白と黒の呪い戦線

白と黒の邂逅

002 黒い彼女

「クソみたいな街だな、やっぱり」
　チッと舌打ちをしてタバコに火をつけた。テーナタウンに入ってから、既に合計して六人に襲われた。もっとも、全員返り討ちにしてやったが。
　
　黒いつばの長いハットに、黒いロングコートに身を包んみ、スタイルの良さを際立たせた女、ミナミは、長くサラサラの綺麗な黒髪を靡かせて歩みを進めた。歳の頃は20代か、しかし、見ようによっては10代にも見えるし、逆に30代にも40代と言われても納得する哀愁の様なものがある。
　そろそろ腹が減った。どこかに入って飯にでもしようか。尤も、入ると言ってもこのスラム街に飯屋なんて物はない。賊の根城へでも入って、飯を盗もう、と言うのだ。
　そう考えた瞬間、左で金属の光がキラリと光ったのが視界に入った。左からナイフを持ったデブが突撃してくる。ナイフの刺突をサッと避け、ナイフを持っていた右手を掴みクルッと捻ると、デブの体が一瞬だけ宙に浮いて、ドサっと落ちた。デブに馬乗りになると、ミナミは冷酷な目で、
「お前のアジトは？」
と尋ねた。
「言うわけねぇだろこのアマ！！」
馬乗りにされたデブは威勢よくそう怒鳴った。取り敢えず顔面を一発殴って鼻の骨を折ってもう一度聞いた。
「お前の、アジトは？」
デブは呻き声を上げながら、アジトの場所をミナミに言い、助けを情けなく懇願した。
　デブを横目にサッと立ち、ミナミは教えられたアジトの場所へ、目を細め、ルンルンと向かった。
　
　例の賊のアジトへ着いた。扉を開けていともあっさり入った。見える限りでは、賊の数は50人もいないくらいだった。久しぶりの「敵地」と言う感じで、ミナミは高揚した。
「おい女、ここがどこか分かってんのか。」
　無視した。殴りかかってきたので、全員返り討ちにした。計48人。たった一分で。
「飯は、どこだ？」
　意識がなかったためか、誰も答えなかった。仕方ねぇ探すか、とアジトの奥の扉を開けた。

「じゃぁな！クソガキ！」
　大男がナイフを振り下ろすのが目に入った。相手は…白い髪の少年。この少年を見た時、ミナミの瞳孔が微かに開いた。まさか、こんなとこで、出会うなんて。ニッと口角を上げたミナミは、ナイフを振り下ろす大男に向けて、躊躇なく銃を撃った。
　ガキン！！奇妙な音とともに、弾は大男の頭にはじかれた。大男はナイフを振り下ろす手を止め、ゆっくりミナミの方を向いて言った。
「おい、殺すぞ、邪魔するな。」


　ナガトはゆっくりと目を開け、この状況に困惑した。
　何が起きてる！？どうなってる！！
　
　ミナミは不敵に笑って大男に向けて、言った。
「ハハハ！！なるほど「呪い」か！全くクソだな本当にこの街は！！」
　
　そう言って笑っているミナミの目には狂気が宿っているように、ナガトには見えた。