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5、不審感
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真都は嫌な予感がしてならなかった。
「お姉さまの秘密は私だけのものです──」
和葉に耳打ちされた言葉の意味が、ニコの正体を意味していたら。そう考えるととても恐ろしいことになる。
ここで下手にニコが気を許せば何か余計なことを話しかねない。その危機感をよそに、和葉と今日も登下校する二人。
寮の食堂で夕食の酢豚に入っているパイナップルを弾きながら真都は一人悶々としていた。
「なんでパイナップルばかり残しているの?」
真都がはっと気が付くと、皿の端のパイナップルの山を見つめるニコが隣にいた。
いつもは予習復習の時間が惜しいと、先に早食い気味に食事を摂っていた真都だが、今日は考え事をするあまり食べるスピードが落ちていた。
そうこうしている間にニコが食べ終わり、残し気味のパイナップルがバレてしまったのだ。
「しょっぱいものに甘いのは合わないからよ。苦手なものくらいあるよ!」
「好き嫌いは良くないぞ?」
「もう、誰のせいで……放っておいて!!」
思わずいつもは上げないような大きな声を出してしまった。
はっと、寮生の注目に気が付く真都。
「すみません。失礼しました」
周囲の目から逃げるように食器を片付けて、急ぎ早に自室に戻った。
「何やってるんだろ……ほんと馬鹿だ」
ニコが火星の王という秘密は何が何でも守り通さないと命に関わる。頭では分かっていても、自分がどうすべきかの最適解は導き出せない。そんな自分に嫌気がさして、気が付くと真都はボロボロと泣いていた。
「何かあったのか?」
振り向くとニコが心配そうな表情で立っていた。
「ニコ……」
「僕にも相談できない事かい?」
「そういう訳では……」
「じゃあどうしたんだい?話してよ」
「……和葉に、この前ニコの秘密は私だけの持って言われたの。もしかしたらあの子、ニコの正体に気がついてるんじゃないかって心配で」
「ほう……」
「もし王だってバレたらニコの命に関わるって焦っていたのだけど、相変わらずニコは最近ずっと和葉と一生に親しくしているし、それを見ていたらなんだかイラついてきたり。そんな自分も嫌で。もう……どうしたらいいのか分からないの!!」
言いたいことを捲し立てるように言い放った真都。泣きながら俯く真都にニコは近づいて頭を二度ポンポンと優しく叩いた。
「ごめんね、真都。心配させちゃったね。」
「ニコの……ニコの秘密がバレたら……」
「ありがとう。でもその心配は大丈夫だと思う」
「へ?」
思わずキョトンとする真都。
「和葉、なんか僕のことニコラ王の親戚だと思ってるみたい」
「親……戚……?」
「そう。よく似てるし、全くの他人ではないと思ったみたいだけど」
「え、でも……そう思っているって確証はあるの?」
「これ」
「こ……これは!!」
ニコから手渡された物は写真だった。
男物服を着たニコの隣りに、何故かワンピースを着たニコの姿。どちらも容姿は幼い。
「どういう事なのニコ!」
まるで別人のように写る二人。
「あーそれはね、合成写真だよ。万が一怪しまれた時用に地球にはまだ無い火星の高度技術を駆使して作ておいたんだ」
それはどこも繋ぎ目が分からないくらいに精巧な出来の写真だった。
「彼女には僕はニコラ王の従姉妹って言ってある。だけど、王族の血筋が自由に留学なんて出来ないから騒ぎにならないよう秘密にして欲しいとね。勿論これは真都も知らない秘密だから内緒だよって彼女を説得した日に伝えてあったんだが……」
手元の写真を見ながらふるふると震える真都。思わず感情が昂った。
「ニコの馬鹿っ!!それならそうと早く言ってくれれば良いのに!!」
「ごめんね。でも心配してくれてありがとう」
またもや泣きだした真都をヨシヨシとなだめるニコ。
「良かった……ニコが無事ならそれでいいの」
「大丈夫だから安心して」
そのうち真都は心労が溜まっていたのか、ベットの上でうたた寝をしてしまった。 そっと起こさないように近づいたニコは、真都の肩にブランケットを掛ける。
「風邪ひかないでね真都……」
真都の寝顔を見て微笑むニコ。
そしてポケットから、粉々になった小さな電子部品だったような物を取り出し、ティシュに包んでゴミ箱にポイッと捨てた。
「誰だか知らないけど、僕らを監視しようなんて百年早いんだよ。僕の首がそんなに欲しいか?下賤め」
そしてパソコンを開き、一通のメールをどこかに送信した。
『本日も周囲に異常なし。報告事項なし。』
「お姉さまの秘密は私だけのものです──」
和葉に耳打ちされた言葉の意味が、ニコの正体を意味していたら。そう考えるととても恐ろしいことになる。
ここで下手にニコが気を許せば何か余計なことを話しかねない。その危機感をよそに、和葉と今日も登下校する二人。
寮の食堂で夕食の酢豚に入っているパイナップルを弾きながら真都は一人悶々としていた。
「なんでパイナップルばかり残しているの?」
真都がはっと気が付くと、皿の端のパイナップルの山を見つめるニコが隣にいた。
いつもは予習復習の時間が惜しいと、先に早食い気味に食事を摂っていた真都だが、今日は考え事をするあまり食べるスピードが落ちていた。
そうこうしている間にニコが食べ終わり、残し気味のパイナップルがバレてしまったのだ。
「しょっぱいものに甘いのは合わないからよ。苦手なものくらいあるよ!」
「好き嫌いは良くないぞ?」
「もう、誰のせいで……放っておいて!!」
思わずいつもは上げないような大きな声を出してしまった。
はっと、寮生の注目に気が付く真都。
「すみません。失礼しました」
周囲の目から逃げるように食器を片付けて、急ぎ早に自室に戻った。
「何やってるんだろ……ほんと馬鹿だ」
ニコが火星の王という秘密は何が何でも守り通さないと命に関わる。頭では分かっていても、自分がどうすべきかの最適解は導き出せない。そんな自分に嫌気がさして、気が付くと真都はボロボロと泣いていた。
「何かあったのか?」
振り向くとニコが心配そうな表情で立っていた。
「ニコ……」
「僕にも相談できない事かい?」
「そういう訳では……」
「じゃあどうしたんだい?話してよ」
「……和葉に、この前ニコの秘密は私だけの持って言われたの。もしかしたらあの子、ニコの正体に気がついてるんじゃないかって心配で」
「ほう……」
「もし王だってバレたらニコの命に関わるって焦っていたのだけど、相変わらずニコは最近ずっと和葉と一生に親しくしているし、それを見ていたらなんだかイラついてきたり。そんな自分も嫌で。もう……どうしたらいいのか分からないの!!」
言いたいことを捲し立てるように言い放った真都。泣きながら俯く真都にニコは近づいて頭を二度ポンポンと優しく叩いた。
「ごめんね、真都。心配させちゃったね。」
「ニコの……ニコの秘密がバレたら……」
「ありがとう。でもその心配は大丈夫だと思う」
「へ?」
思わずキョトンとする真都。
「和葉、なんか僕のことニコラ王の親戚だと思ってるみたい」
「親……戚……?」
「そう。よく似てるし、全くの他人ではないと思ったみたいだけど」
「え、でも……そう思っているって確証はあるの?」
「これ」
「こ……これは!!」
ニコから手渡された物は写真だった。
男物服を着たニコの隣りに、何故かワンピースを着たニコの姿。どちらも容姿は幼い。
「どういう事なのニコ!」
まるで別人のように写る二人。
「あーそれはね、合成写真だよ。万が一怪しまれた時用に地球にはまだ無い火星の高度技術を駆使して作ておいたんだ」
それはどこも繋ぎ目が分からないくらいに精巧な出来の写真だった。
「彼女には僕はニコラ王の従姉妹って言ってある。だけど、王族の血筋が自由に留学なんて出来ないから騒ぎにならないよう秘密にして欲しいとね。勿論これは真都も知らない秘密だから内緒だよって彼女を説得した日に伝えてあったんだが……」
手元の写真を見ながらふるふると震える真都。思わず感情が昂った。
「ニコの馬鹿っ!!それならそうと早く言ってくれれば良いのに!!」
「ごめんね。でも心配してくれてありがとう」
またもや泣きだした真都をヨシヨシとなだめるニコ。
「良かった……ニコが無事ならそれでいいの」
「大丈夫だから安心して」
そのうち真都は心労が溜まっていたのか、ベットの上でうたた寝をしてしまった。 そっと起こさないように近づいたニコは、真都の肩にブランケットを掛ける。
「風邪ひかないでね真都……」
真都の寝顔を見て微笑むニコ。
そしてポケットから、粉々になった小さな電子部品だったような物を取り出し、ティシュに包んでゴミ箱にポイッと捨てた。
「誰だか知らないけど、僕らを監視しようなんて百年早いんだよ。僕の首がそんなに欲しいか?下賤め」
そしてパソコンを開き、一通のメールをどこかに送信した。
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