異世界でもモブだったので現実世界で無双したい

ミムラカズミ

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異世界帰還者であることがバレました

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「い……異世界だと……?」
「あぁ。信じれないかもしれないけど。3年。事故して眠ってる間に行ってたんだ。」

 矢野は黙る。そうだよな。こんな話。よほどのバカでもない限り信じれるはずが……

「す、すげー!!お前まじかよ!異世界なんてほんとにあるのか!?」

 矢野はバカだった。あっさり信じた。

「よ、よくそんなにあっさり信じれるな。」
「異世界にでも行かねえとあんなよく分かんねぇ光の説明出来ねえだろ。」

 まぁそうか。

「その世界には俺よりつええ奴もいるんだろうな。」
「……いるよ。魔物や魔族だっているんだから。」
「かぁっ……やっぱりな。……連れてけよ。異世界。」
「無理だよ。俺もどうやって行ったか分からないし、どうやって帰ってきたかも分からないんだ。」
「ちっ。なんだよ。役にたたねぇな。」

 それにしても、、こいつは俺と仲良くしようとしてるのか?
 いじめの主犯格。そのイメージがこびりついているが、、よく考えてみるとこいつのイジメは陰湿なイジメではないんだよな。オラオラ系で絡んでくるからあまりに主犯格のイメージが強かっただけで。

「まぁ面白え話聞かせてもらったからな。今日はもう帰れよ。」
「あ、ああ……そうさせてもらう」

 ーー帰宅後

 はぁぁ。怖かったぁ。矢野聖人。あいつとこれ以上関わると行ってはいけない世界に足を踏み込んでしまいそうだな。なるべく話しかけられないように気をつけよう。

 ピロンッ

 矢野からのLIMEメッセージだった。今関わらないようにしようと決めたばかりなのに。

「なになに……姉貴が拉致された。手を貸してくれ。」

 姉貴が拉致された……?そもそもあいつ姉貴いるのか。それにしても……この現代日本で拉致?そんなことあるのか?矢野が俺を嵌めようとしている説も否めない……が……
 こういう時に動かないで魔法を使えるようになった意味はない。とりあえず向かおう。

 ――廃墟ビル

 呼ばれたのはヤンキーの溜まり場として使われている廃墟ビルの前だった。

「おい、桜田」
「こんばんは……。お姉さん。ここに捕まってるのか?」
「あぁ、ここらでは有名な不良チーム、ベルセルクにな。俺1人で突っ込んでも良かったんだが、あいつらは卑怯だからな。どんな罠が仕掛けられてるか分からねえからお前を呼んだんだ。すまねぇな。」

 はぁ。やっぱりこういう世界に足を突っ込むことになるのか。まぁでも、正直魔法を使うんだったらこういう戦闘系が1番活きるからな。…………して。お姉様がどういうお方なのか気になるな。

「矢野のお姉さんってどういう人なんだ?」
「姉ちゃん……?見るか?」

 矢野はスマホで一枚の写真を見せてくれた。同時に俺は言葉を失った。あのコンビニのお姉さんだった。

「奇跡……だな。矢野。早く助けに行こう。」
「ああ?奇跡?お前姉ちゃん知ってんのか?」
「ちょっとね……。とにかく……!そんな話してる暇ないだろ。!姉様がどんな酷い目にあってるかもしれない!早く行こう!」
「…………お前に姉ちゃんはやらねぇぞ。」

 意外とシスコンなのかな……

 ――ビル内部

 気味の悪い暗さと妙な静けさに背筋が凍る。だが、よく耳を澄ますと不良達が騒いでいる声が微かに聞こえた。

「この階には誰もいねえみてえだな。」
「そうだな。先を急ごう。」

 2階、3階、4階にも特に誰もおらず、俺たちは最上階の5階に到着した。
 いかにもな不良少年が20名ほどいる。その中に縄で縛られた矢野のお姉さんもいた。

「あ、聖人ぉ!遅い!……って!カズマくんじゃん!また会えたね!」

 拉致された女性とは思えないほど元気だ。

「矢野ぉ。お前の姉ちゃん死ぬほど可愛いのに男勝りすぎるぜ。拉致するにもお前を鍛えるためだとか言ってわざと拉致られやがった。」
「あぁ!?おい姉ちゃん!どういうことだそりゃあ!?」
「いいからさっさと助けろ!たかだか20人そこらの猿に負けるように育ててないからね!」
「うるせぇ!ったく……せっかく桜田まで呼んだのによ。」
「カズマくん呼んでどうするのよ!その子に怪我でもさせたら許さないよ!」
「……一体2人はどういう関係なんだ?」

 矢野のお姉さんは可愛い見た目に反して結構ぶっ飛んでるらしい。そんな所にも惹かれてしまう。

「まぁ矢野さんよ。何はともあれ圧倒的に俺たちが有利な状況を作ることは出来てるってわけだ。」
「有利ね。20人程度じゃおめえらいっつもボコられてるじゃねえか。」
「お前がバケモンすぎるんだよ。だがな、今回は1人助っ人を呼んでるんだ。」
「助っ人……?どこにいんだよ。」
「遅刻だ。」

 大丈夫かその助っ人。

「まぁとりあえずは俺たちでお前をぶっ殺してやるぜ。いくぞお前ら!」

 不良達は矢野に一斉に襲いかかる。………が、矢野はものともせず敵を一蹴した。

「はぁ。。なぁ。お前ら。毎度毎度同じことの繰り返しで嫌になんねえのか。もっと鍛えて強くなってから来いよ。」
「はぁ……はぁ……。くそっ。助っ人さえ来てくれたらお前なんかイチコロなのに……。」

 あまりにも発言がモブ過ぎる。それにしても……。この人間離れした矢野をイチコロできる助っ人。そんな化け物が本当にいるのか……?

「遅れたよ。ごめんね。」

 階段の方から声がした。そこには明らかに喧嘩などしなさそうな、間違いなく気の弱いメガネの青年が立っていた。

 

 

 
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