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第二章 吸血鬼と少年
2、ガト・グリス製薬社
しおりを挟むガト・グリス・ジャパン株式会社。本社は東京の渋谷区。ガト・グリス製薬社の日本国内での販売開発を担う法人である。
先月、経済界にも影響が出る、衝撃的な発表がなされた。
本社社長、リノが日本法人の社長も兼任するというものだった。
創業者一族の出身である彼はこれまでメディアに姿を現すこともなかったが、齢二十七という若さにして昨年本社社長に就任した。
研究職からの就任だったがその経営手腕は高く評価され、わずかな期間でも無駄を省き、着実に利益を上げた。社内外問わず人望も厚い。
そんな彼が日本法人の経営にメスを入れるとなれば株価の上昇も起こり得る話である。投資家による株の買い注文が止まらず株価は連日ストップ高を更新した。
そして当月からリノは日本に滞在し、本格的に日本法人の改革が行われていた。
ガト・グリス・ジャパン社、社長室ー
「社長、どうやら例のものの場所が特定できたようです」
「それはよかったです。わざわざ日本に来た甲斐がありました」
グレーのスーツを着て、夜景が見える窓辺に立つ男。リノだった。秘書のような女性が少し近づく。
「三百年も探しましたからね」
「わたしと社長もかれこれ三百年近い付き合いですか……」
「僕と一緒にいるのは嫌ですか?」
「リリトさん」
リリトと呼ばれた女性は、腰まで伸びる長い黒髪。内側には赤毛が混じっている。見た目は20歳程で両目は赤い。
彼女は首を横に振った。
「いいえ。そんなことはないですよ。それにノエ様のお陰で私は妹に会えるかもしれないのですから……」
「今はノエではなくリノです」
「そうですね。リノ社長」
「リリトさんは血の契約をさせた僕を恨みますか?」
「いえ、そんなことはありませんよ。ふふ、今日の社長は珍しく弱気ですね」
笑いながらリリトは持ってきた資料を手渡す。
「なるほど。上手く三百年も隠してくれたものです……あの方も本当に意地が悪い。あの日僕より先に二人を隠すなんて」
資料には雪斗と、イヴが眠っていた黒い柩の写真が添えられていた。
「イヴさんが目覚めたらその時に……」
「承知しました」
「あ、リリトさんは食事ですよね」
「はい、お願いします」
「僕はアダムズコードではないからいつも空腹にさせてしまって申し訳ない……」
「いえ、大丈夫ですよノエ」
そのまま抱き合う二人。小さな牙が彼の首筋に刺さる。そしてゆっくり、ゆっくりと血を吸うリリト。吸血し終わると、丁寧に舐め取る。すぐに傷口は綺麗に塞り、痕も残らない。
最後に唇にキスをしてその一連の行為は終わった。
「御馳走様でした」
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