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ルーア・キャリル伯爵令嬢
世間から醜女と噂される私が恋に落ちたのは 第一話
しおりを挟む「化け物」悲鳴と共に言われたそれは、幼い頃にルーアの婚約者であったとある伯爵家の少年に言われた言葉だった。
「・・・え?」
初めての婚約者との顔合わせ。未来の私の旦那様となるはずだった少年は母親に抱きつき大声で泣き叫んでいた。
「お母様。ごめんなさいっ! これからは、ちゃんといい子にするからっ、だからっ!」
ーーー化け物に僕をあげないで。
「ばけ、もの・・・っ、!」
その言葉に、態度に、私がどれだけショックを受けたのか、彼は知るはずもないだろう。
ポロポロと涙が零れ落ち、それまで必死に保ってきた何かがガラガラと崩れ落ちる音がした。そして、引き止める両親の静止の声を無視して屋敷の裏の森の中へと飛び込んだ。
神様。どうして私はお父様とお母様に似てないの? ねえ、どうして? どうして私は可愛くないの? 私、私は・・・化け物なんかじゃ、ない、のに・・・
ふと目に入った泉に自身の姿を映す。
しかしそこに映ったのは、ただでさえ醜い顔が涙や鼻水でぐちゃぐちゃになっていて、酷い有り様の自身の顔。
化け物だと罵られても、仕方の無いような、そんな顔。
「ひいっ!!」
思わず悲鳴をあげ後ろに下がる。
(嫌だ。嫌だ。嫌だ。こんな顔、嫌!)
両親はルーアがどんな顔でも愛してくれると言ってくれたが、それでは駄目なのだ。
初めてあった婚約者の言葉はルーアに深く消えない傷跡をつけていた。
(私、私だって・・・)
ルーアだって女の子だ。運命だって、王子様だって、人並みに憧れていた。
「ふっ、くぅ、、うっ、、」
涙がとめどなく溢れて、止まらなかった。
せめてもう少し目と目が離れていれば、唇が分厚ければ、鼻が潰れていればと、もう何度思っただろうか。
「死にたい」
ポツリ、一言胸の内が零れる。
こんな顔を晒して、これ以上惨めに生きていくのがルーアはその時、とても耐えられないと思った。
「大丈夫?」
と、その時。後ろから誰かの声がした。聞き間違いだろうか。ルーアはそっと指の隙間から声のした方を伺った。
「・・・泣いてる?」
そこに居たのは、ルーアとそう年の変わらない男の子だった。ルーアは手を伸ばし心配そうにこちらを見ている少年を無視すると再び顔を俯かせた。
何か言うべきなのかも知れない。けれどルーアの口から漏れるのは嗚咽ばかりで言葉にならない。
「あっちにいって!」
その後ルーアがようやく言葉に出来たのはそんな心無い言葉だった。
とにかく一人になりたかった。目の前にいる少年だって、今は心配そうにこちらを見ているが、きっとルーアが顔を上げてしまえば顔色を変えて「化け物」と罵り逃げていくのだろうことを想像するのはたやすかったからだ。
だから、びっくりしたのだ。
彼がルーアの顔を見ても逃げていかなかった事に。いや、それだけでは無い。彼はルーアが顔をあげたあとも優しく手を差し出してくれた。
「もうすぐ日が暮れる。 危ないから一緒に森を出よう?」
「・・・。え?」
「ほら、早くっ」
(ーーー王子、様?)
ルーアはこの時。心の底からそう思った。
これがルーアとルーカスの本当の意味での“初”対面だった。
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