追放された聖女は隣国で幸せをみつける

ゆるり

文字の大きさ
6 / 25

6.治癒の力の測定

しおりを挟む
 案内された先は神殿に併設された治癒所だった。そこにいた年配の男性神官を紹介される。

「ステファノ、こちら治癒師志望のユリアさんです。……ユリアさん、こちらは治癒所の所長ステファノです」
「初めまして、ユリアと申します」
「おや、治癒師志望とは珍しい。ステファノです。よろしく」
「ユリアさんは暫くの間だけここで働きたいそうですので、資質を見て貰えますか?」
「ああ、永続勤務ではないのですね。残念です。いえ、もちろん暫くの間だけでも助かりますがね。資質を見るために、こちらの水晶に治癒の力を注いでください」

 ステファノに差し出されたのは拳大の水晶だった。これは一体なんだろうか。

「これは治癒石ですよ。この水晶は治癒の力を留めることができ、使用者が任意で治癒の力を使えるので、冒険者に人気なんです。これには治癒の力しか入りませんから、治癒師の資質を確かめるために使うのですよ」
「なるほど。私はケッカ国から来たので存じ上げませんでした。これに治癒の力を注げば良いのですね?」
「ケッカ国から……。あの国とは違うところが多いですからね。どうぞ治癒の力を注いでみてください」

 水晶に力を注ぐというのは嫌な記憶が蘇るが仕方ない。水晶に両手を翳して治癒の力を注いだ。
 途端に、眩い光が水晶に閉じ込められる。

「え?!あ、もう良いですよ!」
「は、はい」

 ステファノに慌てて止められて、力を注ぐのを止めた。思った以上に負担無く力を注げたので驚いてしまった。

「すごい!一瞬で水晶が治癒の力で満たされましたよ」
「え……、このくらいで良いのですか」
「ええ、十分です」

 満面の笑みを浮かべるステファノを見て戸惑う。
 確かに今のユリアは結界水晶に魔力を注がなくなってから身に力が満ちている感覚があったが、治癒の力がこれ程あるとは思わなかった。

「ユリアさんの資質は素晴らしいですね」
「では、ユリアさんはここでお勤めになるということでよろしいですね、ステファノ」
「もちろん、今日から働いて欲しいくらいです」
「流石に今日は駄目ですよ。色々説明がありますから」
「残念ですねぇ。今日も患者が多くて大変なのに」
「ユリアさんがよろしければ、明日からの勤務でどうですか?」
「ぜひ、明日から働かせてください」
「では、今日のうちに契約を交わすために事務室に行きましょう」
「ユリアさん、明日からよろしく」
「はい。よろしくお願いします」

 トントン拍子で働けることが決まって頬が緩むのを抑える。上司になるステファノも優しそうだし、ここで何とかやれそうだ。
 ケッカ国では文句や批判を浴びたユリアの治癒の力だが、この国では役に立ちそうだと思えて、安心で胸を撫で下ろした。


しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます

香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。 どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。 「私は聖女になりたくてたまらないのに!」 ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。 けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。 ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに…… なんて心配していたのに。 「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」 第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。 本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。

婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。

ぽっちゃりおっさん
恋愛
 公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。  しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。  屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。  【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。  差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。  そこでサラが取った決断は?

婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。

ムラサメ
恋愛
​「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」 ​婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。 泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。 ​「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」 ​汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。 「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。 ​一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。 自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。 ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。 ​「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」 ​圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!

【完結90万pt感謝】大募集! 王太子妃候補! 貴女が未来の国母かもしれないっ!

宇水涼麻
ファンタジー
ゼルアナート王国の王都にある貴族学園の玄関前には朝から人集りができていた。 女子生徒たちが色めき立って、男子生徒たちが興味津々に見ている掲示物は、求人広告だ。 なんと求人されているのは『王太子妃候補者』 見目麗しい王太子の婚約者になれるかもしれないというのだ。 だが、王太子には眉目秀麗才色兼備の婚約者がいることは誰もが知っている。 学園全体が浮足立った状態のまま昼休みになった。 王太子であるレンエールが婚約者に詰め寄った。 求人広告の真意は?広告主は? 中世ヨーロッパ風の婚約破棄ものです。 お陰様で完結いたしました。 外伝は書いていくつもりでおります。 これからもよろしくお願いします。 表紙を変えました。お友達に描いていただいたラビオナ嬢です。 彼女が涙したシーンを思い浮かべ萌えてますwww

聖女姉妹の姉は、妹に婚約者を奪われました

天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私ミレッサと妹シアノは数週間前に聖女の力を得て、聖女姉妹と呼ばれていた。 一週間前に私はルグド王子、シアノは侯爵令息カインとの婚約が決まる。 そして――シアノの方が優秀だから、婚約者を変えたいとルグド王子が言い出した。 これはシアノの提案のようで、私は婚約者を奪われてしまう。 ルグド王子よりカインは遙かにいい人で、私は婚約者が変わったことを喜んでいた。 そして数ヶ月後――私の方が、妹より優れていることが判明した。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

聖女はただ微笑む ~聖女が嫌がらせをしていると言われたが、本物の聖女には絶対にそれができなかった~

アキナヌカ
恋愛
私はシュタルクという大神官で聖女ユエ様にお仕えしていた、だがある日聖女ユエ様は婚約者である第一王子から、本物の聖女に嫌がらせをする偽物だと言われて国外追放されることになった。私は聖女ユエ様が嫌がらせなどするお方でないと知っていた、彼女が潔白であり真の聖女であることを誰よりもよく分かっていた。

悪女と呼ばれた聖女が、聖女と呼ばれた悪女になるまで

渡里あずま
恋愛
アデライトは婚約者である王太子に無実の罪を着せられ、婚約破棄の後に断頭台へと送られた。 ……だが、気づけば彼女は七歳に巻き戻っていた。そしてアデライトの傍らには、彼女以外には見えない神がいた。 「見たくなったんだ。悪を知った君が、どう生きるかを。もっとも、今後はほとんど干渉出来ないけどね」 「……十分です。神よ、感謝します。彼らを滅ぼす機会を与えてくれて」 ※※※ 冤罪で父と共に殺された少女が、巻き戻った先で復讐を果たす物語(大団円に非ず) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...