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恋模様はペンタゴン!
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しおりを挟む雲ひとつない真っ青な空。
太陽の光が照らすテーブルの上には、いつも以上に上手くできた同室者好みの朝食。
よく眠ったおかげで体調も気分もよくて、まさに爽やかないい朝って感じなんだけど──
「……」
「……」
朝ごはんを一緒に食べてる不良くんは挨拶をしてからずっと黙ったままで、食卓には食器の音が響くばっかり。
チラチラ視線を送ってみるけど見事にぜ~んぶムシ。
く、空気が重いです、不良くん;
やっぱり昨日、めずらしく心配してくれたのにおもいっきり抱きついたのが悪かったかな?
まぁ、あやまる気はまったくないんだけどこのままってのもイヤだし、とりあえず話しかけつづけよう。
頑張れ、俺!
「今日スッゴいいい天気だよね」
「……」
「て、天気がいいと、気分もいいよねぇ」
「……」
不良くんの怒りに触れないように当たりさわりのないコトを何回か投げかけるけど、全部ムシされちゃった。
うぅ、俺の心は折れそうです…
くそぅ、あと1回!
あと1回話しかけてもムシされたら黙って大人しくすごそう!
意気地なしとでもなんとでも呼んでくれっ!
「あ、あのさ、不良くん」
「……」
「今日のご飯、美味し~い…?」
「……」
最後の勇気を振りしぼって恐るおそる聞いてみたけど、答えは返ってこない。
もぅ、俺の心はバッキバキで──
「…美味い、よ」
「え…っ」
いっ、今、不良くんが美味いって!
ずっと俺のいうコト、ムシしてたのに…
不良くん、素直じゃないのに…
「ぶ…」
「ぶ?」
「ぶち犯したいぃ~」
こんな可愛いコト不意打ちでしないでよぉ。
おもわず口が滑っちゃったじゃん!
「なっ、朝っぱらから変なこと言うなっ!!」
「いったーい!」
おもいっきり頭叩かれたぁーっ!
い、痛いよぉ。
「すこしは反省しろ、このバカ!」
不良くんは赤くなった顔でそう叫ぶと、カバンを持って部屋から出ていっちゃった。
頭は痛いし不良くんは出ていっちゃったけど、でも俺はそんなの全然気になんなかった。
「不良くん可愛かったなぁ~」
ツンツンしてたかと思ったら突然のデレだよ?
可愛すぎてどうでもよくなっちゃうよねぇ。
いやぁ、イイもん見せてもらったよぉ~。
「よし! 元気も出たし、行事の準備も今日で最後だし、早めに行きますか♪」
俺は機嫌よく鼻歌を歌いながら準備をすませて部屋から出る。
「行ってきまー…ぅわっ!」
そしたら、なにかに足を取られてコケそうになっちゃった;
なにかと思ってあわてて下を見る、と──
「へ? わんこくん!?」
床にちょこんと座って、俺のスラックスの裾をつかんでるわんこくんが見えた。
なんでスラックスの裾つかむかな、わんこくん;
あっ、そういえば前にも似たようなコトがあった気が…
あのときは俺を迎えにきてくれたんだよね。
もしかして、今日も?
「えと、迎えにきてくれたの?」
「ん…」
そううなづくと、わんこくんは俺に甘えるみたいにギューって抱きついてきた。
あぁもう、可愛い!
もうコケそうになったコトなんてどうでもいいよ!
「いっ、しょ…行く…」
「じゃあ、一緒に行こ♪」
そう言って俺は抱きつくわんこくんをそのままに歩きだす。
けどすこし歩いたトコロで後ろから声をかけられた。
「揚羽ーっ! おっはよー!」
「げっ!」
この元気すぎる声は──
げんなりしながら振りかえると、思ったとおりやっぱりソコにはマリモがいた。
「一緒に学校行こうぜ!」
「え、ヤダ」
朝からマリモの相手は疲れるし、わんこくんがビックリして俺の後ろに隠れちゃったんだよね。
そんな状態で一緒に学校行くとかムリでしょ。
「えーっ、一緒に行こうぜ! そのほうが絶対楽しいって!」
「いや、だからさー」
でもマリモは案の定、グダグダとワガママを言ってくる。
あーもう面倒くさい!
ホントどうしよ。
そう困りはててると、ソコに天使の声が聞こえてきた。
「あ、宮成君! やっと見つけました…」
「おぉ、秋!」
「のんちゃん!?」
昨日の今日でまた会えるなんてビックリしちゃったよ。
てかマリモのコト探してたみたいだったけど、なんでのんちゃんがマリモを?
「あ、みつ君おはようございます。宮成君が突撃したのはみつ君でしたか」
「おはよぉ~。突撃されたけど、ソレでどうしてのんちゃんが?」
「僕、彼と同室なんです。めずらしく早くから出ていくのでまたなにか問題を起こすんじゃないかと心配になって…」
そう言うのんちゃんは昨日よりちょっと顔色が悪い。
マリモと同室じゃそうなるよ!
のんちゃん、マリモに振りまわされてかわいそうに…
「心配するのはわかるけど、ほどほどにね? 顔色悪いから心配だよ」
「…はい、ありがとうございます」
返事するまでちょっと間があったね。
きっとまたさっきみたいなコトがあったら同じようにするんだろうなぁ。
まったく、大人しいクセに変なトコ頑固なんだから。
些細なコトでも一生懸命なのはのんちゃんのいいトコだと思うんだけどねぇ~。
「まぁ、困ったコトがあったらすぐ連絡を──「なぁー! いつまでもふたりで話してないで、一緒に学校行こうぜっ!」
「だからイヤだって」
あーもう、なんなんだよこのマリモは!
さっきもイヤっていったじゃんっ!
「えーっ、一緒に学校行こうぜー! そのほうが絶対楽しいってっ!」
「宮成君、嫌がってるのに無理強いは…」
のんちゃんが気を利かせてマリモに注意してくれたけど、きっと聞かないだろうねぇ。
ホントなんとかなんないかなぁ。
「お前ら、朝っぱらから廊下でなに騒いでんだ」
なぁんて思ってたら、聞きおぼえのある声が後ろから聞こえた。
若干…
というかかなり低くなってるけど、この声は──
「玄関先まで聞こえてきたぞ。他の部屋のヤツに迷惑だろうが」
思ったとおり、振りかえった先には怒った顔の響介と困ったように笑うひなたちゃんがいた。
いや響介くん、そんな怒った顔されても…
騒いでんのはマリモだけだよ?
俺なんもしてないっす!
「響介いい所に! お前も一緒に学校行こうぜ!」
うわ~、響介のいったコトまるっとすっ飛ばしてのお誘いですよ。
コレ、響介ますますブチ切れるんじゃ;
「お前、俺の言うこと──「よっし、みんなで一緒に楽しく登校しよぉー!!」
予想どおり、聞こえてきたのは地を這うような響介の声で。
ヤバいと思って響介からマリモを離すように手を引っぱって連れてくと、響介はしかたないというような顔をしてため息をつきながらついてくる。
マリモと一緒に登校ってのは疲れるけど、いつもはいないのんちゃんやわんこくんと一緒に行けれるしいっか。
そう自分を納得させてマリモの話に適当に返事をしながら歩いてたら、ひなたちゃんの様子がいつもと違うのに気がついた。
なんだろう、なんか響介とギクシャクしてる?
響介との距離も微妙だし、いつもはやわらかい雰囲気が固いような…
どうしたんだろ?
そう不思議に感じてこっそりと見てたけどふとあるコトをおもいついて、悪いと思いながらも他の3人にマリモをまかせてコソっと響介に話しかける。
「ねぇ、響介。ひなたちゃんになにしたの?」
「なにもしてねぇよ」
響介はすんなり返すけど、なーんか引っかかる。
隠しゴトしてんじゃないだろうな。
そう思ってジっと見るけど、響介はなにもないですよって顔してる。
くそぅ。
「あ~ぁ、春が来たと思ったんだけとなぁ~」
「…春なんて来ねぇよ」
響介はつぶやくようにそう言うと、スタスタ歩いて行っちゃった。
「なんだろ? 響介の変なの~」
まぁ、今の様子はちょっと気になったけど問いつめるほどでもないか。
あんまり突っこんで怒られるのもイヤだしね。
俺は小さくなってく響介の背中を見ながら苦笑した。
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