼の首筋に刺さる。そしてゆっくり、ゆっくりと血を吸うリリト。吸血し終わると、丁寧に舐め取る。すぐに傷口は綺麗に塞り、痕も残らない。
 最後に唇にキスをしてその一連の行為は終わった。

 「御馳走様でした」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...