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第6章 魔力クリスタルの深淵
cys:114 教皇の謁見と疑惑
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「皆、その場に控えよ!」
大臣の号令が広間に響き渡ると教皇の間は静まり返り、ノーティス達は襟を正した。
今までザワついていた広間は、ピシッと緊張した空気に包まれていく。
そんな中、ノーティスは密かに思う。
───遅刻しなくてよかった~~こんな雰囲気の中、途中で入ってなんてこれないもんな……
ノーティスが心でそう零し安堵した時、大きな天幕の左右から2人の仮面の騎士がザッと現れた。
それぞれ、漆黒の鎧と黄金の鎧を纏っていて、皆に華麗な姿を見せつける。
ただ、それ以上に興味を惹くのは、その2人から放たれている凄まじいオーラだ。
無論、今はまだこれでも抑えているのだろうが、凄まじく高い戦闘力がノーティス達にヒシヒシと伝わってくる。
そんな彼らを見て、小声でザワつくノーティス達。
これだけのオーラを感じさせられ、黙ってはいられない。
(おいノーティス、なんだアイツら。半端ねーぞ)
(あぁ……さすが教皇様の側近だ)
(本気なら私達と互角……いや、それ以上かもしれないわね)
(それに、何か怖いよ……)
感受性の強いメティアが恐れを零す中、ロウが前を向いたままアンリにそっと話しかける。
ロウはきっとアンリも、自分と同じ事を感じ取ったと思ったからだ。
(アンリ、彼はらまさか……!)
(そうじゃのロウ。今はまだ確証は持てんが、恐らく……)
ノーティス達がそういった感じで静かにザワつく中、天幕の中央から、艶のある漆黒の法衣を纏った教皇がスッと姿を現した。
教皇は側近の2人とはまた違う、謎と力強さに満ちた荘厳なオーラを放っている。
また、ドラゴンの彫刻がされた黄金の兜を着用しており、それが荘厳なオーラをより際立たせていた。
そして玉座の前に立ったまま皆の事を見下ろすと、右手をバッと前に出した。
「ユグドラシルとクリスタルに、永遠の忠誠を!」
その号令受けたノーティス達は、手の平と拳を胸の前でガシッと合わせ教皇に続く。
これは謁見の際の決まりなのだ。
「ユグドラシルとクリスタルに、永遠の忠誠を!」
それを確認した教皇は、玉座にスッと腰を下ろし皆を見渡すと、ゆっくり口を開いた。
「あの大戦から100年が過ぎようとしている。悪魔カターディアよりもたらされた悪魔の呪い。それを防ぐ為に五英傑が戦った時からだ」
教皇は皆を再び見渡し、話を続ける。
「五英傑が創りし魔力クリスタルによって、悪魔の呪いの感染は防止出来るようになった」
そこまで告げ、拳をギュッと握る教皇。
「しかし、ヤツは彼の国トゥーラ・レヴォルトを操り、武力によりこのスマート・ミレニアムを、そして、神聖樹ユグドラシルを奪おうと、幾度となく攻撃を仕掛けてきている!」
今教皇が話しているのは、神話であり真実。
感染防止と、ユグドラシルからの力を使う為に、皆が額に魔力クリスタルを埋め込むようになった理由だ。
また同時に、昔ノーティスが無色の魔力クリスタルと判明した時に、皆から悪魔扱いされたのがこの理由に他ならない。
もちろん、ある意味そのお陰で真の力に目覚めたのだから、人生は何が吉と出るか分からないのだが、魔力クリスタルはスマート・ミレニアムの根幹を成しているのだ。
───あれから本当に色々あったな……
ノーティスは、思わず昔の事に密かに想いを馳せた。
これまでの事が脳裏をよぎる。
だが、今は昔と違い勇者として戦うべき立場にいるし、教皇の言う通り、トゥーラ・レヴォルトはこのユグドラシルを奪おうと何度も攻め入ってきている。
ユグドラシルの放つ絶大な魔力を欲するが故に。
その脅威からノーティスは勇者として、皆と協力して必ず阻止しなければいけないのだ。
何より、そんなトゥーラ・レヴォルトについては、教皇も常に目を光らせている。
「無論、勇者エデン・ノーティス率いる王宮魔導士達によってトゥーラ・レヴォルトの脅威は幾度となく退けてはいるが、徐々に奴らが領土を拡大しているのは否めない」
そこまで告げると、教皇はギロッと皆を見渡した。
そして、全身からより強大なオーラを立ち昇らせ皆に向けて言い放つ。
「奴らは魔力クリスタルの救いを拒み、悪魔に操られし蛮族! どれだけ強かろうとも、愚かな民族である事に変わりないのだ!」
教皇の言う事に皆が賛同し誓いを新たにする中、ノーティスは疑念を胸に抱えていた。
───教皇、本当にそうなのか?
ノーティスは心でそう問いかけ、脳裏に思い浮かべる。
決して忘れる事がない男の事を。
───シド。キミは決して蛮族なんかじゃなかった。
あれから2年過ぎたが、ノーティスの心の中には、あの日の事がずっと残っている。
いや、むしろそれどころか、思い返す度に切なく儚い想いと共に鮮明になっていく。
あの日の事が……
『やはり、偽りの光と歴史に塗れた国の者には、何も見えていないようだな』
───キミは誰よりも優しく誇り高い戦士だ。でもなぜあんな事を……そして、魔力クリスタルの救いを拒否したんだ……
ノーティスがそんな思いに耽っていると、1人の兵士が凄まじい形相で入口に駆けつけ、サッと跪いた。
「恐れながら申し上げます! たった今、トゥーラ・レヴォルト軍が我が国に向かい侵攻を開始致しました!」
大臣の号令が広間に響き渡ると教皇の間は静まり返り、ノーティス達は襟を正した。
今までザワついていた広間は、ピシッと緊張した空気に包まれていく。
そんな中、ノーティスは密かに思う。
───遅刻しなくてよかった~~こんな雰囲気の中、途中で入ってなんてこれないもんな……
ノーティスが心でそう零し安堵した時、大きな天幕の左右から2人の仮面の騎士がザッと現れた。
それぞれ、漆黒の鎧と黄金の鎧を纏っていて、皆に華麗な姿を見せつける。
ただ、それ以上に興味を惹くのは、その2人から放たれている凄まじいオーラだ。
無論、今はまだこれでも抑えているのだろうが、凄まじく高い戦闘力がノーティス達にヒシヒシと伝わってくる。
そんな彼らを見て、小声でザワつくノーティス達。
これだけのオーラを感じさせられ、黙ってはいられない。
(おいノーティス、なんだアイツら。半端ねーぞ)
(あぁ……さすが教皇様の側近だ)
(本気なら私達と互角……いや、それ以上かもしれないわね)
(それに、何か怖いよ……)
感受性の強いメティアが恐れを零す中、ロウが前を向いたままアンリにそっと話しかける。
ロウはきっとアンリも、自分と同じ事を感じ取ったと思ったからだ。
(アンリ、彼はらまさか……!)
(そうじゃのロウ。今はまだ確証は持てんが、恐らく……)
ノーティス達がそういった感じで静かにザワつく中、天幕の中央から、艶のある漆黒の法衣を纏った教皇がスッと姿を現した。
教皇は側近の2人とはまた違う、謎と力強さに満ちた荘厳なオーラを放っている。
また、ドラゴンの彫刻がされた黄金の兜を着用しており、それが荘厳なオーラをより際立たせていた。
そして玉座の前に立ったまま皆の事を見下ろすと、右手をバッと前に出した。
「ユグドラシルとクリスタルに、永遠の忠誠を!」
その号令受けたノーティス達は、手の平と拳を胸の前でガシッと合わせ教皇に続く。
これは謁見の際の決まりなのだ。
「ユグドラシルとクリスタルに、永遠の忠誠を!」
それを確認した教皇は、玉座にスッと腰を下ろし皆を見渡すと、ゆっくり口を開いた。
「あの大戦から100年が過ぎようとしている。悪魔カターディアよりもたらされた悪魔の呪い。それを防ぐ為に五英傑が戦った時からだ」
教皇は皆を再び見渡し、話を続ける。
「五英傑が創りし魔力クリスタルによって、悪魔の呪いの感染は防止出来るようになった」
そこまで告げ、拳をギュッと握る教皇。
「しかし、ヤツは彼の国トゥーラ・レヴォルトを操り、武力によりこのスマート・ミレニアムを、そして、神聖樹ユグドラシルを奪おうと、幾度となく攻撃を仕掛けてきている!」
今教皇が話しているのは、神話であり真実。
感染防止と、ユグドラシルからの力を使う為に、皆が額に魔力クリスタルを埋め込むようになった理由だ。
また同時に、昔ノーティスが無色の魔力クリスタルと判明した時に、皆から悪魔扱いされたのがこの理由に他ならない。
もちろん、ある意味そのお陰で真の力に目覚めたのだから、人生は何が吉と出るか分からないのだが、魔力クリスタルはスマート・ミレニアムの根幹を成しているのだ。
───あれから本当に色々あったな……
ノーティスは、思わず昔の事に密かに想いを馳せた。
これまでの事が脳裏をよぎる。
だが、今は昔と違い勇者として戦うべき立場にいるし、教皇の言う通り、トゥーラ・レヴォルトはこのユグドラシルを奪おうと何度も攻め入ってきている。
ユグドラシルの放つ絶大な魔力を欲するが故に。
その脅威からノーティスは勇者として、皆と協力して必ず阻止しなければいけないのだ。
何より、そんなトゥーラ・レヴォルトについては、教皇も常に目を光らせている。
「無論、勇者エデン・ノーティス率いる王宮魔導士達によってトゥーラ・レヴォルトの脅威は幾度となく退けてはいるが、徐々に奴らが領土を拡大しているのは否めない」
そこまで告げると、教皇はギロッと皆を見渡した。
そして、全身からより強大なオーラを立ち昇らせ皆に向けて言い放つ。
「奴らは魔力クリスタルの救いを拒み、悪魔に操られし蛮族! どれだけ強かろうとも、愚かな民族である事に変わりないのだ!」
教皇の言う事に皆が賛同し誓いを新たにする中、ノーティスは疑念を胸に抱えていた。
───教皇、本当にそうなのか?
ノーティスは心でそう問いかけ、脳裏に思い浮かべる。
決して忘れる事がない男の事を。
───シド。キミは決して蛮族なんかじゃなかった。
あれから2年過ぎたが、ノーティスの心の中には、あの日の事がずっと残っている。
いや、むしろそれどころか、思い返す度に切なく儚い想いと共に鮮明になっていく。
あの日の事が……
『やはり、偽りの光と歴史に塗れた国の者には、何も見えていないようだな』
───キミは誰よりも優しく誇り高い戦士だ。でもなぜあんな事を……そして、魔力クリスタルの救いを拒否したんだ……
ノーティスがそんな思いに耽っていると、1人の兵士が凄まじい形相で入口に駆けつけ、サッと跪いた。
「恐れながら申し上げます! たった今、トゥーラ・レヴォルト軍が我が国に向かい侵攻を開始致しました!」
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