料理人の幼馴染の身体はいつも熱いのに、ハンバーグは冷たいままだ。

永井歌多

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2.変わらない君、変わった僕

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 行為が終わるとぐったりとベットの上に寝転ぶ虎之助を置いて、トオルは立ちあがる。しばらくすると聞こえてくるシャワーの音。虎之助はただひたすらにその音を聞くしかなかった。右隣の熱が引いていくのを感じながら。
 「いくわ」
 そう言って遠ざかる音。
バタン。
 最後の音。静寂が襲う。
 虎之助は息を長く吐いて、笑った。寝転んだまま、疲労感と確かに残る腰の痛みを感じながら、自分を笑った。
 「ホント、バカすぎ...」
 そっと寝返りをうつ。
 明日の朝ごはんはハンバーグ。今週も、また。
 なんでこうなったのか。理由なんて理由はほとんど見つからない。きっと、初めからそんなものはなかった。トオルは隣の家の2つ上の幼馴染だった。仲はいいほうだったと思う。だけど、ただその程度のことだった。
 トオルが高校に進学するタイミングでトオルの一家は引っ越して行った。
 それ以来会うことはなかったし、連絡もとらなかった。同い年でもないその歳の男の付き合いなんて、そんなもんだろう。


 何かが変わったのは、1年前だ。
 大学に進学した虎之助はアルバイトの面接を受けに、大学近くのイタリア料理店に行った。
 ランチ営業が終わった店の隅の席で面接を受けながら、虎之助は見つけてしまった。
 カウンターの向こうで、仕込みをしているコック服の男の姿を。
 高く綺麗な鼻筋と厚めの唇。切れ長の瞳。
 5年前の記憶より身長が伸び、大人の顔立ちになっていたが、見間違うわけがなかった。
 トオルにい...
 目の前に座る店長が続ける。
 「うちは髪色はそこまで厳しくないんだけど...金色だけはね...明るい茶髪ぐらいに戻したりはできるかな?」
 「...あ、はい」
 「シフトは週3くらい入ってくれると嬉しいんだけど」
 「...あ、はい」
 その後の面接を上の空に答え、家に帰った瞬間、自らアルバイト採用を断る電話を店にかけた。
 なんでそんなことをしたのか分からない。
 だけど、虎之助はトオルから逃げた。

 あの頃の夢を叶えていたトオル。
 あの頃のまま真剣な表情でそこに立っていたトオル。

 きっと、あの頃と変わってしまった自分を見られたくなかったのだと今なら思う。

 虎之助はバイトを断ったその日、左耳にピアスの穴を開けた。
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