追放された聖女は隣国で幸せをみつける

ゆるり

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終.幸せの場所

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 爽やかな春の風がスカートを揺らす。庭に降り注ぐ日差しに目を細めて、ユリアは今日の仕事を終えた。

「ユリア、仕事は終わったか」
「ええ」

 迎えに来たアイザックに微笑む。
 ユリアは領主夫人となった後も治癒石作りを続けていた。既にミルカ国内では十分に治癒石が広まってきていたが、旧ケッカ国は未だ復興の最中で、どうしても治癒の手が足りないようなのだ。騎士や冒険者が大量に買い入れるため、まだ余剰がでるまでに至っていない。

 旧ケッカ国の結界はユリアによってその強度を取り戻したが、日に日に薄くなっているという。王侯貴族や神官たちが毎日限界まで魔力を搾り取られているらしいが、万全の状態で保つのは難しいようだ。
 だが、旧ケッカ国内では町の防御壁の建築が進み、魔物討伐の訓練をつんだ冒険者も増えてきている。いつの日か結界が消滅しても、このミルカ国と同様に自分たちの力で国を守っていくことになるだろう。それが国の正しい姿だと思う。

「アイザック様、どうして結界なんてものが生まれたのかしら」
「……知りたいのか?」

 アイザックはその理由を知っているのだろうか。ユリアはアイザックを見つめて首を傾げた。

「そうですね。アイザック様も昔疑問に思っていたでしょう?」
「そうだな」

 アイザックがため息をついてユリアの隣に座る。軽く抱き寄せられたので、その肩に頭を預けた。

「……兄上が、旧ケッカ国の王族が持っていた文献からその歴史を調べて俺に教えてくれたよ」
「あら、そうなんですの」
「初代聖女と言われた人は、新たな魔法を生み出す天才だったようだ。だが、ある時王に愛する家族を人質にとられて、国を魔物から守るよう命じられた」
「……人質」

 思わぬ言葉にユリアの顔が歪む。

「初代聖女は結界を生み出した。そしてその身を削り、結界を維持し続けた。その苦しみを見た神があの神具を齎したらしい。その時には神官たちも結界の維持に協力していたようだが」
「……あの国は、そのはじまりから歪んでいたのかしら」
「そうだな」

 聖女の犠牲を強いた王。その歴史はユリアの代まで続いた。

「ふぅ、もう終わったことですね。でも、いつか歴代の聖女のお墓にお参りに行きたいです」
「もちろん、一緒に行こう。歴代の聖女は王家の墓に入っているから、ついでに旧王都で兄上の疲れ切った顔でも観察してこよう」
「……趣味が悪いですよ」

 にやりと笑うアイザックに呆れる。

「だが、すべては無事にこの子が生まれてからだ。本当は治癒石作りだって控えてほしいのに」
「治癒石を作るのはなんの負担にもなっていないですよ?」

 ぎゅっと抱きしめてくる過保護な夫にユリアは苦笑する。この問答はこれまで何度も繰り返してきた。そろそろアイザックのいうことを聞くべきだろうか。とても幸せな悩みだ。

 ユリアを捨てた人々を思い出す。昔のユリアがそうだったように、彼らは結界を維持するために水晶に力を注ぎ続けている。それは毎日、結界が必要なくなる日まで続く。その役目が終わったとき、彼らはやっとケッカ国崩壊の原因として裁かれるのだ。どういった裁きが下されるのかは分からない。もしかしたら今の務めの代償に罪が軽減されるかもしれない。だが、もはやユリアには関係のない人たちだ。ユリアはもう過去に目を向けることはない。

 包み込む温かい腕の中で、胸いっぱいの幸福に酔いしれた。



END.


 
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感想 22

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みんなの感想(22件)

penpen
2021.05.02 penpen

こんな聖女の婚約破棄噺ありますよ〜丶(・ω・`)
王子が元聖女と離縁したら城が傾いた。
これもある意味馬鹿王子のやらかしですよ?(´ᗜ`٥)

2021.05.02 ゆるり

結婚した後の離縁パターンですね。
その場合は元聖女の力がどういったものなのかの設定で色々展開作れそうですね。
結婚中の環境でざまぁの範囲が変わる感じですかね~。

解除
龍夜mk.Ⅲ
2021.04.29 龍夜mk.Ⅲ
ネタバレ含む
2021.04.29 ゆるり

そうですね~……
考えがまとめられたら、今後書くかもしれません。

解除
太真
2021.04.29 太真
ネタバレ含む
2021.04.29 ゆるり

ありがとうございます😆✨
主人公を幸せにするという目的で書き始めたので、ちゃんと幸せになって良かったです~(* >ω<)
突出した才能って良し悪しありますよね。自分でそれを制御できたらいいけれど、なかなか難しい。人には色んな感情がありますからね。
次のお話も頑張って執筆中です!まとまって書けてから公開しようと思っています。
まずは他の作品の番外編が先かな?
ぜひ今後ともお付き合いくださいませ~😊🌸

解除

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