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―― 第五章 ―― 百鬼夜行
【061】一輪の花の元気
こうしてアリアに教わりながら、桜子は訓練を始めた。
掌に淡い光が溢れるイメージを頭の中に描くと、最初はほんのりと手が温かくなるだけだったが、今ではきちんと光が出るようになった。
「うーん」
これでよいのか悩みながら、カイを抱き上げる。
そしてベッドに座ると、アリアの声が響く。
『ええ。あなたの力は紛れもなく白い薔薇に近づいているわ』
そう耳にして、入浴時に体を見てみる。確かに黒が強かった薔薇の模様が、白とも金ともつかない色に薄れたようにも感じられた。
それからも訓練を繰り返すうち、桜子は詩乃が生けてくれた花を見る。
少しだけ、元気がない。
詩乃はすぐに花を取り替えようとしてくれたけれど、桜子はまだ咲いているからと制止した。ふと思い立って、その一輪挿しの花の前に立ち、両手を翳してみる。
「あ」
すると桜子の掌から温かい光が溢れてすぐに、花は元気を取り戻した。目を瞠り、本当に力があることに驚いて、桜子は少しだけ冷や汗をたらす。
『随分と自由自在に使えるようになってきたようね』
「これが、浄癒の力……?」
『ええ、そうよ。白い薔薇の力』
「私でも、誰かの力になれますか?」
桜子が問うと、ころころとアリアが笑った。
『それは分からないわ』
「……そうですか」
『強い力が、誰かを助けるわけじゃないもの。助けたいという気持ちが大切なのよ』
「っ」
『桜子さん、あなたが助けたいと望み願うのならば、きっと浄癒の力はあなたの背中を押すでしょう』
アリアの優しい励ましに、桜子はゆっくりと頷いた。
そうだ、気持ちが大切だと、そう感じる。過去、諦めてばかりいた己とは、決別しなければならない。今、自分には大切な人々が大勢いて、彼らは自分のこともまた大切にしてくれる。そう考えたとき、一番最初に脳裏を過るのは、礼人の顔だ。
『桜子さんには、大切な人がいるようね』
「……はい」
『ならばきっと、あなたにならばその相手の手を掴むことができるのではないかしら。助けてあげるといいわ』
アリアの声に頷いてから、桜子は窓の外を見る。
日差しが強い。夕日が、寒い中凍った路面にも反射しているかのようだった。
「私に出来ることならば、なんだってしてあげたいんです」
『優しいのは良いことだけれど、尽くしすぎてはダメよ?』
「え?」
『心配ならばきちんと、もっと自分を大切にするように唱えなくっちゃ。それをその人も望むでしょう』
「……」
それは礼人が己にしてくれたことでもあると、桜子は思った。そうだ、礼人にはきちんと、自分を大切にしてほしいとも伝えなければ。私自身が私を大切にするだけでは、だめだ。礼人にも、己を大切にしてもらわなければ。
アリアとそのようにやりとりをしているうちに、日が落ち始めた。
掌に淡い光が溢れるイメージを頭の中に描くと、最初はほんのりと手が温かくなるだけだったが、今ではきちんと光が出るようになった。
「うーん」
これでよいのか悩みながら、カイを抱き上げる。
そしてベッドに座ると、アリアの声が響く。
『ええ。あなたの力は紛れもなく白い薔薇に近づいているわ』
そう耳にして、入浴時に体を見てみる。確かに黒が強かった薔薇の模様が、白とも金ともつかない色に薄れたようにも感じられた。
それからも訓練を繰り返すうち、桜子は詩乃が生けてくれた花を見る。
少しだけ、元気がない。
詩乃はすぐに花を取り替えようとしてくれたけれど、桜子はまだ咲いているからと制止した。ふと思い立って、その一輪挿しの花の前に立ち、両手を翳してみる。
「あ」
すると桜子の掌から温かい光が溢れてすぐに、花は元気を取り戻した。目を瞠り、本当に力があることに驚いて、桜子は少しだけ冷や汗をたらす。
『随分と自由自在に使えるようになってきたようね』
「これが、浄癒の力……?」
『ええ、そうよ。白い薔薇の力』
「私でも、誰かの力になれますか?」
桜子が問うと、ころころとアリアが笑った。
『それは分からないわ』
「……そうですか」
『強い力が、誰かを助けるわけじゃないもの。助けたいという気持ちが大切なのよ』
「っ」
『桜子さん、あなたが助けたいと望み願うのならば、きっと浄癒の力はあなたの背中を押すでしょう』
アリアの優しい励ましに、桜子はゆっくりと頷いた。
そうだ、気持ちが大切だと、そう感じる。過去、諦めてばかりいた己とは、決別しなければならない。今、自分には大切な人々が大勢いて、彼らは自分のこともまた大切にしてくれる。そう考えたとき、一番最初に脳裏を過るのは、礼人の顔だ。
『桜子さんには、大切な人がいるようね』
「……はい」
『ならばきっと、あなたにならばその相手の手を掴むことができるのではないかしら。助けてあげるといいわ』
アリアの声に頷いてから、桜子は窓の外を見る。
日差しが強い。夕日が、寒い中凍った路面にも反射しているかのようだった。
「私に出来ることならば、なんだってしてあげたいんです」
『優しいのは良いことだけれど、尽くしすぎてはダメよ?』
「え?」
『心配ならばきちんと、もっと自分を大切にするように唱えなくっちゃ。それをその人も望むでしょう』
「……」
それは礼人が己にしてくれたことでもあると、桜子は思った。そうだ、礼人にはきちんと、自分を大切にしてほしいとも伝えなければ。私自身が私を大切にするだけでは、だめだ。礼人にも、己を大切にしてもらわなければ。
アリアとそのようにやりとりをしているうちに、日が落ち始めた。
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