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王たちはどうなるのかしらね

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 アンジェが修道院に送られて暫くすると、王とエドワードからの賠償金が届いた。交渉に向かわせた者は相当巻き上げたらしい。王と王太子の給与の1年分ほどだった。

「あらまあ、これで王たちはどうやって生活しているのかしら」
「これまでの貯蓄がたんまりあるのではないか」

 フランベルツは興味なさげだが、ラグノニオスは苦笑している。あの王達がそんなに貯蓄しているはずがないからだ。

 事実、ラグノニオスのもとには、王達から国庫のお金の使用許可申請が届いていた。国庫のお金で補填するつもりらしい。アリシエラの発言で、王の独断で国庫を使わせてはならないことを初めて知った金庫番が、王の手出しを防いだため、ラグノニオスに願い出るしかなくなったようだ。
 金庫番はこれまで王に要求され、何度か国庫のお金を王の私費に回したとラグノニオスに告解にきた。彼はそれが駄目なことだと本当に知らなかったようだ。教皇の許可無しに王は何も決定出来ないと知るものは、アリシエラ達の想定以上に少なかった。
 王族の横暴さは、密かに王城を侵略していたようだ。


「エドワード殿下はどうなりましたの?」
「何もない部屋に軟禁状態のようですよ。今回のことで、多くの地方領主から王族を責める声が聞こえるようになりました」
「……そう」
「商人達も、聖女を貶めたとして王族の批判をしているようですね」

 アリシエラは黙って頷いた。予想していた事態だった。特に、アンジェの婚約者だったブルダンが王族を批判しているという。

「そもそも、教皇がこの国のトップなのです。外国との外交に教皇が出るのは煩わしいと思って、彼らが王と名乗るのを許容してきましたが、ここまでの横暴を許した覚えはありません」
「……王族をなくすつもりですのね」
「今一度、権力体制を正すのです」
「彼らは貴族の地位に?」
「いいえ。彼らは明確な罪を犯しています。国家財産の横領という罪です。王太子には、聖女との婚約を不当に貶めたという罪もあります」
「そうね」
「国家財産の横領はアグノアティスが関係する前から行われていたことです。当然彼ら自身の罪と言えましょう」

 国家財産の横領は、この国で厳罰に処される。王が横領したお金で暮らしていた王妃と王子もその対象から外れることはない。

「側妃は初めから王からの金は拒否していたようです。生活費は全て実家からの支援でやりくりしていたようで、華やかに見せつつ金を節約していたその手腕は素晴らしいですね」
「まあ、では側妃とザウス殿下には横領の罪は課せられないのね」
「ええ。そこは厳密に調べましたから。ザウス殿下には早急に婿入りしてもらい、王族との縁を切ってもらえば完璧ですね。側妃にも実家に帰ってもらうなりして、王との縁を切ってもらいましょう」
「良かったわ。ザウス殿下は婚約者と相愛なのよ」
「そうらしいですね」

 必要以上の人間に罰が課されないと知り、アリシエラは一安心だった。これでこの国の上層部の者も自らの身を改めるだろう。横暴に振る舞っていたのは王族だけではないのだ。王族を見せしめに、貴族達の意識を改めさせるのがラグノニオスの狙いだった。




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