この婚約破棄は運命です

朝比奈

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二度目の人生

目が覚めたらそこは·····

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──クリスティーナ

   ぷくぷくと水泡が下から上へと次から次に上がっていく。ここがどこかも分からないまま私は、ただひたすらにさ迷い続けていた。


『名前は?』『年齢は?』『趣味は?』『私は誰?』通り過ぎていくのは、私の知らない過去。浄化された前世。幸せな記憶と悲しい記憶。


   それが私のものであるのは分かるのに·····。私は私自身が分からなかった。


『これは呪い。私が、私を得るための呪い』

   どこからがそんな言葉が聞こえた。
   私は答える。

「ええ、そうね·····。そうだったわね·····。すっかり忘れていたわ·····。これは、私が、私自身が仕組んだことだったのに·····」

『私が人になる為の·····』

「··········、残念だけれど失敗だったみたいね·····。だから·····もう·····終わらせないと·····」


   いつ出られるか分からないまま、私はさ迷い続ける。  私を探しながら。  “ただ会いたい”という感情が私の足を動かした。


   誰に会いたかったんだっけ·····?
   ここから出られたら思い出せるかな·····。



────────────────



「んーと、ここは??」

   重たい体を起こして周りを見渡すと、そこは知らない部屋だった。まるでどこかのお貴族さんのようにキラキラした部屋には、私一人しかいなかった。

   とりあえず、ベットから出ようと体を動かそうとするも、全然力が入らなかった。

「えぇーー、どういう事?」

   頭に大量のはてなマークを浮かべながら私は、一人でウンウンと考える。

   えっ·····、私、昨日何してたっけ?
   んんん?  思い出せない·····。

   結果、私が出した答えは·····

「あー、夢だね!  うん、きっとそう!  よし、もう一回寝よう!  おやすみなさい!」


   と。私が再びベットの中に入ろうとした時·····


───ガチャッ


   ドアが開いたと思ったその時には、もう人が入ってきていた。

   えっ、誰?

   私がそう思う間もなくその人は持っていた花束を床へと落とす。

「クリス·····ティーナ·····」

   うわー、何この金髪のイケメンは·····。凄く綺麗な人·····。それにしてもクリスティーナって誰だろ·····??


   私がコテンと首を傾げると、金髪のイケメン君は大量の涙を流しながら優しく私の手を握った。

「ああ·····クリスティーナ·····、良かった、良かった」

「うっ·····」

   何故だか分からないが、頬に熱がたまり自分の顔が熱くなるのがわかった。

   いや、ただ単にイケメンに照れてるだけかもしれないけど·····、こうなんて言うか胸を締付けるような感情に襲われてて、私は同じ体制から動くことが出来なかった。

   金髪のイケメン君は何度も良かったとそう言いながら私に体調は大丈夫かと聞くと、直ぐに医者を呼んでくる!そう言って慌ただしく部屋から出ていった。


「···············誰だったんだろう」


   一人取り残された部屋で私は、夢にしてはリアルだなぁ·····なんてことを考えていた。



──────────────────

「クリスティーナ·····、ゆっくりで良いからね」

「うん、ありがとう·····」

   あの日から5日ほどが過ぎた·····。
   ちなみに私はまだ夢から脱出出来ていない。

   どうやら私は、ラノベでよくありがちな展開に巻き込まれているみたいだ。

   周りの話によると、私は貴族の令嬢でそれでいて婚約者もいるというのだ。あの、目覚めた時に涙を流しながら手を握っていたイケメンが婚約者らしい。

   それに、なかなかの美人·····。   どうやら、半年ほど前に事故に会いそれからずっと眠ったままだったのだとか·····。


   ちなみに今は歩く練習中だ。

   まだ一人で歩くのは難しいけれど、そのうち完治するとの事だったので、私はあまり重く受け止めてはいない。でも、周りは違う。物凄く過保護なのだ。


「──お嬢様」

「え、あ、はい!」

   ついついボーッとしていると、メイドのランに話しかけられた。

「婚約者がお越しになっておりますよ」

「えっ」

   ドキン!と心臓がはねる。まただ、何でだろう·····、やはりイケメンだからだろうか·····、婚約者、その言葉を聞く度に妙に意識してしまう。

「どうぞ、入ってもらって」


   私がそう言うと、しばらくして一人の青年が入ってくる。

「クリスティーナ、体調はどう?」

「え、あ、はい!  平気です。えと、こんにちは────── フィンセントさん」


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