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第6章 魔力クリスタルの深淵

cys:115 爆ぜる斥候

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「なんだと!」

 教皇は一瞬目を大きく見開いた。
 だがすぐにスッと表情を変え、玉座に座ったままその兵士を見据える。
 突然の報告に驚きはしたものの、敵国からの急襲は想定内だから。

「敵の目的地はどこだ」
「ハッ! いにしえほこら『ティコ・バローズ』でございます!」
「ティコ・バローズだと!」

 思わず声を荒げた教皇。
 だが、その場所なら流石に仕方なかった。

 そこは、スマート・ミレニアムが守るべき、神々の遺産があると言われている聖域だからだ。

 ただ、中に何があるのかは誰も知らない。
 それがこれの不思議な所なのだが、理由は簡単。
 誰も開けられないからだ。
 これまでどんな衝撃や魔法でも、その祠には傷一つ付けれた事が無い。

(でもよノーティス、アレって何で壊せねぇんだ?)
(一説によると、素材の時が止まっているらしい)
(な、何じゃそりゃ!)
(……あぁ。もちろんそんな事、魔法でも不可能だ)
(ん? じゃあ、どうやって神々の遺産だなんて?)
(ジーク。だから、神々の遺産だと言われてるんだ)
(あっ、な~るほどねぇ)

 スマート・ミレニアムは、代々ここを守る使命を受け継いできている。
 ユグドラシルの関係上、少し離れた場所に建国したが、それでも第二都市イドラよりも遥かに近い。

 そんなティコ・バローズにトゥーラ・レヴォルトが攻め入って来た事に、教皇は内心戦慄していた。

───まさか奴ら……

 けれど教皇は、はやる気持ちを抑え兵士から冷静に状況を把握していった。
 まずは、確認しておかないと指示が出せないから。

 すると、敵の数は約2万。
 また、シド亡き後には新しい勇者が軍を率いている事と、到着まで2日という事等を把握した。

「ただ、1つ解せぬ」
「ハッ! と、いいますと……」
斥候せっこうからの情報は全く無かった。一体なぜだ。まさか……」

 教皇がそれに気付いた時、ノーティスは入口からサッと出ていく影を見逃さなかった。

「教皇様! 失礼致します!」

 叫ぶように告げ、教皇の間から飛び出していったノーティス。

 その行動の意味を瞬時に悟った教皇は、玉座からガタッ! と立ち上がった。
 一瞬で察する力は桁違いに高い。

「王宮魔道士達よ、勇者エデン・ノーティスに続け! 斥候せっこうに成り代わった賊を捉えるのだ!」

 教皇が大きな声で指示を出すと同時に、皆ノーティスに続き広間から飛び出した。

「チッ、気付かなかったぜ!」
「私も迂闊うかつだったわ」
「やっぱりノーティス凄いね♪」
「フム。ただ、なぜあの力が恋愛には活かせないのか……」
「ニャハハハッ♪ いい研究材料だの」

 皆でそんな話をしながら走っていくと、その先にノーティスが賊の男と対峙している姿が目に映った。

 その賊はノーティスに追い詰められながらも、余裕の笑みをニヤッと浮かべる。

「さすがスマート・ミレニアムの勇者、エデン・ノーティス。キミ、察知能力が凄いね」
「フッ、周りに異変が無いかを常に見ているだけさ」
「ふーん、流石だね。まぁでもボクが調べた限りだと、キミ、女の子の気持ちは全然察知出来てないみたいだけど」
「……! し、仕方ないだろ。複雑過ぎるんだ、アレは」

 ノーティスがそうボヤいた時、ジーク達もその場に到着して賊をザッと円形に取り囲んだ。

「ったく、上手く化けたみてぇだけど、もう逃さねぇぜ」
「フフッ♪ メイクお上手ね。後でそれもたっぷり教えてもらうわ」
「暴れないでね。キミにケガして欲しくないから」
「うーん、でもおかしなヤツじゃのう……」

 アンリがそこまで言って軽く首をかしげた時、ロウはハッと目を見開いた。

「しまった! みんな防げ!!」
「アハッ♪ 流石は天才魔道軍師のロウだね。ボクはお前達を待ってたのさ」

 ニヤリと笑い片手をサッと上げた賊の体が、内側から大きく光り輝いてゆく。

「トゥーラ・レヴォルトに栄光を♪」

 賊はそう言い残すと自爆魔法でドガァァァァァン!! と、大爆発を起こし、凄まじい熱風の衝撃波がノーティス達に襲いかかった。
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