聖女じゃないのに召喚された俺が、執着溺愛系スパダリに翻弄される話

月湖

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20 初めましての異世界人

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『ハルカ』



「ん・・・」



『ハルカ、起きろ。あやつの意識が戻りそうだ』



「んん・・・?あやつ・・っあ!」



まだ薄暗い明け方、クロウに起こされ、慌てて身体を起こす。

何かあった時の為に服は着たまま寝ていたから、ちょっとだけシワになった服にクリーンを掛けドアに向かった。

あの人が起きる前に家を仕舞わないと厄介な事になるから。



「クロウは先にあの人のところに行ってくれる?

万が一でも見られると面倒だから、そうならないように見張ってほしいんだ」



『分かった』



クロウが見てくれている間に家を仕舞い、森を元に戻す。

木を動かす土魔法はともかく、ロクな道も無い森のど真ん中に突然一軒家なんて怪しい事その上無い。

あの男がいつ目を覚ますか分からないので、元の森をイメージしながら魔力をどばーっと放出して一気に森を戻す。



・・・っと、ヤバい。力抜ける。



「っ」



咄嗟に足に力を入れて踏ん張り、身体がグラつくのを抑える。

もしかして、一気に魔力を出し過ぎると一時的に動けなくなるのかもしれない。

今はある意味緊急事態だから仕方ないけど、大きな魔法を使うときは魔力量に注意しないといつか誰かに迷惑を掛けてしまうかも。

今はもう何ともないけど、これからは少し気を付けて魔法を使おう。



『ハルカ?』



森を元に戻し、そのまま考え込んでいた俺にクロウが声を掛けてくる。



あ、ヤバい。

余計な事を考えてる場合じゃなかった。



「その人、どう?」



『意識が浮上してきている。そろそろ目覚めるだろう』



「そうか」



男の様子を見ると、安定した呼吸でただ眠っているだけに見える。

ただ、服だけは乾いた血が赤黒く残っていて無残な様子だ。



「・・・クリーン」



とりあえず、血塗れの服は見ていて気分が悪いので綺麗にさせてもらった。

破けたところまではどうにもならないけど、さっきの様よりは大分マシだろう。

土と血で汚れた顔を綺麗にすれば、目の前の男の顔が目を閉じていても分かるくらいに随分と整っているのが分かった。

ヨーロッパ系の正統派とも言えばいいだろうか。

黄みの強い豪奢な金髪に、長い睫毛、高い鼻、厚過ぎない唇は昨日の青白い色から肌の色に戻っていた。

黄金比率に配置されたパーツは完璧なシンメトリー。

例えるならデ〇ズニー映画で見た王子のような容貌だ。



「っう・・」



そんなことをしている内に、男が呻き、睫毛がピクピクと動いた。意識が戻る前兆か。

・・・もう、いいかな?

ここまで自分で来たんだろうし、食べさせたグレーピイの効果で傷も治って魔力も回復している筈だから、もう一人で置いても大丈夫だろう。

昨日は倫理観とかなんだと考えたけど、現実的に考えて、こんな、何も分からない世界で下手な動きをすると後々色々面倒な事になるかもしれないと思い直した。



「クロウ、行こうか」



『目覚めるのを待たぬのか?』



「うん。だって、こんな森の中にひとりって俺めっちゃ怪しくない?お互い様だけどさ」



『それもそうだの』



「あと、この人、多分強いんでしょ?」



『おそらく。装備も中々によいものを下げておるしな』



ああ、そういうのもあるのか。

俺、魔物が出る森の中なのに丸腰だし、それこそ怪しいな。



「よし決定。行こう」



『ハルカは吹っ切れると意外と冷徹だな』



「自分の身が可愛いだけだよ」



男が身動ぎをしたのを機にくるりと背を向けると、クロウが面白そうに言いながら横に付いてきた。

ざかざか歩いて、男から少し離れたところで振り返ると、男は身体を起こしこちらを見ていた。



「っ」



完全に目が合った気がする。

ヤバいかも?



「クロウ、ごめん飛ぶ。

あいつと目が合った。急いで離れよう?」



『分かった。全速力か?』



「うん。どのくらい出るか分かんないけど、出来るだけ速く飛ぶからついてきて」



言いながら浮いて、一気に木の上に出る。



「行くよ!」



ビュウッと向かい来る風をバリアで防ぎながら全速力で飛ぶ。



あれはヤバい。

よく分からないけど、そんな気がした。

あんなに離れていたのにはっきりと見えた蒼い瞳が、俺を何かを見透かそうとするようにじっと見つめていた。

本能的に、逃げなければと思った。

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