遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。

月湖

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1 突然のお手紙

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ある春の日の朝。
予定もなく朝の鍛錬の後は部屋でのんびり読書でもしようかと図書室に行こうとしたところで、最近見習いから正式に昇格した若い執事から僕宛の封筒をいかにも恭しく渡された。
まだ成人前の学生で社交界デビューもしていない僕宛の手紙など珍しくて、どなたからだろうと裏返して、押された見覚えのある過ぎる封蝋に今日何かあったかな?と記憶を探るも全く以て覚えが無い。
とりあえず読書用の本を選ぶのはまた後程という事にし、貰った手紙を開けてみた。
――――が。
内容は何という事もない。
要約すれば『今日の午後のお茶はうちでしない?』という事だ。
わざわざ手紙ではなく従僕に言伝でもいいくらいの内容だった。というか普段であればそうしているのだが。

「なぜ今日はわざわざ手紙?」

一応、正式な作法としてはこちらが正しいのだが、手紙の相手は隣の家に住む同い年の幼馴染である。
最初の出会いがいつなのか記憶にないくらい、物心ついた時には一緒に遊んでいた相手だ。
彼からの手紙といえば、礼儀作法の勉強の最初の頃に「遊びに行く前にお相手にお伺いしてから」と習い、勉強半分遊び半分でお互いに出し合った時以来だろう。もしかしたら10年振りくらいかもしれない。

「まあ、いいですけど」

お伺いの手紙を頂いたのだから、ここは手紙で返すのが礼儀でしょう。
机の引き出しから我が家の印が透かし彫りされた封筒を取り出し、正式な招待に応じるという内容で書いた手紙を入れて封蝋もする。

「これを、アディニー・キルセウス侯爵令息に」

壁際で僕が手紙を書き終わるのを待っていた若い執事に渡すとまたもや恭しく受け取られ、彼は従僕に任せることなく自ら部屋を出て行った。
・・・正式な家の封筒を出したのはやり過ぎだっただろうか。
考えてももう遅いのだが。


さて。
勝手知ったる隣の家とはいえ正式なご招待を受けたので、いつもの略式ではなく昼の正装で馬車に乗る。
隣といえど我が家もあちらも侯爵家。
歩いていくなどありえないのだ。
そうして、ばれていそいそと来てみれば。

「は?大公殿下に呼び出されたとは、どういう事でしょう?」

招待した張本人である目の前の人物、こちらも昼の正装姿で待っていたアディニー・キルセウス侯爵子息は、挨拶もそこそこに可愛らしい顔に満面の笑みを浮かべてその手に持つ封筒を僕に差し出した。

「ほらコレ」

そっと手に取り裏返すと、まだ割られていない封蝋が目に入る。

「百合の冠の白鳥・・・」

優雅で美しいこの印はかの方の印で間違いない。
そして宛名は本当に彼の父侯爵閣下ではなくアディニーだ
どうして・・・?

「昨日、うちに届いたの」
「・・・なぜ、アディニーに?」

思わずうっかり呟いてしまいハッとして顔を上げれば、そこにはプンと頬を膨らませた幼馴染がいた。

「デュオニーソス、ひどい!」
「う、ごめん。ちょっと驚いて」
「そりゃあ僕はデュオニーソスより成績悪いけど!」
「あの、そういう意味じゃないんだけど。でも嫌な言い方してごめん」
「いいけどー」

いいけど、と言いながらもその口はまだほんの少し尖っている。
可愛い顔が台無し、でもないな。口が尖ってても頬が膨らんでいてもアディニーは可愛い。
身長は僕とそう変わらない。おそらく170cmあるかないかの細身。うん。こればかりはお互いのこれからに期待だ!!
髪はふわふわ天然パーマのピンクゴールド。大きな目に嵌る瞳は透き通ったアクアマリンのような水色で。
鼻は低すぎも高すぎもせず丁度よくつんと上に向き、唇は健康的で自然なピンクでぷるぷるだ。
コレで私と同い年、17歳の男、なんだが。
可愛い・・・アディニーへの招待状。

「・・・これ、万が一の招待だったとしても、受けるのですか?」

勝手に封を開ける訳にもいかず、未開封のままの上質な厚紙の封筒を返しながら思わず尋ねると、可愛いアディニーは当然のように頷いた。
むしろ何故そんな事を訊くのかというような顔をして。

「そりゃ、もちろん受けるよ?」
「もちろん、て」

大公殿下のあのを知っていても?

「もしそう・・だったとしても、相手は遥か雲の上の方だよ。断れるわけないでしょ?」
「それは、そうだけど」

かの方は勿論素晴らしい方ではあるのだが、その裏ではあるが・・・。
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