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第8章 反逆の狼煙
cys:186 怒りの問いかけ
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「なっ……!」
あまりの衝撃に、メティアは一瞬固まってしまった。
この国の勇者であり、今まで自分達と共に誰よりも前線で命を賭けて戦ってきたノーティスから、ハッキリと言われてしまったから。
これまでの全てを否定するような言葉を。
「ノ、ノーティス……何を言ってるの?!!」
メティアが震えながら身を乗り出した瞬間、レイが怒りと共にカツンッ! と、ヒールを鳴らし前に出た。
その美しい瞳に燃え盛る怒りの炎を宿して。
「そうよ、メティアの言う通りだわ! ノーティス、貴方一体何を言ってるのよ!!」
「レイ……」
哀しそうな光を瞳に宿したノーティスを、レイはキツく睨みつけている。
ノーティスに記憶が無い時よりも、遥かに強い怒りで。
「貴方、何を言ってるのか分かってるの! 貴方はスマート・ミレニアムの勇者なのよ!!」
レイの怒声が辺りに響き渡り、ノーティスの心に衝撃波のようにぶつかってくる。
そんな中、次にズイッと前に出たのはジークだ。
ジークは目を閉じ片手で軽く頭をクシャッと搔くと、ノーティスをギロッと見据えた。
「ノーティスよ、レイの言う通りだ。お前さん、一体どーしちまったんだい? 慣れねぇ冗談は笑えねぇぞ」
「ジーク、冗談じゃなくて本気さ」
真摯な眼差しで答えてきたノーティスに向かい、ジークはイラッと顔をしかめた。
「ケッ、だったら尚の事分かんねーな。自分を好いてくれてる女を泣かしたり怒らしたりすんのが、お前さんの流儀だったのかよ」
皮肉めいた言葉を叩きつけ、苛立ちの混じった顔でニヤリと笑みを浮かべたジーク。
それを、レイもメティアも見つめている。
ジークからノーティスを責めると同時に、二人の気持ちを少しでもケアしたい想いが伝わってくるから。
その想いが二人の心に届いた時、今度はロウが慧眼な瞳に静かな怒りを宿し問いかけてきた。
「ノーティス、キミが本気で言ってるのは分かった」
「ロウ……」
「その上で敢えて問う」
ロウはそう告げ数旬の間ノーティスを見つめると、そのまま静かに口を開く。
「誰を、倒すつもりだ」
その時ノーティスは一瞬目をハッと大きく開き、ロウを強く見据えた。
「ロウ、知ってるのか……!」
「質問しているのは私だ。答えろノーティス。誰を、倒す」
二人の間にズシッと重たく緊張した空気が流れ、それがその場にいる全ての者達にも伝播していく。
ノーティスが何をどう答えるかによって、この後決して戻る事の出来ない、大きな溝が出来てしまう事を分かっているから。
その重く張り詰めた空気の中、ロウと全く同じ事を考えノーティスを見つめているのはアンリだ。
───ノーティス、お主遂に気づいたのか……!
アンリはロウと共に教皇クルフォスが闇の力を持つ事と、彼がそれを使い陰謀を企んでいる事まで見抜いていた。
そして、それを決して行わせてはいけないと決意も。
ただ、確証が無いまま動いては、反逆者の烙印を押され処刑されてしまう事は確実。
また、その事により自分だけでなく、仲間達にも処罰が下る可能性も充分にあり、敢えて言っていなかったのだ。
───じゃがノーティス、そう言うからには掴んだのだな。クルフォスの闇を……!
だが、ノーティスの答えはそれを遥かに凌駕する物だった。
拳をギュッと握りしめ、ノーティスは意を決してロウに告げる。
「ロウ、倒すべきは『五大悪魔王』だ……!!」
「なんだと?!」
「ニャニャ?! 五大悪魔王??」
ロウとアンリはあまりの衝撃に目を大きく目を見開き、ノーティスを訝しむ顔で見据えた。
また同時に、他の皆もノーティスが今何を言ったのか分からず顔をしかめ見据えている。
言葉が聞こえなかった訳ではない。
『五大悪魔王』というのが、一体何の事なのか分からないのだ。
「ノーティス、貴方何を言ってるの?! 五大悪魔王なんて聞いた事無いわ」
「ボクもだよ、ノーティス!」
レイとメティアが困惑した顔を浮かべる中、ジークは半ば呆れた顔で溜息を零した。
「ったく、何を言い出すかと思えば五大悪魔王だと? お前さん、マジでどーしちまったんだよ。そんなもん、聞いた事ねーわ」
皮肉めいた顔をして軽く口角を上げ、ヤレヤレのポーズで首をかしげるジーク。
「どーせ、記憶失くしてる間に、そこの嬢ちゃんから変な事吹き込まれたんだろ」
「違うんだジーク」
「いーや、人のいいお前さんの事だ。騙されてんだよ」
「違う、聞いてくれジーク!」
「ケッ、んなもん聞いて……」
ジークがイラッとした顔で身を乗り出そうとすると、ロウがノーティスを見据えながらジークの前にスッと斜めに片手を出し、ザッと前に出た。
「聞いてやる。五大悪魔王とは何だ。僕もそんな存在は聞いた事が無い」
「ロウ、ありがとう。でも、五大悪魔王は俺達が最も良く知ってる奴らの事だ」
「僕達が? いや、知らないな」
「知っているんだよ、ロウ。この国に住む人間なら誰でも」
敢えて意味深な言い方をしているノーティス。
別に勿体ぶってる訳ではない。
告げたいけど、やはり同時に告げたくないのだ。
どうなるか分かっているから。
それにより顔が哀しさに染まってゆくノーティスの顔を、ロウは鋭く見据えたまま答える。
「誰でも? 僕達の事か?」
「いや、違う」
「そうか。だったら……教皇の事か?」
ロウがその問いかけをした時、アンリは思わず固唾を飲んだ。
遂にノーティスから告げられると思ったから。
教皇クルフォスの闇を。
しかし、ノーティスはその予想を覆す。
「違う」
「何だと?!」
───ニャニャ! 違うのか?! だとしたら……
ロウもアンリも自分の考えが違っていた事に目を丸く見開いた。
だが、ノーティスはすぐに続ける。
「もっと上さ」
「上だと? バカな。教皇より上など……もしいるとすれば、それは……まさかっ!」
ロウは脳裏に閃いた答に目を見開いたまま、一瞬固まってしまった。
アンリも同じだ。
まるで、雷に打たれたような衝撃が心に走ったから。
そして、その顔を見て二人が悟った事を知り、ノーティスは精悍な瞳で見つめたまま片手をバッと横に大きく振った。
「そう。五大悪魔王は……スマート・ミレニアムを造ったと言われてる五人の英雄。いや……その皮を被り歴史を捻じ曲げてきた悪魔。五英傑の事なんだ!!」
あまりの衝撃に、メティアは一瞬固まってしまった。
この国の勇者であり、今まで自分達と共に誰よりも前線で命を賭けて戦ってきたノーティスから、ハッキリと言われてしまったから。
これまでの全てを否定するような言葉を。
「ノ、ノーティス……何を言ってるの?!!」
メティアが震えながら身を乗り出した瞬間、レイが怒りと共にカツンッ! と、ヒールを鳴らし前に出た。
その美しい瞳に燃え盛る怒りの炎を宿して。
「そうよ、メティアの言う通りだわ! ノーティス、貴方一体何を言ってるのよ!!」
「レイ……」
哀しそうな光を瞳に宿したノーティスを、レイはキツく睨みつけている。
ノーティスに記憶が無い時よりも、遥かに強い怒りで。
「貴方、何を言ってるのか分かってるの! 貴方はスマート・ミレニアムの勇者なのよ!!」
レイの怒声が辺りに響き渡り、ノーティスの心に衝撃波のようにぶつかってくる。
そんな中、次にズイッと前に出たのはジークだ。
ジークは目を閉じ片手で軽く頭をクシャッと搔くと、ノーティスをギロッと見据えた。
「ノーティスよ、レイの言う通りだ。お前さん、一体どーしちまったんだい? 慣れねぇ冗談は笑えねぇぞ」
「ジーク、冗談じゃなくて本気さ」
真摯な眼差しで答えてきたノーティスに向かい、ジークはイラッと顔をしかめた。
「ケッ、だったら尚の事分かんねーな。自分を好いてくれてる女を泣かしたり怒らしたりすんのが、お前さんの流儀だったのかよ」
皮肉めいた言葉を叩きつけ、苛立ちの混じった顔でニヤリと笑みを浮かべたジーク。
それを、レイもメティアも見つめている。
ジークからノーティスを責めると同時に、二人の気持ちを少しでもケアしたい想いが伝わってくるから。
その想いが二人の心に届いた時、今度はロウが慧眼な瞳に静かな怒りを宿し問いかけてきた。
「ノーティス、キミが本気で言ってるのは分かった」
「ロウ……」
「その上で敢えて問う」
ロウはそう告げ数旬の間ノーティスを見つめると、そのまま静かに口を開く。
「誰を、倒すつもりだ」
その時ノーティスは一瞬目をハッと大きく開き、ロウを強く見据えた。
「ロウ、知ってるのか……!」
「質問しているのは私だ。答えろノーティス。誰を、倒す」
二人の間にズシッと重たく緊張した空気が流れ、それがその場にいる全ての者達にも伝播していく。
ノーティスが何をどう答えるかによって、この後決して戻る事の出来ない、大きな溝が出来てしまう事を分かっているから。
その重く張り詰めた空気の中、ロウと全く同じ事を考えノーティスを見つめているのはアンリだ。
───ノーティス、お主遂に気づいたのか……!
アンリはロウと共に教皇クルフォスが闇の力を持つ事と、彼がそれを使い陰謀を企んでいる事まで見抜いていた。
そして、それを決して行わせてはいけないと決意も。
ただ、確証が無いまま動いては、反逆者の烙印を押され処刑されてしまう事は確実。
また、その事により自分だけでなく、仲間達にも処罰が下る可能性も充分にあり、敢えて言っていなかったのだ。
───じゃがノーティス、そう言うからには掴んだのだな。クルフォスの闇を……!
だが、ノーティスの答えはそれを遥かに凌駕する物だった。
拳をギュッと握りしめ、ノーティスは意を決してロウに告げる。
「ロウ、倒すべきは『五大悪魔王』だ……!!」
「なんだと?!」
「ニャニャ?! 五大悪魔王??」
ロウとアンリはあまりの衝撃に目を大きく目を見開き、ノーティスを訝しむ顔で見据えた。
また同時に、他の皆もノーティスが今何を言ったのか分からず顔をしかめ見据えている。
言葉が聞こえなかった訳ではない。
『五大悪魔王』というのが、一体何の事なのか分からないのだ。
「ノーティス、貴方何を言ってるの?! 五大悪魔王なんて聞いた事無いわ」
「ボクもだよ、ノーティス!」
レイとメティアが困惑した顔を浮かべる中、ジークは半ば呆れた顔で溜息を零した。
「ったく、何を言い出すかと思えば五大悪魔王だと? お前さん、マジでどーしちまったんだよ。そんなもん、聞いた事ねーわ」
皮肉めいた顔をして軽く口角を上げ、ヤレヤレのポーズで首をかしげるジーク。
「どーせ、記憶失くしてる間に、そこの嬢ちゃんから変な事吹き込まれたんだろ」
「違うんだジーク」
「いーや、人のいいお前さんの事だ。騙されてんだよ」
「違う、聞いてくれジーク!」
「ケッ、んなもん聞いて……」
ジークがイラッとした顔で身を乗り出そうとすると、ロウがノーティスを見据えながらジークの前にスッと斜めに片手を出し、ザッと前に出た。
「聞いてやる。五大悪魔王とは何だ。僕もそんな存在は聞いた事が無い」
「ロウ、ありがとう。でも、五大悪魔王は俺達が最も良く知ってる奴らの事だ」
「僕達が? いや、知らないな」
「知っているんだよ、ロウ。この国に住む人間なら誰でも」
敢えて意味深な言い方をしているノーティス。
別に勿体ぶってる訳ではない。
告げたいけど、やはり同時に告げたくないのだ。
どうなるか分かっているから。
それにより顔が哀しさに染まってゆくノーティスの顔を、ロウは鋭く見据えたまま答える。
「誰でも? 僕達の事か?」
「いや、違う」
「そうか。だったら……教皇の事か?」
ロウがその問いかけをした時、アンリは思わず固唾を飲んだ。
遂にノーティスから告げられると思ったから。
教皇クルフォスの闇を。
しかし、ノーティスはその予想を覆す。
「違う」
「何だと?!」
───ニャニャ! 違うのか?! だとしたら……
ロウもアンリも自分の考えが違っていた事に目を丸く見開いた。
だが、ノーティスはすぐに続ける。
「もっと上さ」
「上だと? バカな。教皇より上など……もしいるとすれば、それは……まさかっ!」
ロウは脳裏に閃いた答に目を見開いたまま、一瞬固まってしまった。
アンリも同じだ。
まるで、雷に打たれたような衝撃が心に走ったから。
そして、その顔を見て二人が悟った事を知り、ノーティスは精悍な瞳で見つめたまま片手をバッと横に大きく振った。
「そう。五大悪魔王は……スマート・ミレニアムを造ったと言われてる五人の英雄。いや……その皮を被り歴史を捻じ曲げてきた悪魔。五英傑の事なんだ!!」
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