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第6章 魔力クリスタルの深淵
cys:108 煤パーティーと深淵からの目
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ノーティスがシドと激闘を交わしてから、早くも約2年の歳月が流れた……
そして今、スマート・ミレニアム城内には、何度失敗しても果敢に実験に挑み続ける王宮魔導士が、自分の作った自慢の装置とにらめっこをしていた。
「ムムムッ……今度こそイケる気がするニャ♪」
アンリがマジック・ルームの中でそう呟いた時、5つの魔力クリスタルが嵌め込まれた装置から、眩い光がビカビカッ! と、溢れ出してきた。
その眩い光に向かい、アンリは両腕をバッと大きく広げ期待に瞳を輝かす。
もう何度も失敗しているが、まるで諦める様子は無い。
アンリの最大の長所の1つだ。
「さーあ、異界への扉を開くのじゃ! 改良に改良を重ねたネオクリスタル・ゲートよ!」
その叫びと共に響き渡っていくキュイーン!! と、いう作動音がアンリの期待を膨らませていく。
もう、何度も失敗しているにも関わらずだ。
王宮魔導士は精神的にもタフなのだが、アンリはその中でもズバ抜けている。
「よしっ! いけいけいけ! いくのだニャー!!」
アンリの叫ぶような応援と共に、輝きを増していくクリスタル・ゲート。
まるで、アンリの声援に応える為に頑張っているようだ。
キュイーンーーーーーーーーーーーーーーーっ!!
しかしその奮闘も虚しく、ボンッ!! と、いう爆発音を立てて壊れてしまい、クリスタル・ゲートからは黒い噴煙がモクモクと吹き出してきた。
「ケホ! ケホ! ケホッ!」
その噴煙を吸い込み咳をしたアンリは、残念そうな顔をしながらクリスタル・ゲートに手を翳し、魔法で鎮火させていく。
「お主も頑張ったのにのぅ……」
アンリは、出来なかった我が子をヨシヨシするような眼差しで、クリスタル・ゲートを見つめながら鎮火させた。
そして哀しく呟く。
「う~~~む……今回も失敗か。装置自体は完璧なハズなのにニャーーー」
アンリが猫口をしたまま悔しくボヤいていると、部屋の入口からロウがスッと入ってきた。
ロウは、アンリの実験室から聞こえた爆発音が気になり来てみたのだ。
ただ、部屋に入った瞬間、そこに充満している黒い煙に当てられ、思わず片腕で鼻から下を覆った。
「ゴホッゴホッ……! アンリ、部屋がまた煤だらけだな」
「ロウ……今日は煤パーティーにゃ♪」
「フム、なるほど。そういう捉え方も出来るか……」
ロウは、常にポジティブな心持ちをするアンリに感心しながら、壊れたクリスタル・ゲートをチラッと見た。
そして、感心と呆れが入り混じった眼差しで、煤だらけのアンリの顔を見つめる。
「けどアンリ、懲りないねキミも♪ そろそろパーティーに飽きたりしないのか」
「ニャハハッ♪ ロウ、お主は作戦を練る事に飽きた事があるかニャ?」
そう答えたアンリの顔は煤にまみれて真っ黒だが、瞳はキラキラと輝いている。
「まあ、寝れない事なら多々あるかな……」
「そうじゃろそうじゃろ♪」
アンリはそう言ってニコニコしながら頷くと、壊れたクリスタル・ゲートに近寄り、片手をスッと添えてジッと見つめた。
まるで、答え合わせをしているかのように。
そしてそのまま、呟くようにロウヘ語りかけていく。
「う~~む、ロウよ。今回も装置は完璧だったのじゃ。むしろ、最初の物よりかなり進化させておるしニャ」
するとロウは、顎に片手を軽く当てスッと瞳を伏せた。
「フム……キミがそう言うのだから、装置には問題が無いのだろう」
ロウはそう零すと、鎮火したクリスタル・ゲートをチラッと見た。
壊れてしまってはいるが、確かにアンリが最初に作った物よりかなり洗練されているのが分かる。
「ただ、そうだとするとアンリ……」
慧眼な眼差しで見つめてきたロウに、アンリは軽くコクンと頷いた。
「そうじゃ。この装置を作用させない、外的な何かが邪魔しておるニャ」
ロウはアンリの今の言葉が、単なる負け惜しみや原因究明を放棄したものではない事を分かっていた。
アンリは、その飄々とした風貌とは裏腹に、どこまでも考え抜く女だと知っているからだ。
けれど、だからこそロウの背筋にゾッと冷たい悪寒が走る。
そこから導き出される結論は、1つしかないからだ。
「アンリ……という事は……」
「そうじゃ。この5つの魔力クリスタルの力すら超える何者かが、存在するという事ニャ……!」
「しかも、このスマート・ミレニアムにか……!」
驚愕して目を見開いたロウに、アンリはいつになく真剣な顔でコクンと頷いた。
そしてロウとアンリは、再び壊れた、いや、何者かに壊されてしまったクリスタル・ゲートを見つめる。
「アンリ……僕はこの装置、異世界と繋げる装置だと認識してるが、間違いないか」
「そうニャ」
「だとしたら、それをされちゃ困るヤツが、この煤パーティーを引き起こしている主催者という事だ」
「ニャハハ、まあ……そういう事だニャ」
「ならばアンリ、それは……」
ロウはそこまで言って、ハッ! として言葉を止めた。
それを見てコクンと頷いたアンリ。
2人共、思った事は一緒だったからだ。
この会話も、そいつに監視されている可能性が高いと……!
なので、黙り込んだまま見つめ合った2人は、互いにニコッと笑った。
「アンリ、パーティーはもうお開きだろ」
「う~~~ん、まあもう腹いっぱいニャ♪」
「でも、デザートは別腹とみた。近くに出来た『コスモ・カフェ』にでも行かないか」
「おっ、それはいいのお♪ あそこの『セント・パフェ』は気になってたニャ♪」
「じゃ、決まりだな♪」
「おーーーっ♪」
ロウとアンリはそう言って楽しそうに笑みを浮かべると、敢えてクリスタル・ゲートを見ず、背を向けたまま部屋を出た。
その背中にクリスタル・ゲートの無念を感じ、必ず謎を解き明かしてやるという誓いを密かに胸に抱いたまま……
破壊され沈黙したままのクリスタル・ゲートが不気味さと、これから、とてつもない事が起こる嫌な予感を2人にヒシヒシと感じさせた。
そしてそれを遥か深淵から漆黒の瞳で見つめる者は、ニヤリと嗤う。
「クックックッ……いくら足掻こうともムダな事よ。そして、あの光の勇者は必ず……」
スマート・ミレニアムに、不穏な影が漂っていた……
そして今、スマート・ミレニアム城内には、何度失敗しても果敢に実験に挑み続ける王宮魔導士が、自分の作った自慢の装置とにらめっこをしていた。
「ムムムッ……今度こそイケる気がするニャ♪」
アンリがマジック・ルームの中でそう呟いた時、5つの魔力クリスタルが嵌め込まれた装置から、眩い光がビカビカッ! と、溢れ出してきた。
その眩い光に向かい、アンリは両腕をバッと大きく広げ期待に瞳を輝かす。
もう何度も失敗しているが、まるで諦める様子は無い。
アンリの最大の長所の1つだ。
「さーあ、異界への扉を開くのじゃ! 改良に改良を重ねたネオクリスタル・ゲートよ!」
その叫びと共に響き渡っていくキュイーン!! と、いう作動音がアンリの期待を膨らませていく。
もう、何度も失敗しているにも関わらずだ。
王宮魔導士は精神的にもタフなのだが、アンリはその中でもズバ抜けている。
「よしっ! いけいけいけ! いくのだニャー!!」
アンリの叫ぶような応援と共に、輝きを増していくクリスタル・ゲート。
まるで、アンリの声援に応える為に頑張っているようだ。
キュイーンーーーーーーーーーーーーーーーっ!!
しかしその奮闘も虚しく、ボンッ!! と、いう爆発音を立てて壊れてしまい、クリスタル・ゲートからは黒い噴煙がモクモクと吹き出してきた。
「ケホ! ケホ! ケホッ!」
その噴煙を吸い込み咳をしたアンリは、残念そうな顔をしながらクリスタル・ゲートに手を翳し、魔法で鎮火させていく。
「お主も頑張ったのにのぅ……」
アンリは、出来なかった我が子をヨシヨシするような眼差しで、クリスタル・ゲートを見つめながら鎮火させた。
そして哀しく呟く。
「う~~~む……今回も失敗か。装置自体は完璧なハズなのにニャーーー」
アンリが猫口をしたまま悔しくボヤいていると、部屋の入口からロウがスッと入ってきた。
ロウは、アンリの実験室から聞こえた爆発音が気になり来てみたのだ。
ただ、部屋に入った瞬間、そこに充満している黒い煙に当てられ、思わず片腕で鼻から下を覆った。
「ゴホッゴホッ……! アンリ、部屋がまた煤だらけだな」
「ロウ……今日は煤パーティーにゃ♪」
「フム、なるほど。そういう捉え方も出来るか……」
ロウは、常にポジティブな心持ちをするアンリに感心しながら、壊れたクリスタル・ゲートをチラッと見た。
そして、感心と呆れが入り混じった眼差しで、煤だらけのアンリの顔を見つめる。
「けどアンリ、懲りないねキミも♪ そろそろパーティーに飽きたりしないのか」
「ニャハハッ♪ ロウ、お主は作戦を練る事に飽きた事があるかニャ?」
そう答えたアンリの顔は煤にまみれて真っ黒だが、瞳はキラキラと輝いている。
「まあ、寝れない事なら多々あるかな……」
「そうじゃろそうじゃろ♪」
アンリはそう言ってニコニコしながら頷くと、壊れたクリスタル・ゲートに近寄り、片手をスッと添えてジッと見つめた。
まるで、答え合わせをしているかのように。
そしてそのまま、呟くようにロウヘ語りかけていく。
「う~~む、ロウよ。今回も装置は完璧だったのじゃ。むしろ、最初の物よりかなり進化させておるしニャ」
するとロウは、顎に片手を軽く当てスッと瞳を伏せた。
「フム……キミがそう言うのだから、装置には問題が無いのだろう」
ロウはそう零すと、鎮火したクリスタル・ゲートをチラッと見た。
壊れてしまってはいるが、確かにアンリが最初に作った物よりかなり洗練されているのが分かる。
「ただ、そうだとするとアンリ……」
慧眼な眼差しで見つめてきたロウに、アンリは軽くコクンと頷いた。
「そうじゃ。この装置を作用させない、外的な何かが邪魔しておるニャ」
ロウはアンリの今の言葉が、単なる負け惜しみや原因究明を放棄したものではない事を分かっていた。
アンリは、その飄々とした風貌とは裏腹に、どこまでも考え抜く女だと知っているからだ。
けれど、だからこそロウの背筋にゾッと冷たい悪寒が走る。
そこから導き出される結論は、1つしかないからだ。
「アンリ……という事は……」
「そうじゃ。この5つの魔力クリスタルの力すら超える何者かが、存在するという事ニャ……!」
「しかも、このスマート・ミレニアムにか……!」
驚愕して目を見開いたロウに、アンリはいつになく真剣な顔でコクンと頷いた。
そしてロウとアンリは、再び壊れた、いや、何者かに壊されてしまったクリスタル・ゲートを見つめる。
「アンリ……僕はこの装置、異世界と繋げる装置だと認識してるが、間違いないか」
「そうニャ」
「だとしたら、それをされちゃ困るヤツが、この煤パーティーを引き起こしている主催者という事だ」
「ニャハハ、まあ……そういう事だニャ」
「ならばアンリ、それは……」
ロウはそこまで言って、ハッ! として言葉を止めた。
それを見てコクンと頷いたアンリ。
2人共、思った事は一緒だったからだ。
この会話も、そいつに監視されている可能性が高いと……!
なので、黙り込んだまま見つめ合った2人は、互いにニコッと笑った。
「アンリ、パーティーはもうお開きだろ」
「う~~~ん、まあもう腹いっぱいニャ♪」
「でも、デザートは別腹とみた。近くに出来た『コスモ・カフェ』にでも行かないか」
「おっ、それはいいのお♪ あそこの『セント・パフェ』は気になってたニャ♪」
「じゃ、決まりだな♪」
「おーーーっ♪」
ロウとアンリはそう言って楽しそうに笑みを浮かべると、敢えてクリスタル・ゲートを見ず、背を向けたまま部屋を出た。
その背中にクリスタル・ゲートの無念を感じ、必ず謎を解き明かしてやるという誓いを密かに胸に抱いたまま……
破壊され沈黙したままのクリスタル・ゲートが不気味さと、これから、とてつもない事が起こる嫌な予感を2人にヒシヒシと感じさせた。
そしてそれを遥か深淵から漆黒の瞳で見つめる者は、ニヤリと嗤う。
「クックックッ……いくら足掻こうともムダな事よ。そして、あの光の勇者は必ず……」
スマート・ミレニアムに、不穏な影が漂っていた……
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