スライムなのに悪役令嬢になっちゃった！？・・・荷が重い！！

美少女との出会い編

スライムってどんな生き物だったっけ？

とにかく第一印象を良くしようと思った故の行動だったのに、何故か固まってしまっている。


(あれ？そんなになる程、意外な行動・・・なのかなぁ？)


キョトンとしたヒナタだったが、とりあえず触手を振り続けてみた。


「・・・・・ね・ねぇ？リタ？わたくしの見間違いかしら？・・・手を振ってるように見えるのだけど？」　

「・・・・・わたくしめも・・・そのように見えます。・・・その・・・あのような攻撃手段がある可能性はないのですか？」

「うーーーーん、無いと断言はできないけど、可能性は低いと思うわ。」

「では、手を振ってる・・・のでしょうか？」

「そう・・・なるわね・・・。友好的なスライム・・・と考えてよさそう・・・かな？とりあえず近づいてみるわね。」



おそるおそるヒナタの方へ近づいてくる美少女を見て、ちょっとそわそわしてしまう。


(これは驚かせという・・・フリか？！・・・って、違う違う！ちょっと反応が楽しかったからって、調子に乗るのはまだ早い。現状を確認しなきゃね！)


少しのイタズラ心に蓋を閉め、手を振るのをやめ、大人しく美少女を待ってみる。

じっーと、スライムを見つめながら近くまで来た美少女は、一呼吸おいて慎重に話しかけてきた。


「・・・ごきげんよう。スライムさん？」


声をかけながら、少し右手のひらをスライムのヒナタに見せ、首を横に傾げた。


(これが挨拶の仕方なのかな？ちょっと真似したいけど、首を傾げるは無理だわ。手を挙げればいいかな？)


ヒナタはそう判断し、右の触手・・・いや、もう右手と言おう！(本人が手のつもりなので)それを挙げた。


「！？や・・やっぱり、これは挨拶なのね！すごい！スライムと意思の疎通を図ろうとするなんて、わたくしが初めてじゃないかしら？！」

「きゃー！お嬢様すごいです！」


きゃーーーー！！っと、2人で喜び飛び跳ね始めた。


(おおう・・・。これくらいでそんなに喜んでもらえるなんて、不思議な気分だわ。・・・ははっ。)


なぜか大喜びの2人にちょっとだけ戸惑うヒナタだった。


ひとしきり騒いで落ち着いたのか、ふぅと深呼吸をして再び近づいてきた。


「スライムさん？えっーと、どうしたらいいかしら？あ、そうだ！わたくしの言うことが分かるのならば、手を挙げてもらえないかしら？」

(これは、ちゃんと答えるべきかな？・・・もうなんとなく分かってるみたいだし、でも、はっきり確認されてしまえば、何か実験とかされちゃうのかな？まだ今なら勘違いで誤魔化せるよね？うーーーん、どうしよう・・・。)


今更ながら、現状も分からないのに軽率な真似をしてしまったかと若干の後悔をしてしまった。


(そもそもスライムって、どんな生き物だったっけ？意思の疎通ができてたっけ？・・・わたしの世界には居ないから分かんないなぁー。物語とかでは喋ってたような？そうよ！確か喋ってた！今はどうやって喋るか分かんないから身振り手振りで伝えて現状把握が1番の近道だよね！)


あまり深く考えるのは難しいヒナタだった。これがこの後に後悔することになろうとは。今のヒナタには思いもしなかったのだった。

「あら？やっぱり、理解はしていないのかしら？」

(あ！やばいやばい！分かってますよー！)


慌ててヒナタは右手を挙げる。


「わっ！ちゃんと分かってるみたい！このスライムって、賢いのね。・・・・・ふふっ！使えそうだわ！」

(え・・・・・早まった・・・・！？)


ちょっとだけ己の行動を振り返る事ができたヒナタでした。